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TEXT:八神灰児 PHOTO:TAKASEA JAM COOOBIN

【密着レポート第18弾:哀旋士】

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太陽がその容赦ない日差しを浴びせ始めた初夏。待ちに待った哀旋士の旗揚げツアーが大阪心斎橋club ALIVEで行われた。随分と早めに現場入りしたにも関わらず、すでに会場前にはこの日を待ちわびたファンの姿を確認できる。その中には知った顔も多数伺うことができて何故だかすごく嬉しい。
 
哀旋士とは、さかもとえいぞうを筆頭に結成されたメタルバンドであり、「泣きに来い」をテーマに、日本のアニソンを哀愁漂うメタルアレンジにすることで、その良さを改めて世界に発信する活動を行っている。名前の由来は、アニメ映画『機動戦士ガンダム』二作目のサブタイトル「哀戦士」から来ており、「戦」を「旋」に変えて「哀愁の旋律を奏でる志士」として「アニソンの本来の姿を世界に伝える」という意味合いがその名には込められているのだ。
 
◆メンバーリスト:
さかもとえいぞう(以下、さかもと :Vocal)、屍忌蛇(Guitar)、内田亮介(以下、亮介 :Guitar)、池田鷹浩(以下、鷹浩 :Bass)、山口こうじ(以下、こうじ :Drums)

 
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1.LIVE前

 
◆会場入り
 
筆者が到着した頃には既に哀旋士メンバーによる機材搬入が始まっていた。会場ではステージのマスターチューニングやセッティングが着々と進められる中、リラックスムードの楽屋ではメンバー各々が旅を共にする自らの刀(楽器)達への入魂が進められていく。哀旋士として挑む初めての大阪。そんな静かながらにも熱い闘志が柔らかな雰囲気の中にも伝わってくる。
 
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◆リハーサル
 
いよいよリハーサルの開始。「アイドリングなんて言葉は俺にはない。」とでも言わんばかりに、リハーサル1曲目から熱いさかもとの歌声。一曲また一曲と曲が進むたびにそのシャウトも表情を変え伸びをみせる。体も温まってきただろうか。その迫力はリハーサルと言うような事前準備の意味合いではなく本編のそれと変わりのない力強さだった。そしてそんなさかもとの歌とは対照的に自らの演奏を確かめるようにプレイする亮介鷹浩。こうじも一音一音を確認しながらドラム位置の調整に余念がない。
 
そんなサポートメンバー達から一歩引いたような立ち位置で黙々とプレイしていたのは屍忌蛇。言わずもがなステージでは圧倒的なアピールを見せる彼が、舞台裏ではどちらかというと寡黙な様子を見せているのが印象的だった。入念にサウンドをチェックしながらリハーサルを進めていく中、モニターからの返りがどうにも定まらず何度も何度も調整を繰り返す。改めて書くまでもないことかもしれないが、彼が勢いとテクニックに任せただけのプレイを繰り出すパフォーマーではなく、冷静に状況を判断しバンドアンサンブルを束ねるサウンド職人であるということが見てとれる。そこに彼がいることで、さかもとが安心してプレイに集中していたように見える。これぞ今また哀旋士と走り出す二人の揺るぎなき信頼の証なのだろうと筆者には思えた。
 
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2.LIVE

◆ステージ
 
開場とともに我先にと溢れかえるフロア。オーディエンスはあっという間にエントランスを通り抜け、オーディエンスは今か今かと会場の温度を高めていく。それぞれが哀旋士への思いを確認しあう最中、いよいよ客電が落ち、ついにアニメタルというジャンルを確立した創造主二人よる哀旋士というサウンドが大阪にとどろく!
 
オープニングはさかもともお気に入りの「ゲッターロボ 號」。
イントロが鳴り出した時の会場のどよめきと歓声といったら筆舌に尽くしがたい迫力だった!客席が…いや、大阪がこれほどに哀旋士を待ちわびていたんだと、ファンの一人でもある自身も初っ端から感動で鳥肌が立つ。
 
客席も一丸となってのすさまじいヘドバンから届けられた「UFO戦士 ダイアポロン」が終わる頃、会場から「おかえりー!」の声が!すかさずさかもとが「会いたかったぜ大阪―!」と返す!多くを語りすぎることなくその真意はサウンドで伝えるとばかりに、「俺と屍忌蛇の組み合わせを待っていてくれた人にこの曲を捧げたいと思います」とシンプルなMCが続いて、さかもとの哀愁たっぷりの歌声と屍忌蛇の泣きのアレンジフレーズの融合が秀逸な「薔薇は美しく散る」。そして続く「誰がために」。哀旋士のサウンドを全身で受け止めるオーディエンスは、その感動を拳で表現するかのように熱く振り上げる!
 
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「宿さえ提供してくれたら何度だって大阪にくるぜ!」なんてさかもとの軽妙なMCに会場がドッと和んだその後に届けられたのは、本ツアー前に発売されたアルバムに収録されているオリジナル曲「いにしえ」。まさに哀旋士二人が自らの愛したサウンドを融合させた怒涛の哀愁が押し寄せる珠玉の楽曲だ。そしてよりハードに大胆にアレンジアップされていた「空手バカ一代」は本当に印象的だ。知る人ぞ知る軍歌的なメロディーが生み出す力強さと、どこか哀を秘めた決意を感じさせる印象はそのままに、こうじのツーバスを軸とした激しいビートに特盛りのボディーブローを喰らわせてくれる鷹浩のベース。屍忌蛇に負けず劣らず、表情も豊かに奏でる亮介のギターは茶目っけもたっぷりだ。ほぼすべての楽曲においてオーディエンスに向かって隠していた宝物を見つけたような笑顔でマイクを向けるさかもとの姿と歌声に、冒頭からこの大阪公演のクライマックスを魅せつけられた感じだった。
 
興奮冷めやらぬ中、さかもとがかつて世紀のギター芸人と称した孤高のギタリスト、屍忌蛇によるギターソロステージが届けられる。その流麗な指さばきは、本当にフレットから1秒たりとも目が離せない。会場中がそのテクニックとフレーズセンスに息をのむ中、再びステージに戻ってきたさかもとと共に哀旋士が届けるのは「アイアンリーガー~限りなき使命」。
 
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「ヘヴィメタル!」と会場中が唸りをあげた「エルガイム-Time for L-GAIM-」を歌い終え、暗転したステージに一人立つさかもとが手にしていたのはアコースティックギター。「ここからはアコースティックタイムでお楽しみ頂きます」と始まった一曲目は「仮面ライダーBLACK RX」。「本家は曲中の発音が英語的であるが、自身はカタカナ発音至上主義なのでよろしく」と軽妙なMCが会場を沸かせる。続いて「宇宙刑事ギャバン」を1コーラス届け、さかもとの次なる選曲はアニメタル時代のオリジナル「華-四乃森蒼紫のテーマ-」。「るろうに剣心」のキャラクターソングとして世に放たれた名曲のひとつを今また聞ける喜びがうれしい。そしてアコースティックラストは同じく「るろうに剣心」から劇場版のエンディングテーマとなった「永遠の未来」。そのメロディーの美しさと歌声に会場は静かに耳を傾けた。
 
哀旋士とそのメンバーが再びステージへ集結し、終幕に向けてそのボルテージを加速する!アニメタル時代を彷彿とさせる「サンライズメドレー」では筆者もかつて喉がちぎれるくらいに熱唱した「機動戦士ガンダム」をはじめとした名曲達がズラッと奏でられた。
ありったけの声で!拳で!全身全霊を持って会場がそれに応える!アニメタル時代から培われたコール&レスポンスの真骨頂がメドレーの随所に垣間見ることが出来る。そして高まりに高まった客席に届けられる「マジンガーZ」&「Zのテーマ」!ロボットアニメというジャンルの金字塔とも言える作品から選ばれた楽曲達が今宵、アニメソング&ヘヴィーメタルの融合というジャンルの金字塔として本編のラストを飾る。
 
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アンコールではオリジナル曲である「ほむら」。そしてアニメタル時代に屍忌蛇アレンジの集大成と評された「特撮でいこう ~ 仮面ライダーメドレー ~」。かつて渋谷のオールナイトライヴに参戦した記憶や、大阪城野音で仮面ライダーデザインのパジャマを着て参戦し、取材を受けたことを筆者は思い出す。
 
ダブルアンコール。哀愁の旋律を奏でる志士が最後に届けるのは、アニメタル伝説始まりの歌といえる、「ガッチャマンの歌」。「飛べ!飛べ!飛べ!ガッチャマン!」、「地球はひとつ!地球はひとつ!」心斎橋club ALIVEを何者にも真似がたい一体感と、コール&レスポンスで揺れに揺らした哀旋士の大阪ファーストコンタクトは、興奮の逃げ場を終演後の会場のどこにも見出さないまま、流れる汗とカラカラになった喉の渇きと共に、次なる戦いの場を待ちわびる大勢の哀旋士達を生み出したに違いなかった。
 
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3.LIVE後

 
◆アフター・撤収
 
ライブ後の彼らには多くの知人や関係者達がバックステージに駆けつけ、彼らのステージの成功をたたえた。もちろん、この日の成功に疑いの余地はなかったことは確かだが、やはりこの時を迎えた感動は哀旋士メンバー各々に感動もひとしおといった様子。そしてステージ成功の美酒に酔う彼ら。そして大阪公演が終わり、会場を後にする。これから全国各地へと動き出す哀旋士は、会場で感じた熱さを原動力にこれからも走り続ける。
 
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◆哀旋士 Official Website
http://www.aisenshi.jp/
 
◆哀旋士 Live Information
2013年11月08日(金)【新 宿】HEADPOWER
2013年11月30日(土)【秋葉原】GOODMAN
2013年12月20日(金)【新 宿】HEADPOWER
 
◆セットリスト:
M01. ゲッターロボ 號
M02. グランプリの鷹
M03. UFO戦士 ダイアポロン
M04. 薔薇は美しく散る
M05. 誰がために
M06. いにしえ
M07. 空手バカ一代
~ 屍忌蛇 Guitar solo ~
M08. アイアンリーガー~限りなき使命
M09. エルガイム-Time for L-GAIM-
~ さかもとえいぞう アコギコーナー ~
M10. サンライズメドレー(機動戦士 ガンダム ~ 伝説巨人 イデオン ~ 超時空要塞 マクロス ~ 無敵超人 ザンボット3 ~ 無敵鋼人 ダイターン3 ~ 戦闘メカ ザブングル)
M11. 宇宙戦艦 ヤマト
M12. マジンガーZ
M13. Zのテーマ
M14. ほむら(ENCORE 1)
M14. 特撮でいこう ~ 仮面ライダーメドレー ~(ENCORE 1)
M15. ガッチャマンの歌(ENCORE 2)

 
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特集「ROCK ATTENTION」第24回 哀旋士インタビュー
http://www.beeast69.com/feature/76917