演奏

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TEXT:桂伸也

 
近年にわかに勢いをみせつつあるガールズロックシーン。その一方で紅一点のフロントマンがバンドの個性を決定するようなバンドスタイルが、顕著に広がりつつある。例えばヘヴィ・メタルでは、近年LIV MOONHEAD PHONES PRESIDENTなど、様々なバンドが頭角を現わしている。CINQ ELEMENTも、そんなインパクトを持つ女性ヴォーカルをフィーチャーしたバンドの一つだ。昨年、『BEEAST太鼓判シリーズ第17弾アーティスト「CINQ ELEMENT」』で紹介した彼らは、紅一点のMajuによるセクシーなパフォーマンスと、ヘヴィ&ワイルドなサウンドスタイルをかたくなに貫きながらも、常にさまざまな音楽スタイルを積極的に取り入れている個性溢れるバンドだ。全国デビューは昨年11月のシングルリリースではあるが、既に全国ツアーも経験し、さらには2011年に韓国でのツアーにも出向いている、ステージパフォーマンスに絶対的な自信を持つグループだ。
 
そんな彼らは昨年、シングル「Brodia」をリリースしたことに伴い東名阪のツアーを行った。Majuをはじめとしたそのパフォーマンス、そしてCINQ ELEMENTという存在とはどのようなものなのか?本格的に日本のヘヴィ・メタルシーンに殴り込みをかけた彼らの正体を、昨年東京で行われたステージの模様から迫ってみた。
 
◆メンバーリスト:
Maju(Vocal)、SIN(Guitar &Chorus)、KOH(Guitar &Chorus)、SAME(Bass &Chorus)、Kengo(Drums)

時は来た。一人、また一人とステージに姿を現した彼ら。「もうライブをするのが楽しみでたまらない」という満面の笑みを浮かべながらの登場は、ダークでクールなサウンドを生み出す彼らからは想像できなかったが、逆にステージに立つことへの熱い思いへの現われとも見えた。腕を挙げ雄叫びを上げ、一人一人がステージでの存在をアクティブにアピールする。さらに手招きをしてステージにグッと観衆を引き寄せる。ダークでクールなイメージのあるサウンドからは想像Kengoの合図からバンドとしての大きな第一声をガツンと上げると、フロアから大きな歓声が上がった。そしてSINのギターから発せられるワイルドなリフがステージのオープンを告げた。猛烈に速いわけでもないのに、聴く側が後ろから猛烈にあおられ、気分が上がっていくさまを感じるそのビート。感極まった瞬間にブレイクし、SINは猛烈な唸り声を上げた。「Are you ready!?」
 
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Majuがステージの中央に現れ、いよいよCINQ ELEMENTはその全貌を現した。黒に統一されたバックの4人の男とは対照的なセクシーなコスチュームの彼女。しなやかな動きを決めながらもクールな表情のMajuに対し、その動きや表情に押さえきれない激情と喜びをたたえたSINKOHSAMEそしてKengo。その対比は歌にも反映され、CINQ ELEMENTならではの強烈ながら荘厳さすら見られる世界観を感じさせた。ヘヴィ・メタルなど想像も出来ない澄んだMajuのヴォイスと、SINをはじめとしたバックの荒々しいシャウトが交差。そしてオープニングナンバー「Cold Slave」の最後には、Majuの強烈なシャウトがその世界観を決定付け、改めてここにCINQ ELEMENTの進撃開始を宣言した。
 
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「こんにちは!CINQ ELEMENTです!!今日は楽しんでいきましょう!!」Majuの挨拶でさらに会場にいる全員の士気が上がった。彼らのサウンドには猛烈なスピード感があるわけではないが、それでもフロアの観衆がそのリズムに合わせ歓声を挙げ、頭を振らずにはいられなくなるような魅力がある。また、彼らの楽曲はどちらかと言うとシンプルなリフをズンズンと続けていくだけのもの。だがKengoSAMEの生み出すビート感は、単に譜面どおりの音を鳴らすのではなく、そこに聴くものを引きつけるグルーブの配慮を感じさせる。この日の観衆もナンバーが進むたびにその音に引きずられざるを得ない状態となった。
 
その楽曲のシンプルな構成に反し、SINの奏でるギターサウンドはとても個性的。近年のメタルコア的な、極端なディストーション・サウンドに比べると、どちらかというと温かみのあるイメージを感じさせる。彼のサウンドはヘヴィ・メタル創世記の初期に登場したような、アンプ自体で音を作るナチュラルなディストーションサウンドが特徴で、コンテンポラリーなKOHのギターサウンドとは対照的。それだけにフレージングも合わせてその80年代ロック的なパフォーマンスが光って見えた。そんな個性的なプレイの上に、セクシーなMajuのパフォーマンスがさらに輝きを見せた。時に鋭く、またあるときには妖艶に踊りパフォーマンスを繰り広げる彼女。これだけカッコイイパフォーマンスが出来るガールズヴォーカリストもそうはいまい。そして曲の要所にあるブレイクではバンドのメンバー全体で、絶妙なタイミングでポーズをビシッと決める。ここはCINQ ELEMENTのアピールポイント、見所の一つであるといえよう。
 
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5曲目の「Kareido Scope」が終わると一度Majuはステージから掃けた。そして猛烈なビートをたたき出すKengoのリズムに合わせ、この日一番のスピードナンバーを繰り出した。ここにあるのはヘヴィ・メタルの激しさ、重さ、そして楽しさだけ。地鳴りのように鳴り響くギターのリフに狂喜乱舞する観衆。その観衆をさらにグロウルやシャウトであおるSINKOHSAMEMajuがここに存在しないだけ、ステージでここは一つのエアポケットのようにも見える。ここに吸い込まれ、聴くものは次の音を求め始める。この部分があるからこそステージはラストに向け彼らの音をせがみ、さらに会場の空気を熱くしていく。そしてコスチュームを替えお色直しをしたMajuが再びステージに現れる。強烈な音に全く臆することなく妖艶なパフォーマンスを繰り広げる彼女のパフォーマンスに、観衆はただ注目を集めさらに歓声をあげ激しいヘッドバンギングを繰り広げる。
 
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ステージもエンディングに向けスパートをかける。男達のグロウルとシャウトがコケティッシュなMajuのヴォイスの間をさらにせわしく、激しく入り乱れる。時に激しいリズムはブレイクし、「Judgement Day」のイントロのように静かなサウンドとなり、猛烈なフックを観衆に与える。楽曲の上にあるブレイクと、「ここぞ!」とばかりにキメる全員そろってのアクションは、まさしく彼らならではのものだ。そして観衆はさらにCINQ ELEMENTのサウンドへの渇望をおぼえる。そしていよいよラスト。クリーンなギターのリズムカッティングからラストナンバー「Destiny」へ。もう彼らがフロアをあおらなくても、観衆は自然に「Oi!Oi!」と大きな歓声を挙げ、ステージに応戦する。そして感極まったところでエンディング。「みんな楽しかったよ!ありがとう!」Majuの感謝の言葉でステージは締めくられた。
 
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さらに拍手でアンコールをせがむ観衆に答え、彼らは再びステージに現れた。SINが感謝の礼とともに観衆に最後のあおりをかけると、クールにバンドの屋台骨を支えていたSAMEも、興奮を抑えきれないといわんばかりにあおりを掛けた。「せっかくだから回っていこうぜ!暴れよう!!できればサークルが見たいな!!」その彼の熱い思いに応えるべく、ラストでプレイされた「Cold Slave」ではサークルピットが出現、彼らの心から望むライブの姿がそこに現れた。会場を熱い空気で覆ったこのステージもいよいよ終演。「ありがとう!」Majuの一言で、ステージは幕を閉じた。
 
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◆ライブ情報
2013年04月20日(土) 【神奈川】川崎 セルビアンナイト
2013年05月25日(土) 【愛 知】名古屋3 STAR IMAIKE
2013年06月01日(土) 【福 岡】Early Believers
◆公式サイト
アーティストオフィシャルサイト
http://cinqelement.jp/
Spinningオフィシャルサイト
http://www.spinninginc.jp/m_lineup/cinq_element.html
 
◆セットリスト
M01. Cold Slave
M02. Open Your Eyes and Feel…
M03. Brodia
M04. apology
M05. Kareido Scope
M06. (Solo Time)
M07. Escape
M08. DAY BREAK
M09. FREEDOM
M10. Judgement Day
M11. Soul of the Inferno
M12. Destiny
Encore
E01.Cold Slave

 
ARCH ENEMYANGELAを強くリスペクトするというMaju。それだけに彼女は強力なサウンドに埋もれないセクシーでインパクトのあるパフォーマンスを信条としている。それはこの日のステージでも十二分に発揮された。また、シリアスで重々しいサウンドに反し、ステージが楽しくてしょうがないといった表情を見せたSINKOH。そしてどっしりと彼らのサウンドを支えたSAMEKengo。それぞれの様相は様々だが、それぞれの個性が見事に合致したサウンドを展開した。まさにバンド名のとおりCINQ ELEMENT(五つの要素)がうまく溶け合い、強力な一つの世界を作り上げた瞬間だ。その世界にはまったものはみな彼らのサウンドに夢中になるに違いない。
 
この3月にはオランダのヘヴィ・メタルグループDELAINとのカップリングツアーを見事に成功させたCINQ ELEMENT。今後はさらに大きなステージとともに、アルバムリリースに対しても大きな期待がかかる。鹿児島というまだ音楽的には発展途上の場所からの登場であるが、まったくそれを感じさせないステージは、ヘヴィ・メタルに大きな旋風すら巻き起こしそうな予感さえも見える。今後の彼らの動向にも引き続き注目していきたい。
 

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CINQ ELEMENT New Single 「Brodia」
発売中
BSRS-011/1,500円(税込)
全4曲収録+ミュージック・ビデオ「Brodia」と 特典映像が収録されたDVD付
歌詞付
収録曲:
M01. Brodia
M02. Open Your Eyes and Feel…
M03. Judgement Day
M04. Brodia(Instrumental)


 

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BEEAST太鼓判シリーズ第17弾アーティスト『CINQ ELEMENT』
http://www.beeast69.com/feature/48045