演奏

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TEXT:桂伸也、PHOTO:moo
全労済ホール/スペース・ゼロ 30周年記念 交感ひろば Part24
本田毅 ソロデビューアルバム「Effectric Guitar」発売記念ライブ
『TAKESHI HONDA solo act “Effectric Guitar scape ZERO Band style”』
2019/06/15@東京・渋谷 全労済ホール/スペース・ゼロ

 
PERSONZのギタリスト本田毅が、自身初のソロアルバム『Effectric Guitar』をリリース。これを記念したライブ『TAKESHI HONDA solo act “Effectric Guitar scape ZERO Band style”』が6月15日に東京・渋谷の全労済ホール/スペース・ゼロにて行われた。
 
ロックバンドPERSONZのギタリストしてデビューした本田は、独自のコードワークとエフェクターを使いこなす唯一無二のセンスで他のギタリストとは一線を画す存在として頭角を現し、日本のロック内でも多くのギタリストに影響を及ぼす程のスタイルを確立している。そんな本田が、長いミュージシャンとしてのキャリアの中で、これまでそれほど活発にソロ活動を行っていなかったというのは、意外に思われる方も多く存在するかもしれない。
 
しかし、これまで本田がギタリストとしての活動を展開してきたPERSONZfringe tritoneGITANEなどのバンド、ユニット活動や様々なセッション活動で長きにわたって培われ、厚みを増したサウンド、スタイルが、いつか改めてクローズアップされる日が来ると信じたファンもいたことだろう。また特に氷室京介のサポートギタリストとして、長きにわたりそのサウンドを支え続けた実績は、誰もが認める大きなキャリアといえる。その一方で、今回本田がソロ活動を始めたことは、まさしく「満を持して」のタイミングだったと言える。その多くのファンに待ち望まれた本田のライブの模様を、今回はお届けしよう。

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定刻になると、会場に鳴り響いていたBGMは消え、徐々にノイズが一つ、また一つと音を重ねていく。そしてその音は、徐々に一つのハーモニーとなって、リズムを刻み始める。その拍子に合わせて、手拍子を入れる観衆。やがてステージに現れるこの日のメンバー。ドラムのKAZI、ベースの佐々木謙という二人は、本田のソロアルバムでもサポートメンバーとして参加した二人だ。その二人に続き、いよいよギターを抱えた本田がステージに登場。観衆は大きな拍手喝采と歓声を彼に送る。座席制となっていたこの日の会場だが、プレイが開始される前には総立ちの状態となっていた。
 
honda001そして本田のギターの音からライブはスタートした。静かになったステージで、オープニングナンバー「BRAHMA」のエスニックな調べをギターで歌い上げる。そのメロディーが一度落ち着いたところで、ゆっくりとドラムとベースが音に厚みを加え、重圧なロックサウンドを奏でていく。
 
神妙な表情でギターのリフからメロディーと、外枠を奏でていく本田。一転、ギターソロでは懐の広さを見せつつ、サウンドの海を自由に泳ぎ回るように、スケールの大きなフレーズを描いていく。嬉しそうな表情で、ギターと向き合う本田。そして後サビの、エコーの効いたメロディーへ。本田毅自身の音世界が開かれた瞬間だ。
 
「皆さんこんばんは!今日はゆっくりお楽しみください」と曲間にそっと語り、来場者へ礼を告げる本田。続けてクリーンなギターのカッティングが小気味いい「7th edges」から「Pray under rays」、そして「ETHNIC」へ。ギタリストのソロというと、どうしてもテクニカルなプレーを前面に出したサウンドをイメージしがちだが、この日奏でられたサウンドからは、目を見張るようなテクニックよりも、単なるバッキングフレーズと思われるようなギター・カッティングや、まるでメロディーと感じられないノイズ音にさえも歌心が感じられたのが印象的だ。
 
その上、パフォーマンスとしての見どころも、抜かりがない。「いろんなことを言おうと思ったけど、ぶっ飛ぶもんですね。」緊迫したプレイから打って変わって、笑顔でそう語った本田。大きな会場でのソロは初めてで、そこに向けては緊張もあったというが、その笑顔にはプレイの楽しさも直接、観衆側に伝わってくる。
 
honda002そして中盤、ステージには椅子が運び込まれ、ステージ上のプレーヤーは本田一人に。少しリラックスした雰囲気の中で、まだ正式には未発表であるという新曲「GOHAN DESUYO」を披露。まるで三味線か琴で奏でられるような、和を意識したハーモニーの中で、次から次へとディレイ・エフェクターを駆使した印象的なフレーズが繰り出される。
 
ある時はQUEENのギタリストBrian Mayの得意としたギターオーケストレーションを彷彿とするもの、またある時は目の覚めるようなコード・ストローク、さらにはロックを感じさせるディストーションの効いたギターを前面に出したサウンドと、そのフレーズは目まぐるしく変化していく。
 
続く「Peace loop for Asia」では、ディレイよりさらに進化したエフェクター、ルーパーによるプレイ。一人でリズム、ベース音、コードと音を重ね、まさしく一人でバンドの音すべてを形成する。それに続いた「Ruins of factory」では、シンプルなロングディレイの上で、ギターの弦を叩いたりこすったりと、文字通りノイズ音を積み上げていく。そこにはまさしく「Ruins of factory(=工場跡)」のような空虚なイメージが描かれる。プレイひとつひとつをとってみると、非常にマニアックで実験的なプレイの塊のようにも見えるが、曲として通して見ると、単に変わった音の集まりというものではなく、すべてが確かなイメージの上に置かれた構成要素であることが、はっきりと見てとれる。
 
honda003いよいよステージは後半、「Ruins of factory」の残したノイジーな余韻から、Jeff Beckの名曲「SCATTER BRAIN」を彷彿するようなシーケンスパターンから展開する「真紅」、そしてメンバーのソロプレイするを挟んで再びエスニックな雰囲気を見せる「MOROCCAN BLUE」へ。曲が進行していく度に、会場は徐々に再び熱を帯びてきた。
 
本田がソロプレイを始めたのが2016年。ちょうどその年はロック、ポップス界の偉人PrinceGeorge MichaelDavid Bowieといった偉大なアーティストが立て続けに逝去。本田自身も自分のヒーローたちの死に寂しさを感じたというが、そのタイミングはソロを開始するきっかけにもなったと改めて振り返る。そんな先人への想いを込めるような、優しさを帯びたメロディーを聴かせる「TENSION BALLAD」から、ステージはクライマックスに向けてさらに持ち上がりを見せてくる。
 
honda005四つ打ちのダンサブルな「TECHFXX」、パンキッシュなポップさと激しさを持った「FREEZE DRIVE」と、聴く側としては、リズムに合わせて思わず体が動いてしまいそうな楽曲が続く。ついには本田自身がステージを左に、右にと観衆に近づき、楽しそうな表情でギターをかき鳴らす。その表情は、まるでギターをプレイするのが楽しくてたまらない少年のようにも見える。そして「SEQUENCE QUEEN」で、さらにパフォーマンスにアクティブさを加える本田
 
インストのライブというと、どうしてもフュージョンバンドのような、パフォーマンスよりテクニカルな演奏に重点を置いたステージをイメージしてしまうが、本田のステージはまさにロックアーティストのパフォーマンス。その姿には「これぞ、ロック少年たちがこの音楽にあこがれた原点」そんなイメージすら感じられる。そしてエンディング。ヘヴィなロックサウンドを聴かせる「HARM ROCK」でステージを締め、満面の笑みをたたえた本田は、声にならない声で「サイコー!」と叫び、ステージを後にした。
 
さらに湧き上がるアンコールの声に応え、再びステージに登場した本田。ソロ活動をスタートする後押しをしてくれたスタッフや関係者、そしてこの日訪れた観衆への感謝の思いを伝えるように「BLOOM」を披露、そして90年代より作られていた楽曲で、本田のソロプレイの原点ともいえる「BUG IN THE HEAD」でこの日のステージの幕を閉じた。
 
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ライブが始まるまでの間、BGMにDURAN DURANPET SHOP BOYSなどのリミックスが流れたのが印象的だった。そこで流れていたのは、80年代を代表するアーティストばかり。その時代に青春を過ごした者であれば、曲のメロディーを聴けば「懐かしい」と思うことだろう。しかしリミックスにより加えられたリズムパターン、ベース音などで、印象は全く違うものになる。あの時代を生きてはいなかった人の中でも、人々を魅了し、時代を超えて愛されるメロディーに今風のアレンジと、新鮮な印象を得る人はいることだろう。
 
この日ライブで示された本田の音世界には、まさにそんな雰囲気が感じられた。エフェクターを多用するというスキルは、ある側面からはエフェクターを作り上げる最新技術に依存していると見る人もいるかもしれない。しかし本田が音を生み出すスキルは、そんな表面的なものではない。自身がカッコいいと思う音、スタイルを、音の現場で何年にもわたり吸収して得られたものである。本田の音は、彼だからこそのセンスに裏付けられた揺るがない土台の上で、さらなる進化を遂げている。
 
また、そのミュージシャンの姿勢としても注目すべきものがある。ミュージシャンは過去に大きな実績があると、それに縛られることもある。もちろん、人々に大きなインパクトを与えた音楽を聴かせ続けることも、ミュージシャンの一つの大事な仕事ともいえるだろう。しかし、本田はベテランといわれてもおかしくない現在でも新たな挑戦を続け、さらにカッコいいものを追究している。アーティストはどのように生涯を遂げていくか?本田の活動を追っていくことは、その貴重な一つの例を見られる機会ではないだろうか。
 

◆セットリスト
M01. BRAHMA
M02. 7th edges
M03. Pray under rays
M04. ETHNIC
M05 GOHAN DESUYO
M06. Peace loop for Asia
M07. Ruins of factory
M08. 真紅
M09. メンバーソロ〜MOROCCAN BLUE
M10. TENSION BALLAD
M11. TECHFXX
M12. FREEZE DRIVE
M13. SEQUENCE QUEEN
M14. NOISE DNB
M15. HARM ROCK
encore
M16. BLOOM
M17. BUG IN THE HEAD
 
◆メンバー
本田毅 (Guitar,Voice)
佐々木謙 (Bass)
KAZI (Drums)
 
◆公式サイト
本田毅 FBページ
https://www.facebook.com/effectricTH/
テイチクエンタテインメント 公式サイト
http://www.teichiku.co.jp/artist/honda-takeshi/
 
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◆ライブ情報
本田毅 (PERSONZ) 1st ソロアルバムリリース記念
TAKESHI HONDA solo act Effectric Guitar scape 10
全公演:前売4,000円/当日4,500円 (ドリンク代別途)
■2019/8/24(土)
能代 旧料亭金勇 
18:00開場/18:30開演
■2019/8/25(日)
弘前 Robbin’s Nest
17:00開場/18:00開演
■2019/8/30(金)
福島 マッチボックス
18:00開場/19:00開演
■2019/8/31(土)
盛岡 BUFFALO (w 松本哲也)
18:00開場/19:00開演
■2019/9/1(日)
大船渡 LIVE黒船 a GoGo (w 松本哲也)
18:00開場/18:30開演
■2019/9/7(土)
山形 フランクロイドライト
17:00開場/18:00開演
■2019/9/8(日)
いわき iwaki QUEEN Presents まちポレいわき2F
090-8923-3196
14:30開場/15:00開演
■2019/9/14(土)
旭川 アーリータイムズ
16:30開場/17:00開演
■2019/9/15(日)
札幌 XENON
問合せ:マウントアライブ(011-623-5555/平日11:00~18:00)
16:30開場/17:00開演
■2019/9/21(土)
高知 X-pt
18:00開場/18:30開演
■2019/9/22(日)
高松 オリーブホール
17:00開場/17:30開演
■2019/9/23 (月祝)
神戸 チキンジョージ 
16:30開場/17:00開演
■2019/10/6(日)
高崎 club FLEEZ Asile
16:30開場/17:00開演
■2019/11/9(土)
長野 the Venue
16:30開場/17:00開演
■2019/11/10(日)
新潟 LIVEHOUSE 柳都SHOW!CASE!!
16:30開場/17:00開演
■2019/11/16(土)
四日市 Club Roots
17:30開場/18:00開演
■2019/11/17(日)
岐阜 Club Roots
17:30開場/18:00開演
■2019/11/23(土)
横浜 濱書房 *ツアーファイナル公演
16:30開場/17:00開演

※詳しいお問い合わせは
本田毅FBページ
https://www.facebook.com/effectricTH/
テイチク内HP
http://www.teichiku.co.jp/artist/honda-takeshi/

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