演奏

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

軽音の夏、始まる―――――本誌BEEASTでは今夏、首都圏を中心に高校生の各都県高等学校軽音楽連盟が公式に開催する軽音楽コンテストに注目!各都県の情報を随時ニュース配信するとともに、決勝大会、そして8月21日(火)に開催される関東大会の模様をリポートする。本記事では神奈川県大会を取り上げたい。

「高等学校軽音楽コンテスト神奈川県大会」は今回で12回目。県内の各県立、市立、私立の高校から全231組がエントリー。7月23日から26日にかけて、1次予選となるライブ予選審査を県内および都内の4会場で実施。予選を勝ち抜いた28組により、8月4日に決勝大会が行われた。

決勝の舞台は、相模原市民会館。予定時刻よりも早い朝9時45分過ぎに開場。既に多数の男女高校生たちが一斉に会場入りする。神奈川県は全国でも有数の軽音楽部がさかんな県で、部活の規模も非常に大きい。各校の部員数は全学年計100人を超える所も少なくない。吹奏楽部のように顧問を中心にきびきびとした集団行動をとる部、先輩後輩の上下関係がしっかりとしている部も多く、この辺りは「軽音は不良の溜まり場。顧問は名ばかり」という一昔前の常識とは一線を画している。

 


 


さて、午前10時半になり、場内にチャイムが流れる。いよいよ決勝大会の始まりだ!まずは昨年グランプリを受賞した県立瀬谷西高校軽音楽部の桃色ドロシーのメンバー4人が登壇し、トロフィーを返還。「客席の皆さんの心に響くような演奏を期待しています」「悔いのないように頑張ってください」と後輩たちにエールを贈った。

今回、審査にあたるのは宮城県立宮城野高校軽音楽部顧問の前田英二審査委員長を筆頭に、各専門学校の講師など計6名。さらに、軽音楽部の後輩部員や保護者など大勢の観客が見守る中、緊張の面持ちでスタンバイする高校生たち。今回の決勝で入賞した上位7校が、神奈川県代表として8月21日開催の関東大会へ進出する。関東大会への切符を手にするのは、どのバンドか?

1組目は足柄高等学校軽音楽部のSelfishness、爽やかロックで決める!法政大学第二高等学校音楽部のCarnageは轟音メタルナンバーで縦横にステージを駆け回り、頭を振る!足柄高等学校軽音楽部の子羊レディカライズはメンバー一様に「こんなに大きいステージは初めてで楽しい!」と笑顔炸裂!柏木学園高等学校軽音楽部のタピオカは軽やかなキーボードが心地良い!横浜英和女学院高等学校フォークソング部のPURAMONはは重低音を響かせクールな演奏!藤沢総合高等学校軽音楽部のChirolは個々のパートの完成度の高さとメリハリのある演奏で、終演後に会場をどよめかせる!

 


 


 


7組目、足柄高等学校軽音楽部のPOP娘ON!(ポップコーン)はガールズ6人のポップでロックな、心がポカポカ温まるステージ!厚木高等学校軽音楽部のまとりょーしかは男性ボーカルのハモりが心地良いスローバラード!川崎北高等学校軽音楽部のfoolin(ふうりん)は、はじける笑顔で元気いっぱい駆け回る!相模女子大学高等部軽音楽部のTOYBOX!!は、高身長のガールズ5名による軽やかなロックサウンドに、体を揺らして応える観客続出!厚木高等学校軽音楽部の49kcalは、男女揃ったサビの力強い熱唱が印象的。二宮高等学校軽音楽部の漂流少女は、冒険のテーマのような明るいサビとしっとり聴かせるパートとが折り混ざった、奥深いオリジナルナンバーを披露!ここまで、12組が午前中にそれぞれの個性的なステージを展開!

 


 


 


お昼休憩を挟んで午後の部スタート!13組目となる厚木高等学校軽音楽部のZEAHはハードな音と染み入るボーカルで、一気に観客の目を覚ます!横浜英和女学院高等学校フォークソング部のへっこんだ「ぺ」は、スケール感の大きさを感じさせるボーカルと激しいギタープレイでしっかりとその存在を刻む!鵠沼高等学校軽音楽部の高木諒平は今回唯一のソロシンガー!切ないナンバー「オキザリス」という曲名は「私を忘れないで」という花言葉に持つ植物名が由来だという。厚木高等学校軽音楽部のNo.15(のいちご)は男女のポップなボーカルとシンプルに刻むリズム隊にいざなわれて自然と体が乗る!横浜英和女学院高等学校フォークソング部のポペこはぶりっこセリフからデスボイスまで七色変化(へんげ)のボーカルで観客を圧倒!

 


 


 


徐々に残りのバンド数が減っていく。19組目、藤沢総合高等学校軽音楽部のLimelightは可愛らしく爽やかな衣装とクールな重低音が際立つ楽曲とのギャップが印象的!藤沢総合高等学校軽音楽部のQuiet!!!!!は漆黒のフォーマルな衣装で統一。ハードな音とアクティブなパフォーマンスで魅せる!相模女子大学高等部軽音楽部のPROCKEYは「歌詞を見て思い付いたフレーズを曲にしていった」というメンバー共作の楽曲を力強く歌い上げる!相模女子大学高等部軽音楽部のトライアングルは「ドリームバスに乗車してもらう」というコンセプトで弾き始めから終わりまでしっかり自分たちの世界観を作り、観客と一体化し盛り上がる!川崎高等学校軽音楽部のDe:TOURは、個々の音の粒がしっかり揃い、完成度の高さを見せつける!相模原総合高等学校軽音楽部のIdentity.は、衣装も楽曲もアダルトで妖艶な雰囲気!色っぽいボーカルに、這うようなベース音とこぼれるピアノ音がたまらない。

 


 


 


残すところあと4組!25組目、川崎高等学校軽音楽部のユニオンフーズは、シンプルながら心を打つロックサウンドを真っ直ぐに披露!川崎北高等学校軽音楽部のFunny Boneは、早すぎず遅すぎずのテンポに、女子メンバーによるサビのハーモニーが心地良い!相模女子大学高等部軽音楽部のあーむくろっく!は、「月灯りの旋律」という世界観に忠実に、大人っぽい衣装に山口百恵を思わせる歌声で魅せる!そして全28組のトリを飾る厚木高等学校軽音楽部のUnion Jackは、男女6人の幅広さを活かした太いサウンドに疾走感あふれる楽曲が見事に融合!最後まで観客を飽きさせない!

 


 


午前・午後合わせて6時間以上におよんだ全28組の熱戦は終了。いよいよ審査集計だ。この間、ステージでは「夏の顧問バンド」と称して各校の顧問の先生がステージに登場!Red Hot Chili Peppersの「Subway to Venus」と、Dream Theaterの「The Spirit Carries On」のカバーを披露!熱く激しくドラムを叩いているのは、神奈川県高等学校軽音楽連盟事務局長を務める、県立弥栄高校の橘秀樹先生だ!

 


 


 


そして午後5時、ついに審査結果が発表!エントリーナンバーと学校名、バンド名が発表されるたびに、湧きあがる歓声!今回の入賞バンドは以下の通り。
 


◆グランプリ
トライアングル
(相模女子大学高等部軽音楽部)
 
◆準グランプリ
Chirol
(藤沢総合高等学校軽音楽部)
高木 諒平
(鵠沼高等学校軽音楽部)
 
◆奨励賞
ZEAH
(厚木高等学校軽音楽部)
Funny Bone
(川崎北高等学校軽音楽部)
Limelight
(藤沢総合高等学校軽音楽部)
ほか1組
 


さすがは全国屈指の強豪校を数多く抱える神奈川県大会だ。入賞したバンドに限らず、今回登場した28組のバンドはいずれもしっかりと練り込まれたオリジナル曲で勝負しており、いずれも巷間のライブハウスで聴くアマチュアバンドの楽曲に負けず劣らずの味のある曲ばかりだ。審査員からは次のような講評が発表された。
 

◆前田英二審査委員長(宮城県立宮城野高校)
去年「自分でできないと思ったらやらないことも大事」という話をしましたが、今年の決勝進出バンドは全員その対策がされていて、すごく安定した演奏をしていて感激しました。今回感じたのは、イントロとエンディングをもう少し大事にしてほしいと思いました。いきなり歌から始まるバンドや、知らないうちに終わってしまったバンドが多かったので、そこをもう少し工夫してほしいです。歌詞の内容も(いきなりオチというように)桃太郎で例えたら最初からいきなり鬼を退治してしまうのではなく、まずは猿、犬、雉を連れていくというような、詩のふくらませ方を研究するとさらに面白い曲ができると思います。
 
◆安保亮審査員(日本工学院八王子専門学校)
さすがにレベルが高くて驚きました。元気があって楽しそうで素晴らしいな、と。演奏力が非常に磨かれていて、曲がよく煮詰められていて、曲を作り込んでいく時間を膨大に割いていて、それをこなすための練習もしっかりしているのだなと感じました。演奏力は手放しで賞賛したいのですが、その中でどのバンドにも概ね感じたのは、コピー曲がこなされていない、やっていないという感じを持ちました。コピー曲をやることで楽器の演奏方法や基本的なサウンドが分かるのですが、それよりも音楽そのものの作りであるとか、例えばグルーブの違いであるとかを、コピー曲をいっぱいやることで吸収してほしいと思います。
 
◆江蔵浩一審査員(専門学校横浜ミュージックスクール)
毎年決勝を見ていますが、色んなキャラクターを持ったグループが多いなと思いました。僕も安保先生と同様に気になったのは、皆バンドとして音はとてもいいのだけど、バンドとしてのルーツが見えないなと思いました。僕たちが中学生の頃はブルースをたくさん聴いて、3コードから入り、そこでペンタトニックスケール(=五音音階)を覚えていきました。最近は色んなグループが出ていて、J-POP、J-ROCKと色々ありますが、それに加えて”ご先祖様”を聴いてみるのも良いのではないかと思いました。
 
◆宮内佳樹審査員(国立音楽院)
曲の練習をすごくしていたと思います。テンポチェンジも、「目をつぶっていてもいつでも息が合う」くらいのところまでできていて、バンド感はすごく良かったと思います。どのバンドも今日に向けて、あるいは今後(関東大会)に向けて準備してきたことと思いますが、この先に進むことができた人も、あるいはそうじゃない人も、せっかくやってきたいいバンドを是非長く続けて、もっといい音楽をつくって、どんどん世間に出ていってください。
 
◆志熊研三審査員(横浜デジタルアーツ専門学校)
各先生方から色んなアドバイスがありましたので、僕からは一つだけ。音楽を楽しんでください。音楽は決められた人間のものじゃないので、下手でもうまくても、関係ないです。楽しんでやれればいいと思います。聴くのも、演奏するのも、楽しんでください。それだけ。それを考えて音楽をやり続けてくれると非常に嬉しいです。皆さん頑張ってください。
 
◆正木健一審査員(東京スクールオブミュージック専門学校)
全体的に高校生らしい、ストレートで爽やかな曲もあり、デスメタルが好きなバンドもあり、すごく個性がよく出ていたと思います。僕も高校生の時にドラムを始めて、もう25、26年くらいになりますが、プロで一生懸命やっています。暇があれば今でも練習をやっていて、本番もあり…ずっと続けてこれているのは「僕は音楽が好きだ」という思いが自分の中にあるからです。皆さんもこれから、音楽の道に進む方も、受験とか就職とか色々あると思いますが、その時その時、「これが好きだ」「これがやりたい」というものを一生懸命やってもらえたら嬉しいです。
 

 
終演後、ホールには喜びの声がこだましていたが、同時に悔しさをにじませる声も多く聞かれた。むしろそちらの方がボリュームとしては高かったかもしれない。確かに全28組のうち入賞できなかった組は21組で、入賞7組の3倍の数になる。それほどまでに、神奈川県大会の決勝はハイレベルな戦いであり、どのバンドもこの日に懸ける思いは強かったのだろう。この「悔しさ」を1,2年生はまた来年ぶつけてほしいし、先輩の悔しがる姿を見た後輩たちが、来夏を見据えて一生懸命いい音楽を作り、練習に打ち込んでくれることを期待してやまない。
 
 


 


 


 

◆神奈川県高等学校軽音楽連盟
 公式ホームページ

http://www.kanagawa-keion.jp/
※本記事ではメディア露出を校則で禁止している高校の情報は掲載しておりません。
 
◆高校軽音楽・関東大会は8月21日(火)に
日本工学院八王子専門学校にて開催!

 【時間】開場12:15/開演12:30
 【会場】日本工学院八王子専門学校片柳ホール
 http://www.neec.ac.jp/access/hac.html


 
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