演奏

大谷レイブンpresents これでいいのだ! 2009

TEXT:ハヤシコウキ PHOTO:万年平男

2009年8月12日、高円寺のライブハウス『ShowBoat』にてライブイベント『大谷レイブンpresents これでいいのだ! 2009』が開催されました。大谷令文(以下令文)と言えば、日本のメタル、ハードロック界を代表する重鎮ギタリスト。そんな彼の元に集ったミュージシャンの競演は、夏の暑さを吹き飛ばしてくれました。

この日1組目に登場したのは、AKI&RYO。荻窪を中心に活動する深澤アキ(Vocal:以下アキ)と仙台出身の斎藤亮(Guitar&Vocal:以下)の2人組ユニットです。 Lenny Kravitzのナンバー、「Stop Draggin’ Around」でライブがスタート。伸びやかなアキのボーカルと叙情的なのアコースティックギターが、絶妙なハーモニーを奏でていました。 続く2曲目はOzzy Osbourneの「Mama,I’m Coming Home」。エモーショナルなボーカルとコーラスが美しいメロディにマッチしていました。 カバー楽曲中心のセットリストの中で、3曲目に演奏されたのはオリジナル楽曲「Thouthern Comfort」。仙台から上京し、東京で活動するをイメージした楽曲だそうです。

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そして「TOP40ものを」と繰り出されたのが、Cheap Trickの「The Flame」。パワフルなアキの歌唱を余す事無く堪能することができるアレンジでした。 5曲目からはこの日のプレゼンターでもあるBlack Tiger令文が加わり、さらにパワーアップしたパフォーマンスに。令文がアコギの演奏とコーラスで2人をバックアップし、FREEの「Wishing Well」が披露されました。 さらには6、7曲目ではBlack Tiger高橋“ロジャー”和久がボンゴ、NIGHT BUZZ板倉ジュンがカホンで参戦しました。ステージ上にずらりとならんだ実力者たちの姿は壮観で、さながらオールスターの様相を呈していました。 5人となった彼等がまず演奏したのがTommy Bolinの「TEASER」。客席は手拍子で応え、ステージ上と客席の一体感は最高潮です。

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最後はThe Beatlesの「DRIVE MY CAR」で締め。参加メンバーそれぞれが即興性の高いソロパートをリレーする姿はなんとも楽しげ。これだけの実力者が揃っていますから、「なんとなく」繋げてもカッコいいのです。 シンプルなバンド構成ながら、様々なジャンルの楽曲を彼等の解釈で聴かせる、音楽性の広さを感じさせるライブでした。

次に登場したのが4人組ハードロックバンドNIGHT BUZZ。この日のプレゼンターである令文をして「若手ナンバーワン」と言わしめるバンドです。 まず登場したのが藤岡幹大(Guitar:以下藤岡)、森川肇(Bass:以下森川)、板倉ジュン(Drums:以下ジュン)。彼等は藤岡のソロ作『TRICK BOX』からのインストナンバー「Harmonix」を披露しました。歌うように奏でられる藤岡のギターに森川のベースが絡み付き、ジュンが確かなドラミングで下支えする三位一体のインストナンバーの演奏で、会場をNIGHT BUZZの色に染めて行きます。

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2曲目からボーカルの藤井重樹(Vocal:以下藤井)が合流し、藤井の参加する別のバンド、devceのアルバム『Red Hot』からのナンバー「その声を探しに」を披露。アクションを絡めながら力強くセクシーにシャウトする藤井の姿は、これぞロックバンドのフロントマン!と感じさせます。 その後は彼等の真骨頂と言えるハードなナンバー「リ・スタート」、親しみ易いメロディで聴かせる「がんじがらめ」へと続きます。この日のナンバーでも特にメッセージ性の高い楽曲「がんじがらめ」。この日披露された曲の中でも特に、エモーショナルなボーカルを味わう事ができる曲でした。 曲間のMCは藤井の冗談を飛ばせばすぐさま客席からレスポンスが返ってくる、和気あいあいとした雰囲気。藤井藤岡の漫才のような掛け合いもオーディエンスを湧かせていました。大迫力のパフォーマンスの合間に見せる親しみ易い素顔も、彼らがファンの支持を集める要因になっているのでしょう。 激しさと優しさが同居したようなバラードチューン「バランス」の後は、ラストナンバーへ。藤井の強烈なシャウトが映える「崩れゆく意識」でフィニッシュとなりました。
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最後にこの日のプレゼンターも務める令文(Vocal&Guitar)率いるBlack Tigerが登場。佐藤研ニ(Bass:以下佐藤)、高橋“ロジャー”和久(Drums:以下ロジャー)の強力な3人組です。 1曲目は令文のソロアルバム『RAVEN EYES II』より「Razor Boogie」。令文佐藤ロジャーという3人の凄腕ロック職人が贈る、名刺代わりのハードなインストナンバーです。観客は待っていましたとばかりに大歓声で応えていました。 2曲目の「SISTER SPIDER」は、セクシーな世界観が魅力的な曲です。次のJeff Beck「Blue Wind」のカバーでは、競い合うように奏でられる令文のギターと佐藤のベースが客席を湧かせます。

そしてロジャーがボーカルを務める「Call on me」。叙情的な歌詞で世界観を伝えるように、丁寧に歌い上げていました。 曲間のMCは終始笑いに包まれた雰囲気。佐藤ロジャーのMCに観客は笑顔で応えます。さっきまで激しいプレイを見せてくれたヒーローたちが、口を開けば親しみ易いお兄ちゃんに。こんなキャラクターも彼らの魅力の一つでしょう。 そしてMARINOのアルバム『MARINO★HYBRID!』に収録されている「犬も歩けば…」。飾らない令文の人間性を表したような名曲です。 さらにDeep
Purple
の「Speed King」をハードかつパンキッシュに演奏します。幾度となく聞き、そして演奏してきた曲なのでしょう。本当に楽しそうに演奏するメンバーの姿が印象的でした。 ラストナンバーは「犬も歩けば」と同じく「MARINO★HYBRID!」に収録されている「おやすみ」。「おやすみ、また逢いましょう」と観客に語りかけるように激しく、それでいてしっとりと歌い上げ、この日のライブは幕を閉じました。

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・・・と思いきや、観客のアンコールに応えて3人が再び登場。 アンコールではThe Beatlesの「COME TOGETHER」、John
Lennon
の「Jealous Guy」をハードにカバー。どちらもロックのスタンダードなナンバーですが、「Black
Tiger
が演るとこうなる!」と言うハードなアレンジを聴かせ、大歓声の中ライブは終了しました。 令文のソロ作やMARINO名義の作品、カバー曲が演奏されたこの日のライブでしたが、Black
Tiger
のオリジナル楽曲も作ってほしい!そんな希望を抱いた観客も多かった事でしょう。

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前述の通り、この日のイベントタイトルは「これでいいのだ! 2009」。2008年に亡くなった漫画家、赤塚不二夫氏の名言を拝借した理由を令文に尋ねると「特に意味はありません!」とのご回答。 力の入ったパフォーマンス、素晴らしいライブ、まさに「これでいいのだ!」