2017年10月に行われた大阪なんばHatchでのワンマンライブにて、彼らにとって10周年となる2020年10月に大阪城ホールのステージに立つと公式に決意表明したバンド、それがFEST VAINQUEUR(フェストヴァンクール)だ。
幸運にもその場面に立ち会えた筆者は、同じく大阪を拠点に活動する者として、その決意表明が武道館でなくあえて大阪城ホールであることにもグッときたし、現時点では無謀と言われかねないその宣言をファンだけでなく外に向けて発信した彼らの大きな夢の軌跡を追いかけたくなった。
そしてその夢の実現に向けて個々が更なる高みを目指すため、今年2018年10月28日の大阪なんばHatch公演「9th Birthdayの約束~ 2・0・1・9 / 1・0 / 2・7 ~」をもって1年間の活動休止を発表した彼らの、この春18本に渡ったツアーのファイナルにあたる本日のレポートを敢行した。
地元大阪での知名度は高いものの、初めて触れる方もいるはずなので説明すると、FEST VAINQUEURは大阪を拠点に全国で活動しているロックバンド。HAL(ハル/Vocal)、GAKU(ガク/Guitar)、I’LL(アイル/Guitar)、HIRO(ヒロ/Bass)の現在4人編成。
彼らが今年2月にリリースしたのが、豪華ゲストドラマーを迎えてのアルバム『GENERATION 2 ~7Colors~』だ。BABYMETALのバックバンドなどで活躍する青山英樹をはじめ、淳士(BULL ZEICHEN 88)、宮脇“JOE”知史、Toshi Nagai、風弥~Kazami~(DaizyStripper)、ダイナ四、shuji(Janne Da Arc)と錚々たるゲストドラマーを迎えて制作された。ドラマー不在を逆手にとったこの作品は今までにない彼らの魅力をも打ち出しており、この強力な音源をひっさげてのツアーファイナルということで、期待は高まる。
大阪を代表する老舗ライブハウス「BananaHall」は昨年移転し、独特の雰囲気はそのままにキレイな仕様に。大きな手拍子と歓声に迎えられて登場したメンバーは『GENERATION 2 ~7Colors~』の表題曲となっている「SHADOW」でステージをスタートさせた。ちなみに本日のサポートドラマーは今作にも参加しているダイナ四だ。キャッチ―なメロディーかつ疾走感とへビーさを併せ持つ、FEST VAINQUEURらしさ全開の楽曲でオーディエンスは長い髪を振り乱してヘドバンしはじめる。勢いを落とすことなくそのまま人気曲「ヴァレンシアとヴァージニア」へとなだれ込み、序盤からツアーファイナルにかける気合いが感じられるステージだ。
「会いたかったぜファイナル大阪!」とHALの煽りからさらにメロディアスなサビが美しい「Rosario」へ。オーディエンスとの激しいかけあいの中、スタートからこれでは双方の体力が持つのか心配になるが、「みんなで派手に踊ろう!」と続く「Evil Disco~somnambulism~」ではオーディエンスを右に左に踊らせて、会場の温度を上昇させた。
バンドマスターとしても要となるHIROのベースは、サウンドと共に会場の空気をリードするムードメーカーだ。そしてボーカルHALのフロントマンとしての堂々としたふるまいと、ライブを重ねる度に説得力を増す歌唱力と表現力はさらなる可能性を感じさせてくれる。
そして彼らはメンバー全員本当にビジュアルがいい。顔だけがいいバンドと勘違いされては困るので表現が難しいのだが、一度彼らのライブに触れれば4人のバランス良く完成されたビジュアル、美しい所作に目を奪われ、複雑に構成されながらもキャッチーさを失わずに響いてくる楽曲に聞き惚れ、そして丁寧なプレイスタイルを見ているとどれだけ音楽に対して真摯に向き合っているかがわかるはずだ。
GAKUがマイクをとったMCでは、今となっては懐かしい携帯電話の着メロを自作した話に。彼が初めて作曲したのは初期の携帯着メロを作れるシステムで作った「サマーメモリー(笑)」という爽やかなナンバーだったらしく、そんなスタートから、回りまわって今作った曲をこんなに沢山のオーディエンスに聴いてもらえるって幸せだなあと感慨深そうに語った。
後半戦のスタートは「NANIWA DANCE NIGHT FEVER」。こちらも彼らお得意のパーティチューンだ。会場のミラーボールが回り出し、HALはシャンパくん(FEST VAINQUEURマスコットキャラクター)ポーチに入れた”あめちゃん”をステージから降りて配り出すというベッタベタの大阪仕様で会場を沸かせたあとは、高速シャウトが響き渡る「DIRTY~銃口に蛇~」、そして「アルメリア」と新曲を次々に畳み掛ける。
「もっとできんだろ!出し切っていいぞ!おまえらの狂気!」HALの煽りに応えるオーディエンスの熱はどんどん上がっていく。文句なしの高速ロックナンバー「Addiction-中毒性愛依存癖-」からキラーチューン「現代的疑惑都市”DOUBT!”」で会場の盛り上がりは最高潮に達した。そしてラストは『GENERATION 2 ~7Colors~』の中でも核となる「Sunnyside」。手を振るオーディエンスたちを前に、「これからも前を向いて強く生きていく」という強いメッセージ性を持った楽曲は胸に響いた。
またここで、8月と9月の2ヶ月連続でコンセプトミニアルバムがリリースされることも発表。”アガってGOODハイになる”PARTY ROCKアルバム『宴~utage~』、”ツインリードギターがぶつかり合う”轟音METALアルバム『戦~ikusa~』と対になる2作を活動休止前に連続リリースし、まさに「武者修行」という言葉がふさわしい1年間の旅路に出ることになる。
盛大な1本締めでフィナーレを迎えた舞台だが、オーディエンスのアンコールの声が鳴りやまない。次第に大きくなっていく歓声と拍手に再度終了のアナウンスが流れている最中、ひょっこり顔を表したメンバーたちは予定になかったはずのアンコールをスタートさせた。
「Reminiscence Driver」で再び会場を沸かせ、オーラスはやはり彼らの代表曲のひとつ「NANIWA SAMBA」。コッテコテの大阪感全開の、彼らのビジュアルとのギャップが癖になるまさにFEST VAINQUEURにしかできない楽曲だ。そして、ファンはもちろんのこと初めて触れる人も1度で確実に覚えられ、その場にいる人間を全員笑顔にできるパワーを持ったナンバーでもある。鳴りやまない歓声と拍手に見守られながら深々と頭をさげたメンバーが印象的なラストだった。
10月までに数々のイベント出演と、自らがプロデュースするフェスイベント「FEST FES~The End or Continue~」2days、アルバムリリース、そして恵比寿LIQUIDROOMとなんばHatchでのワンマンと止まることなく走り続ける彼ら。怒涛の活動とそして活動休止を経てどれだけ成長し、帰ってきた時にどんな景色を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。
M01. SHADOW
M02. ヴァレンシアとヴァージニア
M03. Rosario
M04. Evil Disco~somnambulism~
M05. ターゲット
M06. Mirror
M07. バタフライエフェクト
M08. 桜並木の下で
M09. LIONHEART~lifetime wish~
M10. 奇跡の翼
M11. COLORS
M12. NANIWA DANCE NIGHT FEVER
M13. DIRTY~蛇口に蛇~
M14. アルメリア
M15. ソレイユ
M16. Addiction-中毒性愛依存癖-
M17. 現代的疑惑都市”DOUBT!”
M18. Sunnyside
-encore-
E01. Reminiscence Driver
E02. NANIWA SAMBA
https://www.festvainqueur.com/
◆インフォメーション
FEST FES~The End or Continue~
・2018年08月25日(土)【大阪】STUDIO PARTITA
出演:FEST VAINQUEUR/DADAROMA/LEZARD/Purple Stone/Ravecraft/Rides In ReVellion/S!N/ 甘い暴力/ザアザア/-真天地開闢集団-ジグザグ
・2018年08月26日(日)【大阪】STUDIO PARTITA
出演:FEST VAINQUEUR/AllS/BabyKingdom/GRIMOIRE/Neverland/POIDOL/RAZOR/Rides In ReVellion/0.1gの誤算/ペンタゴン
第3期FEST VAINQUEUR FINAL ONE-MAN
「9th Birthdayの約束~ 2・0・1・9 / 1・0 / 2・7 ~」
SEMIFINAL DAY
・2018年09月17日(祝)【東京】恵比寿LIQUIDROOM
FINAL DAY
・2018年10月28日(日)【大阪】なんばHatch