演奏

TEXT & PHOTO :鈴木亮介

「これ、いい曲なのに、誰にも届かないのかよ… 届けよ、誰かに!頼むから!」
――――バンドという生き物が生まれる瞬間、終わる瞬間、そして、死してなお光を当たる瞬間…時空を超えて輝き続けるバンドという生き物をまざまざと描いた作品『フィッシュストーリー』。原作は売れっ子作家・伊坂幸太郎の人気小説だが、「生き物」の躍動感は、まさに舞台で表現してこそ映える作品だ。本誌ではもうおなじみ、東京ハートブレイカーズの連日満席を記録した人気舞台をレポート!

 


 


 


 


売れないバンドの最後に収録した「FISH STORY」が巡り巡ってハイジャックを食い止めるヒーローを生み、それによって生かされた人間が地球滅亡を食い止める…SFのような壮大な世界観と、誰の身にも起こり得るような日常的観点との交錯。グローバルとローカルのハイブリッドが映える本作は、1975年、1985年、2012年、2022年の4つの時代が絶妙に絡み合う。東京ハートブレイカーズでは2011年6月~7月に本作の公演を行い、そこから生まれたバンドで同年10月には南青山RED SHOESにてライブも敢行した。そして、1年の時を経て東中野テアトルBONBONにて再び公演が決定した。

 


 


 


キャストは1975年の「売れないパンクバンド」メンバー役として出演する首藤健祐(Vocal)、平野勲人(Drums)、石川よしひろ(Guitar)、西山宏幸(Bass/ブルドッキングヘッドロック)に加え、みのすけ(ナイロン100℃)、哲人島津健太郎林修司(ルドビコ★)、仲原裕之(Studio Life)、久保貫太郎(クロムモリブデン)、細野今日子(競泳水着)、永島敬三(柿喰う客)、岡田達也(キャラメルボックス)といった豪華メンバーがそろっている。さらに、19日から21日の3日間は池田聡がゲスト出演した。

 


 


 


「僕の孤独が魚だとしたら、そのあまりの巨大さと獰猛さに、鯨でさえ逃げ出すに違いない」
―――――冒頭、バンドの演奏から突如始まる幕明けには驚いた。4人の作る太いサウンドが一気に舞台の世界観を作る。本作のパンフレットに収録されたインタビューの中で、東京ハートブレイカーズの代表である首藤健祐は「ちゃんとした演劇はほかにやる人がいるし、俺は俺のできることをしようと思って。もっと刺激的な、高校生の不良が見ても魅力的なものにしたい」と語っている。確かに、高校生が文化祭の演劇で真似したくなるようなかっこよさ、青春の甘酸っぱさが随所にちりばめられている。

 


 


 


演劇ファンをロックの世界に引き込み、ロックファンを演劇の世界に引き込むパワーを持った舞台であると強く感じる。バンドの生音が入ることで、「つくりもの」と「リアリティ」の壁を取っ払い、作品に入り込むことができるのだ。「東京ハートブレイカーズがやってきたことすべてが結実した」というこの作品。行儀良く座って観るのも良いが、立ち上がって拳を挙げたくなる瞬間が何度も訪れる、爽快感たっぷりの舞台であった。

 


 


 


本作から飛び出した劇中バンド、「好きさ★」が、11月10日に六本木BeeHiveにて1年ぶり2回目のライブを行うことも決まった。音楽ファンはもちろん、演劇ファンも、今度はライブハウスで、舞台の興奮そのままに熱いライブを楽しんでほしい。
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東京ハートブレイカーズ 次回公演は…『グレイテストヒッツ+』
過去に上演した短編の中からピックアップしたキラー・チューン2作品に、
新作を加えたベスト・ヒッツ・オムニバス。無人島に行く前に観るのはこれだ!!
 
【日時】2012年9月12日(水)~14日(金)
(9/12(水)19:30 9/13(木)15:00 / 19:30 9/14(金)19:30)
*開場→開演60分前 当日券→開演90分前
 
【会場】吉祥寺スターパインズカフェ
http://www.mandala.gr.jp/spc.html


     
◆好きさ★ 2nd LIVE!
 
【日付】2012年11月10日(土)
【時間】18:00 open 19:00 start
【会場】六本木BeeHive
http://live-beehive.com/index.php
 
【出演】
首藤健祐(Vocal)
石川よしひろ(Guitar & Vocal)
ジャック・伝ヨール(Bass)
平野勲人(Drums)
 
【チケット】
9/29(土)AM10:00~ 発売開始
東京ハートブレイカーズチケットボックス
◆東京ハートブレイカーズ
公式サイト

http://www.tokyoheartbreakers.com/

◆フィッシュストーリー
脚 本
瀬戸山美咲
 
演出
登米裕一
 
出 演
西川浩幸
林修司
みのすけ
仲原裕之
久保貫太郎
細野今日子
哲人
永島敬三
島津健太郎
 
岡田達也
(Special Appearance)
 
西山宏幸
平野勲人
石川よしひろ
首藤健祐

 
池田聡(19~21日のみ出演)

 
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