演奏

TEXT:まことZ

久しぶりの赤坂、電車を乗り過ごしながらも何とか到着。昼間暑かったので油断した格好をして来たら、意外と夕方は涼しくなってしまった。だがこの肌寒さも、ライブ時には「蝶」達が吹き飛ばしてくれることだろう。今回のレポート対象は、「嬢メタルブーム」の火付け役となった、ガールズ・メタル・バンドの雄、AldiousAldiousといえば、キャバ嬢風の衣装に身を包んでいるためここではあえて「蝶」と呼ばせていただいた。アゲハ嬢、夜の蝶、という訳だ。

デビューから急速にその活躍の場を広げ、自身の存在確立に挑み続けている彼女ら。この日は初の赤坂BLITZへの挑戦となった。入場を待つ観客達を見ると、ファン層は意外と年齢の高い男性が多かったようだ。1970年生まれの筆者は、 80年代にメタルブームの洗礼を受けているのだが、「蝶」達は近年その妖しい魅力で、そんな筆者を含めたメタル・ジャンキーである熱き中年オヤジ達の心を、掴んで放さない。そんな「蝶」達の誘惑に駆られ、今日も多くのファンがこの会場に集った。
 
◆Aldious is:
Rami(Vocal)、Yoshi(Guitar)、トキ(Guitar)、サワ(Bass)、Aruto(Drums)

入場してみると、ステージ後方には大量のアンプの壁がずらりと並ぶ。定番のMarshallの壁、そしてその他に、Hughes & Kettnerの壁とMarkbassの壁だ!なんとも現代的にして贅沢な機材群は、楽器マニアにはよだれが出そうな光景だ。ギタリスト視点の話で申し訳ないが、この日の YoshiのMarshallは JMD:1ではなく 1959の様だ。現代的な激歪みサウンドを操るYoshiにしては意外な選択の様に思えるが、オーバードライブのアタッチメントとの組み合わせで音を作り込むのだろうか、などと色々想像が膨らむ。

ステージ上には 4つのお立ち台、客席の真ん中には花道、そしてステージ上部には 2つの大きなシャンデリアが釣り下がっていた。シャンデリアは夜の蝶の世界を表現している様だ。2階席からフロアを見下ろすと、 1階席のファン達が開演を今か今かと待ちわび声を上げている。 BGMの音量が上がり、「蝶」の登場を予感させると、ファンの声は雄叫びへと変わった!!いよいよ登場だ。
 
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Aruto、トキ、サワ、Yoshi、Ramiの順に登場、会場内はまさに爆発寸前に。16ビートのイントロが始まる。 2ndアルバム「Determination」から「Mermaid」だ。会場の空気は熱を帯び、一気に膨れ上がった。続けざまに同じく「Determination」から「Disclose」。お立ち台を使ってのパフォーマンスで、開場を煽る「蝶」達。ここで短い MCの後、「Eternal Delusion」は花道を使ってのパフォーマンスだ。
 
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そしてここで落ち着いた感じであらためて MC。Ramiの敬語混じりのトークは、礼儀正しい普通の女の子の一面を覗かせた。それまで演奏されていたアグレッシブで過激な曲調とは打って変わって、聞いていて和む。続いて演奏されたのが、「Spirit Black」だ。キター!!この曲を待っていました!!ギターソロではトキのタッピングの後、Yoshiと 2人でハモリ、更にArutoのツーバスプレイと相まって、メロディアスなスピードメタルの王道だ。そのエキサイティングな様に、会場も一気にヒートアップ。
 
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一旦「Determination」からは外れて「Confusion」、Yoshiのスウィープ奏法が光る。再び「Determination」に戻り「灰の雪」。これまで Arutoのツーバスプレイで疾走しまくっていた状態から、少し大人しめの曲調だ。「Spellbind」に続いて、Ramiが退場し楽器隊だけでのソロまわしの中、トキが霧吹きを披露。楽器好きのプレイヤーにも、メタル好きにもアピールする注目の瞬間に、会場がまた大きく反応する。ソロまわしが終わるとここで楽器隊が退場、入れ替わりで出てきたRamiは、イメージカラーであるゴールドの衣装に着替えていた。オケをバックにソロで歌い上げたのは「Across」。Ramiがメタルばかりではなく、しっとりとした曲調でも歌えることの証明だ。 Ramiは「Across」の歌詞を読んで欲しいと言う。そこに表現されているのは、控え目だが確実な、そして女性らしい健気な、愛する者を包み込みたいという気持ち。これ程の愛があるのなら、それを信じてみたいと思わせる。彼女がうたうのだからこそそう思える。皆がそう思っていることを示すかのように、それまでの騒ぎが嘘のように静まる。
 
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続いて Aruto(パープル)、トキ(ピンク)、サワ(ホワイト)、Yoshi(レッド)が、それぞれのイメージカラーの衣装に着替えて再登場。これで全員が本来の色に染まった訳だ。演奏は「Bind」。トキは再び霧を吹き、ギターソロは 2人のギタリストのハモリだ。続いて「夜蝶」。Aldiousの世界観を表した曲名だ。サワがピョンピョン跳ねながら楽しそうにベースを弾く。このサワ、 16ビートの激しい曲がほとんどであるにも関わらず、先ほどからほぼずっと笑顔のまま、驚異的な集中力だ。
 
「Ground Angel」「Wish Song」に続いて、ファンお待ちかねの「サワータイム」だ。サワが「れんらくちょう」を手にほんわかと MCを担当する。続いてほんわか雰囲気を吹き飛ばす「Carry Out!」「Eversince」はハモリギターの連発、照明効果も相まって、かなりカッコいい。続く「Ultimate Melodious」は妖艶な振り付けで、他の曲のステージングとはひと味違う。サワは笑顔のままベースソロ、続いてArutoのドラムソロ、そしてギターの2人がハモった後、トキがまた霧吹き。徐々に会場が興奮度を増していく中、最後に「Deep」でクライマックスを締め、彼女らはステージを降りた。
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アンコールにより再びステージに現れた彼女ら。アンコール1曲目「夜想曲」ではトキがピアノを担当、続く「Defended Desire」「Luft」でこの日の公演は完全に終了。 Ramiの歌唱力、Yoshiのギターテクニック、トキのステージパフォーマンス、サワの笑顔、Arutoのタイトなツーバスは、ステージからファンを煽り、渦巻くエネルギーを完全に昇華させた。

「蝶」達が披露した、極上のひと時。最後に残ったのは、心地よい疲労感だった。その妖艶な姿と、激しいサウンドの中に溢れる衝動で、大いなるエネルギーをファン達に振り撒いた。果たして「蝶」達は、これからどこまで舞い上がっていくのか?その美しく舞い続ける彼女らの未来への軌跡を、これからも見守っていきたい。
 

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◆ 公式サイト
http://aldious.jp/
◆セットリスト
1. Mermaid
2. Disclose
3. Eternal Delusion
4. Spirit Black
5. Confusion
6. 灰の雪
7. Spellbind
8. Instrument 2
9. Across
10. Bind
11. 夜蝶
12. Ground Angel
13. Wish Song
14. Carry Out!
15. Eversince (Metal Version)
16. Ultimate Melodious
17. Deep
アンコール
18. 夜想曲 (Band Version)
19. Defended Desire
20. Luft