演奏

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TEXT:鈴木亮介 PHOTO:三橋コータ

Photo数多あるバンドの中でも唯一無二の世界観を持ち、四半世紀にわたって作品を発表し続けている筋肉少女帯人間椅子。昨年5月の「地獄の決定打!筋肉少女帯VS人間椅子VS人間筋肉少女椅子帯」も大きな話題となったが、両バンドが同世代ということもあってか、このところ大槻ケンヂ(1966年2月生まれ)と和嶋慎治(1965年12月生まれ)の親交が深まっている様子。
 
その2人が結成したアコースティックユニットが、白髪鬼(はくはつき)だ。両バンドのファンにはこれまたおなじみ、江戸川乱歩の作品名であり、大槻ケンヂ和嶋慎治の「共通のアイテム」である白髪をそのままユニット名に採用した、という実に2人らしい経緯である。かねてより両バンドのファンに待ち望まれていた白髪鬼が2013年、ついに始動!
 
そんな白髪鬼の初公演となる単独ライブのレポートを、本誌BEEAST独占でお届けしよう。

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「どうもこんばんは、白髪その1です」登場したのは大槻ケンヂ。飄々とした語り口とは裏腹に、ジャラーンとマイナーコードを爪弾くと、音出し3秒で自らの世界観に引き込む。アニメ「さよなら絶望先生」のOP「人として軸がぶれている」から今宵のショウはスタート。のほほんとした歌声、ビブラートを効かせた味わい深い歌声、さらに裏声も交えつつ…七変化するボーカルに、早くもオーケンワールドが展開されていく。
 
「風がすごく”白髪”にあたって目に入る!」と笑いを誘いつつ、2曲目は小学校の同級生・池の上陽水の「よろこびとカラスミ」、3曲目は特撮の「テレパシー」と、憂いを含んだ叙情詩が続く。筋肉少女帯の時とはまた違った、時折笑顔のこぼれるリラックスした雰囲気。本人も、弾き語りというスタイルを心から楽しんでいるようだ。そして「白髪2号をご紹介いたしましょう、人間椅子ワジー!!」
 
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颯爽と登場した和嶋慎治に、客席からは喜びだけでなく驚きも混じった歓声が!それもそのはず、普段はなかなか見ることのできないスーツ姿での登場だったためだ。「ものすごいスパニッシュギターの名手みたい!」と大槻ケンヂもその見慣れぬ姿にびっくり。「大槻くんがね、白髪鬼の衣装はスーツを着る!ということで僕も頑張って着てみました」と語る和嶋慎治、その鮮やかな水色スーツはナカジマノブからの借り物なのだとか。
 
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穏やかに弦を弾き始める。まずは人間椅子の「孤立無援の思想」だ。静かに小雨の降りしきる中、とぼとぼと一人歩いていく光景が浮かぶ。図らずも、これは「人として軸がぶれている」へのアンサーソングなのではないか。周囲と比べた「報われなさ」を心に抱きつつ、それでも信じる道を行くんだという一人のミュージシャンの決意。この2人の弾き語りユニットだからこそ、そんな”意図”を勝手に感じてしまう。そこにあるのは底抜けの明るさではないが、暗黒一色というわけでもない、トンネルの向こうに見える小さな眩しい光。「ひとりきりの覚悟なら~」の部分で音階がだんだん上がっていく辺りが、まさにそんな印象だ。
 
「去年から弾き語りでソロを始めまして、自分への挑戦というか、1対お客さんというのがとても新鮮で面白くて…」と語る和嶋慎治。続いては「39LIVE」の際にお客さんに配り好評だった、詩の朗読。高橋新吉の「断言はダダイスト」を披露。さらに、大槻ケンヂのリクエストを受けて「胡蝶蘭」を熱唱!
 
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ここからは大槻ケンヂも合流し、待ちに待った2人での演奏。「ギターの大先輩の前で恥ずかしい…」「先輩って言ったらデビューは1年先輩じゃないですか」「ギターは30年ぐらい先輩ですよ」と妙なリスペクトし合いから、なぜか互いの白髪評に。「ワジーはいつから白髪だったの?」「若白髪ではありましたよ。ハタチぐらいから…でもスタートダッシュ(=進行)は大槻くんの方が早かったよね!」「20代の頃から結構白髪で、髪が長い頃はわざと白いスプレーで染めてたの!」…そして、両者とも白髪を気に入っているということで、トークはますます加速!床屋でのエピソードから、さらには「今度美容院で一緒に染めましょうか…紫どうかな?オーラの、マーブルの色だよね!」…白髪トークは尽きない!
 
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約12分におよぶ白熱MCがひと段落し、演奏スタート!まずは大槻ケンヂのソロ名義曲を「あのさぁ」、「オンリー・ユー」(原曲はばちかぶり)と続けて2曲。ほのぼのした大槻ケンヂのリードボーカルにダンディな和嶋慎治の低音が絡んでいく。
 
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続いて井上陽水の「氷の世界」を情熱的にカバー。そして進研ゼミのCMソングにもなった筋肉少女帯の「蜘蛛の糸」で、思春期の壊れそうな気持ちを歌う。大槻ケンヂいわく「クラスヒエラルキーの中でルサンチマンを感じながら生きている、ヤンキーでない層の気持ちを歌った」というこの曲、前半の「人として軸がぶれている」「孤立無援の思想」にも通じるテーマであり、この2人が歌うからこそ心に届くテーマだ。「尾崎豊的な、盗んだバイクで走り回ったり校舎の窓ガラスを壊して回ったり…そういうことって、気の弱い人はできないじゃない」と大槻ケンヂが歌詞で描いた層の気持ちを代弁すると、「楽器弾く人って割とそういう感じでしょ。ヤンキーにもなれず、行動も出来ず、表現でしか何かをやれない…」と和嶋慎治も同調する。
 
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続いても筋肉少女帯の定番曲「日本印度化計画」!アコースティックver.になっても楽曲の「インド感」は健在。観客と「日本を印度に、しーてしまえ!」の大合唱!さらに「踊るダメ人間」では観客のヒートアップする手拍子につられて、和嶋慎治も「ダメダメ~」と楽しそうに合いの手を入れる!
 
「いい感じで行けてますね!」「1回きりのライブにはしたくないですね!」と興奮気味に話す2人。後半は哀愁漂う物語がある、特撮の「揉み鞠」。そして人間椅子の「人間失格」をオーケン&ワジーのツインボーカルで熱唱!続いて「フランシーヌの場合」。世界平和を切望しパリの広場で焼身自殺した主人公を描いたという、新谷のり子の1969年発売のデビューソングだ。その勢いのまま「日本のアングラソングのマスターピース」、ジャックスの1968年リリース「マリアンヌ」で、何とも独特の空気感漂うまま、ステージが終了。
 
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熱烈なアンコールを受けて再登場の2人。「『死んでゆく牛はモー』という曲をノイズ風味でやってるんですよ。それはひどいものなんですよ。…それを絡んでもらって、ワジーにヤケドをしてもらおうと…ワジーの黒歴史として…」そんな大槻ケンヂからの提案で、なんと2人でノイズセッション!「灰野敬二Eric Claptonが合体したような…」という斬新な試み、「積み上げてきた今日のいい雰囲気が、今の一曲で全部水の泡に…次回これ最初にやりませんか?」(大槻ケンヂ)、「これは一つの修練の場だね、お客さんにとっても我々にとっても、やった方がいいよ」(和嶋慎治)とのこと。次回ライブでは果たしてどうなるのか…
 
白髪鬼はどんどんメンバーを増やしていきましょうよ。五木寛之とか…」と大槻ケンヂが話したところで、名残惜しくも最後の曲。筋肉少女帯の「香菜、頭をよくしてあげよう」。オーケンの優しさを感じさせるこの曲で、和やかに、穏やかに、ライブは幕を閉じる。

「白髪になってよかったな、歳は取るものです」…MCでこう語った和嶋慎治。青春時代からずっと自分の信じた道を進み続けること、それはたやすいことではないけど、進み続けていればきっと、円熟した味を出すことができる。その名の由来となった小説『白髪鬼』は恐怖と悲しみのために一夜にして白髪になった主人公の復讐劇を描いているが、大槻ケンヂ和嶋慎治の白髪に関して言うならば、それは、在り処を定めた石を取り囲む苔のようなものだろう。
 
「岩にむす 苔のみどりの 深き色を いく千世までと 誰か染めけむ」 (源実朝)
 

◆セットリスト
~大槻ケンヂ(白髪その1)ソロコーナー~
M01. 人として軸がぶれている
M02. よろこびとカラスミ
M03. テレパシー
~和嶋慎治(白髪その2)ソロコーナー~
M04. 孤立無援の思想
M05. 断言はダダイスト
M06. 胡蝶蘭
~白髪鬼~
M07. あのさぁ
M08. オンリー・ユー
M09. 氷の世界
M10. 蜘蛛の糸
M11. 日本印度化計画
M12. 踊るダメ人間
M13. 揉み鞠
M14. 人間失格
M15. フランシーヌの場合
M16. マリアンヌ
-encore-
M17. 死んでゆく牛はモー
M18. 香菜、頭をよくしてあげよう

◆筋肉少女帯 大情報局!
http://eplus.jp/king-show/
◆人間椅子 公式サイト
http://ningen-isu.com/
 
◆人間椅子インフォメーション
『ARABAKI ROCK FEST.13』(イベント)
・2013年04月27日(土)、28日(日)
【宮城】みちのく公園きた地区エコキャンプみちのく
人間椅子の出演は4/27です
 
『Ozzfest Japan 2013』(イベント)
・2013年05月11日(土)、12日(日)
【千葉】幕張メッセ 国際展ホール9~11
※人間椅子の出演は5/12です
 
『不死鳥~十全』(水戸華之介デビュー25周年記念)
・2013年05月25日(土)【渋谷】O-WEST
演:水戸華之介(vo)/澄田健(g)/内田雄一郎(b)/
田中元尚(ds)/藤原マヒト(Key)
●ゲスト:大槻ケンヂ(筋肉少女帯/特撮)/杉本恭一(LA-PPISCH)/
MAGUMI(LA-PPISCH)/和嶋慎治(人間椅子) 

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【レポート】地獄の決定打!筋肉少女帯VS人間椅子VS人間筋肉少女椅子帯
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【連載】39LIVE アンコール ~和嶋慎治~
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【レポート】すかんち結成30周年 ゲスト:筋肉少女帯
http://www.beeast69.com/report/49616