演奏

TEXT:鈴木亮介

ガールズバンド日本代表、SCANDAL――こう書くのは何度目だろう。書くたびにその実感が強まるのだが、”日本代表”と言うからには世界を視野に、活動の幅を広げ、さらなる支持の拡大を図らねば…。そんな決意と期待感を、彼女たちはツアー前の貴重な時間に本誌インタビューに対して語ってくれた(参照:「ROCK ATTENTION 38 ~SCANDAL~」)。
 
1月29日の東京・立川公演からおよそ5カ月の長期にわたるツアー『HELLO WORLD』はワンマンツアーとしては初めて訪れる大分、滋賀、茨城、沖縄を含めて国内31公演を敢行。次いでフランス、イギリス、ドイツ、シンガポール、台湾、アメリカ(シカゴ、ロサンゼルス、アナハイム)、メキシコ、そして香港の海外8カ国10都市をまわり、約7万人を動員予定という、まさに「ワールドツアー」だ。
 
その国内終盤戦、30本目となる公演が4月12日に東京国際フォーラム ホールAにて開催された。実はこのツアー中に、とてもSCANDALらしい、SCANDALにしか創り出せないような、ライブにおける”新スタンダード”がメンバーと観客との間で出来上がりつつあるという噂を耳にした。それも気に留めつつ、いざ世界へ挑戦するSCANDALをしっかりと見届け、見送ろう。手汗を握り締めながら、開演の時刻を待つ。
 
SCANDAL メンバー:
HARUNA(Vocal & Guitar)、MAMI(Guitar & Vocal)、TOMOMI(Bass & Vocal)、RINA(Drums & Vocal)

 


カントリー調のセット。ステージの両サイドにはソファーラウンジやバーカウンターも用意されており、年配の、あるいは往年のロックフリークならすぐに、それがThe Cavern Clubを模したものであることに気づくだろう。今宵SCANDALは、自らをアマチュア時代のThe Beatlesになぞらえて、酒場のショータイムを披露するのだろうか。弥が上にも、期待が高まる。
 
そして、ショータイムのスタート!BGMには穏やかなジャズナンバーがかかり、メンバー4人がゆっくりと歩いて登場。これまでワンマンライブでは演奏しながら幕が開く、といった登場の仕方が通例だっただけに、今か今か、と期待しながら楽器を持ちセッティングするメンバーの姿を見つめるのはなんだか新鮮だ。
 
1曲目は「love in action」。MAMI作詞・作曲の、新譜『HELLO WORLD』収録曲だ。場末の酒場で4人の音楽仲間が気軽にセッションしているような、そんな親近感を2階の後方の席にいても感じる。かと思うと2曲目「OVER DRIVE」は横浜アリーナや大阪城ホールを思い出す、大迫力かつ楽しさ全快のステージ。HARUNAがステージ前方に乗り出しギターをかき鳴らすと、観客も全力の手拍子で応える。
 

 



「clap your hands! タオルの準備!」そう煽ると、馴染みのフレーズを轟かす。「DOLL」、そしてMCをはさんで「瞬間センチメンタル」、「SCANDAL BABY」と初期曲を序盤で立て続けに披露。こうして同じ楽曲を毎回聴く度に思うのだが、毎度ツアーのコンセプトもセットリストも異なり、同じ曲でありながら全て違った表情を見せ、どのライブにもそれらの定番曲がしっくりくるのだ。常に進化を続け、新しい世界を見せてくれるSCANDAL。その中で、同じ曲を以て定点観測していると、(自分はたかだか3年弱のファン暦だが)「SCANDALとともに人生を歩んでいる」という気持ちが強くなり、感慨深い。
 
「SCANDAL BABY」の大合唱を経て、客席は一つになる。そして、ステージに立つメンバー4人はその勢いを加速させていく。「お願いナビゲーション」は本ツアーのスケールに調和する、ダイナミックな演奏。暗転し、RINAの4カウントから、MAMIのリフ。「下弦の月」のこのイントロは世界に通用するクールさがある。4人の音が合わさって、夜の深みを表現。この楽曲は、ヨーロッパやアメリカのロックファンにどう映るのだろう。
 
メンバー紹介と軽いMCをはさんで、ライブはどんどん続く。「ここからたっぷりとアルバムの曲を」ということで、HARUNA作の「Graduation」、MAMI作の「本を読む」、TOMOMI作の「缶ビール」…と続く。TOMOMIの低音が美しく映える「Graduation」、RINAの軽快なドラムがMAMIのボーイッシュな歌声を引き立てる「本を読む」、間奏でMAMIのギターがスパークする「缶ビール」…と、改めてライブで聴いていて気づいた。これらの楽曲の魅力は、制作者の個性が際立つソロナンバーの延長ということにとどまらず、それぞれの曲で4人それぞれ他のメンバーの魅力を引き出しているということだ。これこそSCANDALにしかなしえない表現。セルフプロデュースを極めた『HELLO WORLD』は最高な1枚であると、改めて強調したい。
 

 



そして、このセットリストの流れから次に来るのはRINA作の「おやすみ」だろうと予想していると、そのRINAがドラムセットから降りて移動している。これまで、日本武道館でのドラムソロ、大阪城初ワンマンでのソロボーカル、夏フェスでのシンセサイザー演奏など、節目節目で新たな一面を見せてくれたRINAだが、今回は…パッとステージが明るくなる。何と、RINAが手にしているのはギターだ!MAMIHARUNAとともに、まさかのトリプルギターで、「おやすみ」を披露!
 
想像だにしなかった、ベースのTOMOMIも含め4人が横一線に並ぶ姿に、鳥肌を立てずにはいられない。さらに驚いたのは、「歌は苦手」と謙遜していたRINAのボーカルがいっそう艶っぽく、エモーショナルに進化していたこと。先日のインタビューでも「全員が作詞作曲メインボーカルをとるバンドになったことで新しい世界が広がった」と語っていた(参照:「ROCK ATTENTION 38 ~SCANDAL~」)ように、四者四様の魅力を持った歌声も、SCANDALの新たな武器に加わったようだ。
 
さて、ショーが一つの山場を超えると、眺めのMCタイムに。TOMOMIは下手のソファーに、RINAMAMIは上手のバーカウンターに、そしてHARUNAは中央のアンプにそれぞれ腰掛ける。観客もHARUNAに促されて着席。なんだかライブ前に会場内でリラックスするメンバーの様子を見ているようで、再び自分が2階席後方にいることを忘れるくらいの親近感を覚える。
 
今回のツアーは単にセットをこういうイメージにしたというだけでなく、ちょっとした言葉の端々にもしっかりと「英国のライブパブでのショー」を意識したセリフが飛び出たり、バーカウンターには燕尾服のマスターが登場して飲み物を出したりと、こだわりも一入。(ちなみにRINAのオーダーは「ウーロン茶、ロックで」、TOMOMIは「白湯」!)
 
今回のツアーでは世界に広めたい日本国内のご当地トリビアを発掘しようということで、各地域で様々なトリビアが見つかったのだとか。そこで、節目の30公演目となる東京公演で、これまでの印象的なものを振り返ることに。「靴下に穴が開いているのを『おはよう靴下』と言う」(宮城)、「何でも語尾に『~知らんけど』と言う」(大阪)などを抑えて、最も印象に残ったトリビアは岩手の「遠野市ではカッパ捕獲許可証を発行している」というネタに決定!どれだけメンバーの印象に残ったかというと、実際にRINAがカッパ捕獲許可証を取得したというほど。全国を回ってパワーを届けたSCANDAL、4人自身も全国各地でパワーをもらったようだ。
 
ライブは後半戦。「Winter story」、「Departure」と、『HELLO WORLD』収録の2曲を淑やかに披露。そして「会わないつもりの、元気でね」から再びパワフルなロックナンバーを連続し、観客を踊らす。15曲目「サティスファクション」はMicrosoft Windows 8のCMソングに日本人ミュージシャンとして初めて起用された曲。ワールドワイドに乗れる曲だ。そして16曲目は爽快感あふれるファンタジックな楽曲「Hello! Hello!」。2ndアルバム『TEMPTATION BOX』収録のレアナンバーが披露され、客席はさらにヒートアップする。
 
   

「夜明けの流星群」から怒涛の終盤戦。曲毎に手を挙げたり振ったり絶叫したりと、客席も疲れを見せずに盛り上がり続ける。「Your song」ではHARUNAのストップモーションが最高にクール!
 
そして本編ラスト、19曲目は『HELLO WORLD』のリード曲であり、今のSCANDALの勢いをそのままに表現した「Image」。「どんな場所へもまだ自由に行ける 今までの自分もすべて信じて」…そんな歌詞の通り、ワールドツアーへと旅立つSCANDALの明るい前途を表すような、希望に満ちた空気感、まさに”多幸感”あふれる中、ライブ本編は幕を閉じる。
 

ここで、普段のライブなら「アンコール」の声が連呼されるのだが、この日は違った。冒頭に書いた「とてもSCANDALらしい、SCANDALにしか創り出せないような、ライブにおける”新スタンダード”」を、今目の当たりにする。1階席のどこからともなく、「オーオーオー」と歌声が聞こえてくる。「Your song」のサビの部分だ。
 
このツアーの途中からアンコールの呼び声の変わりに「Your song」を皆で歌って待つ、という新定番が生まれたのだ。1階席では徐々に「オーオーオー」の声が大きくなっていく。2階席は…ためらいや気恥ずかしさからか、最初は皆様子見という感じだが、徐々に手拍子が増え、そしてついに、歌声が!「Your song」が”Our song”に、一つになった瞬間だ。
 
そして、その興奮は、さらに上書きされる。ステージ両サイドのスクリーンにはライブフォトをバックにこれまで30公演の日程を振り返る映像が流れていたのだが、一通り終わると、『SCANDAL ARENA TOUR 2015-2016 「PERFECT WORLD」』という文字が!年末から来年始めにかけて、神戸、名古屋、東京の3都市でアリーナツアーを開催することが、メンバーがステージに戻る前に、スクリーンでサラッと告げられる。
 
よく見ると、東京公演は日本武道館で、2daysとなっている。大げさな告知や予定調和の”サプライズ”とも違う、ともすると見落としてしまいそうなこのインフォメーションは粋だ。そして、メンバー再登場。HARUNAはまず「みんな歌ってくれてありがとう」と「Your song」の合唱に深謝。そしてアリーナツアーは「PERFECT WORLD」という表題の通り、本ツアーの続編という位置づけであることを明かした。
 
「ずっとやってたいなと思えるツアー。海外でも頑張ってきたい」と海外公演への挑戦を前にした心境を語り、「みんなの明日が輝きますように」と心を込めて2012年2月リリースの12thシングル「HARUKAZE」を披露。さらに、今回のツアーを回りながら作ったという新曲を披露。4つ打ちの軽快なナンバー、音源化が期待される。そして最後はみんなで飛び跳ねる「EVERYBODY SAY YEAH!」で、大団円!
 

メンバーがステージを降り、「夜明けの流星群」がSEで流れ始めても、観客の多くは席に残って曲に合わせて手を振る。この光景を見るといつもホッとする。会場から外に出るまで、愛にあふれた空間が持続している。
 
日本全国を巡って力を蓄えて、海外に出発したSCANDAL。世界9カ国10都市のツアーを終えると、7月には主催ライブ「バンドやろうよ!!Vol.6」、そして8月にはSCANDAL MANIA会員限定ライブや、夏フェスなどイベント出演などが控えている。世界をぐるっと一周回って戻ってきたガールズバンド日本代表・SCANDALがどのような進化を遂げているか、期待し続けたい。
 

◆セットリスト
M01. love in action
M02. OVER DRIVE
M03. DOLL
M04. 瞬間センチメンタル
M05. SCANDAL BABY
M06. お願いナビゲーション
M07. 下弦の月
M08. Graduation
M09. 本を読む
M10. 缶ビール
M11. おやすみ
M12. Winter story
M13. Departure
M14. 会わないつもりの、元気でね
M15. サティスファクション
M16. Hello! Hello!
M17. 夜明けの流星群
M18. Your song
M19. Image
-encore-
E01. HARUKAZE
E02. (新曲)
E03. EVERYBODY SAY YEAH!
◆SCANDAL 公式サイト
http://www.scandal-4.com/
 
◆ライブ情報
「バンドやろうよ!!Vol.6」
・2015年07月19日(日)【東京】赤坂BLITZ
 
SCANDAL MANIA LIMITED LIVE 2015『Q』
・2015年08月21日(金)【東京】赤坂BLITZ
※SCANDAL MANIA会員限定イベント
 
SCANDAL ARENA TOUR 2015-2016
「PERFECT WORLD」

・2015年12月09日(水)【兵庫】神戸ワールド記念ホール
・2015年12月23日(祝)【愛知】日本ガイシホール
・2016年01月12日(火)【東京】日本武道館
・2016年01月13日(水)【東京】日本武道館
 
チケット:
SCANDAL MANIA 先行:6月26日(金)12:00~6月29日(月)18:00
 ※2015年5月20日までに新規入会(入金)した方が対象となります。

https://scandalmania.jp/
CLUB SCANDAL先行:7月03日(金)12:00~7月06日(月)18:00

◆リリース情報
6thアルバム『HELLO WORLD』
・2014年12月03日(水)~発売中

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