演奏

M'sBAR−silent&noisy night 2009−

TEXT:西川敦子 PHOTO:万年平男

11年ぶりに復活した表参道、東京ミッドタウン、丸の内…。イルミネーションの名所は数あれど、忘れてはいけないのがすっかり冬の風物詩として定着したけやき坂イルミネーション! そのイルミネーションをまるでステージセットのごとく背景にしてM’sBAR−silent&noisy night 2009−は行われました。

ライブ会場となったumuのけやき坂側に設けられたステージ。背面はガラス張りで、客席からはステージ越しに白とブルーに彩られたけやき坂が望めるという仕様に。今日、このステージに立つのは、緒方恵美(Vocal:以下緒方)と岩瀬聡志(Keyboard:以下岩瀬)、加納望(Guitar:以下加納)、目次敬之(Drum & Percussion:以下目次)、君和田典(Bass:以下君和田)からなるM’s BAR Band。緒方といえば、「新世紀エヴァンゲリオン」の碇シンジ役としてよく知られる声優ですが、em:ouの名でオリジナル曲の作詞・作曲も手がけるなど、ミュージシャンとしても活躍中。CDのリリースやライブも数多く行っています。が、今回行われるのは、緒方のオリジナル楽曲のみで構成されるいつものライブとは異なり、洋楽、邦楽、ロック、ポップスをとりまぜた名曲のカヴァーをメインに、緒方のオリジナル曲数曲をプラスしたクリスマスのスペシャルライブ!

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クリスマスムード満点のステージ上で緒方がささやいた「メリークリスマス」の言葉からライブはスタート。まずは、優しい声で「ラストクリスマス」(WHAM!)、「クリスマスキャロルの頃には」(稲垣潤一)を奏でます。客席で揺れるのは、今回のライヴグッズであるブルーのサイリウム。その光景がいかに美しかったかは、2曲を披露しおえた緒方の言葉がものがたっています。「なんか…いい感じですね。イルミネーションとサイリウムが合わさって、すごくキレイ」。緒方いわく「ベタベタな始まり」の2曲も、「この背景なので、ベタベタなほうがいいだろうということで」セレクトされたのだとか。

あいさつを兼ねた軽いトークのあと、「次のブロックも静か目な曲なんですよ」ということで、3曲目の「恋の予感」(安全地帯)へ。ここで包容力のある歌声で会場を包んだ緒方ですが、次の「sweet memories」(松田聖子)では一転、なんとも甘いボーカルを披露。頭上に飾られたクリスタルもピンクに染まり、すべてがスイートな雰囲気に。のちに歌われるジャジーな1曲「THANATOS−If I can’t−」(Loren&Mash)でも、また一転。艶のある声でセクシーに歌い上げました。声優として演じる役柄の幅広さは業界屈指といわれる緒方。その幅広さが歌やステージングにも生きていて、さすがのひとこと!

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もうひとつさすがとうならされたのが、MC。ラジオパーソナリティとしても人気を博している緒方ならではの軽快で飾らないトークがこの日も展開されました。前日に開催され、緒方も参加したイベント『ランティス祭り後夜祭』でのエピソードなどを話し、会場は終始笑いに包まれっぱなし! 「年を重ねてきているのに、静かなMCができないというのもどうしたものかと」と言う緒方。その言葉にまたも笑わされてしまうオーディエンスなのでした。

MC明けは、「Imagine」(John Lennon)をキーボードとアコギのみのシンプルな演奏で。オーディエンスは、心地のいい音とボーカルに酔いしれました。「蕾」(コブクロ)を挟んでは、オリジナル曲の「awarding ceremony」。ヘヴィメタルが好きだと言いながらも、ここではミディアムテンポのこの曲をチョイスした緒方。そんな緒方が歌いながら左右に振る手に合わせ、サイリウムの波も右へ左へ。さらには、客席に向けられたマイクにオーディエンスが「ラララ」のユニゾンで応え…。そこにあったのは、一体感に満ちた時間。

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「awarding ceremony」後にはバンドメンバーを紹介。ここで、加納が現在の状況を「プールのあとの5時間目みたい」と。じつはこのライヴは同日の昼にも行われており、そこで相当な汗をかいたのだそう。なんせ「ハードな曲が多くてね」とは目次の言葉。それがゆえの、プール後状態。しかし、緒方の言葉を借りれば、ここまでは「静か目な曲」がほとんどですが…。加納目次の言葉のナゾが解けたのは、ライヴ終盤のオリジナル曲「Angel Devil」から「Highway Star」(Deep
Purple
)まで。

待ってましたとばかりにオーディエンスも一斉にスタンドアップ! サイリウムを持った右手を振り上げれば、ステージ上では緒方や加納君和田がヘッドバンギング。さらにオーディエンスを煽るように岩瀬が左手を高々と掲げると、どんどん盛り上がりが加速していきます。ギターソロから始まった「BURN!」(Deep
Purple
)、スネアソロからスタートの「Highway Star」(Deep Purple)は緒方が大好きだという曲。フル演奏以上に長いのでは? と思うほどたっぷりとパワフルなボーカルを聴かせてくれました。

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「どうもありがとう!」の声とともに、一旦ステージを下りた汗だくの緒方&バンドメンバー。でも、すぐにアンコールの声が。それに応えて再びの登場。アンコールでは、「I love you」(尾崎豊)を柔らかく歌いあげ、「ふられ気分でRock’n Roll」(TOM☆CAT)は笑顔とともに。そして、ラストにはオリジナルの未音源化曲「silent decide」を。ダイブしそうな勢いで客席に体と手を伸ばしていた緒方。最後はマイクを通さず、「ありがとう。今日は楽しかった!」と締めくくりました。大寒波が日本列島を襲っていたこの週末。そんな寒さもふっとぶホンワカしたぬくもりとノリノリのアツさと。2時間40分に渡るライヴは、オーディエンスにとってとっておきのクリスマスプレゼントとなったに違いありません。

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【緒方恵美 公式サイト】
http://www.emou.net/
【セットリスト】
01. ラストクリスマス(WHAM!
02. クリスマスキャロルの頃には(稲垣潤一
03. 恋の予感(安全地帯
04. sweet memories(松田聖子
05. フレンズ(レベッカ
06. 涙そうそう(BEGIN
07. Imagine(John Lennon
08. 蕾(コブクロ
09. awarding ceremony(緒方恵美
10. THANATOS−If I can’t−(Loren&Mash
11. 翼をください(赤い鳥
12. Angel Devil(緒方恵美
13. 悪魔のkiss(緒方恵美
14. BURN!(Deep Purple
15. Highway Star(Deep Purple
アンコール
01.I love you(尾崎豊
02.ふられ気分でRock’n Roll(TOM☆CAT
03.silent decide(緒方恵美