演奏

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TEXT &PHOTO:桂伸也


かつてヘヴィメタルグループANTHEMでシンガーとしての活動を行った経歴を持ち、現在は自身のバンドTHE POWERNUDEで活発な活動を続けている森川之雄。そのヴォーカリストとしての実力は誰もが認めるところであるが、彼はTHE POWERNUDEのギタリストZINと共にユニット歌魂を結成。ユニット名が示すとおり、「歌こそが信条」とばかりに活動を開始し、昨年アルバム『歌魂』をリリース、新たな音への探求範囲を拡大しつつある。そんな彼が、今年2月に歌魂としてのライブを開催した。対バン相手には、本誌のコラムニストとしてもおなじみの小林信一が、この日のステージへの登場名として「シンガー小林信一」となり登場。小林自身の歌で森川と対決を行うという、プレミアムなステージとなった。歌こそがすべての男と、ギター、そして自身の歌ともに歌心満載の男による一騎打ち、果たしてその行方やいかに?今回はそのステージの模様をレポートする。

1.シンガー小林信一
 
◆メンバーリスト:
小林信一(以下、小林 :Vocal &Guitar)、福原善勝(以下、福原 :Guitar &Keyboards)、田川靖彦(以下、田川 :Guitar)
 
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小林のMCからステージは幕を開けた。オープニングナンバーは彼自身のバンドR-ONEのナンバー「CORE」。田川小林が激しくかき鳴らしたアコースティックギターの音色に福原が追従し、ディストーションの効いたギターでアクセントを作る。田川小林のギターは、シンプルなラインをしっかりと狙い分厚いハーモニーを形成、そこにバランスよく福原がフィルやアクセントを入れ、聴く者を飽きさせない。その間隙を縫うように歌い上げる小林のヴォイスは、滑らかでありながらもしっかりとエッジの立った歌を聴かせる。
 
小林の歌にメインを絞ったこのステージ。ギタリストが作った曲をギタリストが奏で、ギタリスト小林信一がシンガーとして歌う。彼の頭の中にある世界観を、最小限の範囲で構成することにより極限まで忠実に具現化する、その表れがこのステージといえよう。途中で福原はまるで師匠小林のお株を奪うが如く超絶テクニックによるソロを披露したが、それを曲中で際立たせないことが今回のライブの命題であり、このプレイもしっかりと楽曲を際立たせる要素として成立した。
 
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先ほどのソロに対して「やるね!」と褒めながらも、「さっき、自分のネクタイ結べてなかったよね?」と福原をイジる小林。ステージのフレンドリーな雰囲気が、フロアにも優しく伝わる。ギターの超絶テクニックがとかく取り上げられがちな彼だが、その物腰の優しさ、そして激情感と研ぎ澄まされたような歌メロが表すピュアな感性が折り重なった世界観、繊細さこそが彼の持ち味といえるだろう。R-ONEの楽曲に続いたのは、その前身となったバンドR-JACK LINEのナンバー「解き放て世界の果てまで」。刺々しさを表した先ほどのナンバーに比べると、メジャーキーによる広大な雰囲気がステージに開放感を与え、フロアの観衆をゆったりと引き込む。
 
ここまでは小林自身のバンドのナンバーが続いたが、一転しさかもとえいぞうのソロ作品ために書いたという曲「Mr.Lonely」、そして「優しい愛」へ。激しいコードストロークから変化し、繊細なアルペジオから徐々に展開していく流れは、細やかな配慮が特徴の、彼ならではのスタイル。他人のソロに書いた曲でも、自らも歌えることが必要とばかりにしっかりとその歌を聴かせる。クリーンで繊細ながらも弱々しさを感じさせない声。フロアの観衆も、酒を楽しみながらゆったりとくつろげる空間がそこに形成された。メインには歌をすえておきながらも、要所で見せるギターの細やかなテクニックの織り込み方も絶妙だ。
 
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いよいよステージも終盤に。ここではさらに小林の歌の部分を強調するために自身が抱えていたギターすら置き、福原のピアノをバッキングとして、中島美嘉の有名なナンバー「雪の華」を披露。自身が作った曲に比べるとずっと音域が広いナンバーだけに、より歌に配慮が必要であるが、低域の朗々としたメロディも、サビの高域の旋律も、彼ならではのニュアンスをしっかりと織り込む。そしてカバー2曲目はBON JOVIの「ALWAYS」。アメリカンロックならではの広大な空気感に、自身のセンスをうまく融合させた歌をしっかりと聴かせ盛り上げた。このナンバーでようやく本分となるエレキギターを登場させ、短いながらもメロディアスなソロを披露した。
 
しかしこのメロディを聴かせておいて、本分のギターを聴かせないわけにはいかない、とばかりにアンコールでは自身のオリジナル「アイスルコト」を披露。縦横無尽にフィンガーボードの上を行き来する彼の指。そこに聴こえたのは超絶ながらも歌心をたっぷりと聴かせたフレーズ。シンガー小林信一のお題目に沿って、ここで彼はギターで声を発し、歌った。
 
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◆公式サイト
http://www.nanagen.jp/
◆セットリスト
~バンドR-ONE編~
M01. CORE
M02. LOST IN MY HEAD
~バンドR-JACK LINE編~
M03. 解き放て世界の果てまで
~オリジナル編~
M04. Mr.Lonely
M05. 優しい愛
~カバーソングピアノ編~
M06. 雪の華
M07. ALWAYS
-encore-
~ソロアルバムインスト編~
E01. アイスルコト

2.歌魂
 
◆メンバーリスト:
森川之雄(以下、森川 :Vocal &Guitar)、ZIN(Backing Vocal &Guitar)
 
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淡々とステージに登場した森川ZIN。何の前置きもなしにかき鳴らされたギター。そしてギターのカデンツァ(イントロなどに使用される即興的プレイ)から「Calling」で歌魂のステージは始まった。力強く鳴らされるZINのバッキングとちょうど対になるように太く、強く響く森川のヴォイス。ふくよかで骨太、ロック・ヴォーカリストといえばやっぱりこれだ!と思わせる要素をふんだんに見せる彼の声。繊細なアコースティック・ギターのバッキングの中で、彼の声がサウンドで世界観を作り上げ、聴くものの気持ちをあおってくる。切ないメロディの中で、力強さを見せる主旋律と、彼自身の歌心と優しさを感じさせるヴィブラート。しっとりとしたバラードも、その対比となる「BADLY MINE」で見せるハードロック/メタルな空気でも、根本が変わらない歌で勝負するという潔(いさぎよ)さ。
 
ZIN森川のギターの対比は非常に面白い。一見シンプルそうに見えるギターバッキングの中に、非常に多くの仕掛けが見える。森川の歌が絶対的にメインであるためギターのコードワークはシンプルな方向に進むが、この日のプレイではZINのかき鳴らすギターバッキングがリズムのよりどころとなった。彼の作り上げる音は強く響き、コードストロークを敷き詰めた中でも微妙にアクセントを変えることで、曲の展開を作り上げた。そしてさらにハーモニーに厚みを出すように入る森川のギター。卓越したテクニックを見せる彼のギターは、ヴォーカリストだからこそ持つ遊び心の表れかもしれない。「BRANDNEW BLOOD」のイントロでは、スパニッシュな雰囲気のインプロヴィゼーションを披露、聴かせどころも満載のプレイだ。
 
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序盤にオリジナルナンバーを続けた後には、カバーが続いた。自己のスタイルをベースとして作り上げられるオリジナルと比較し、カバーには完全にそれぞれのスタイルに合わせられない制約があるが、その差分をどうプレイするのか?ヴォーカリストとして抜群の実力を持つ森川だからこそ、このパートでのプレイは大きく注目される部分だ。この日の選曲も、Jimi HendrixNICKELBACK、さらにMichael JacksonJudas Priestというアコースティックではあまり考えにくいユニークな選曲で彼のチャレンジが進んだ。
 
カバーは下手をすれば「物まね」と揶揄(やゆ)されてしまう危険もあるが、そこを敢えて自分のスタイルで潔く歌い上げる森川の姿がピッタリとはまった。気持ちよさそうにそのサウンドに浸る観衆。森川ZINのやり取りもアットホームな雰囲気を作り、上質な空気作りを手伝った。「ギターの神様、Jimi Hendrixのアイデアから、ソロでボトルネック奏法をやってみたけど、どうだった、ZIN?」「まあ…良かったんじゃないかなと…(笑)」「次はキング・オブ・ポップスこと、ジャイケル・マクソンの…」ある意味常套手段的なジョークも、彼らであれば楽しい空間作りの必要な一部といえる。
 
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ステージもクライマックス。ドライブ感抜群の「KING&QUEEN」で、「Hey!Hey!」と、観衆との一体感を高めると、最後は「R’N’R MADMAN」へ、そのタイトルが示すマッドマンは正しく森川、といわんばかりに彼自身を歌に移入するその様は、人々がかくあるべきと描いているロックヴォーカリストの姿に一致して見えた。先攻の小林がどちらかというと器用で様々なスタイル、世界観をアプローチできるスタイルであるのに対し、彼は「これしかない」という自己のスタイルを貫くタイプ。しかしロックというご馳走をたっぷり堪能するためには、彼ほどのメインディッシュも存在しまい。彼を讃えるように、盛大な拍手でステージは締めくくられた。
 
拍手とともに盛大なアンコール。森川のこの日のステージに対する礼と共に繰り広げられたアンコールナンバーは、Judas Priestの「Living After Midnight」。Metal Godと呼ばれるバンドだが、彼の歌からは「ベースにはロックらしい楽しさがある」という真意を感じさせるグルーヴをたっぷりと見せる。逆にその曲の良さが森川の歌のグルーヴを何倍にも増幅させていく。まさに「After Midnightを生きた瞬間」、それを実感できる時間をたっぷり感じさせ、この日のステージは幕を閉じた。
 
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◆公式サイト
森川之雄 オフィシャルブログ
http://sky.ap.teacup.com/ym-rocker/
THE POWERNUDE website
http://powernude.m78.com/
◆セットリスト
M01. Calling
M02. BEAUTIFUL LIES
M03. BADLY MINE
M04. BRANDNEW BLOOD
M05. Hey Joe(Jimi Hendrix)
M06. Beat it(Michael Jackson)
M07. PHOTOGRAPH(NICKELBACK)
M08. You’ve Got Another Thing Comin’(Judas Priest)
M09. KING&QUEEN
M10. R’N’R MADMAN
-encore-
E01. Living After Midnight (Judas Priest)

ギタリストが聴かせる歌、そしてヴォーカリストが歌いながらもかき鳴らすギターと、その対比も面白く趣向としてなかなかユニークなライブだった。絶妙な選曲とそれぞれの持ち味を存分に生かしたカバーアレンジと、聴かせどころも満載、そしてクライマックスでは各々の伝えたいものを熱く表現するミュージシャンシップと、プロ意識の高さを十分に発揮したステージだった。
 
小林が聴かせた歌声は、とても澄(す)んでメロディを丁寧に表した。それは彼の身上であるギターで表現する歌心、ギターフレーズにあるメロディラインで表現している歌心に通じるものであるとも見えた。どうしてもギターの超絶テクニックに注目が集まりがちな彼だが、このような形で彼のサウンドに触れると、彼自身の感性の一端を垣間見たようにも感じ、非常に興味深い。
 
森川のステージングにも非常に面白い傾向が見られた。彼自身の歌の素晴らしさはいうまでもないが、この日のステージングではギタリストのお株を奪ってしまうくらいに、歌と同時にギターでのテクニシャンぶりを見せた。そこには単に「ヴォーカリストは歌さえよければ」などという慢心を否定した、音楽に対する彼の意向や向上心すら感じられた。ギターのテクニックだけではなく、「これがアコースティックでできるのか?」と一見思われるであろう選曲などにも表れている。
 
大きな舞台でのステージングも見応え十分だが、身近でアットホームなプレイを手ごろに観衆に楽しんでもらおうという趣向がこの日には感じられ、彼らの活動意欲の広さを垣間見たような気もした。またこのような素晴らしい場に巡り合えることを切に願いたい。
 

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