特集

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photo1993年7月21日に創立し、サブカルチャーの街・高円寺で20年の長きにわたり音楽ファンに愛され続けている老舗ライブハウス「Show Boat」。7月は20周年月間として様々なミュージシャンが連日高円寺の夜を賑わせたが、その締めくくりとなる7月28日(日)、高円寺を飛び出して渋谷duoにて盛大なアニバーサリーイベント「THE FES. vol.2」が開催された。
 
その顔ぶれは斉藤さおり尾上01平the days of our youth松岡英明face to aceといった、Show Boatでは馴染みのメンバー。そして何と言っても小田原豊のソロプロジェクト、TRAUMAの一夜限りの復活というアナウンスもあり、多くの音楽ファンが集い20周年を盛大に祝った。そんなプレミアムな一夜を、”大盛り”でレポートしよう。

1. 斉藤さおり

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午後6時、豪華出演陣のトップを飾るのは斉藤さおりだ。1984年に第3回ミス・セブンティーンで18万人の中から準グランプリを受賞しデビューした斉藤さおり。Show Boatが生まれた1993年にリリースした「ベイビーリップス」は資生堂レシェンテのCMソングにもなり20万枚超の大ヒットを記録した。現在もシンガーとしてのライブ活動はもちろんのこと、ボーカル講師としても精力的に活動している。
 
「今日は最後まで盛り上がってね!」バックバンドを従えて元気よく登場した斉藤さおり(Vocal)。今宵のバンドメンバーは山崎淳(Guitar)、西山史晃(Bass)、田中一光(Drums)、潮崎裕己(Keyboard)といった強力布陣だ。トップバッターの、注目の1曲目は「SAYONARA」。これから盛大にパーティーが始まろうとする初っ端にいきなり「今すぐにさよなら」とは何ともシュールだが、そんな歌詞とは対照的にその楽曲の力強さ、そして斉藤さおりの力強い歌声は冒頭の景気づけにぴったり!
 
3曲目は宮原学が楽曲制作・プロデュースしたブルージーなサウンドが光る新曲「Shine through」を披露。ほか、2曲目「愛する人よ」、4曲目「ケレド望ム」は、野村義男らの楽曲提供でも知られる2011年発売のミニアルバム『i』からの選曲。情熱的なバラードナンバーから快活なロックナンバーまで全4曲を熱唱し、しっかりと祝福のステージの土台を作り上げた。
 
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◆セットリスト
M01. SAYONARA
M02. 愛する人よ
M03. Shine through
M04. ケレド望ム
◆斉藤さおり 公式サイト
http://on-wave.com/saori/
 
◆インフォメーション
風祭東 × 斉藤さおり
・2013年09月29日(日)【高円寺】Show Boat
2. 尾上01平と一夜妻’S

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静かに、ジャジーなピアノの旋律が流れ、尾上01平のダンディなボーカルが映える…続いて2組目に登場するのは尾上01平と一夜妻’Sだ。今宵限りというメンバーは尾上01平(Vocal & Guitar/JUNGAPOP)、ichiro(Guitar & Vocal/The Sons, GIBIER du MARIE)、鮫島秀樹(Bass/The Sons)、坂口良治(Drums/米米CLUB, JUNGAPOP)、蓑輪単志(keyboard/JUNGAPOP)、さらに管楽器隊も加わった豪華な編成。
 
1曲目はPaul McCartney & WINGSの「Live and let die」を色気たっぷりにカバー。メンバー紹介をするや否や「きょうで解散です!」と早々に宣言。さらに「せっかくこのメンバーでやるのに一番意味のない曲は何かって選んだ曲です」と、2曲目は「はじめてのチュウ」。サックスやトランペットの豪華なイントロに、ichiroの哀愁漂うギターフレーズが加わる。さらにJUNGAPOPの「gimmick」をジャジーにアレンジしたロングバージョンで披露し客席を酔わせると、最後は昨年6月の尾上01平Debut 20th Anniversary「嗚呼青春~第二章の始まり~」で新曲として披露された「秘密と疑惑」!
 
今宵の尾上01平のステージでは坂口良治蓑輪単志が共演したが、彼ら3人に是永巧一(Guitar)、高橋”Jr”知治(Bass)を加えたJUNGAPOPの活動も注目だ。結成16年目にして初のフルアルバム『Honkey Zill』を8月21日に発売し、10月には大阪でのワンマンライブも予定されており、こちらも見逃せない。
 
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◆セットリスト
M01. Live and let die
M02. はじめてのチュウ
M03. gimmick
M04. 秘密と疑惑
◆尾上01平(ONOE IPPEI) OFFICIAL SITE
http://www.manomana.com/ippei/
 
◆インフォメーション
6年ぶりに大阪上陸!JUNGAPOP大阪ワンマンライブ!
・2013年10月06日(日)【大阪】Live House Pangea
3. the days of our youth

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続く3組目はthe days of our youth!メンバーは風祭東(vocal & Bass)、潮崎裕己(keyboard)、伊東正(Guitar)、藤井修(Drums)の4名。個々に確かなキャリアを誇るメンバーが集結しているとあって、言葉で形容せずとも伝わる安心感がある。
 
1曲目は「Count Down To Ecstasy」。レフティーベーシスト・風祭東がかつてチューリップを脱退した姫野達也らとともに結成したTHE ALWAYSのナンバーだ。これぞアリーナロック!という「Wanna Be a Rock’n Roll Star」や、西アジアの熱気を感じさせる「サラスヴァティ」など潮崎裕己のスペーシーなサウンドも手伝って、壮大なスケールを感じさせる楽曲が続く。
 
「僕らの青春の日々というテーマで、ノスタルジックな60年代70年代のエッセンスを取り入れつつ、現代に通用するメッセージを歌っている」というthe days of our youth。簡単な言葉に落とし込めてしまえば「温故知新」ということになるだろうか。Show Boatのステージを連日盛り上げるミュージシャンやフロアで心躍らせる音楽ファンにも通じるテーマだ。風祭東の敬愛するTHE BEATLESの世界観も時折垣間見える、ゆりかごに揺られるような安心感のあるステージが展開された。
 
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◆セットリスト
M01. Count Down To Ecstasy
M02. Wanna Be a Rock’n Roll Star
M03. サラスヴァティ
M04. 地球に落ちた種
M05. Panspermia
◆風祭東 公式サイト
http://www.azuma-pop.com/
◆潮崎裕己 公式サイト
http://www.hiromishiosaki.com/
◆藤井修 公式サイト
http://super-hard-rock.com/fo/
 
◆インフォメーション
藤井修 53rd Birthday
・2013年09月13日(金)【高円寺】Show Boat
4. 松岡英明

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the days of our youthのメンバーがそのままステージに残り、続く4組目の出演者である松岡英明(Vocal)を呼びこむ!17歳でEPICソニーのオーディションにエントリーし優勝、翌1986年に布袋寅泰プロデュースでデビュー。以来一貫してシンガーソングライターとして活動を続ける松岡英明。「ようこそ松岡英明の音の世界へ!」甘いマスクとボーカルで客席をとろけさせる。バックで演奏するthe days of our youthの4人も、先ほどとは打って変わってポップなサウンドを奏でる。「Visions of Boys」、「Virgins」と自身の代表ナンバーを立て続けに披露。
 
「最後は僕の大好きなDuran Duranを歌います」と宣言すると、カメラのシャッター音が素早く連射!「Girls On Film」をポップに、かつセクシーに熱唱!「最高に楽しかったです!」心の底からその思いと感謝、Show Boatへの祝辞を叫ぶと、笑顔でステージを後にした。
 
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◆セットリスト
M01. Visions of Boys
M02. Virgins
M03. Girls On Film
◆松岡英明 公式サイト
http://www.hideaki-matsuoka.com/
5. face to ace

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突如、ヒグラシの鳴き声とともに、ピアノが夏の終わりの切ないメロディを奏でる。5組目はACE(Vocal & Guitar/ex:聖飢魔II)と本田海月(keyboard & Guitar/ex:GRASS VALLEY)が2001年に結成したユニット、face to aceだ。今宵はこの2人に加え、西川貴博(Drums)、YANZ(Bass)、嶋田修(Guitar)が脇を固める。
 
「ヒグラシ」に続き「約束の旋律」、「OLD ROBIN HOOD」と大人の上質なロックサウンドを奏でると、「SCUDERIA VINTAGE」と「慟哭のDISTANCE」では本田海月がエレキギターを軽快にかき鳴らす。この両曲は2009年リリース『PEAKS』に収録されているが、「慟哭のDISTANCE」はACE独特の韻の踏み方が発売当時に話題を集めた楽曲だ。ロックサウンドの中に哀愁も混ざる、face to ace独自のサウンドが構築されている。
 
最後はハイテンポな「TOUGH!」で、5人の疾走感溢れる音が会場を駆け巡る。秋には全国ツアー『MASTER PLAN 2013 2nd Stage』が各都市で開催されるface to ace。是非またライブ会場で、上質な音楽を楽しみたい。
 
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◆セットリスト
M01. ヒグラシ
M02. 約束の旋律
M03. OLD ROBIN HOOD
M04. SCUDERIA VINTAGE
M05. 慟哭のDISTANCE
M06. TOUGH!
◆face to ace 公式サイト
http://www.facetoace.jp/
 
◆インフォメーション
face to ace Autumn Tour
『MASTER PLAN 2013 2nd Stage』

・2013年10月20(日)【恵比寿】LIVE GATE TOKYO
ほか全国各都市で開催 詳細は公式HP
6. TRAUMA

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さあいよいよトリを残すのみとなった。今宵、一夜限りの復活を遂げるTRAUMAだ。小田原豊(Drums & Vocal)がレベッカに在籍中の1988年、自身のソロプロジェクトとして横内”TAKE”健亨(Guitar & Vocal/TENSAW)、六川正彦(Bass/ex:大橋純子&美乃家セントラルステイション)と結成したのがTRAUMAだ。宮原学らをコーラスに招き7曲入りアルバム『TRAUMA』を発売して以来、ライブ活動等を行うこともなく四半世紀にわたって沈黙を守ってきた彼らが、結成25周年を迎える今年、ついに一夜限りのステージが実現した。
 
この日一番の声援が飛び交う中、ついにあの男たちが登場!迷彩柄に身を包んだ小田原豊横内”TAKE”健亨六川正彦、そしてゲストミュージシャンとして中島オバヲ(Percussion)、宮原学(Chorus)、小滝みつる(Keyboard)の合計6名が持ち場に就くと、ヘリコプターのプロペラ音が渋谷duoに轟く。「男たちが帰ってきた!」そんな高揚感を、横内”TAKE”健亨のギター、そしてキーボード&ウィンドチャイムの装飾がさらに煽る。
 
1曲目はアルバム『TRAUMA』の1stトラック「Dear John Letters」だ。この曲を筆頭にTRAUMAのほとんどの曲は小田原豊作詞、横内健亨作曲だ。横内”TAKE”健亨がメインボーカルをとり、低音を太く力強く響かせる。
 
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MCを挟まず、2曲目は疾走感あふれるロックナンバー「Front Line」。小田原豊の快走ドラムがたまらない。ステージを観るとバスドラムの上にあまり見慣れないドラムセットが並んでいるが、「ロートタム」といってヘッドに取り付けられた枠が回転することで膜の張力を変え、音高が変化させられる特長を持つ。レジェンド・小田原豊の熟練の技が、中島オバヲの叩くコンガと相まって客席のボルテージをグングン上げていく。かと思えば途中から変調。六川正彦のベースに合わせてドラムもゆっくりと寄り添う。
 
「25年ぶりのトラウマです!」MCは控えめで、アルバムの曲順通りに「Gurdoner」、「Margarita」と続く。小田原豊もボーカルをとり、熱のこもったステージが展開。元々TRAUMAは「戦地の負傷兵」をテーマに人間の悲哀な側面を詩に曲に込めており、熱帯ジャングルのような一見陽気なサウンドの中には攻撃的なギターリフや危機感を煽る音飾も散りばめられている。
 
横内”TAKE”健亨の熱唱に宮原学のコーラスもソウルフルに並走し、5曲目は「Blind World」。会場のボルテージも最高潮に達したところで楽曲はクライマックスへ!「we are TRAUMA!」6人の声と音は、徐々に大きくなるSEのプロペラ音にかき消されていく。そのSEをも上回る大きな拍手に送られながら、一人ずつステージを去る。こうして、TRAUMA一夜限りのステージは終了。いつまでも鳴り止まないアンコールの拍手。しかし、迷彩柄の男たちが再びステージに現れることはなかった。
 
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◆セットリスト
M01. Dear John Letters
M02. Front Line
M03. Gurdoner
M04. Margarita
M05. Blind World
◆小田原豊 公式Twitterアカウント
https://twitter.com/odawara_yutaka

 
今宵Show Boat20周年を祝ったミュージシャンたちは、いずれも20年前には既に音楽を始め、音楽を追求し、それぞれ音楽に一家言ある顔ぶれだ。円熟した音楽と音楽が交わった、オールタイムベストな3時間半であった。
 
高円寺Show Boatは既に21年目をスタートさせ、今宵も上質な音楽を堪能できるステージを作り出している。次の25周年、30周年の「THE FES」開催もまた期待したい。
 

◆高円寺ライブハウス ShowBoat
http://www.showboat.co.jp/

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