演奏

Rock On Enough

TEXT:noei! PHOTO: 曲香-mageshang-

やっと冬が目覚めたような寒空の2009年11月19日。大阪MUSEにてtalk to me主催のライブイベント『Rock On Enough』が行われました。大阪MUSEはシャンデリアが天井に吊るされているのが特徴的なライブハウスでtalk to meの他、ハックルベリーフィンAIR MASTERumder50ソウルジャンクションズの5組が出演。

観客の拍手に迎えられて登場したトップバッターは、2009年12月から活動の拠点を姫路から東京へ移すソウルジャンクションズ平松チャパ慎也(Vocal & Guitar)、ヒサシブルース(Guitar)、タナカユウヤ(Bass)、ハセ(Drums)の4人組です。1曲目「恋のからさわぎ」でライブ開始。まず、最初に目を引いたのは平松チャパ慎也の衣装でした。ゼブラ柄のパンツも眩しいのですが、Tシャツの文字がとても気になります。「The Music is Your True Soul」と記されていました。文字通りソウルミュージックを主としたバンドなので、サウンドを現した言葉でもありますが、ソウルジャンクションズの「soul」は「love」とイコールなようで、歌詞やMCで恋や愛の素晴らしさを説きます。

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サビの部分でタイトルを連呼するのが印象的な「Rollin’rollin’」に続き、恋をすることで他の人にも優しくなれることを歌った「この胸にこのココロに」。天に召された犬と自分の母親の関係を描いた「我がママ」を経て、5曲目「にじのわ」で終わります。曲と曲の合間のMCで、今から演奏する曲の由来を説明し、演奏中も観客と意識的にコミュニケーションをしているのが印象的。

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ソウルジャンクションズ 公式サイト
http://www.souljunctions.net/

【セットリスト】
1.恋のからさわぎ
2.Rollin’rollin’
3.この胸にこのココロに
4.我がママ
5.にじのわ

続いて登場したのは、ここ関西を中心に活動をしているumder50アンダー50)。田村優(Vocal & Bass)、高畑光晴(Guitar)、飛野晃司(Guitar)、十河大介(Drums)の4人組です。出演しているバンドの中では唯一ボーカルがベースを担当しており、両端の二人のギタリストが激しく演奏するツインギターバンド。1曲目「3月の雪」から始まり、U2の「ジ・エッジ」のようなギターサウンドに美しいファルセットのコーラスが絡む「Teenage blue bird」へ。「アルバム」「プリズム」を経て、最後は文字通りカラフルな曲調の「colorful」で終わります。

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ライブ中、印象的だったのは高畑光晴のプレイ。ギターはレスポールですが、半ズボンを履いてギター演奏に没頭する様はAC/DCアンガス・ヤングを彷彿。インタビューを試みたところ愛用のギターが数日前に壊れ、今回はレンタルの代用品を使っていたそうです。次回はぜひ愛器をかき鳴らす姿を観て見たいと思いました。

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umder50 公式サイト
http://www.geocities.jp/umder_50/

【セットリスト】
1.3月の雪
2.Teenage blue bird
3.アルバム
4.プリズム
5.colorful

3組目は先日メンバーの一人が脱退したAIR MASTER上田憲司(Vocal & Guitar)、日口卓哉(Bass)、木村亮太(Drums)の3人にサポートの三宅慎太郎(Guitar)を加えた4人組です。umder50ソウルジャンクションズとは一転、打ち込みを多く使っていました。まるでスタジオで録音した作品を聴いたような、ブレの少ないライブでした。ミドルテンポな1曲目の「ナナイロフィールド」に始まり、「トライレーン」「日付変更線」「caffeine」。曲の終わりにマイ・ブラディ・バレンタインのような美しくも騒がしいギターノイズに突入するのが特徴的な「きづくもの」を経て、ディスコティックな「ゴミ箱」で終わります。

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全体的に浮遊感のあるサウンドが得意なようで、空間系のエフェクターを多用しているのが印象的でした。その他、スモークを焚いて幻想な雰囲気を作ったり、メンバーがポーズを決めてから曲を始めたりと音楽面以外のステージ演出にもこだわりを持っているバンドです。また地元関西だからか、多くのファンが詰め掛けており、アイドルのコンサート顔負け。ファンとの統制の取れた緻密なやり取りを繰り広げるのが最高でした。

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AIR MASTER 公式サイト
http://airmaster.biz/

【セットリスト】
1.ナナイロフィールド
2.トライレーン
3.日付変更線
4.caffeine
5.きづくもの
6.ゴミ箱

4組目は埼玉県草加市出身のハックルベリーフィン。サクマツトム(Vocal & Guitar)、山口剛(Bass)、山口幸彦(Drums)の3人組です。これまでのバンドは全部が4人編成なので、唯一の3人編成。しかしさすがは10年選手。3ピースのバンドとは思えない表情豊かな演奏力を披露します。演奏の他、耳を澄ますとディレイを効かせたダブ処理を施すなどバンドの幅広い音楽性を感じさせます。通常、デジタルなものを取り入れると過剰になり、楽曲とサウンドのバランスが崩れがちですが、料理の隠し味のように滑らかに溶け込んでいました。自分達に必要な音が何かを明確に理解している職人気質を感じました。

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MCも素敵でした。テレビ番組「HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP」の出現以降、芸人かぶれのような話し方をするバンドが多く感じるこの頃ですが、ハックルベリーフィンは和やかに観客の笑いを誘います。ライブを見ていて一番記憶に残った曲は「オリオン」。終わった恋の物語を歌いながらサウンドはワクワクするという構図は、生まれた時代も曲調も違いますが、奇しくもリトル・リチャードの「ルシール」と同じというのが何とも嬉しい。

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ハックルベリーフィン 公式サイト
http://www.huckle-f.com/

【セットリスト】
1.MOUNTAIN
2.BeautifulDay
3.ガーベラ
4.オリオン
5.たからもの
6.SING

最後は本日の主役、talk to me矢野仁志(Vocal & Guitar)、曽根巧(Guitar)、ハル(Bass)、山田ススム(Drums)の4人組です。バンドの歴史は浅いようですが、メンバー個々の音楽経験は豊富。取材前、予習を兼ねてスタジオ録音の音源を聴いていたのですが、ライブの印象は大きく違いました。スタジオ音源は日本人がビートルズと聞いてイメージするメロディ重視のバンドなら、ライブでは一転。水が油にでも変わるような泥臭いライブを展開します。

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このギャップに関してインタビューを試みたところ、スタジオで作品を録音する場合のロールモデルは予想通りビートルズなのですが、ライブのロールモデルはThe Whoレッド・ツェッペリン。ライブ前のBGMでも頻繁に流すそうです。ちなみに今回採用されたのはレッド・ツェッペリン。ライブ音源『BBC Sessions』に録音されている前説と合わせてtalk to meのメンバーがステージに登場。冒頭の「移民の歌」に被せるように演奏した後、矢野仁志が「どうも、こんばんはレッド・ツェッペリンです!」と力強く素敵な嘘名乗り。最初から最後まで一切中弛みすることなく本家に噛み付くような怒涛のライブが続きました。

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talk to me 公式サイト
http://www.talktomeshow.com/

【セットリスト】
1.ロックンロールグライダー
2.YES YES YES
3.POY!
4.GIRLFRIEND
5.アイマイミーな恋愛ゲーム
6.ロッキンソーダ
7.What’s talk to me?
8.三日月のベイビー(アンコール)

ソウルジャンクションズumder50AIR MASTERハックルベリーフィンtalk to meこの素晴らしき5バンドが一緒に観られた『Rock On Enough』。このイベントは本当に良質のバンドだけが集まっていました。それぞれのバンドのファンは、お目当てのバンドはもちろん、それ以外のバンドにもきっと素晴らしい音楽を見つけたに違いありません。読者の皆様も、どこかの会場でバンド名を見かけらたら、ぜひ足を運んで体感してほしいと思います。