演奏

TRACII GUNS

TEXT:桂伸也 PHOTO:万年平男

1983年に結成されたL.A.GUNS。そのオリジナルメンバーでもあり、中心人物でもあったTracii Gunsをフューチャーして、あの強力な”GUNS”が日本を襲撃した。80年代のロックシーンをリードしたそのロックスタイルは、現在でも健在なのか?バンドを取り巻く情勢等複雑な事情もありながら、そのネームバリューには否が応でも期待せずにはいられない。そんな彼等の、熱狂のライブステージの様子を追った。

L.A.GUNS (Tracii Guns) is:
Jizzy Pearl – Vocals & Guitars (元LOVE/HATE、元RATT)
Tracii Guns – Guitars
Danny Nordahl – Bass (FASTER PUSSYCAT)
Chad Stewart – Drums (FASTER PUSSYCAT)

このイベントの一つの売りでもある、ステージ前のミート&グリート。特に緊張した様子も見せない非常にリラックスした表情でステージに現れたメンバー達。サウンドチェックの一曲を終えると、余裕の表情でバンドメンバー同士バカ話を繰り広げたり、Tracii GunsLed ZeppelinのBGMに興奮して体を揺らしたりと、終始和やかな表情を見せていた。

サポートをこなしたCONCEPTION COMPLEXのステージでは、ベースのDanny Nordahlが興味深そうにパフォーマンスを鑑賞していた。逆にステージにいた彼らは、「こんなすごい人たちのサポートを出来るなんて正直ビックリです。終わったら僕らも客席に行きます!」と、両バンドがお互いを認め合う関係のよさ。その雰囲気は、会場の熱を徐々に上げ、最高のスタートを切るための序章となった。

そしてCONCEPTION COMPLEXのステージが終了し数十分、遂にその時はやって来た。メンバーは、Danny NordahlJizzy PearlChad Stewart、そしてTracii Gunsが後からやって来た。まるで普通のサウンドチェックをやっている風のステージには、”いつ始まるんだ?”という緊張感はなく、終わった段階で”さあ、やるか!”といった雰囲気に自然に流れていた。

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オープニングは「ELECTRIC GYPSY」。”相手の様子を探る”なんてよそよそしさは彼らには似合わない。ストレートなビッグサウンドをいきなりフロアに叩きつけ、ロックフリーク達をノックアウトしている。荒々しく響くTracii Gunsのソロ。それはまるで強力に巻きつく鞭の弦の様でもあり、また時に何か突き刺さる鋭利な凶器にも変化する。

曲はそのまま激しい直球勝負のストレートなロック「BITCH IS BACK」へと続いたあとで、ゆったりとしたリズムの「DECIDE」に変わる。ちょっと不思議なサブドミナントコードを入れた不思議なトーナリティが、スリリングなトニック感を与え、どちらかというと暴れまわっていた観衆も、静かに曲を聴いている。Jizzy Pearlの歌声と、Tracii Gunsのギタートーンが奏でる感情が同調し、最高にこのカッコいい部分を引き出すと、フロアからは黄色い叫び声が何度も上がる。

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そしてTracii Gunsのギタータイム、とも言うべき見せ場、幻想的なディレイ音のコードより目まぐるしく変化するフレーズの洪水。ギター小僧の本領発揮といったところだろうか。プレーが一頻り終わったところで、静かな出だしの「NEVER ENOUGH」の導入、そして曲へと入る。曲はやはり往年のバッドボーイズロックを髣髴させるワイルドかつキャッチーさをふんだんに盛り込んだ、カッコよくキラーなナンバーだ。コーラス部分が多く、とてもライブの盛り上がりに貢献するナンバーとも言える。ご他聞に漏れず、フロアの観衆はみな彼等の魔力にグイグイと引き込まれる。

「ゲンキカーイ!?All right!!」その一言にフロアも反応し、歓声を上げる。若干ペースを落としバラード「DREAM TIME」をしっとりと聞かせる。Jizzy Pearlの歌とTracii Gunsのフレーズが絶妙に絡み、メロディから来るグルーブを一層大きなものにし、観衆は興奮を冷めさせるように黙って聴いている。

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そして、Bob Dylanの「HEAVENS DOOR」。このリズムパターンとメロディ・ハーモニー感覚はハードロックのバラードとしてレパートリーに加えるには最適、といっては失礼かもしれないが、そういっても過言ではない程に様々なバンドのどのレパートリーを聞いても、そのバンドの味を出しながら、皆の気持ちをグッと引き込んでくれる鉄板ナンバーともいえるのではないだろうか。その曲の醸し出すグルーブにみな体を奪われ、リズムに合わせ体をゆっくりと揺らす。

「Non,Non,Knockin’on Heaven’s door !!」とフロアの皆でコーラスをすれば、これに勝る一体感はない。曲の盛り上がりは最高潮に達した。さらにファン達の気持ちを惹き付けるべく、美しいバラード「BALLAD OF JANE」を演奏。メロディの良さ、ハーモニーのよさもさることながら、ギターの鳴き、メンバー間の息もピッタリ、絶妙なブレイクもしっかり決まり、美しさの上にスケール感がグッと広がった。

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「Thank you guys!」そしてBAD BOYSの本領発揮するかのようなキラーチューン、「OVER THE EDGE」セクシーな上の切なさ、その上で弾きまくるTracii Gunsのギターは最高にカッコいい。もうテクニックがどうのなんてことはどうでもよく、Tracii Gunsならではの、カッコいいギターを良く知っているギタリストというところに、彼の天分がある。彼がギターを弾くことで其処に理由はなくTracii Gunsのカッコよさが広がる、そんなフィールドなのだ。勿論、それは堅実なリズムセクションがあってのことであり、Chad StewartDanny Nordahlの強力リズムタッグは、安定感についてはもう既に語ることすらない位の安定感を持っている。

ステージはクライマックスに向け、動き出した。曲はワイルドさを増したキラーナンバー「SPINNING WHEEL」。ワウを多用したトレーシのそろ、搾り出すようなジジーの唸り声、何処までも突き抜けていくようなコーラス。ヘヴィなビートに大きな歓声がフロアから飛ぶ。そして「ONE MORE REASON」「BLACK OUT IN THE BEDROOM」「NO MERCY」と強力なグルーブとワイルドさを前面に出したストレートなロックサウンドで観衆を釘付けにすると、最後のナンバーに持ってきたのは、「RIP&TEAR」。BAD BOYSグルーブに加え、ドライブ感までもが最高のこの曲で、彼らはこの日本で演奏できたことを心から喜んでいるようにそのエネルギーをぶつけ、激しいプレーを行った。徐々に早まるスピード。そして息をしっかりあわせたブレイクやキメをピッタリと決めて、最高の状態で演奏を終わらせた。

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アンコールを求める観衆の拍手は鳴り止まない。”早く出て来い!”そんな観衆の気持ちが見ているだけでも伝わってくる。それほどまでに観衆は彼らを欲していた。だが、彼らは中々出てこなかった。暫くすると、ようやくメンバーは現れた。思いっきりバンドにじらされた観衆は、その喜びを爆発させた。

「ドモ、アリガト!トーキョー!」そして、バラード「LOVE HURTS」を演奏。この”ワルガキ的”にワイルド&ハードな曲と、想像も付かないほどのこのような美しい曲の対比は、この時代を生き抜いてきたバンドだからこそにできたスタイルであり、彼らそのものなのだろう。途中でギターのディストーションが強くなり、激しい展開になるタイミングで心をグッと押さえつけられるような切なさすら感じる。

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そしてステージは真のクライマックスへ。彼等の代表曲とも言える「SEX ACTION」だ。ジジーの叫び声、歌う様に叫ぶように紡ぎだされるTracii Gunsのギター、そして全てを圧倒するようなChad StewartDanny Nordahlのリズムセクション。四身一体となった強力なグルーブとドライブがフロアに最後の弾を撃ち込み、オーディエンスは全てノックアウト。L.A.GUNSはその存在感が健在であることを、余韻もそのままにその場で強力な光を放ち、そして去っていった。

どんな奇抜なアプローチや、斬新なテクニック、テクノロジーが世にはびころうとも、”俺達はL.A.GUNS!”そんな叫びが聞こえて来そうに、彼等のスタイルはストレートで骨太。彼らはそのスタイルを曲げることもないだろう。というかそんな必要もなく、今のスタイルは彼らそのもの、彼等の生き方なのだ。演奏が終わっても、フロアで観衆と歓談し、気さくにサインや写真に応じる彼らたち。ライブが成功したことを共に、喜びとする彼らたち。愛すべき「BAD BOYS」達、健在。彼らの益々のやんちゃな悪ぶりを願わずにはいられない。

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◆L.A.GUNS(Tracii Guns) 公式サイト
http://lagunsofficial.com/lag2008/

◆セットリスト
M01 ELECTRIC GYPSY
M02 BITCH IS BACK
M03 DECIDE
M04 NEVER ENOUGH
M05 DREAM TIME
M06 HEAVENS DOOR
M07 THE BALLAD OF JANE
M08 OVER THE EDGE
M09 SPINNING WHEEL
M10 ONE MORE REASON
M11 BLACK OUT IN THE BEDROOM
M12 NO MERCY
M13 RIP&TEAR
M14 LOVE HURTS(ENCORE)
M15 SEX ACTION(ENCORE)


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