演奏

CHALLENGE! THE WEST 2010 Vol.4〜

TEXT:桜坂秋太郎 PHOTO:曲香-mageshang-

2010年4月20日、渋谷O-WESTへ足を運ぶ。『CHALLENGE! THE WEST』と題したイベントを観るのはこれで二度目。前回はプライベートで観たイベントだ。文字通り渋谷O-WESTへのチャレンジということで、各バンド力の入った演奏をしてくれるに違いない。今日の5バンドは事前情報によるとかなりバラエティーに富んでいて楽しみだ。道玄坂を会場へ向い歩いていると、宣伝トラックが何台も通過する。ここ数年で定着した広告手法の一つだ。90年代までは、大掛かりな宣伝をしてもらえるのは、ロックスターの証だった。そんなことを思いながら会場に到着。

道路をはさんだ向かい側にある渋谷O-EASTよりは小さいものの、O-WESTもキャパはかなり広い大型ライヴハウス。ここをソールドアウトすることができれば、バンドが一皮むけることは間違いない。またPV(プロモーションビデオ)撮影などにも利用されている場所なので、舞台や照明の設備はホールクラス。良い演奏だけでなく、プラスαが求められる会場だ。いったいどのようなステージを展開してくれるのか、とても楽しみ。



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1バンド目はJADESTER。メンバーは、蓬田政志(Vocal & Guitar)・青柳慎太郎(Guitar)・土橋直樹(Bass)・広瀬一磨(Drums)。彼らは北海道からの遠征。JADESTERの中心人物である青柳慎太郎は、元SABER TIGER下山武徳SIXRIDEで活躍していた、といえばピンとくる読者もいるだろう。才能豊かなギターで名をはせた青柳慎太郎が、SIXRIDEの後に結成したバンドだ。良質のアルバムをリリースし、コンスタントに上京してライヴを展開している。文句無い演奏力の上に、生き生きしたメロディが乗っている楽曲は、まさにJADESTERの真骨頂。フルセットのステージが観たい。

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JADESTER 公式サイト

http://www.jadester.net/

■セットリスト

M01. The Birth of the Beginning ~SE~
M02. HAPPINESS
M03. LOST
M04. TRAPSTER
M05. マゾヒスティック・ドライヴ
M06. RIVER
M07. NEIGHBOR PSYCHO

■インフォメーション
・2010/6/19(土) 【札 幌】SUSUKINO 810
・2010/6/24(木) 【渋 谷】La.mama
・2010/6/25(金) 【川 崎】Serbian Night
・2010/7/18(金) 【札 幌】KLUB COUNTER ACTION



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2バンド目は、the four-leaf clover 。メンバーは、tsuno(Vocal)・aneyoshi(Guitar)・tatsumi(Bass)・keita(Support Drums)。まず伝わってくるのは、このバンドは詞を大切にしているということ。そしてtsunoの表現力がこのバンドの個性。独自の世界観を展開している。何々系としばってイメージに忠実であろうとするバンドではなく、あらゆる音を取り込んで、the four-leaf cloverというフィルターで消化しているかのようだ。しかし歌物的な印象とは裏腹に、楽曲や演奏は結構ロックしている。この辺のバランス感覚は、メンバーの持つセンスなのだろう。ノリ一発なバンドではないので、事前に曲を聴いてからライヴを観ると、より楽しめるはずだ。公式サイトで音源が聴けるので、チェックしてほしい。

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the four-leaf clover 公式サイト

http://www.thefourleafclover.net/

■セットリスト

M01. fly high
M02. 叶わぬ夢に花束を
M03. un-Real
M04. 月
M05. secret code
M06. silver world



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3バンド目は、L.E.A.P. 。メンバーは、Makoto(Vocal & Keyboard)・tAkkn(Acoustic Guitar)・Martha Ma[まーさま](Guitar)・霧島大吾郎(Bass)・ラヴリィさん(Drums)。スタート直後からL.E.A.P. ワールドが炸裂。一気にオーディエンスをその世界へ連れて行ってくれる。相当な場数を踏んでいるのだろう、メンバー全員がオーディエンスにアピールする余裕がある。初めて聴いたのに一緒に歌ってしまうような、そんなフレンドリーなメロディがL.E.A.P.の魅力。他バンドのファンも魅了する、エンターテイメントの精神には脱帽だ。ライヴバンドとしての力量は素晴らしく、次のチャレンジに期待したい。

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L.E.A.P. 公式サイト
http://sound.jp/leap/

■セットリスト

M01. クリティカル・ロード
M02. LYRICAL
M03. ヒコウキ
M04. 終電なんて関係ない
M05. 気にしていてもいいですか?
M06. L.E.A.P.のうた

■インフォメーション
・2010/6/15(火)【横 浜】BAYSIS
・2010/6/19(土)【本八幡】ルート14
・2010/6/30(水)【目 黒】LIVE STATION
・2010/7/02(金)【本八幡】ルート14
・2010/7/23(水)【目 黒】LIVE STATION



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気がつくとオーディエンスの前方にタオルを持った女子が集まっている。4バンド目は、back”cast”away。メンバーは、雅磯(Vocal)・yu-to(Guitar)・MAsA(Bass)・しゅーへい(Drums)。ルックスに統一感があって、勢いのある演奏だ。勢いがある演奏というのは、生のパワー感につながり、実はロックバンドのライヴで一番大切なこと。それが無いなら、家で観るDVDやiPodで聴いているのと変わらないからだ。back”cast”awayは、生演奏の醍醐味をオーディエンスに伝える術を知っているバンド。タオルを持つ女子達の心をつかむのも当然だろう。一体感の演出がとても上手だ。

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back”cast”away 公式サイト
http://www.back-cast-away.com/

■セットリスト

M01. 蟲の星
M02. LINE
M03. Binary star
M04. PARADISE
M05. Imitation Lauguage
M06. ナビゲーター

■インフォメーション
・2010/6/24 (木)【渋 谷】TAKE OFF 7



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5バンド目は、ニジイロペダル。メンバーは、岡田智徳(Vocal)・ナカムラケント(Guitar)・GOD(Drums)・達郎(Support Bass)。今日最後のバンドだ。各メンバーの出す音が素晴らしい。特にドラムは、生音が私のいる2階席まで聴こえる。GODはその大きな体にマッチした、パワフルで抜けのよいドラムを披露。実に気持ちよい。サウンドの要、ナカムラケントの歌を生かすようなギターフレーズと、感情表現の才能豊かな岡田智徳の歌は、ニジイロペダルの醍醐味だ。残念なお知らせとして、次のライヴで解散する話がMCで出る。これだけの可能性を秘めたバンドが無くなるというのは、実に惜しい。

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ニジイロペダル 公式サイト
http://sound.jp/leap/

■セットリスト

M01. Hey!miss“FUTURE”
M02. BORDER
M03. とまり木
M04. いのちづな
M05. ミライボタン
M06. 蕾星

終演後、各バンドが物販コーナーでファンと語らいの時間を持っている。バンドを応援してくれるファンとの交流は、バンドにとってもファンにとっても無くてはならない時間。2階席からその様子をしばらくながめているが、どのバンドも本当にファンを大切にしている。ファンに愛情を注げるバンドは、まだまだ成長する要素があると思う。バンドはバンドだけで成長するのではなく、ファンによってバンドもまた成長していくものだから。どんなに偉大なロックスターとなっても、その初心は忘れてはいけないことだと思う。自分の音楽だけを追求したいなら、DTM(※デスクトップミュージック)で作った楽曲を、自分一人で聴いて悦に入っていればいいのだから。

『CHALLENGE! THE WEST 2010 Vol.4』の感想は、一言でいうと“お得”なイベント。個性豊かな5バンドを一度に観ることができるだけでなく、すべてのバンドがハイレベルというのがポイントだ。どのバンドもメジャー契約をして、明日にでもテレビで観てもおかしくないバンドばかり。むしろ、こういうハイレベルなバンドが、もっとシーンに躍り出て、日本の音楽マーケットを面白くしていかないといけない。セールスありきの従来の音楽ビジネスが崩壊した今、新しいやり方で必ず文化を作れると私は思っている。弊誌ビーストのレポートが、その一部を担えれば幸いだ。