演奏

TEXT:桜坂秋太郎 PHOTO:野内幸雄


ギャップ萌え。何度か弊誌ライヴレポートに登場しているそのバンド名を、覚えている読者もいることだろう。BEEASTのコラムニストとしても活躍中の永川トシオが率いるGERARDのメンバーによる、ハードロック・プログレのカヴァーバンドだ。GERARDをゲストに、そのギャップ萌えが中心になるLIVEがあるということで、沼袋SANCTUARYを取材してみよう。

 


 


   


   


メンバーは言わずもがな、永川トシオ(Keyboards)・長谷川淳(Bass)・藤本健一(Drums)・佐々井康雄(Vocal)のハイテクニックなミュージシャン。今夜はオープニングアクトとしてのギャップ萌えではなく、メインアクトとしてのギャップ萌えだ。いったいどのようなステージを繰り広げるのだろう。演奏力の高さは折り紙つきだが、セットリストを含め、興味は尽きない。

特別なギミック無く、いたって普通にメンバーが登場し、まずはRAINBOWの「Spotlight Kid」でスタート。全盛期のRoger Gloverを彷彿させる全身でリズムを取る長谷川淳のベースプレイが素敵だ。たくみに会場をあおりながら、魔術師が術を唱えるかのごとく、華麗にキーボードをさばく永川トシオ。ハイトーンな唄を歌っていたかと思えば、リードギターを決めまくる佐々井康雄。ずば抜けたリズムのシャワーを叩きだす藤本健一。何を演奏させても、すごい!の一言しかない。

 


 


   


   


ギャップ萌えは、この夏に何とCDをリリースしている。「Spotlight Kid」「Heat Of The Moment」「In The Dead Of Night」「July Morning」の4曲入りだ。今夜も当然それらのナンバーを楽しめることは間違いない。CDの並び順でくるかと思いきや、続くナンバーはRAINBOWの「I Surrender」。ここでもJoe Lynn Turnerの難しい歌を歌いながら、ギターを弾くという佐々井康雄の離れ業に感動。

永川トシオの音色が会場を包み込み、ASIAの「Heat Of The Moment」と「Don’t Cry」へ。オーディエンスも一緒に歌えるナンバーは会場を一つにする。特にMCを挟むこともなく、淡々と演奏をするギャップ萌え。続いてKen Hensley のオルガンプレイにやられた世代にはたまらない、URIAH HEEPの大作「July Morning」。そして「Look At Yourself」。キーボードとギターのユニゾンプレイが炸裂する!

 


 


   


   


永川トシオを一人残してメンバーが舞台袖へ。永川トシオのトークソロからのキーボードソロタイム。素晴らしいピアノサウンドに、体中が包み込まれる。続いてGERARDのメンバーに変身した長谷川淳のベースソロタイム。その場でサンプラーを使い、ベースオンベースなプレイを展開。ライトハンドから速弾きまで、ディストーションサウンドでキメまくる!

続くソロタイムは、同じくGERARDメンバーに変身した藤本健一。テクニックはもちろん一級品だが、ドラムの叩き方がすごくカッコイイ。特にシンバルの叩き方が特徴的で、絵になるドラマーだ。チャイコフスキーの演奏会用序曲「1812」に合わせて爆裂のドラムソロを魅せつける!

ソロタイム最後は、GERARDメンバーに変身した佐々井康雄。名バラード「Scarborough Fair」をしっとりと唄った後は、ギターを持ちエキサイティングなギターソロを披露。毎回思うが、ここまでギターが弾けるヴォーカリストはなかなかいない。佐々井康雄のヴォーカリストキャリアしか知らない人には、本当に驚きだと思う。そして今日は佐々井康雄のバースデー。バースデーソングからGERARDに変身したステージへ。

 


 


80年代のMTV世代にはたまらないJOURNEYの「Faithfully」から「Open Arms」へ。Steve Perryばりにハイトーンを伸ばす佐々井康雄。MCの後は職人プレイの極み、UKの「In The Dead Of Night」と「Alaska~Time To Kill」。まさにGERARDにしかできない、永川トシオにしかできない、そんなプレイを魅せつける。会場から大きな拍手が沸き起こる中、本編が終了。

アンコールはGERARDの『Power Of Infinity』アルバムからインストゥルメンタルなバーの「Caravan On The Moon」。まさにこれこそが真骨頂と言わんばかりの凄まじい演奏力。沼袋から東京中をプログレ色に染めるかのごとく、神業的な永川トシオの指先に輝くオーラが見える!日本最高峰のプログレここにアリ!

続いて佐々井康雄がステージに戻り、『Visionary Dream』アルバムのタイトルナンバー「Visionary Dream」へ。サビの “あなたは~幻~” の歌詞がたまらなく好きだ。短いGERARDのステージはこれにて終了。物足りなさが残るが、これが次のLIVEへと誘う新たな手法なのかもしれない。メンバーには悪いが、いつかGERARD耐久8時間とかの長いLIVEを観てみたいと妄想してしまう。

二度目のアンコールは、元のギャップ萌えに戻り。KANSASの伝承「Carry On Wayward Sun」。素敵なナンバーをラストに持ってくるあたりのセンスがさすが。Carry on my wayward son!のメロディが優しく終わると終演。いいLIVEだ。…GERARDを通じた今後の日本プログレ界に大きな期待をせずにはいられないが、そのメンバーがこのようなスタイルでロックスタンダードナンバーをプレイするのは実に素晴らしいことだと思う。ファンの中には、ギャップ萌えから洋楽を知る人もいるかもしれないが、それでいいのだ。なぜなら音楽の輪は、そうやって築いていくのだから。
 

◆GERARD 公式サイト
 http://sound.jp/gerard/
 
◆ギャップ萌えインフォメーション

 
◆セットリスト
 
ギャップ萌え
 
M01. Spotlight Kid
M02. I Surrender
M03. Heart Of The Moment
M04. Dont’Cry
M05. July Morning
M06. Look At Yourself
M07. Egawa Solo
M08. Hasegawa Solo
M09. Fujimoto Solo
M10. Sasai Solo
M11. Faithfully
M12. Open Arms
M13. In The Dead Of Night
M14. Alaska~Time To Kill
 
-encore-
M15. Caravan On The Moon
M16. Visionary Dream
 
-encore-
M17. Carry On Wayward Dun