演奏

アーバンギャルドの前衛都市伝説

TEXT:丈岡はじめ

アーバンギャルドは「童貞処女、メンヘル、オタク、サブカルチャー」といった少数派へのメッセージを2007年の結成以来発信してきたテクノポップバンドだ。そのサウンドは飛び交うシンセのシークエンス、激しいタッチのピアノ、へヴィメタル風ギターをバックに男女二人のツインボーカルが乗っかるという独特のオリジナル性を持っていて「トラウマテクノポップ」と呼ばれている。

歌詞は青少年の微妙な心理を現代の日本が抱える様々な問題とシンクロさせて表現していて、ネットを中心に熱狂的な支持を得ている。映像、美術などのアートワークも独特でYouTubeにアップされた「セーラー服を脱がないで」のPV(プロモーションビデオ)にはアクセスが殺到した。ライブも積極的に行っておりこれまでに、相対性理論ロマンポルシェ。オーラルヴァンパイア黒色すみれ犬神サーカス団などと競演している。

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そんなアーバンギャルドがついに初のワンマンライブを行うというニュースが入ってきた。これは見逃せないと早速会場の代官山UNITに向かった。当日は朝から曇り空でさわやかとは言いがたい天気だったが、これもなんだかアーバンギャルドのライブにはふさわしい気もする。めったに来ない代官山で道に迷いながらようやく会場に到着すると、すでに開場待ちのファンが長い行列を作っていた。

代表曲「セーラー服を脱がないで」の影響かセーラー服のコスプレ姿の女性が多い。それとも本当の女子高生だろうか。一足先に会場に入り、店内を見回す。黒を基調にしたインテリアはさすが代官山とあってオシャレな感じだ。リハーサルも終わっていたのでステージ上には誰もいなかったが、ステージ後ろの大きなスクリーンにはYouTubeでも見覚えのある独特な映像が流れていた。

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18:30、スタッフの「入場開始します」の声と共にファンが雪崩を打って次々と飛び込んでくる。まずは物販コーナーでグッズを買うファン、喉が渇いたとドリンクを注文するファンと思い思いの行動をとっているが、みんなこれから始まるライブにワクワクしているようだ。装置メガネのサミーちゃんによるDJが雰囲気を盛り上げる中、徐々に会場も人で埋まってきた。

なんだか今日は暑いなと、ふと回りを見渡すと会場は満員電車なみの人口密度になっていた。さあ、いよいよアーバンギャルドの5人、※以下公式サイトより 浜崎容子(Vocal & Virgin)松永天馬(Vocal & Virginity & Poetry & Compose & Artwork)谷地村啓(Keyboard & Arrange)瀬々信(Guitar)藤井亮次(Craft)の登場だ。水玉の傘を差した白いワンピース姿の浜崎容子、ストライプのダークスーツにブラインドのようなメガネをした松永天馬がマイクの前の立つと1曲目の「恋をしに行く」の16ビートのシークエンスが始まった。と同時にファンからは大きな歓声が上がる。バンドはのっけからハイテンションで一気にファンを引き込んでいく。

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そして「イライラしていた 誰でも良かった 今は後悔している」という意味深な歌詞で始まる「コンクリートガール」、「東京生まれ」と続けて演奏。一転してファンクなシンセベースにワウギターが絡む「修正主義者」へ。MCを挟んで続いては「都市夫は死ぬことにした」。低音のシークエンスとラップというか演説のような松永天馬のボーカルが印象的だ。続いて一昔前のテクノポップを思わせる「アニメーションソング」までで第一幕は終了。

第二幕では浜崎容子谷地村啓が登場。まずは谷地村啓が弾く美しいピアノをバックに、シャンソン歌手もしているという浜崎容子がメランコリックに歌う「少女のすべて」を演奏。変わって松永天馬が登場し、ピアノの激しいディスコードに乗って「都市は優しい」をシャウトし、バンドとは違った魅力を見せてくれた。

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再びメンバー全員が登場し、第三幕は「水玉病」で始まった。いつのまにか浜崎容子は赤い水玉の衣装に着替えている。ハンドスピーカーで客席を煽る松永天馬に応えるように客席からシャボン玉が美しく舞い始める。続いて「オギノ博士」を演奏した後は『詩のボクシング』というイベントにも出演している松永天馬による詩の朗読の時間。「おいでよ、童貞の森」と呼びかける松永天馬に女性ファンから恥ずかしげな笑い声が起こる。

そしてマーチングドラムに高らかなホルンのメロディーが鳴り響き「女の子戦争」が始まった。これまでと違いどこか歌謡曲風の雰囲気の1曲だが、ところどころに挿入されるディスコード(不協和音)はやはりアーバンギャルドらしい。フロントの2人が赤い水玉の旗を大きく振るとファンもそれに答え赤い水玉の旗を振りかえし、会場は赤い渦に飲み込まれていく。

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フレンチポップス風の可愛いナンバー「月へ行くつもりじゃなかった」、TVゲーム音から始まる「ファッションパンク」と続けて演奏し2回目のMC。CDを買うと付いてくる『日の丸のリストバンド』をリストカットバンドと呼ぶなど、松永天馬がファンをひとしきり笑わせた後、ファンシーポップな「ラヴクラフトの世界」、アニメのテーマソングが似合いそうな「四月戦争」と立て続けに演奏し、第三幕は終了。

もちろんこれで終わるわけはない。手拍子とともに「アンコール」の大合唱が客席から湧き上がる。1分くらい続いただろうか。そしてメンバーが再登場、なんと浜崎容子はセーラー服姿だ。アンコールの1曲目はまず「ロボットと私」。4つ打ちのシンセベースがズシンとくる。最後の曲はもちろん「セーラー服を脱がないで」。松永天馬の呼びかけに答えて「(生まれてきて)すいませーん」のファンの大合唱の中、曲が始まった。あの印象的なPVもスクリーン上に流れている。

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さらにトレードマークの巨大なキューピー人形がステージに登場し、日の丸の旗を振る。もう盛り上がりは最高潮だ。ステージ上のセーラー服と客席のセーラー服がシンクロして踊る様はまさに圧巻だった。そしてひときわ大きな拍手とともに今夜のライブは終了した。
今夜も独自のサウンドを聴かせてくれたアーバンギャルド。そのメッセージ性に目を奪われがちだが、それは確かな音楽性に裏打ちされている。

またアンコール前に松永天馬がテージ上からmixiにリアルタイムで書き込み、ファンもそれに返答するなどネット世代ならでは面白い試みも見られた。使い古された言葉だが、ファンと一体になってライブを楽しんでいることが良く伝わってきた。ニューアルバム「少女都市計画」も発売され、今後はメジャーシーンへの進出も期待される彼らだが、このオリジナリティと空気感をいつまで保ち続けて「トラウマテクノポップ」をさらに昇華させていって欲しい。

「コンクリートガール」PV


http://www.youtube.com/watch?v=IlpiRn528bg

Photo Gallery(写真をクリックすると拡大します)

【アーバンギャルド 公式サイト】
http://urbangarde.net/

【インフォメーション】

11月29日(日)梅田 シャングリラ
12月05日(土)池袋 ライヴインロサ
12月12日(土)池袋 ライヴインロサ

『少女都市計画』
¥2100(税込) 09/10/9 発売!
01.恋をしに行く
02.コンクリートガール
03.東京生まれ
04.アニメーションソング
05.リボン運動
06.修正主義者(concrete mix)
07.少女のすべて(copperia mix)
08.都市夫は死ぬことにした
09.ラヴクラフトの世界

【セットリスト】

第一幕
01. 恋をしに行く
02. ベビーブーム
03. コンクリートガール
04. 東京生まれ
05. 修正主義者
06. 都市夫は死ぬことにした
07. アニメーションソング

第二幕
08. 少女のすべて
09. 都市は優しい

第三幕
10. 水玉病
11. オギノ博士
12. 女の子戦争
13. 月へ行くつもりじゃなかった
14. ファッションパンク
15. ラヴクラフトの世界
16. 四月戦争

アンコール
17. ロボットと私
18. セーラー服を脱がないで


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