演奏

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TEXT:桂伸也


「女だらけのビジュアル・ロック・バンド」というキャッチフレーズで、メジャー・シーンに華々しく登場したガールズ・ロック・グループ、exist†trace。ガールズ未開のビジュアル・ロック・シーンの中でも唯一無二の存在として君臨、メジャーデビュー前から海外でも高い評価を得ており、ガールズというカテゴライズの部分でも抜きん出たポテンシャルを持つ実力派グループだ。今年5月に待望のファースト・フル・アルバム「VIRGIN]をリリースし、自らの進む道にまた新しい可能性を見出した彼女らは、さらなるイマジネーションの広がりを求めるべく東名阪のワンマンツアーを敢行、この日東京でのファイナルを迎えた。そこに彼女らが目指す新たな道は見えたのか?今回はそのライブの模様を追ってみた。冬も間近、小雨降る屋外では心なしか人々の多くが背筋を少し丸めて通りを急ぐ寒空が広がっていたが、会場内ではオープン前から異様な程の熱気に包まれていた。
 
◆メンバーリスト:
ジョウ(Vocal)、miko(Guitar &Vocal)、乙魅(Guitar)、猶人(Bass)、Mally(Drums)

会場が暗転しSEが鳴り響くと、フロアからは狂気にも似た叫びがあちこちから上がった。いよいよ彼女らexist†traceの登場だ。最後に現れたジョウが、深々とフロアにお辞儀をすると、一度メンバーはフロアと反対の方向に向かい立つ。バックライトの中、彼女らの影がステージに浮かび上がると、オープニング・ナンバーの「WONDERLAND」のイントロが流れる。パイプオルガンの音色によるバロック風の旋律から思い浮かべられる情景とオーバーラップし、幻想的な雰囲気を生み出す。徐々に大きくなる音とともに高まる興奮、その展開に従って会場が大きく波打つ。そしてジョウが第一声を上げると、その興奮は最高潮に達した。妖しくおぞましくも美しい響きが、その歌詞に詠われている「不思議の国のアリス」の世界へフロアの観衆一人一人をいざなう。そこから「Daybreak~13月の色彩~」へ。「もっと声をくれ!Tokyo!」ジョウの渇望に応えるように、激しいリズムに狂ったように反応し、声を嗄らしながら体を揺らす観衆たち。
 
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「Tokyo!exist†trace ONE MAN TOUR -Be My Virgin- Finalへようこそ!気合いは入っているか!?」「Yeah!」ジョウの熱のこもった呼び掛けに、力一杯答える観衆。今年の集大成の一つともいうべきこの日を迎えた彼女らにとって、「今日は特別な日にしたい」という思いがあったに違いない。その感情をぶつけるように激しいリズムを叩き続けるMally。彼女はメンバーの中でも終始、命を燃やし続けるような力強い表情を眼光にたたえ、野獣のごとく激しいプレイを会場中に浴びせていた。
 
ステージのメンバーに、そして観衆の一人一人に今の思いを問いただすようにコンタクトをしながら、力一杯の歌を発するジョウの横で、心をかき乱すような荒々しいギターリフをクールにかき鳴らす乙魅。彼女が流麗なソロをとるたびに、最前列の観衆は彼女を求めるようにステージに向かって腕を伸ばす。観衆の心を奪ってしまうようなキラー・ナンバーが続いたが、7曲目の「契約」をプレイし終えるとメンバーは皆一度クール・ダウンするかのごとくステージを降りた。
 
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そしてバンドのメンバーは、その顔を舞踏会のごとく仮面で被い戻ってきた。ジョウは厚いコートにくるまれてステージへ。exist†traceの新しい個性を表す一つのポイントともいえる「リトル・メアリーと美しき憎しみのドナウ」が始まる。メルヘンチックで叙情的なワルツのしらべから徐々に盛り上がっていく。ここでは乙魅mikoの舞踏シーンや、ジョウの芝居的なパフォーマンスなど、従来のロック・ステージでは見られなかった新たな試みが披露され、強烈な個性を放っている。先程まで暴れるようにステージの動きに反応していた観衆も、この有様にはただ引き込まれてステージをじっと見つめるほかないといった感じだ。
 
この章はまるでジョウの一人舞台、単なるノリのプレイとは違うショー仕立てのパートで、観衆は不思議な浮遊感におちいる。そして再びジョウだけがはけると、バンドはセッション・タイムに移る。アニメ『ルパン三世』のテーマをベースに、4人がセッションを繰り広げる。乙魅の奏でるメロディがほかの3人をグイグイと引っ張り、それに負けずにmikoがメロディを絡ませる。抜群のグルーヴで観衆が体をほぐす中、再び正装に戻ったジョウが登場し、遊び心を感じさせる「GINGER」へ。まるで喜劇のようなジョウmikoのやりとり。ロック、ハードロック、ヴィジュアル系などといったカテゴリーをいとも簡単に打ち破った彼女らが、新たに作り上げた一幕がまたそこに展開された。
 
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いよいよステージもラストスパートに差し掛かった。「Yeah!Tokyo!楽しんでいるか!?」クライマックスへの覚悟を問うように、ジョウが観衆に語りかけると、今までの奮闘による疲れなどみじんも感じさせないほどの勢いで、「Yeah!」という大きな歓声がフロアから上がった。その覚悟を確かめるように新曲「シャボンの手紙」へ。今までのexist†traceにはなかった、ポップでさわやかな8ビート・ナンバー。フルアルバムを発表したことで得た大きな自信とともに、新たな可能性を確信した彼女らの、また別の面を感じさせる展開だ。
 
そんな彼女らの思いを示すと、彼女らのペースでライブは進んでいく。Mally猶人が作り出す、腹を突き破るようなビートの上で、miko乙魅のワイルドながら様式的な雰囲気を盛り込んだギターが会場を包み、観衆をさらなる狂気の世界へ誘う。「Tokyo!もっと振り乱せ!」「Tokyo!拳をあげろ!」「まだまだついてこれるかい!?」「もっと声出るよな!?」」ジョウの呼びかけが、観衆に折れない気持ちを植え付けていく。
 
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そして、クライマックスへの序章として、「シグナル」へ。そこまでクールにギターを響かせていた乙魅の目がそのとき、鋭く輝いたように見えた。その熱い思いをさらに増幅させるように、ジョウMallyが狂ったようにホイッスルを吹き続ける。そして、サビの「声を枯らして叫べ」という詞のままに、最高の盛り上がりを見せる会場。「Hey! Hey!」ブレイクで会場をあおりなが、なおも叫び続けるジョウ。命を燃やし尽くすという意味が、まさしくそこに画として現れた。
 
この日のステージに感謝を込めた言葉とともに、いよいよステージはエンディングを迎える。ラストは、バラード・ナンバー「SORA」。激しいビートに身を浸したそれまでの展開から一転、爽やかさと果てしなく広がる前向きな気持ち、そして優しさが会場を包んだ。そしてエンディング。ステージ中央のお立ち台に、静かにマイクを置き、深々とフロアに一礼をしたジョウ。感謝の思いとともに、メンバーはステージを後にした。
 
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会場から巻き起こった盛大なアンコールに呼びかけられ、再びステージに現れた5人。「Tokyo!ありがとう!ツアーの3日間は本当にあっという間で、楽しかったです。本当にありがとう!」そう礼を告げるジョウ。そしてこぼれ話などで、ツアーを振り返るステージとフロア。そんな和やかな雰囲気が現れるのは、それほどステージとフロアの距離が、ライブを通して近づいた証しだろう。
 
アンコール1曲目は「SHINE」へ。これもまた新たな一面を見せる、ポップで元気なナンバー。まだ誰も聴いたことのないそのナンバーでも、サビではそのリズムに合わせてフロアから腕が上がる。乙魅mikoの、単なるハーモニーにならない絡み合うようなギター・ソロも興味深い。そしてまた会場が揺れるような勢いを見せた「オルレアンの少女」をはさみ、いよいよ終焉へ。6/8のリズムにのせ、壮大さすら見せるmikoのギターによるアルペジオが鳴り響く「Cradle」へ。次への一歩に対して力強い一歩を踏み出した様子が、そのハーモニーの中から感じられた一幕。プレイを終えると、目一杯の感謝の気持ちを観衆に表しながら、彼女らはステージを降りた。
 
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◆ライブ情報:
Women’s Power Special 2012
2012年12月18日(火)渋谷 O-WEST
w/DESTROSE, CREA, Mary’s Blood, FullMoon / Guest:Cyntia
Wish You Were Here〜X’mas with the DIVA 2012
2012年12月24日(月・祝)目黒鹿鳴館
w/ナナイチミラー, DESTROSE, Rabbit of Labyrinth, 九尾
ONE MAN SHOW『19’z Premium Party. 04
2013年01月09日(水)目黒鹿鳴館
MOVING SIGHT 1st STAGE
2013年02月09日(土)名古屋Heart Land STUDIO
w/DOG-MAG, GoDeath, Mary’s Blood, CH’ES, Crying Machine,
THE HEGDEHOG PANIC
ONE MAN SHOW 東名阪サーキット
2013年03月02日(土)渋谷TAKE OFF 7
2013年03月09日(土)大阪FANJ
2013年03月10日(日)名古屋ell.SIZE
2013年 アメリカ公演決定!!『A-Kon 2013』
2013年05月31日(金)~06月02日(日)
VENUE:Dallas, Texas / Hillton Anatole Hotel
〈A-Kon Web site〉http://www.a-kon.com/
◆ 公式サイト: 
オフィシャルサイト
http://www.exist-trace.com/
 
◆セットリスト: 
M01. WONDERLAND
M02. Daybreak~13月の色彩~
M03. TRUE
M04. 本能
M05. JUDEA
M06. 二つの声
M07. 契約
M08. リトル・メアリーと美しき憎しみのドナウ
M09. あなた
M10. KISS IN THE DARK
 
-Band Session- 
M11. GINGER
M12. シャボンの手紙(新曲)
M13. RAZE(新曲)
M14. VANGUARD
M15. liquid
M16. HONEY
M17. シグナル
M18. SORA
 
encore 
E01. SHINE(新曲)
E02. オルレアンの少女
E03. Cradle

ステージが終わると、筆者はライブの不思議な余韻と会場の熱気で少し頭がボーっとしたような感覚におちいったが、それでも帰路につく頃には、少し丸まっていた背筋がピンと伸びたような気がした。exist†traceの未来に向けての前向きな気持ち、意気込みが見るものの気持ちに植えつけられる、そんな雰囲気が展開されたショーを見たからかもしれない。彼女らの曲「TRUE」で第一声に上がる詞「限界の先へ」という言葉は、その意をそのまま表したもの、そしてまさしくそれを聴くものに対してのエール。希望こそは、「限界の先」にあるのだ。
 
また様々な知られざる一面を見せつけ、観衆を魅了したexist†trace。次に彼女らがたどり着く「限界の先」で、見せてくれるものはなにか?きっとまた「えっ?そんなことを!?」と、我々を驚かせてくれるものだと、疑いの余地はないはずだ。またその時が来るのが、今からワクワクするほど待ち遠しい。
 

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『VIRGIN』
【初回限定盤】
CD+DVD
TKCA-73756/3,600円(税込)
発売中

 

Photo
『VIRGIN』
【通常盤】
CD
TKCA-73760/2,800円(税込)
発売中

 


こちらも是非ご覧ください。
WOMEN’S POWER 2011 2011.12.12@渋谷O-WEST
http://www.beeast69.com/feature/2727