演奏

B.T.H. NIGHT

TEXT & PHOTO:桂伸也

「日本のヘヴィ・メタル」の、真の姿を追求する強力なラインナップで、更なるラウド感を欲するファン達を唸らせてきた、 B.T.H. RECORDS。そして、日本のヘヴィ・メタル・シーン創世記より一貫したオカルティックなスタイルと、ヘヴィ&ダークなサウンドで、リスナーを奇怪な世界へ誘い続けてきた古豪、 JURASSIC JADE。B.T.H. RECORDS レーベル創立5周年 及びJURASSIC JADEバンド結成25周年というビッグな節目の時期を迎えたアニヴァーサリー・イベントとして、この日JURASSIC JADEを含めた、B.T.H.RECORDSに所属する強力なラウドサウンドを身上とした猛者達が結集、ヘヴィ・メタルならではのハード・コアなイベントが開催された。その現場にBEEASTスタッフが潜入、その恐怖の一部始終をレポートする。

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CODE RED : Nariaki Takahashi(Vocal & Bass)、Tomohira Inoue(Drums)、Izuru Inoue(Guitar)
 
この強力なイベントのスタートを飾ったのは、質実剛健、圧倒的なヘヴィ・スラッシュ・サウンドを誇るトリオ、CODE RED。終始スラッシュ・メタルでは王道とも言える直立不動のスタイルで、とにかくハード&ヘヴィなビートを叩き出し、断末魔のようなデスヴォイスをフロアに御見舞い、サウンドだけでここまで人は変貌するのか?と思わせるような陶酔のヘッドバンギングを繰り出す。兆速ビートが一転、地を這うようなリフを刻み込んだかと思えば、逆も然りで、その極端な構成と爆音の嵐で終始フロアを圧倒した。派手なルックスは全く見られないが、それこそDEATH&THRASHの勲章ともいえる硬派な身上で、一気に会場の気温を上昇させた。
 
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◆CODE RED 公式サイト
http://homepage2.nifty.com/codered/
◆セットリスト

M01. Intro
M02. Wolves
M03. Hunger
M04. Helldriver
M05. Destroy
M06. Blaze
M07. Buried

◆インフォメーション
2011/03/05(土)【新 宿】ANTIKNOCK

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SPIKE HONEY : KIMARU(Vocal)、JOE(Guitar)、EIJI(Bass)、KINO(Drums)
 
Metallicaの「Enter Sadman」のリフをいきなり奏で、意表をついたオープニングで続いたグループは、SPIKE HONEYの4人。頑固一徹、”自分達のスタイルを貫き通す”という溢れるオーラすら見られるそのスタイルは、そのサウンドからもルックスからも滲み出し、溢れるギターのフィードバック音から飛び出す爆音ビートは、正しくあのMotorheadを髣髴させる。下手な小細工など無用、終始”押せ押せ!”の力技で一方的にフロアを圧倒し、オーディエンスをノックアウト。飾り気も素っ気もないVo.のKIMARUのスタイルが、逆に見る者の気持ちを掴む。荒削りなそのパフォーマンスからは、流麗さ、様式を徹底的に廃し、何かライフスタイルにまで滲ませる信念すらかんじさせ、ロックの本質すら叩きつけられるような衝撃を発する。「生温いロックに物申す!」そんな潔い姿勢に好感すら覚えた。
 
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◆SPIKE HONEY 公式サイト
hhttp://www.k4.dion.ne.jp/~s-honey/
◆セットリスト

M01. ドライヴァエッジ
M02. ターマイト フィーバー
M03. ロアリング
M04. カケラ
M05. ラスティ
M06. サベージ
M07. オーバーキル

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ULTIMATE LOUDSPEAKER : RYO(guitar)、TABO”KODAIRA(Bass)、SHU(Drums)
 
イベントも中盤、更に強力なグループが登場した。ULTIMATE LOUDSPEAKERのトリオ。やはりジャパニーズ・メタル創世記を飾った古豪バンド、CASBAの元メンバーRYOTABO”KODAIRAが結成した新星バンドだ。SHUのテクニカルかつ堅実なドラミングをベースに、KORNFieldyを髣髴させるTABO”KODAIRAの変則ベーススタイル、そしてRYOの破壊的世界観を存分に表した凶悪ギターとデスヴォイス。切れ間ない爆音の中で、”3人でここまで出来るのか”という不思議なフィールドを作り出す独特のサウンド。ギターをできるだけシンプルなコードストロークにし、逆に絶妙なまでに動き回るベースラインの妙技は、スラッシュ/デスメタルというカテゴリの中では新鮮な響きに聴こえる。が、テクニカルさだけに囚われず、特にスティックのティップが折れても叩き続けるドラムのように、ハード&ワイルドなスピリッツさえ覚える。”ベテラン”というにはまだ惜しいグループだ。
 
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◆ULTIMATE LOUDSPEAKER myspace
http://www.myspace.com/ultimateloudspeaker
◆セットリスト

M01. ユガミの底から
M02. ワイルドプレイ
M03. フーズクローザー
M04. 立像
M05. プロパガンダ
M06. ゼロファイター
M07. シャークケイブ

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五人一首 : 松岡あの字(Lead & BackingGround Vocal,Throat & Guitar)、高橋史男(Lead Guitar)、山口岳(Drums)、百田真史(Piano & Synthesizer)、大山徹也(Bass)
 
全員修行僧、僧侶、及び古来の姫のようなファッションで異様な雰囲気を醸し出し登場したのは、五人一首。デスメタルにプログレッシブ・ロックのスパイスをふんだんに取り入れた、複雑な構成が持ち味のバンドサウンドで、見るものをその世界に誘う。とめどなく流れる変拍子と、そのいきなりのチェンジを絶妙なタイミングで切り替えてくる超人的なバンドサウンドの妙。これだけの難解なフレーズ群を纏めるのは、バンドメンバー個々の実力としてもかなりの力量を問われることは間違いなく、総合的にかなり優れた音楽性を誇っている。鳴り響くリズムセクションの上で鳴り響く2本のヘヴィなギターリフ。そして時にそこに光り輝く様に流れる華麗な高橋のギターソロ、そしてデスヴォイスとハイトーンを絶妙に使い分ける松岡の声。特にファッションからイメージされる”和”を感じさせるものではないが、ゴシック系様式美は一つの彼等のスタイルとも見られる。既に10年選手のベテランの今後の活躍に期待していきたい。
 
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◆五人一首 公式サイト
http://www.gonin-ish.com/
◆セットリスト

M01. 狂骨の夢
M02. ナレノハテ
M03. 傀儡の造形
M04. 月と半魚人
M05. 桜の主

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JURASSIC JADE : HIZUMI(Vocal)、GEORGE(Bass)、NOB(Guitar)、HAYA(Drums)
 
そして真打、JURASSIC JADEの登場だ。天使の声がする奇妙なSEから、その幕が上がった。セッティングが終わったメンバーの中を、あの映画「リング」の貞子を髣髴させる恐ろしい形相のHIZUMIが登場、一気にフロアをモッシュ・ピット化しそうなほどの興奮をフロアにたたきつけた。このとき、25周年を迎えたJURASSIC JADEの、その古豪たる証のような貫禄をフロアに誇示し、そのまばゆいばかりの光に、観衆は恐れをなすように激しくモッシュし、ヘッドバンギングと絶叫をフロアに返すほかなかったようだ。地獄の底を思わせるハード&ヘヴィさをハイスピードナンバーで現せば、一転奇妙な精神世界へ誘うようなサイレント世界に急に誘われたり、また逆に、怒涛の爆音ビートに突き落とされたりと、一つの地獄絵を見ているような様相だ。
 
その中で、断末魔の声を発するHIZUMIの目には、妖しく恐ろしい輝きが光っていた。反してMCは、その緊張をほぐすようにフレンドリーかつユーモラスに溢れたものであったが、それが逆にプレイとのギャップを強く現し、本来表現させたかった”抑圧からの解放”のような方向性を強く露した。時に「oh-Yeah」のコール&レスポンスをフロアと繰り広げるHIZUMI。2回のアンコールも熱烈な歓声と止まぬ拍手で招かれ、彼らの存在がまだこれからも欲されていることを強力に示した。
 
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◆JURASSIC JADE 公式サイト
http://www2.odn.ne.jp/jurassic-jade/
◆セットリスト

M01. 毒・ゆめ・スペルマ
M02. 触れてはいけない
M03. Brother of Mine
M04. Janus Saves
M05. ENDOPLASM
M06. 高く低く遠く
M07. The Coldest Stone
M08. Vertigo
M09. Let’s go to Heavens
M10. メドレー
M11. HEMIPLIGIA
M12. 紅の女王

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B.T.Hレーベル 斉藤靖代表 ショートインタビュー

— レーベルを立ち上げた経緯は、連載「レーベル資料館」にてお聞きしましたが、あらためて主に担当されているジャンルを教えてください。

斎藤:ZADKIEL,CASBAHJERASIC JADE等の、ジャパニーズ・スラッシュ・メタル創世記からのもの、それからCODE RED五人一首等、10年位の暦があるベテラン勢等です。年に6作程度のペースでリリースしていますね。

— 今後のリリース最新情報を教えてください。

斎藤:自分一人でレーベルをやっているのですが、ディスクユニオンの若手の中でも「制作をやりたい」と希望している者が出てきているんです。それで、日本のメタルを何でも出していこう、ということで坂本英三のソロプロジェクト(EIZO JAPAN)や、ソロ、練馬マッチョマンなんかのベストテイクを集めたベストアルバム(リレコーディング)を2月に出す予定です。それから、”ジェット・フィンガー”で有名なテクニカル・ギタリストの横関敦の、メジャーカタログからのブロックタイトルリリース等を計画しています。元々激しい日本のメタルを専門にやってきたのですが、もっと”間口を広げていこう”という意向も進めています。元々80年代の、日本のヘヴィ・メタル が好きだったということもあり、中々アンダーグラウンドで日の当たらない分野ではあるのですが、その中でも”いいものがあるんだよ”ということを、力の続く限り(笑)、続けて行きたいと思っています。

◆Bang The Head Records 公式サイト
http://www.diwproducts.com/bth/

 
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「日本のヘヴィ・メタル は死んでいない!!」イベントの開始から終了を見て、誰もが思うことだろう。悶々とした日常を打破するための音楽として生まれたヘヴィ・メタルが、マニアのための音楽だった時代から、彼らは己の信念を貫き、そして今「 日本のヘヴィ・メタル 」の勇士としてここに存在する。あるものは、いやこの日出演した全てのバンドは、声にならぬ声で叫んだような気がした。

「偽者のロックよ!生温い!そんなものには終わりを告げよ!」そんな愛すべき兵共の、今後の更なる活躍を願って止まない。