演奏

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TEXT:鈴木亮介 PHOTO:幡原裕治

Photoライブの楽しさとは何だ?と問えば、その答えは無数に挙げられるだろうが、「意外性」という言葉は一つ大きな軸になるのではないかと思う。特に対バンイベントは、未知との遭遇、感性の新規開拓だ。今回は、そんな「意外性」が楽しい4組の対バンライブをお届けしたい。
 
高円寺Show Boatにて開催された「Keep On Rising!」。出演したのは、メタルサウンドとアキバ系が融合したアイドルユニットHEART PANIC妹尾研祐(ex:ZNX)率いるBAD APPLES、名古屋を拠点に確固たるキャリアを築くthe peg桐明孝侍らを中心に32年活動を続けるTHE KIDSという、それぞれの共通点を見出すのが容易でない4組。
 
客席はそれぞれの熱心なファンで埋まり、和やかに談笑している声が次第に聞こえ始めるようになった。さぁまもなく開演。いったいどのような化学反応が起こるのだろうか。
 
 

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トップバッターに登場したのは、「アキバ系アイドルがSLIPKNOT目指して」というコンセプトで結成されたガールズバンド・HEART PANIC!だ。メンバーのRei(Vocal)、ORI(Vocal)、Ane(Guitar)、Alice(Drums)、MIYABI(Killer Bat)に、サポートの玲於奈(Bass/ex:dolore)を加えた6人編成。落雷のSEとともに、ガスマスクを仮面のように装着しながらの登場に、「何者だ?」と一瞬いぶかる客席。しかし演奏が始まると途端にステージも客席も笑顔に変わる。
 
「行くぜ!」ORIが赤いジャージを脱ぎ捨て、身を乗り出して歌うと、Reiも水色のウィッグを振り乱しながらシャウト!開演前、オフステージの様子を見ていると本当に「バンドを初めてすぐの初々しさ」が随所に垣間見えたのだが、Aliceの淡々としかし確実に刻んでくる安定感あるビート、そしてAneのメタルなギターフレーズに、フロアタムをバットで叩くMIYABI、それぞれに個性があり楽しい。そんな「初々しさ」をV系ベーシストとして活躍する玲於奈がしっかりと支える。
 
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この日、Ane玲於奈が誕生日ということで、ステージ終盤にはバースデーケーキ登場のサプライズも!アイドルバンドが乱立しそうな昨今、”成長見守り型”という位置づけになるのだろうか。残念ながら5月のライブを最後に当面活動休止してしまうそうだが、メンバー個々にユニットを組んだり音楽活動をしているので、それぞれのステージで経験を積み、いつかまた成長したHEART PANIC!を観てみたい。
 
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◆セットリスト
M01. DEVIL
M02. Son of a Bitch
M03. HEART PANIC
◆HEART PANIC! 公式サイト
http://heartpanic.info
 

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続いて登場するのは、松尾宗仁とのユニットZNXでデビューし、ヴォーカリストとして一貫して活動し続ける妹尾研祐のバンド、BAD APPLESだ。メンバーは妹尾研祐(Vocal & Guitar)、大嶋ジェット(Guitar)、福島司(Bass)、石川英一(Drums)の4名。ステージに登場するや否や、大嶋ジェットがシビれるギターサウンドを轟かせると、妹尾研祐がそこにハープを絡め、続けて目覚ましいシャウトを見舞う。リズム隊のどっしりとした土台もあり、心地良く音に陶酔できる。
 
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中盤、アコースティックギターでの弾き語りも見せた妹尾研祐。パワフルに歌い上げつつ、しなやかに腰をくねらせ、大人の余裕を見せる。爽快感の溢れる楽曲に、4人の成熟したプレイヤーのテクニックが加味されて、容易には到達できない円熟したロックサウンドが展開される。妹尾研祐は広島平和イベントへの活動も精力的に行っており、自身の熱い思いも数多く曲に収めている。また次が聴きたい、そう純粋に思える30分のステージであった。
 
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◆セットリスト
M01. EASY DAY
M02. Welcome to the Sunday
M03. Waiting For Another Day
M04. E.V.O.
M05. BAD FEELING
◆妹尾研祐 公式facebookページ
http://www.facebook.com/pages/SENOKEN/175455705844366
 
◆インフォメーション
・2013年05月21日(火)【浦和】ナルシス
妹尾研祐ソロ出演)

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3組目に登場したのはthe peg。今日の出演はHatto Lee(Bass, Pedal-synthesizer & Vocal)、Soda(Drums & Percussion)、Hisataka(Guitar & Vocal)の3名。普段はここにEriko Eternity(Keyboard)が加わる4人編成だ。名古屋を拠点に活動しつつ、ここ高円寺にも定期的に出演。ポカポカ温まるサウンドが持ち味だ。ポロンとギターを鳴らすと、静かに、しかし着実に、自らの世界観に客席を引きこむ。
 
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結成当初の楽曲「SHADOW」から新曲「YOU COME」まで、一貫して”自然(ネイチャー)”を感じる。Sodaが一拍一拍確実に音を刻めば、Hatto Leeはシンセペダルを踏みつつ、しっとりと歌い上げる。最後「GET BACK YOUR WIND」はベースのフレーズが印象的。そこにHisatakaの心地良いカッティングが映える。三者三様に、互いが互いの音を引き立てる、まさに共存共栄という大自然の摂理が、the pegの音楽には体現されているのだ。
 
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◆セットリスト
M01. THE CRESCENT MOON
M02. SHADOW
M03. YOU COME
M04. INVISIBL SHADE
M05. GET BACK YOUR WIND
◆the peg 公式サイト
http://thepeg.web.fc2.com/
 
◆インフォメーション
・2013年07月29日(月)【高円寺】Show Boat

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いよいよトリ。登場するのはTHE KIDS!メンバーは桐明孝侍(Vocal & Guitar)、服部啓(Bass)、西川貴博(Drums)の3名。当時18歳の桐明孝侍を中心にバンドが結成されたのはさかのぼること32年前、1981年のこと。以来、西川貴博が加わった後に「イカ天」出演、在宅審査員賞最多記録の獲得、メジャーデビュー、東ヨーロッパツアー…などその輝かしい経歴は枚挙にいとまがない。ただし一番輝かしいのは、結成から30年以上経った今でもステージに立ち続け、観客を魅了し続けていることだろう。陽気なロックンロール・サウンドを響かせ、「立とうぜ!」と客席を促す。
 
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「博多から夜行に乗ってやってきました!」桐明孝侍が元気よくメンバー紹介。背後で骨太なドラムを披露する西川貴博浅香唯の夫だという紹介から、ちょっとしたエピソードで客席を和ませる。そして中盤はハーモニーが美しいバラード、後半はアップテンポと、緩急つけたラインナップで客席の心をグッと掴んで離さない。「プレシャス」は3人の元気よく駆け抜けるような、一体感あるプレイが楽しい。
 
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けたたましいサイレンに続き、真っ赤な照明の下、ゆっくりとギターが爪弾かれる。彼らの代表曲の一つ、「HI-TO-HA-TA」だ。そして「1945年の彼に」と、男の生きざま、野望、人生観…を歌ったその歌詞には何年何十年経っても色あせない。内容が普遍的であることに加え、彼らがいつまでも衰えることなくステージに立ち、説得力のある音を奏でているからだろう。
 
アンコールはTHE ROLLING STONESの「悪魔を憐れむ歌」を日本詞ヴァージョンで披露。トップバッターに登場したHEART PANIC!の乙女たちも、客席で一緒に体を揺らしていた。いいものは、いい。そのスピリットは、ジャンルやスタイルと言った表層の部分を超越して、きっと彼女たちのパフォーマンスにも受け継がれていくだろう。
 
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◆セットリスト
M01. ダンサー
M02. CIVILIAN GOOD TIME
M03. マシンガンジョニー
M04. マイウェイ
M05. プレシャス
M06. HI-TO-HA-TA
M07. 1945年の夜に
-encore-
E01. 悪魔を憐れむ歌
◆THE KIDS 公式サイト
http://kids.iaigiri.com/
 
◆インフォメーション
・2013年06月21日(金)【渋 谷】REX
 ※西川貴博 50 years old anniversary SUPER LIVE
・2013年07月14日(日)【高円寺】Show Boat

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【レポート】ShowBoat+DEARDEVIL+VIPDM主催『XXX’MAS 2012』
http://www.beeast69.com/report/56306