演奏

TEXT:鈴木亮介 PHOTO:矢沢隆則

ai05鈴木愛理が2018年4月9日(月)、10日(火)の2日間にわたり東京・Zepp Tokyoにてバンドスタイルでのソロ初ライブ『鈴木愛理 1st LIVE ~Do me a favor』を敢行、SCANDALとコラボレーションした楽曲「STORY」などを披露した。
 
鈴木愛理はハロー!プロジェクトのユニットあぁ!の一員として田中れいなLoVendoЯ)、夏焼雅とともに2003年にデビューし、2005年からはアイドルグループ℃-uteのメンバーとして12年間にわたって活動。嗣永桃子らとのユニットBuono!のメンバーとしても数々の楽曲を披露したほか、ファッション誌『Ray』の専属モデルとしても活動している。
 
昨年6月に℃-uteの解散とともにハロー!プロジェクトを卒業。その後「15年目の新人ソロシンガー」として今年6月6日(水)に1stソロアルバム『Do me a favor』をリリースし、ソロデビューすることが発表された。そのアルバム発売に先立ち、東京・COTTON CLUBで3月から4月にかけて12日間・23公演におよぶソロ初ライブを開催。ダンスナンバーを中心に披露された。さらに、東京・Zepp Tokyoと大阪・なんばHatchにてバンドスタイルでのライブを開催した。
 
アルバム収録曲のうちバンドサウンドの楽曲が初めてファンの前で披露されるとあって、Zepp Tokyoには連日2000人以上のファンが集まり、会場は超満員となった。
 

 

ai02ステージの前方にランウェイが設置されたZepp Tokyo。フロアは満杯の観客で埋まる。ツアーグッズの白いTシャツを着たファンが多いが、10代女子率の高さに驚く。そして午後7時、スクリーンに鈴木愛理の映像が映し出されると、大きな歓声とともにピンクと黄緑のサイリウムが点灯する。ピンクは℃-uteでの、黄緑はBuono!での、それぞれ鈴木愛理のメンバーカラーだ。
 
幕が開く。ステージ中奥の壇上に姿を現した鈴木愛理、その手にはブルーのテレキャスター。℃-ute時代からアコースティックライブなどでその腕前を披露することはあったが、こうしてバンドの中心で、ギターボーカルとしてステージに立つ姿は新鮮だ。
 
「大好きな歌があればいい どこまでも歌うから」アーティスト・鈴木愛理をそのまま体現する歌詞が印象的な「未完成ガール」からライブはスタート。ガーリーポップの真髄を貫くかわいらしさ全開の2曲目「Candy Box」では早くも大きなコールが起こる。インタビューで鈴木愛理がファンの対応力の速さを誇っていたが、本当にその通り、ファンの愛を感じる。3曲目「キライスキダイキライ」ではうねるベースに乗せて小悪魔的な表情・歌声で会場のボルテージを上げる。
 
「私は今日、心配はしていません。皆さんの対応力を信じてます!」「帰る力のみを残して完全燃焼…準備はできてますか?」そう宣言すると、ソロアルバム収録曲「いいんじゃない」、そして℃-uteのソロ曲「嗚呼 恋」、Buono!のソロ曲「うらはら」と、バラードナンバーを続ける。6曲目「うらはら」の間奏では、切ないギターフレーズに合わせて鈴木愛理は目を閉じて美しい横顔を見せる。
 
しっとりと聴かせつつも、衣装にちりばめられたスワロフスキーと同じくらい、キラッキラな音楽になるのが、鈴木愛理というシンガーの持ち味だ。儚く、切なく、きっぱりと透き通る、不思議な魅力にグイグイ引き込まれる。
 
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暗転し、野太い「愛理~」コールが起こるとすかさず「愛理でーす」とおどけた声色で応える。バンドメンバーの宮本將行(Bass)、伊平友樹(Guitar)、加藤聡(Drums)、にしのえみ(Keyboard)、亜美(Chorus)が横並びして、ここからはアコースティックタイム。幸せ全開の優しい歌声で℃-ute時代の大人気ナンバー「ベーグルにハム&チーズ」を歌い上げると、どういうわけか「ここでアルプス一万尺をやりましょう!」ということに。鈴木愛理は”あみ様”こと亜美と手を合わせ、観客にも求める。
 
℃-uteの「最高ミュージック」もアコースティックバージョンで楽しく演奏。鈴木愛理はバンマスを務めるまーくんこと宮本將行にバケツを帽子のようにかぶせると、さらに遊び心のある曲「バケツの水」を披露。鍵盤ハーモニカと笛で和やかに時が進むと、ここでアルバムには収録されないという楽曲「私の右側」を特別に披露することに。
 
ai04ステージ上には焼肉屋のカウンターが作られる。左利きの男の子と自分の右手がぶつかって、そこから恋が…という妄想全開の一曲。鈴木愛理が作詞した「私の右側」の世界観をステージ上で再現!”大衆焼肉”のカウンターに座る鈴木愛理の右側にカメラが来て、焼肉デートを疑似体験するような映像がスクリーンに映し出される。ファンには嬉しい時間が流れる。
 
曲を終えて、余韻に浸る鈴木愛理を、焼肉屋の定員に扮した亜美が「お客様!当店より特別にデザートをご用意しております」と制すと、舞台下手から大きなバースデーケーキが登場!観客とバンドメンバーが一緒に「Happy Birthday」の大合唱でこのライブの2日後に24歳の誕生日を迎える鈴木愛理をサプライズでお祝い!
 
「23歳は色んな今までやってきたことに終止符を一個ずつ打って、後半は水面下で色々勉強したりする年だったので、今年はそれを全面的に開花させる年にしたいです!」と24歳の抱負を語ると、9曲目はソロデビューアルバム『Do me a favor』収録の「君の好きなひと」。片想いをしている人なら共感できる”こじらせ曲”がコンセプトのこの曲は山崎あおいが歌詞を手がけているが、1曲前に披露した「私の右側」も山崎あおいと一緒に曲作りをしたのだという。透明感溢れる歌声と、それを引き立てる旋律が、とても心地よい。
 
解散してから約10カ月。その間には落ち込むこともあったというが、ブログのコメント欄などを通じてファンへの感謝が強まり、同時に「ありがとうという言葉を言える場所がない」と実感したのだという。そして、「活字で打って気持ちを文字にして送ることが苦手。伝えたい細かいことが違ってしまう。そうじゃなくて、歌で伝えよう」と決意。ファンへの感謝を歌詞に込めた「#DMAF」を歌い上げる。”これからもよろしく、どうもありがとう、ファンのみんな”…そんな真っ直ぐな思いを観客も静かに受け止める。流麗なピアノが止むと、静かなアコギがバトンを受け継ぐ。11曲目はBuono!のバラード曲「OVER THE RAINBOW」を続ける。
 

 
静かにフェードアウトし、暗転すると、スクリーンに「ユーチューバー愛理」が登場。次に演奏する曲のみんなで盛り上がってほしい振りなどを紹介。一通り予行演習を終えると、衣装替えした鈴木愛理とバンドメンバーが再びステージに登場。「No Live, No Life」という曲名の通り、ファンと一つになってめいっぱいライブを楽しみたいという鈴木愛理の思いが溢れた、最高に最幸な曲だ。
 
「後半戦、盛り上がっていくよ!」バンドのパワフルで陽気な全力サウンドでボルテージが急上昇。13曲目はソロデビューアルバム『DMAF』収録の「光の方へ」。津野米咲赤い公園)が作詞作曲・編曲を全て手がけた、ギターにドラムに趣向が凝らされた楽曲。鈴木愛理の歌声はよりいっそうエモーショナルに、突き抜ける。その勢いのままに「ソラシド~ねえねえ~」、「ロッタラ ロッタラ」、「Independent Girl~独立女子であるために」とBuono!曲を3連続見舞う!
 
改めてバンドセットで聴くとダイナミックなギターサウンドに快活なドラムが魂を揺さぶる。観客のコール、そしてBuono!での鈴木愛理のメンバーカラーであるイエローグリーンに染まったペンライトさえも一つの音楽となって昇華していく。これぞロックというステージは、℃-ute曲「As ONE」が投入されてさらに炎上!ギター伊平友樹、ベース宮本將行の2人もステージの立ち台までせり出し観客を煽る。
 
熱狂がピークを迎えたところで、アルバム収録曲の中でも屈指の激しいロックナンバー、SCANDALとコラボレーションした「STORY」でトドメをさす!MAMI(Guitar)が作曲・編曲を手がけた同曲、イントロからテンポよく刻まれるバスドラと、ヒリヒリするギターフレーズに煽られる。歌詞はRINAが書いているが、「”ま”だ」「”き”っと」と言った鋭利な発音に、「限界」「立ち上がれ」と言った往年のガールズロックに敬意を払うかのようなワードが鈴木愛理をロックスター然とさせる。
 
「STORY」について、囲み取材時に鈴木愛理は、以前から交友のあるRINAと食事に行った際に話したことをベースにした「自分の感情がそのままあふれ出すような歌詞」になっていると話してくれた。ソロシンガーとして覚悟を決めた鈴木愛理の心情の一端が垣間見えるこの曲、アルバムを購入したら歌詞カードを手にじっくりと聴きたい一曲だ。
 
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熱烈な愛理コールに応えて、鈴木愛理とバンドメンバーが再びステージに登場。アンコールは「初恋サイダー」、「Yes! all my family」、そして「通学ベクトル」の3曲を披露。笑顔全開、底抜けに明るいボーカルで往年のファンもにっこりさせる歌唱で魅せると「これから始まったばかり。今後も同じ音楽の空間を共有してくれたら嬉しい」と話し、笑顔でステージを降りた。
 
このライブの2日後に24歳の誕生日を迎えた鈴木愛理。7月9日(月)にはソロとして初の日本武道館公演が決まっているが、「自分のライブの空間の色が少しずつ見え始めている。武道館は、℃-uteとして初めて夢が叶ったと思った、私にとっての大事な場所。もう一度あの時の気持ちを思い出して頑張りたい」と意気込みを語っている。曲作りにも積極的な意志を見せているが、SCANDAL赤い公園山崎あおいと言った女性ミュージシャンともコラボしつつ、今後もさらにたくさんの音楽ファンを楽しませてくれるに違いない。
 

◆鈴木愛理1stソロアルバム『Do me a favor』発売記念
【AIRI SUZUKI presents #DMAF CAFÉ supported by Ray】
期間限定OPEN!

・2018年05月25日(金)~06月10日(日)【東京】原宿AREA-Q
(東京メトロ明治神宮前駅、JR原宿駅最寄り)
http://www.areaq.jp/airisuzuki_dmafcafe/

◆セットリスト
M01. 未完成ガール
M02. Candy Box
M03. キライスキダイキライ
M04. いいんじゃない
M05. 嗚呼 恋
M06. うらはら
M07. ~アコースティックメドレー~
 ・ベーグルにハム&チーズ
 ・アルプス一万尺
 ・最高ミュージック
 ・バケツの水
M08. 私の右側
M09. 君の好きなひと
M10. #DMAF
M11. OVER THE RAINBOW
M12. No Live, No Life
M13. 光の方へ
M14. ソラシド~ねえねえ~
M15. ロッタラ ロッタラ
M16. Independent Girl~独立女子であるために
M17. As ONE
M18. STORY
-encore-
E01. 初恋サイダー
E02. Yes! all my family
E03. 通学ベクトル
◆鈴木愛理 公式サイト
http://www.airisuzuki-officialweb.com/
 
◆リリース情報
ソロ1stアルバム『Do me a favor』
・2018年06月06日(水)発売
初回生産限定盤(CD+Blu-ray) EPCE-4706~4707 3780円(税込)
通常盤(CD) EPCE-7408 3000円(税込)

 
◆ライブ情報
鈴木愛理 1st LIVE ~Do me a favor @ 日本武道館~
・2018年07月09日(月)【東京】日本武道館