演奏

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TEXT & PHOTO:タカシ ミッシェル

あなたは影山ヒロノブというアーティストにどのようなイメージを持っているだろうか?
パワフルなロックシンガー?熱血系アニソンシンガー?それとも……

 
影山ヒロノブというアーティストは、ドラゴンボールZのオープニングテーマ曲「CHA-LA HEAD-CHA-LA」をパワフルに歌うアニソンシンガーというイメージが世間一般には浸透しているように思える。確かに「CHA-LA HEAD-CHA-LA」は世界で最も知られている日本の歌と言っても過言でなく、そんな稀代の“名曲”を歌っているシンガーというイメージが強くなってしまうのは、ある意味“宿命”と言えるかもしれない。しかし、実際の影山ヒロノブは、実に様々な顔を持つアーティストである。ソロシンガーとしての活動だけでなく、アニソン界のスーパーユニットJAM Projectのリーダー、LAZYのボーカリスト、そしてソングライターとして活躍している。海外での公演も非常に多い。
 
また所属事務所の代表をも務め、レコーディング曲数は既に1000曲以上!既に単なる1アーティストの枠を大きく越えて、もはやアニソン界を牽引する“ドン”と言っても過言ではないだろう。そんな多方面で活躍する影山ヒロノブが、月2回ほぼ欠かさずに行っているライブがある。影山ヒロノブ本人が、「原点に還る事ができる、非常に大切なライブ」と言う“ソロアコギライブ”である。今回は松江で行われたその様子を、レポートしてみよう。
 
会場は島根県松江市の、ほぼ中心に位置する松江AZTiC canova。しじみ漁でも有名な宍道湖から道を1本隔てた所に位置している。東京や大阪ではまず考えられない、非常にスケール感を感じるロケーションだ。会場内のポスターに目をやると、アマチュアバンドから旬なラウドロックバンドまで様々なバンド・シンガーがラインナップされており、この箱が、山陰地区における生のRockの発信地として大きな役割を果たしている事がわかる。

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キックオフチューンは『爆走兄弟レッツ&ゴーMAX!』の後期オープニングテーマ曲である「BRAVE HEART」。アコギライヴでは定番になっている鋼鉄兄弟のアップテンポで軽快なチューンだ。前サビの“Let’s go~~!!”の歌声で、一気にオーディエンスの心を掴む。Bメロの“Come on(Come on) Come on(Come on)”の時点で、既にコール&レスポンスとハンドクラップが自然発生を起こしている。たった1曲でオーディエンスのハートを鷲掴みにしてしまうのは流石!40年近いキャリアに裏打ちされた、高いスキルを感じる。
 
間髪入れずLAZYの「Pray」が続く。この曲は再結成されたLAZYのアルバム『Happy Time』に収録され、OVA『新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN』のオープニングテーマ曲となり、シングルカットもされた曲だ。ドラマティックなミドルテンポチューンは、影山ヒロノブのソウルフルな歌が心に染みてくる名曲。「BRAVE HEART」とは対極的なナンバーだが、前のめりになって聴き入っているファンがあちこちで見受けられる。
 
「暑い中来てくれてありがとう!」初っ端のMCで、オーディエンスに謝意を伝える影山ヒロノブ。「今まで(アコギで)行ったことのない都道府県、全部行くぞ~~!!」と軽く叫んだ後、「松江は10代の頃よくLAZYで来てたんだけど、今回はもう30ウン年ぶりくらい?!アニソン歌い出したか、歌ってなかったかぐらい……それぐらい前かな」と本当に松江でのライブは、久々である事を明かす。30数年前のライブを観に来ていたというファンが、この日の会場に来場されていた。
 
「僕の『30years3ounce』ってアルバムがあるんだけど、“1か月以内で作れたらデビュー30周年アルバム作っていいで!”って言われて、本当に必死になって1か月でアルバム作りました(笑)今からアルバム1枚本当に1か月で作るぞ!と思った時の心情を歌った曲です」との紹介があり、アルバムタイトルと同名の「30years3ounce」が披露される。元々アコギを中心に構成された曲のため、原曲に近いイメージだ。最後の“30years3ounce”のリフレインでは、自然発生的にオーディエンスからコールアンドレスポンスが起こる。
 
「次は僕のアニソンのデビュー曲を聴いてください」との紹介から、『宇宙船サジタリウス』のエンディングテーマ曲「夢光年」が披露される。アニメ本編は非常に個性的なキャラクターが織りなすSF調の作品で、なぜか毎回観てしまう不思議な魅力のある作品であった。作品の強い個性とは裏腹に、このエンディングテーマは、美しいメロディと歌詞が印象的な、心癒される曲。この曲が影山ヒロノブの手によって、アコースティックにアレンジされると、メロディと歌詞が更に美しさを増す。
 
影山ヒロノブの穏やかでスケール感のある大らかな歌に、オーディエンスは聴き入ってしまう。そして、前曲同様“ああ 夢見る 喜び ふたたび…”のラストサビで、オーディエンスと影山ヒロノブの歌声が一体となる。そしてギターのハーモニクス音でオーディエンスの歌はすっと止まり、影山ヒロノブの“夢光年”の歌声、ギターのアウトロで曲が終わる。大宇宙の美しさはこのような感じなのだろうかと……つい想いを巡らせてしまう。

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次のMCで「出雲大社にお参りに行ってきました」との報告がある。11月から始まるJAM Projectのツアーの成功祈願などを行ってきたのであろうか……。「両親は岡山出身なんですが、景山(本名)のルーツは、松江じゃないかと父親から聞いてまして、凄く景山っていう表札この辺多いでしょ?」の問いかけにオーディエンスから「多い、多い」との声が聞かれる「第二の故郷に帰ってきた」感じもしているという。
 
次の曲はアルバム『ROCK JAPAN』に収録されたオリジナル「Birthday eve」。曲が始まる前に「8月生まれの人はいますかっ!じゃあもっと広げて9月生まれの人っ!」との観客とのやりとりもあり、会場の雰囲気が暖かくなったところで「次は僕の中では珍しいバースデーソングなんですが」と紹介。原曲はミドルテンポでAOR調の曲であり、ノリを出すのが非常に難しい曲だと思うのだが、これがベテランのキャリアだろうか、アコギ1本で難なく難しいノリを表現している。そしてこの曲により、会場の雰囲気が更に暖かくなったように感じた。「もう1曲オリジナル、フユソラという曲を」と短い曲紹介があり、同じく『ROCK JAPAN』に収録された「フユソラ」が披露される。曲の最後には、長めのフェイクが見事に決まり、拍手が鳴り響く。
 
「54歳にして命がけでやっているJAM Projectの曲を2曲披露します。バクマンのコミックを一気に読んでその勢いで曲を作りました。歌詞も書きました」との紹介がありTVアニメ『バクマン最終章』エンディングテーマ曲「夢スケッチ」が披露される。アコギとハープの染み入る様なリズムが奏でられる中、真紅の照明が「自信が足りない時は 胸に手をあてて ボクらが綴ったページ読み返そう……」から始まるサビ部分では「うんうん、そういう時もあるよな」という聴衆の声が聞こえてくるかのようだ。「ボクらの夢スケッチの ゴールはどこだろう……」から始まるラストのサビあたりでは“夢を叶えた人も、これから叶えようとしている人”も、各々の想いを歌詞と重ねるかのように聴き入っているのが印象的。
 
続いて、TVドラマ『GARO』のオープニングテーマ曲「牙狼-SAVIOR IN THE DARK-」。牙狼は、『牙狼<GARO>黄金歌集 牙狼魂』という牙狼だけの曲を収録したアルバムが発売されるほど、その人気は高い。JAM Projectでのオリジナルバージョンは、激しいHEAVY METAL調だが、アコギライヴでの牙狼は劇場版『牙狼<GARO> ~RED REQUIEM~』のバージョンに近いアレンジだ。悲しみや怒り、憎しみを押し殺しているかのような静のギターと、叩きつける刃のような力強い歌声の対比が実にドラマティックだ。そのコントラストの利いた静と動のWカラーは、曲中にある“雄々しき姿の 孤独な戦士”そのものにも聴こえてくるかのようである。
 
曲が終わると、JAM Projectの15周年企画について、ユーモアを交えたMC。JAM Projectの15周年記念ベストアルバム『STRONG BEST』や代々木でのフリーライブ、横浜アリーナと神戸ワールド記念ホールでの「THE STRONGER’S PARTY」の話がされる。特に横浜と神戸は、両公演会場がアリーナという事もあり、スペシャルな演出があるかもしれない。超がつく実力者のシンガー5人が、全身全霊で織りなす、唯一無二のパフォーマンスのアニバーサリー公演は、ファンの想像以上の内容となるのは間違いないだろう。

◆影山ヒロノブ Official Website
http://airblanca.com/
 
◆Setlist
M01. BRAVE HEART
M02. Pray
M03. 30years3ounce
M04. 夢光年
M05. Birthday eve
M06. フユソラ
M07. 夢スケッチ
M08. 牙狼-SAVIOR IN THE DARK-
M09. 星の降る丘
M10. Welcome Toto…
M11. ヨーソロー
M12. 僕たちは天使だった
M13. CHA-LA HEAD-CHA-LA
-encore-
M14. こころはタマゴ
M15. 風音~君に逢いたくて~
M16. 明日天気になれ~僕は晴れ男~

◆Live Information
STRONG BEST発売記念フリーライブ
「THE STRONGER’S PARK」

・2015年09月29日(火)【東 京】代々木公園野外ステージ
JAM Project 15th Anniversary Premium LIVE
『THE STRONGER’S PARTY』

・2015年11月03日(火)【兵庫県】神戸ワールド記念ホール
・2015年11月29日(日)【神奈川】横浜アリーナ

 
「旅が好きで、アコギが好きで月2回アコギライブを続けています」とのMCの後、野川さくらの3rdシングル「星の降る丘」を披露。ハープのイントロが始まると同時に手拍子が起こるのだが、“サラ サラ サラ”と印象的な歌が始まると、手拍手が止み、オーディエンスは真剣に聴き入る。オーディエンスが影山ヒロノブの歌と演奏を、神経を研ぎ澄まし、懸命に聴いている事が伝わってくる。
 
「次はオリジナル曲で、都会に住む孤独で心の弱った男が、雨の日に猫を救って心が少し救われる、そんな男の歌です」とアルバム『30years3ounce』に収録された「Welcome Toto…」へ。シンプルな演奏と切々と噛みしめるような歌が印象的な大人のロックで、アコギライブではもはや定番となっている曲だ。曲の最後で“Frinds mine Friends mine Frinds mine……”を松江の中心で叫んだ!
 
「まだ1年も経ってないんですが、自転車のレースに出ることになりました」と最近かなりロードバイクに嵌っている事が明かされる。しばし自転車談話が続き、「宇宙戦艦ヤマトは小学生の頃、大切な事を沢山教えてくれた漫画だったという思い出があります」と曲紹介から、『宇宙戦艦ヤマト2199劇場版第5章』エンディングテーマ曲「ヨーソロー」が披露される。ギターのストロークは強くなり、スケール感のあるパワーバラードを、影山ヒロノブは大らかに歌い上げ、オーディエンスは酔いしれている。
 
「もし知ってたら歌ってください」と、あのフレーズが聞こえてきた。Angel……Angel……Angel……、そう『ドラゴンボールZ』のエンディングテーマ曲「僕たちは天使だった」。多くの人が耳にしているであろうこの名曲は、リリースから20年近く経っても、まったく色褪せない。アニソンの名曲は、その特色の一つに「何十年聴き続けても飽きない」という事がある。この曲はまさにその典型と言えるだろう。イントロの後に直ぐ大きな手拍子が起こる。曲の終わりには大きな拍手・歓声が起こったが、間髪入れずに「OK、last Come on!」のシャウト1発、影山ヒロノブを代表する曲のコードがかき鳴らされる!『ドラゴンボールZ 』のオープニングテーマ曲「CHA-LA HEAD-CHA-LA」だ!
 
待ってました!と言わんばかりに、今日一番の手拍子が起こる。“光る 雲を突き抜け Fly away”と歌に、Fly away!の大きなレスポンス。夢と冒険心をくすぐる歌詞は、何歳になってもワクワク感を与えてくれる。この曲を作詞した森雪之丞の著書によると、「“頭カラッポの方が 夢詰め込める”の部分は、現代の人は忙しすぎて夢を見る事すらできないという事を表現したかった」という一節があり、単にワクワク感を表現しているのではなく、“一度頭をカラッポにして夢でも見てみようよ”というようなメッセージが込められているようだ。
 
子供にはワクワク感を、大人になって改めて聞けばワクワク感+メッセージソングとして聞くこともできる。この曲は多くの歌手やバンドがカバーしているが、やはり影山ヒロノブのオリジナルは一味違う。骨太で、声量が豊かで、若々しい声。独特のビブラートにIan GillanDeep Purple)の様なパンチの利いたシャウト。やっぱりオリジナルは凄いと改めて思う。そして最後に「サンキューありがとうっ~~!!」と大声を響かせて、影山ヒロノブは惜しまれながらステージを去る。

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すぐにアンコールを促す手拍子が大きく鳴り響き、影山ヒロノブが再登場。再登場時のオーディエンスのテンションの高さは、今日一番の爆発力。影山ヒロノブも、「俺の方が盛り上げてもらったような感じでした、久しぶりに来てよかったです、最高で~す!」とこの日一番の大声援に応える。
 
「この曲は凄く好きな曲なんですがギターが難しい。自分にとっても可愛い曲なんですけど、聴いてください」との紹介から、アンコールは『鳥人戦隊ジェットマン』のエンディングテーマ曲「こころはタマゴ」へ。歌詞を一部引用すると“こころはタマゴ 小さなタマゴ 明日まであたためりゃ 鳥にもなれる 雲にもなれる もしかあの子が好きならば”と、○○戦隊や必殺技の名前がまったく歌詞の中に出てこない。戦隊ソングである事を忘れる程である。影山ヒロノブの優しさを込めて歌い上げる姿が目に焼きつく。間奏では軽く話しを挟み、オーディエンスから笑いも取っている。ギターと歌の調子が良いのだろう、と察する。
 
アンコール2曲目は「風音~君に逢いたくて~」が披露される。ライブの終演を惜しむかのように“逢いたくて 逢いたくて”のフレーズが心に響いてくる。「今日はあと一つ最高なことがあります。天気がメチャクチャいいことです!私のライブではかなり珍しい現象です」「今日天気になった事に感謝して、明日の天気を祈りながら、最後この曲でお別れしたいと思います」と語り、「明日天気になれ~僕は晴れ男~」をシャウト気味に紹介。影山ヒロノブ流の晴れ男ソングは、自転車好きの演者が陽光の下をロードバイクで「フィナーレ」という名のゴールに向かって疾走していくようである。
 
「今日は楽しかったかい?本当に楽しかったかい?楽しかったかい~~?また来たら来てくれるかい?」影山ヒロノブが問いかけるたびに、オーディエンスは大声で応じる。未来へ、彼方へ、未来へ、彼方へ……。ラストスパートのごとく、連続の全力のシャウトが会場に鳴り響き「最後までありがとうっ!サンキュー!」この日一番の拍手と歓声が起こる。だがすぐに再びギターを手にしして、ギターインストのメロディを奏でる。美しいギターインストが終わり、影山ヒロノブがハープとギターを置く。再び割れんばかりの拍手や「影ちゃんありがとう!」の声があちこちから聞こえてくる。影山ヒロノブは流れる汗を輝かせながら、ウルトラZの笑顔でオーディエンスに応え、ステージ下手へと消える。会場には、エンディングSEが鳴り響いた……。

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【特集】Editor’s Note…PASSION Mind20(桜坂秋太郎)
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【PHOTOレポ】影山ヒロノブ バースデーライブ2014
http://www.beeast69.com/report/100292

 
 
 
 


 
 
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