TEXT:鈴木亮介
3月3日、大阪城ホールの夢舞台は早くも通過点の一つとなった。先日の本誌インタビュー「rock girly parfait SCANDAL(part2)」でも語られた通り、3ヶ国4公演のアジアツアー、5月の新曲「会わないつもりの、元気でね」リリース、映画のタイアップもあって連日のメディア出演やイベント参加と精力的に活動するSCANDAL。決して手を抜くことなどなかったであろうはずなのに、ここ数ヶ月の彼女たちの活躍を見ていると、「今までは本気出してなかったのか?」と思えるほどの大活躍、大進化を感じる。ゴールテープを切った瞬間に次のレースに向けてさらにペースを上げたかのような印象だ。
そんなSCANDALにとって、やはりホームグラウンドになるのはライブハウスだ。6月9日ロックの日の北海道公演を皮切りに、7月7日七夕の福岡公演まで列島を縦断する2013年第一弾ライブハウスツアー「スキャはまだ本気出してないだけ」が開催された。本記事では、全国11都市14公演のうち、6月21日に行われた東京公演2日目の模様をお伝えしたい。
◆SCANDAL メンバー:
HARUNA(Vocal & Guitar)、MAMI(Guitar & Vocal)、TOMOMI(Bass & Vocal)、RINA(Drums & Vocal)
新設のライブハウス・Zepp DiverCity Tokyoの入口のバケツに刺さった大量のビニール傘を見ていると、なぜか胸の高まりが助長された。この日の東京は本降りの雨。ファンにはおなじみの”雨バンド”らしい空模様、いつも以上に期待せずにはいられない。

そして、入場と同時に「本気」を感じたのは、そのステージのセット位置だ。「会わないつもりの、元気でね」のミュージックビデオを再現したかのような、ドラムを前に出して4人横一線に並ぶようなセッティングになっている。いつも後方からメンバーを、オーディエンスを支えるRINAのパワフルなプレイがいっそう間近で観られる半面、MAMIたちの動きには大きく影響するのではないか…そんなことを考えていたら、あっという間に開演の時刻が迫ってきた。

少し押すのかな?と思っていたらそうではなかった。午後7時、開演の直前まで入念なサウンドチェック…かと思ったら場内が真っ暗に。パンパンに埋め尽くされたフロアから待ってましたとばかりの大歓声!さぁ用意はいいかな?MAMIがジャラーンと音を出し、RINAの高速ドラムでよーいドン!1曲目から、アップテンポな「24時間プラスの夜明け前」でスタートダッシュ!ニューシングルのカップリングであり、今ツアーからライブデビューとなるこの曲。高橋久美子(ex:チャットモンチー)の手がける歌詞はこれまでのSCANDALの楽曲とはまた違った世界観が楽しい。TOMOMIのベースに合わせて観客も「Hi! Hi! Hi! Hi!」と序盤から全力で声を出し、追走する!
間髪入れずに2曲目、「Rock’n Roll」。昨秋のホールツアーでも、もちろん大阪城ホールでも、ここぞという重要な局面で披露された、彼女たちの今を表現する名刺代わりのような曲。そのタイトルが全てを物語っているこの曲を2曲目にして持ってくるとは、いったいこのあとどんな展開になっていくのか。それにしても4人個々の音がとても綺麗に聴こえる。照明もセットも衣装も動きもシンプルに、音が主役のステージが展開されていく。
さらにMCを入れずに曲は続く。イントロ、久々に聴くMAMIのギターフレーズに観客からは懐かしさと新鮮さの入り混じった感動の雄たけびが上がる。3rdアルバム『BABY ACTION』収録の「アップルたちの伝言」だ。さらに4曲目は「LOVE SURVIVE」!ライブの定番曲だが、大阪城の時よりテンポが速くなっているようだ。
ここでようやく最初のMC。今日の横一線に4人並ぶスタイルはライブを7年間やってきて初めてのフォーメーションだと前置きし、「どうですか、この感じ?見やすい?」と客席に問うHARUNA。「結成してから夢だった大阪城ホールを3月にやったけど、そんな夢だった所をやったにもかかわらずまだ本気出してなかったのか?っていう(今回のツアー)テーマです。常に本気なんだけど…まだ本気出せるでしょ?」そして次の曲に行くかと思いきや、「めっちゃ喋るからね、今回のツアー!」(RINA)、「トークショーぐらいの気持ちで!色々みんなと喋りたいなと思って」(HARUNA)ということでさらにトークを続けることに。Divercityにまつわるエピソードや、TOMOMIがバドミントンにハマっているという話題など、客席に問いかけつつ進行していく。
さらにファストファッションの話やプールの話など、冒頭4曲のスピード感とは対照的に緩やかな展開。メンバーとの距離が物理的に近いライブハウスツアー、心理的にもグッと近づいたのではないか。和やかムードの中「一緒に歌ってください!」と5曲目は「サティスファクション」。やはり序盤4曲と同様、HARUNAとMAMIのギターサウンドがとても綺麗に聴こえる。
そのMAMIのギターソロが冒頭かっこよくキマる6曲目「その時、世界はキミだらけのレイン」。「アブラカタブラ~」という中毒性の高いフレーズに、HARUNA、TOMOMI、MAMIとリードボーカルがコロコロ入れ替わる様が楽しい。さらに、ドラムの手数が多くロックテイストは残しつつもタイトル通りかわいらしさ全開の「CUTE!」、そしてスタジアムロックの王道ナンバーのようなスケール感のある「GLAMOROUS YOU」と続く。
先日のインタビュー(rock girly parfait SCANDAL(part2)参照)では「大阪城ホールという非日常を経て、ごく日常の歌、シンプルなロックを今はやりたい」と語っていたメンバーだが、こうしたセットリストを見てもその「音で勝負」という強い意志は感じるし、またそうした意志をしっかりと体現するサウンドに進化している。
9曲目は今ツアー中会場によって日替わりで異なる曲が披露されたパート。この日は「東京まだまだ行けますか?もっともっと騒げるか?暴れていくよ」とHARUNAが煽り、「瞬間センチメンタル」。そしてTOMOMIがクールなベースソロで見せ場を作り、10曲目「プレイボーイ」!先ほど6曲目のギターソロもしかり、この日のSCANDALは曲間のつなぎにこだわりが見えて楽しい。そしてこの「プレイボーイ」という曲、こんなに4人個々の見せ場が多い曲だっただろうか。確実に進化した4人のテクニックがふんだんに盛り込まれている。そこに5人目のメンバー=ファンも遅れまいと全力の手拍子やコールで応え、フロアの盛り上がりも最高潮に!
インディーズ時代のライブ定番曲でありながら、デビュー後はほとんど披露されず、今年2月のコレクションアルバム『ENCORE SHOW』収録を機に再び日の目を見るようになったこの曲。まさにSCANDALの来し方行く末を象徴する1曲になったのではないか。思わずHARUNAも「まさか『プレイボーイ』がこんなにもみんなに踊ってもらえる曲になるとは!」と喜ぶ。

再びロングMC。「プレイボーイ」を振り返って「インディーズ当時は誰もコール&レスポンスしてくれなくて、この曲やるの嫌だった」と懐かしみつつ、4人とも昔話が大好きということでデビュー当時の話題に。「バンド結成当初に夏合宿をして、TOMOMI母手製のちゃんちゃんこを着て3枚の布団に4人で寝泊まりした」「パン屋さんに食パンの耳をもらいに行った」と、意外な苦労話が語られる。
「大好きな昔話をしたので、なつかしい曲をやります」と、11曲目は1stアルバム『BEST★SCANDAL』収録の「キミと夜と涙」。HARUNAの綺麗な歌声が響く。最高に暴れまわれるのもSCANDALのライブハウスツアーならではの魅力だが、こうしてしっとりと奏でられる音と歌声に身をゆだねるのも心地良い。確実に、最後列にいてステージが人の頭で見えなくても、音をしっかり聴いて楽しみまくれるライブだ。
心地良い酔いが続く。続いてもSCANDAL至宝のロックバラード、「ビターチョコレート」。HARUNAとMAMIのギターの弾き分ける音が、ともに美しい。このプレイを観て何人の中学生、高校生が「私もギター弾きたい!」と思っただろう。RINAとTOMOMIの作る低音の下地も美しい。曲が終わり、拍手の驟雨(しゅうう)が起こると、まるでオペラハウスにいるかのような錯覚に陥る。
静寂のまま、暗転。そして、RINAのシンバル4カウントを皮切りに15枚目のニューシングル「会わないつもりの、元気でね」がここで登場!背景のカーテンが開き、真っ白な照明でミュージックビデオが再現される。直後のMCではこの次、8月14日リリースの16枚目のシングル「下弦の月」について、「すぐにこれやりたい!って決めた曲。年相応、今やからできる曲。私的にはTHE BEATLESっぽい。超ロック。」(RINA)と紹介。さらに、今曲を録りためている真っ只中だという嬉しい知らせも。
そんな録りためている新曲の中から一曲、未発表の「涙よ光れ」を披露。冒頭、ジャラーンとシンプルにギターの弦を弾き、唐突に歌い出す。巨大風船がフロアを舞う。ハイテンポなこの新曲、「涙よ光れ 楽しみの分だけ」と直球ストレートな青春ソング!夏フェスから学祭までみんなで一緒に歌えるロックナンバーという印象だ。
そして初披露ながらフロアを沸かせた新曲に続き、おなじみのイントロドラム。「みんな、風船の次はタオル!」もう回す準備はバッチリ。「DOLL」!ここに来た以上、暴れて帰らないと!皆容赦なくタオルを振り回す。ボルテージが最高潮を保ったまま、最後は「太陽スキャンダラス」で踊り狂い、本編終了!
アンコールに応えて再登場したメンバー。喋りを入れることなく唐突に、4人当時に、楽器をかき鳴らす。再びロックの世界にいざなう。やはり今日は「音が主役」というスタンスが終始一貫している。SCANDAL史上最もクールなナンバーと評するファンも多い「カゲロウ」だ。
「アンコールありがとうございます!」「ラスト1曲、何やる?」「今日のみんなは激しいのが好きなんでしょ?」どうやら、アンコール2曲目はここにいる皆で決めようというのだ。様々な曲名が飛び交う中、メンバーは複数の「EVERYBODY SAY YEAH」という声を拾う。大阪城ホール以来のSCANDALライブ参戦というファンも多いだろうこの日、アンコール最終曲がまさか大阪城と同じ曲になろうとは!!
観客からのリクエストで決めたということもそうだが、3か月前と同じ「EVERYBODY SAY YEAH」を最後にやるというのは、微塵も”守り”でない、”攻め”の姿勢そのもの。なぜなら、同じエンディングになることで、3月3日大阪城のあのメモリーに上書きをすることになるからだ。しかしSCANDALは少しも後ろを振り向くことなく、前に進んだ。「最高に暑い夜にしようね!」というライブ冒頭でのHARUNAの決めゼリフは決して予定調和ではない。常に、自己ベストを更新し続けているのだ。

SCANDALは8月14日のニューシングル「下弦の月」リリースに加え、今夏も各地のフェスへの出演、そして秋にはSCANDAL史上最多となる全国21公演のホールツアーが決定している。「本気出していけよ!」「まだまだ本気見えないぞ!」そう自分に言い聞かせながら、いっそう本気で追いかけていこう、と気持ちを新たにする、そんな夜になった。
◆セットリスト
M01. 24時間プラスの夜明け前
M02. Rock’n Roll
M03. アップルたちの伝言
M04. LOVE SURVIVE
M05. サティスファクション
M06. その時、世界はキミだらけのレイン
M07. CUTE !
M08. GLAMOROUS YOU
M09. 瞬間センチメンタル
M10. プレイボーイ
M11. キミと夜と涙
M12. ビターチョコレート
M13. 会わないつもりの、元気でね
M14. 涙よ光れ
M15. DOLL
M16. 太陽スキャンダラス
-encore-
E01. カゲロウ
E02. EVERYBODY SAY YEAH
◆関連記事
【特集】rock girly parfait SCANDAL(part2)
http://www.beeast69.com/feature/68092
【特集】rock girly parfait SCANDAL(part1)
http://www.beeast69.com/feature/67886
【連載】新譜るLIFEダイアリー SCANDAL「会わないつもりの、元気でね」
http://www.beeast69.com/serial/simple/65696
【特集】大盛りレポ!ロック増量 Vol.1 SCANDAL OSAKA-JO HALL 2013 「Wonderful Tonight」
http://www.beeast69.com/feature/60182
【特集】Editor’s Note…PASSION Mind7 ~卒業~ SCANDALの背中を追い続けた、ある女子高生のストーリー
http://www.beeast69.com/feature/59612
【特集】第3回 SCANDALコピーバンド&ボーカリストコンテスト
http://www.beeast69.com/feature/50726
【レポート】SCANDAL「Queens are trumps -切り札はクイーン-」ツアーファイナル
http://www.beeast69.com/report/50588
【レポート】アルバムリリース記念 代々木公園野外ステージSpecial Live
http://www.beeast69.com/report/44103
【特集】ROCK ATTENTION 16 ~SCANDAL~
http://www.beeast69.com/feature/29978