演奏

TEXT:岡本恵里

ゴールデンウィークの幕開けとなるよく晴れたその日、大阪アメリカ村にある会場前では早い時間からツアーTシャツを身にまとったファンが集まり始めていた。
 
彼らのライブに訪れる人々は、性別や年齢層は様々だが一様に皆軽装で“暴れやすい”格好なのが特徴的だ。
 
 
lynch.葉月(はづき/Vocal)、玲央(れお/Guitar) 、悠介(ゆうすけ/Guitar)、明徳(あきのり/Bass)、晁直(あさなお/Drums)の5人からなる名古屋を拠点とするロックバンド。
 
ダークな世界観とスピード感のあるへヴィな楽曲、そして音源リリース以上にライブに重きを置いており、「ライブに来なければ勿体ない」と言い切れるライブバンドだ。2004年の結成から12年を迎えた彼らだが、常に貪欲にツアーごとに成長し進化していく現在進行形のバンドでもある。
 
『TOUR’16「DARK DARKER DARKNESS」#2 -My name is evil-』と銘打たれた今回のツアーは昨年10月に発表されたアルバム『D.A.R.K.』に伴うツアーの2周目となり、この日は残り2本を残すだけの大詰めに差し掛かっていた。
 
キャパシティ800を超える大阪BIGCATでもチケットは前売りの時点で既にソールドアウトし、当日券が用意できない状態に。lynch.がこの会場でワンマンライブを行うのは2度目になるが、前回は当日ぎりぎりに売り切れた状態(それでも見事にソールドアウト公演だったのだが)だったことを考えると、ツアーを経るにつれてどんどん動員もパワーアップしているのは明白である。

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17:30ほぼきっかりに暗転する会場。歓声が怒号に聞こえるくらいの大きなうねりの中、黒を基調としたスタイリッシュないで立ちで登場したメンバーは赤を効果的に利かせた神秘的かつ攻撃的な照明と相まって、何かが降臨してきそうな勢いを感じる。
 
「大阪、最後までよろしくお願いします」葉月のシンプルな挨拶からスタートしたのは「MOON」。いきなり今回のツアーの中心である『D.A.R.K』の中でも核といえる楽曲を持ってきたことからも彼らの自信と覚悟が伺える。
 
1曲目からもうラストなんじゃないかと見まがうようなフロアの盛り上がりのまま、「ANTARES」、続く「GREED」とどんどんペースを上げ、会場をさらにヒートアップさせていく。
 
早くもジャケットを脱ぎ捨てて長い腕をいっぱいに伸ばし、会場を煽りまくる葉月
「渋い」という言葉がピッタリの、重厚で大人の魅力満載のギターをかき鳴らす玲央
対し、軽やかなステップでステージ上をひらりひらりと縦横無尽に駆け回る悠介
長身を活かした縦長のステージングが力強くそして美しい明徳
そして丁度この日から物理的にもパワーアップし、lynch.の太くてダークそして「悪そうな」音をものすごい音量と迫力で響かせる晁直
 
「BIGCAT売り切れ!しかも2回目で、前売りで。呼んで800人!大阪、最高の夜にしよう」タイトな煽りでさらに畳みかけられるのは人気ナンバー「MIRRORS」。サビで一気に明るくなる照明とファンの大合唱が心地よい。続く「THE FATAL HOUR HAS COME」からはモッシュピットが出現するなど、その勢いは止まらない。開始から9曲を過ぎてもまだ休むところのない攻めのライブは続く。

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lynch.の曲は基本的にタイトでスピード感があるので、1曲が実際よりもライブで聴くと短く感じる。MCも少ないもしくはほぼないために、ライブが始まったら最後、会場のオーディエンスは体力の続く限り地獄の耐久レースに参加することになる。会場中が皆軽装で戦闘態勢なのもうなずける。ステージの上の迫力にひけをとらないと言っていいほどのオーディエンスの圧力に、彼らがどれだけ期待されているか、愛されているバンドなのかを目の当たりにした。
 
「ENVY」、「MELANCHOLIC」と、やっとここでじっくりと聴くことのできるミディアムナンバーが登場し、大きな会場ならではの美しい演出をみる余裕ができた。彼らの楽曲にはバラード的なものが少ないが、決して勢いだけのバンドではないと見せつけるような拡がりのある葉月のボーカルとダークながらも優しさを感じる楽曲はlynch.の世界観に奥行きを持たせている。
 
そして今回のツアーの表題曲ともいえる「D.A.R.K」の重厚な音に呑まれながら徐々に会場の温度はまた上昇していく。
 
「大きい会場だと、聴かせる系の曲もいいんだけど、やっぱりみんな暴れたいよね~」の葉月の煽りからライブは一気に大詰めへ。
 
「GALLOWS」「BEAST」など破壊力抜群のゴリゴリサウンドが響き渡り、会場内はサークルモッシュやヘドバンが咲き乱れるカオス空間に変貌。会場全体を包む煙が演出のスモークなのか、オーディエンスから立ち上る湯気なのか判別がつかないほどの地獄絵図と化している。
 
彼らの代表曲のひとつである「I BELIEVE IN ME」では、センターに4人が出揃った瞬間の貫禄にlynch.の歴史を感じ、そして恒例の「SEXさせてくれ!大阪!」という葉月の煽りからはじまる「pulse_」でフロアの盛り上がりは最高潮に。ステージを所狭しと駆け回り、オーディエンスをどんどん煽るメンバー。それに応えて声を枯らしながら歌うオーディエンス。ラスト「EVOKE」まで本編だけで既に20曲を高速しかもノンストップで走り切った両者を共に称えたい。

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怒号のような熱烈なアンコールに応えて再び現れたメンバー。ここにきてはじめて葉月がMCのためにマイクを持った。
 
「今こに800人いるんですけど…俺19歳のときに初めてやったワンマンライブの動員が70人で、しかもそれ解散ライブで(笑)、思ったよりすごく冷静なんですけど、アルバム出して2周目のツアーで、しかもファイナルじゃなくてっていう、いわゆるこの日にかけてるんです!みんな来てください!みたいな“全てを投げうったワンマン”じゃないわけですよ。それなのに前売りの状態で売り切れて。俺たち12年やってるんですよ。メジャーデビューしてからは5年。次(新木場スタジオ)コーストなんです。それがここにきて売れ始めてるんですよ…まだ買ってない人、います?(パラパラ手が上がる)…あれ、あんまいねえな(笑)」もう持ってるよ~と次々声が響く。
 
「いやほんとにlynch.のライブって大変なのよ。みんな声枯れるでしょ?いっぱい叫ぶし歌うし。俺たちはいわゆる圧倒的なカリスマとじゃないわけよ。そういうバンドでもないじゃない?よく“おまえたちはは6人目のメンバーだ~”みたいなセリフあるじゃない(笑)。うちの場合はそれがもうマジで。lynch.っていうバンドは、ライブを完成させるのに、他のバンドよりももっともっとお前らの力が必要で、まさに6人目のメンバーで。お客さんはもちろん神様なんだけど、大事な仲間であって…かっこよくおまえらついてこいよ~っていいたいんだけど、ちょっとそういうのでもなくて…俺は先頭を走るからって…」
 
そこまで一気に畳み掛けて収拾のつかなくなった葉月のMCを横で見守っていたリーダー玲央が助け舟を出す。
 
「えーと、葉月がいいたいのは、とにかく偉ぶりたくはないんですよ。心底ファンのことを対等に同じ目線で見てるから、ついてこいよって上からじゃん?そういうのではなくて、同じ方向を見ていたいというか。そういうことだよね?でも俺は先頭走るからついてこいっていう。そんな感じでよろしくお願いします」とまとめると会場中から大きな拍手が巻き起こった。
 
筆者がlynch.というバンドを“不思議だな”と思っていたことの答えがこのMCにあった。ライブがスタートした瞬間の、大舞台に全くひけを取らない威圧感とカリスマを感じることもあれば、ふとしたときに「かっこいい先輩のライブ」を見るような、距離が近いというか身近に感じさせてくれる場面もあり、その2つの顔が1本のライブ中だけでもくるくる変わるのだ。ついていきたいと思わされ、一緒に走りたいと思わされる。この絶妙なバランスが彼らの一番の魅力であるような気がする。
 
「さて、アンコールはこの会場の床をぶち抜きます。死にたいやつはついてこい!」再び温度の上がった会場でスタートしたのは「unknown lost a beauty」。続く「ALIEN TUNE」そして「discord number」と速くて激しいナンバーを立て続けに披露し、オーディエンスは首が千切れるんじゃないかと心配になるほど勢いよく頭を振りまわし、本当に床を抜こうと思っているとしか思えないぐらい激しく飛んで会場を揺らす。
 
ラスト「NIGHT」のサビでは演奏をかき消すほどの大合唱で“6人目のメンバー”としての使命を十二分に発揮したオーディエンスの姿があった。

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「ありがとう最高の景色でした!うまくいえなくてごめんね!これからも俺たちは止まらないのでずっと一緒にきて下さい!ありがとう」大きな歓声に応え、満足そうに舞台を後にした彼らには、次の公演ではこの会場には全然入りきらないんじゃないか、次はどんな景色を見せてくれるのだろうという未来への期待がどんどん膨らんでくる。次の挑戦を一緒にワクワクしながら待てるファンは幸せだ。
 
今回のツアー最終日をワンマンライブとしては自身最大規模の新木場スタジオコーストで終え、夏にはSuGvistlipとの対バンツアーも控えているlynch.。大阪の会場は同じくBIGCATだ。葉月曰く同じジャンルにカテゴライズされているはずなのにアウェー感がすごい“異種格闘技戦”で、lynch.と彼らのファンがいったいどんな空間を作り上げてくれるのか、楽しみに待ちたい。
 

◆セットリスト
M01. MOON
M02. ANTARES
M03. GREED
M04. INVINCIBLE
M05. MIRRORS
M06. THE FATAL HOUR HAS COME
M07. GHOST
M08. ILLUMINATI
M09. GUILLOTINE
M10. ENVY
M11. MELANCHOLIC
M12. D.A.R.K
M13. GALLOWS
M14. BEAST
M15. INVADER
M16. 59.
M17. I BELIEVE IN ME
M18. ALL THIS I’LL GIVE YOU
M19. pulse_
M20. EVOKE
-encore-
M21. unknown lost a beauty
M22. ALIEN TUNE
M23. discord number
M24. NIGHT
 
◆lynch. 公式サイト
http://pc.lynch.jp/
 
◆インフォメーション
LSV <SuG・vistlip・lynch.による3マンLIVE>
・2016年07月17日(日)【香川】高松MONSTER
・2016年07月18日(祝)【広島】CLUB QUATTRO
・2016年07月20日(水)【福岡】DRUM Be-1
・2016年07月31日(日)【大阪】BIGCAT
・2016年08月01日(月)【愛知】名古屋 E.L.L
・2016年08月25日(木)【宮城】仙台 RENSA
・2016年08月30日(火)【東京】渋谷 TSUTAYA O-EAST
 
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