演奏

lead_hitomi

TEXT:金井孝介、鈴木亮介

演劇集団キャラメルボックス。演劇に少しでも詳しい人ならば、一度はその名を耳にしたことがあるだろう。成井豊、加藤昌史らによって1985年に設立されて以来、エモーショナルな芝居からSF、時代劇に至るまで様々なジャンルの演劇を上演し、日本の演劇シーンにその名をとどろかせている。
 
今回本誌では、2014年3月6日(木)から23日(日)まで上演されたアコースティックシアター『ヒトミ』、『あなたがここにいればよかったのに』の二本立て公演をご紹介する。キャラメルボックス史上初となる二本立ては成井豊いわく「目と胸にしみる物語」。派手な演出を排して、登場人物の気持ちを丁寧に細やかに描くシリーズとして定評のあるアコースティックシアター、その魅力をお伝えしたい。
 

★記事末尾に次回公演『鍵泥棒のメソッド』の情報も掲載!

キャラメルボックスは、通常の公演の他に上演時間が約45分~60分の「ハーフタイムシアター」や、他の劇団とコラボレーションし上演を行う「アナザーフェイス」など、様々な試みを行っている。そして今回の公演は「アコースティックシアター」。前述の通り派手な演出を排し、装置・音響・照明に頼らずにできる限り役者の感情を見せるというもの。役者としての真の実力が問われることになる、難しい舞台だ。
 
 

『ヒトミ』は、事故によって首から下が動かなくなってしまったピアノ講師の女性の物語。1995年に初演された作品だ。
 
物語は、主人公・ヒトミがかつて恋人であった小沢と共に、とあるホテルに自分の足でやってくるところから始まる。実は入院先の大学病院の研究チームが開発した装置・ハーネスのモニターに選ばれていたヒトミ。ハーネスをつけたことにより、また体を動かすことができるようになったのだ。しかしヒトミは、肝心のピアノには誰が何と言おうと触ろうとしない。そのうち、ハーネスには重大な欠陥があることが判明する…
 


特筆すべきは、なんといってもヒトミ役・実川貴美子の演技だろう。体が動かなくなり、ピアノへの夢を断たれそうになるピアノ講師としてのヒトミと、一人の女性としてのヒトミの両方を感じさせる、素晴らしい芝居をしていたように思う。また、随所に含まれるコメディー的な演出も、会場の笑いを誘っていた。シリアスなストーリーを軸にしつつ、その邪魔になることなく笑いを交えてくるあたり、脚本・演出の成井豊、真柴あずき両名の技量を感じさせる。
 
 

もう1つの作品は『あなたがここにいればよかったのに』。こちらは真柴あずきが単独で脚本・演出を手がけた新作だ。
 
 

書店でアルバイトをしながら翻訳家を目指す主人公・まひろ。恋人からもプロポーズを受け、公私とも順調に見えたある日、突然見知らぬ男・大志に必ず不幸になるから結婚をやめるよう、強く説得される。馬鹿にしているのかと憤りつつ、大志の予言通りのできごとが続くことで困惑するまひろ。婚約者の嘘を追及し悩むまひろに、大志は告げる。「僕は君の未来を知っている。一度目の人生で君に会ったから…」
 
ストーリーはパラレルワールドからの使者・大志を巧妙に用いて展開していくが、その中心テーマになっているのは私たち誰もがぶち当たる壁、「信じる」ということ。いつだって人は不安で、何かを信じたくて、騙されたくなくて、もがき苦しむ。時に優しさから嘘をついたり、なりたい自分になりきるため自分をだましたりする。信じてもらうことは難しい。そんな悲痛な心の叫びが、大志役・筒井俊作の全身から表現される。おっとりマイペースなまひろ役の林貴子も、静と動を巧みに演じ分け、人の持つ葛藤、激情を客席に伝える。
 


今作では音楽にも注目したい。『あなたがここにいればよかったのに』は全ての劇中曲に、仙台のロックバンド・EGNISHの楽曲が使用されている。前向きな感情が音に歌に込められた楽曲が、エモーショナルな芝居を引き立てる。EGNISHは残念ながら4月25日をもって解散するが、劇中の曲目リストがキャラメルボックスのHP(http://www.caramelbox.com/stage/acoustic2014/music-you.html)に掲載されているので、観劇した人はもちろんのこと、機を逃した人もEGNISHの音楽に触れて、劇の熱量を感じ取ってほしい。
 
ホームページにはこのほか、製作総指揮を務める加藤昌史の「観終わってから読んでください。」と題したコメントも掲載されており、今作に込めた思いがつづられている。中でも印象的なのは、「信」というテーマについて。その一節を引用しよう。
「信じる、ということは「疑わない」ということと一緒ではありません。むしろ、「信じる」より「信じてもらえるように生きる」こと、つまり誠実に生きることが大切なのだと思います。誠実に生きている人を目の前にすると、その誠実は溢れてきます。そしてその溢れた誠実に、自然に身を任せることができます。それが、「信じる」ということなのだと思います。疑っても疑っても、疑えなくなるほどに相手が誠実である、ということ。」
 
 

今回もまた挑戦の姿勢を新たにした演劇集団キャラメルボックス。役者の本懐を発揮させ、「生」に肉薄するリアルな舞台を作り上げる今回の芝居には心を奪われた。これからもキャラメルボックスの芝居を心待ちにしている観客がいる限り、彼らは自身の演劇を進化させ続けていくことだろう。
 

◆演劇集団キャラメルボックス 次回公演のご案内
『鍵泥棒のメソッド』

 
cb11

2013年の第36回日本アカデミー賞・最優秀脚本賞を受賞した内田けんじ監督作品の舞台化です。『アフタースクール』から内田監督の大ファンだった成井豊の希望で実現しました。先が読めなくて、スリリングなのに、最後はハートウォーミングな物語。内田監督作品に初挑戦です!! 乞うご期待!!
 
原作:内田けんじ
脚本・演出:成井豊
 
出演:
<Black>畑中智行 阿部丈二 渡邊安理
<White>多田直人 岡田達也 岡内美喜子 ※ダブルキャスト
大森美紀子 西川浩幸 前田綾 大内厚雄 石原善暢 小多田直樹 笹川亜矢奈 毛塚陽介 関根翔太
 
cb12
日程:
・2014年05月10日(土)~06月01日(日)
【東京】サンシャイン劇場
 
・2014年06月05日(木)~06月10日(火)
【神戸】新神戸オリエンタル劇場
 
チケット発売中:
インターネット予約(学生割引、OVER60割引有)はこちら
http://www.caramelbox.com/04_ticket_f.html
 

◆演劇集団キャラメルボックス 公式HP
http://www.caramelbox.com/

 ◆関連記事
【レポート】銀河英雄伝説 第四章 後篇 激突
http://www.beeast69.com/report/99049
【レポート】ジルゼの事情
http://www.beeast69.com/report/96379
【レポート】フィッシュストーリー
http://www.beeast69.com/report/37093


 
 
  コラムニスト
SABER TIGER
SABER TIGER
2018年8月12日更新
SABER TIGER「牙虎見聞録」第20回
The HIGH
さかもとえいぞう
2018年7月12日更新
人生の宿題その2
mondo
中村 “MR.MONDO” 匠
2018年8月27日更新
第十一回「スペインツアー2018」
PINK SAPPHIRE
PINK SAPPHIRE
2018年4月12日更新
第19回「TAKA」
木暮“shake”武彦
木暮“shake”武彦
2017年12月10日更新
その7「Heart Of Gold」
永川敏郎
永川敏郎(Toshio Egawa)
2018年5月22日更新
Progressive Man 第40話