演奏

The Voices of Rainbow

TEXT:桜坂秋太郎

RAINBOW。それは私の人生に大きな影響を与えたバンドの一つ。私が自分の意思で音楽を聴くようになったのは、ちょうどDeep Purpleの第3期。Ritchie Blackmoreはその後脱退し、Ritchie Blackmore’s Rainbowというソロ活躍を始めた。そしてそれはRAINBOWというバンドになって、良質なナンバーをロック史に残した。初代の故Ronnie James Dioをはじめ、歴代のヴォーカリストは才能に恵まれた人材ばかりで、RAINBOWというバンドの個性を確立することに成功している。故Ronnie James Dioの後は、Graham BonnetJoe Lynn TurnerDoogie White


2010年9月30日、この歴代のRAINBOWのヴォーカリストが集う素敵なイベントをレポートするため、C.C.LEMONホールへ足を運ぶ。開場時間の少し前に到着すると、かなり雨が降っているにもかかわらず、そこはもうRAINBOWをリアルタイムに追ってきたファンの熱気であふれている。関係者ブースが開くまでの間、少し今夜のオーディエンスチェックをしてみる。見覚えのある(昔持っていた)懐かしいTシャツを着ている男性がちらほら目につく。RAINBOWのアルバムジャケットのTシャツだ。圧倒的にリアルタイム世代が多いが、良く見ると若い人の姿もある。RAINBOWの伝説を受け継ぐ貴重な存在。


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今回のイベントは、タイトルがズバリ『The Voices of Rainbow』。まさにそのまんまだ。故Ronnie James Dioは天国からの参加だが、RAINBOWの歴代の歌声を今夜は一度に聴ける。何と素晴らしい。会場のC.C.LEMONホールはウッドなテイストで、ちょっとお洒落。ここが渋谷公会堂だった時代、何度外タレを観に来ただろう。場所としては、もの凄く思い入れがある。こんな私も若い頃、一度だけステージに立ったことがある。確かコンテストか何かで短時間だったものの、外タレがプレイしている場所に立ってることだけで感激だった。


70年代後半から90年代初頭までのハードロックは、派手系なステージセットが主流で、場所的に派手な演出をつい思い描いてしまったが、今夜のイベントはかなりシンプル。幕も無く、機材がすべて見渡せる。開演定刻、まずはJoe Lynn Turner。パートナーは、Akira Kajiyama(Guitar)。そしてGERARDToshio Egawa(Keyboard)・Atsushi Hasegawa (Bass)・Kenichi Fujimoto(Drums)。Joe Lynn TurnerAkira Kajiyamaは、「FIRE WITHOUT FLAME」という素晴らしいアルバムを一緒に作っているので、コンビネーションに不安はまったく無い。テクニシャンぞろいのGERARDのメンバーも、Joe Lynn Turneを引き立てる。


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Joe Lynn Turnerが4曲歌った後、Guest VocalとしてDoogie Whiteへバトンタッチ。Joe Lynn Turnerのパワー感あふれる素晴らしい歌唱と、Doogie Whiteのパンチのある完璧な歌唱、両方を同じバンドで楽しめるとは、何と贅沢なことだろう。Doogie Whiteは4曲歌うと、再びJoe Lynn Turnerへ。セットリストも良い。RAINBOWを感じる最高のライヴだ。アンコールは、Joe Lynn TurnerDoogie Whiteで歌う「Power」。ツインヴォーカルをもっと聴きたい!と思いつつ終演。歌はもちろん素晴らしいが、バンドの演奏もノーミスだった。


インターバルの後はALCATRAZZGraham Bonnetが登場するとオーディエンスもハイテンション!メンバーは、Howie Simon(Guitar)・Tim Luce(Bass)・Jeff Bowders (Drums)。まずはRAINBOWナンバーで来るかと思いきや、曲はMSGMichael Schenker Group)の「Assault Attack」!これはこれでうれしい!Michael Schenkerはデビュー当時から熱狂的なファンの私だが、1982年のアルバム『黙示録』は、今でもよく聴いている。そのまま名曲「Too Young To Die, Too Drunk To Live」!この2曲のGraham Bonnetの歌だけで、個人的には十分酔うことができる。


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ALCATRAZZは何度か観ているのだが、現在のメンバーを観るのは初めてだ。噂には聞いていたが、リズム隊のグルーヴがとても良い。Howie Simonのプレイもギターヒーローのレベルだ。セットリストはALCATRAZZというバンドなので、ALCATRAZZのナンバーが中心となっている。RAINBOWのナンバーは、ラストソングの「Lost In Hollywood」。せっかくなので、もう少しRAINBOWのナンバーが聴きたい。せめて「Eyes of the World」だけでも!


アンコールはJoe Lynn TurnerDoogie Whiteも登場して、トリプルヴォーカルへ!この絵は凄い!勝手に故Ronnie James Dioを想像して、頭の中ではフォースヴォーカルだ。もちろんアンコールはRAINBOWのナンバー。会場は1Fも2Fも大合唱で、オーディエンスはステージに吸い込まれるように虹色の声達を見つめている。実に感動的なイベントだ。そしてRAINBOWというバンドの持つ魅力が、2010年にまったく色あせてないことを証明してくれる。


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今夜のイベントで誰もが感じたのは、そのパフォーマンスの高さではないだろうか。Graham Bonnetが62歳、Joe Lynn Turnerが59歳、Doogie Whiteが50歳。その年齢から想像する以上のステージを魅せてくれた。余談だが、生きていればRonnie James Dioは68歳。Doogie Whiteが「Dio!」コールをして涙を誘う。『The Voices of Rainbow』というイベントを通じて、見えない何かを確実に受け取った気がする。今日の東京公演は最終日。大阪と名古屋での公演の様子は、たまたま隣に座っていた方から聞くことができた。どの会場にも、涙しているオーディエンスが居たようだ。


RAINBOWで思い出すエピソードに、Ritchie Blackmoreモデルのギターがある。もちろんFender USA製ではなく、国産メーカーのコピー物だったが、RAINBOW命の友人の宝物だった。何らかの原因で、親父さんに叩き割られてしまった。RAINBOWの数々レコードと共に。“ロック禁止”そんな言葉がまかり通った時代。彼の笑顔が生活から消えたのが怖くて、以後、疎遠になってしまった。遠い日の幼き思い出。彼が今日の会場に居て、涙を流し、そして自分の子供には“ロック解禁”していることを切に願う。BEEASTの指標に“親子で読めるロックマガジンコチラ)”というのを掲げているが、そこに結び付く一つの物語は、RAINBOWから生まれているのだ。

◆Joe Lynn Turner 公式サイト
http://www.joelynnturner.com/

◆Doogie White 公式サイト
http://www.doogiewhite.com/

◆Joe Lynn Turner セットリスト
M01. Intro~Spotlight Kid
M02. I Surrender
M03. Drinking With The Devil
M04. Street Of Dreams
M05. Black Masquerade(Doogie White)
M06. Ariel(Doogie White)
M07. Hall of the Mountain King(Doogie White)
M08. Temple of King(Doogie White)
M09. Stargazer
M10. Can’t Let You Go
M11. Can’t Happen Here
M12. Death Alley Driver
M13. Power(encore)

◆ALCATRAZZ Myspace
http://www.myspace.com/alcatrazzofficial

◆ALCATRAZZ セットリスト
M01. Assault Attack
M02. Too Young To Die, Too Drunk To Live
M03. Since You’ve Been Gone
M04. God Blessed Video
M05. Love’s No Friend
M06. Kree Nakoorie~ Hiroshima Mon Amor
M07. Will You Be Home Tonight
M08. Sky Fire
M09. Suffer Me
M10. Bad Girl
M11. Jet To Jet
M12. Lost In Hollywood
M13. All Night Long(encore)
M14. Long Live Rock N Roll(encore)