特集

lead_mind11

TEXT:桂伸也 PHOTO:遠藤真樹
ロックの中の、師弟関係というつながり

「ロックと生きる」BEEAST編集部員による全力特集「Editor’s Note…PASSION」。第11回は桂がお届けする。今回はスペシャル企画として、ロックの中に存在する師弟関係というつながりの意味を、対談インタビューより探ってみた。
 
ミュージシャンに限らず、アーティストという立場の人間にとって、教えを乞うことは非常に重要なことだ。志をもって自身の道を進むにあたって、誰から何を学び取っていくのか?それを考えることは、アーティストにとっては重要な課題といえる。
 
たとえばロックミュージシャンもテクニックやセンスを求めれば求めるほど、それを得る為にどんな教えを乞う必要があるかを考えることは大きなポイントなる。一例としてBEEASTのコラムニストであるKelly SIMONZと、超絶ギタリスト大村孝佳の師弟という位置づけは有名なところであるが、二人のスタイルが共通していることを見ればその関係が大きな意味を持つことは理解してもらえるだろう。
 
今回登場するのは、屍忌蛇IRON-CHINOという、ヘヴィメタルを軸として活躍するギタリスト二人。屍忌蛇Gargoyleを経て、ANIMETALのギタリストとして頭角を現し、へヴィメタルの一線で活躍を展開している。最近活動を開始した哀旋士ではボーカリスト、さかもとえいぞうとのタッグで新たな話題を巻き起こしている。
 
IRON-CHINOは同人メタル作家としてIRON ATTACK!を筆頭にLIGHTNINGEIZO JAPANのメンバーとしての活動と、精力的な活躍を続けている。屍忌蛇の一番弟子ということでその名を知られている彼だが、現在IRON ATTACK!で同人初のワールドツアーを行うという偉業の最中であり、さらにその活動に意欲を燃やしている。
 
屍忌蛇に対しIRON-CHINOが直接教えを乞わなくなった今も強いつながりをもち、現在では時折ステージのセッションなどで師とプレイを共にすることもある。IRON-CHINOはどのような志をもち、屍忌蛇に対して入門の扉を叩いたのだろうか?IRON ATTACK!のドイツ公演を目前にしたこの日、師匠の屍忌蛇同席のもとでその関係を結んだいきさつや師に対する思いを語ってもらった。
 

hana
 

1.屍忌蛇さんのレッスンは、毎回驚きがありました。(IRON-CHINO)

 

 

—もともと屍忌蛇さんがIRON-CHINO(以下、IRON)さんをお弟子さんとして迎え入れたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

 
屍忌蛇:自宅でギター教室を開いて生徒を募集していたんですが、彼から電話をもらったんですよ。それで面接というか、一度会って話をしてみたんです。たしか新宿の高島屋の屋上にあった喫茶店みたいなところだったかな?それで「どれくらいギターを弾いているの?」とか現状を聞いたら、結構弾けそうで全然問題なさそうだったので「別に(僕のところへ習いに)来なくてもいいんじゃないの?」とか思ったのですが(笑)。本人としては作曲方法やソロの作りかたなどを勉強したいということだったので、「僕は自己流だけど、それでいい?」とことわりを入れて、この師弟関係が成立したという流れですね。
 
IRON:それからは週一くらいのペースで半年くらい通いました。屍忌蛇さんは「来なくていいんじゃないの?」と言われましたが、やっぱり通ってみると全然変わりました。僕のギターのキャリアを見たら、屍忌蛇さんの教えに付く前と後で全然違いますし、「それまでの何年かの積み上げはなんだったんだ!?」くらいの勢いでした。一番印象的なのはオルタネイトピッキング(※1)。それまでろくすっぽできなかったので、徹底的に鍛えていただきました。
 

—IRONさんが最初募集に応募しようとしたきっかけは何だったのでしょうか?

 
IRON:もともと屍忌蛇さんのファンだったんです。ホームページを見て「まさかこんなことをやっているとは!もう絶対行かなきゃ」って。実はその前にも、2回ほど路上でお会いしたことがあったんですよ。御茶ノ水の楽器街で。
 
屍忌蛇:そうなの?覚えてないな(笑)。俺、何か言っていたかな?
 
IRON:いや、快くという感じで握手していただきました。
 
屍忌蛇:会ってたか。ときどきあるんですよね、顔覚えてない人に声を掛けられて、「ああ~どうもどうも!」ってリアクションして、「誰だか覚えています?」とか反応される前に「じゃあまた!」とか言って去っていくという(笑)。結構よくあるんですよね。あれは結構恐怖な感じ(笑)。だいたい打ち上げなんかで酔っ払った状態で会っているから覚えていること自体が難しくて(笑)。
 

—レッスンを始めて、その憧れの屍忌蛇さんとの距離が縮まったときに「あれ、屍忌蛇さんってこんな方なんだ!?」と、違った面を発見されたことはありましたか?

 
IRON:いや、逆にないです。よく「ステージ上ではあんなだけど、普段は…」という人がいますが、ステージでしゃべっている恰好まったくそのまま。さかもとえいぞうさんも言われていますが、本当に素のままなんです。「本当は気難しい人だったらどうしよう」とか思っていたんですが(笑)、スゴイ気さくで。
 
屍忌蛇:まあたしかに25歳くらいまでは(ステージでの自分などを)作っていた面もありましたが、疲れるんですよね(笑)
 
IRON:そんな屍忌蛇さんを見て成長したので、僕はステージではナチュラルな感じで「いや~今日は暑いね~」とかしゃべって(笑)。「MCがゆる過ぎだろう!?」っていうお叱りもよくあります(笑)
 

—屍忌蛇さんのほうからIRONさんを見たときの印象はどんなものでしたでしょうか?

 
屍忌蛇:いや、髪もこんな感じだったし、バンドマンには見えなかったですね(笑)
 

—教えるとなったときに、何か人間的なクセのようなものを感じられたことはありましたか?

 
屍忌蛇:それもないですね。逆に自分が教えることに対する恥ずかしさというか(笑)。「曲をどういう風に作るか?」とか、コード進行の理論なんかね。本当に自己流だったので、そのやり方を教えるのは、本当に恥ずかしいんですよ。「えっ?実はそんな風に作っていたの?」っていう感じ。たとえば自分の特徴としてある要素の中で、よく哀愁というか「泣きのギター」といわれているものがありますが、別に海外のアーティストやジャーマンメタルのプレイからインスパイアされたわけではなくて、70年代の歌謡曲のコード進行みたいに日本的なもの、オフコース甲斐バンド長渕剛中島みゆきなんかのフォークソングの影響が強いんですよ。それをディストーションギターでリフを弾くと、それっぽくなるんじゃないかと(笑)
 

—なるほど。メタルというサウンドの中ではダイレクトに感じられないかもしれないけど、その日本的なエッセンスがそれがベースにあるということですね?

 
屍忌蛇:そうですね。たとえばこの音(チョーキング+ビブラートを入れた一音を奏でる)。この音だけをずっと16小節の中で鳴らし続けていると、コード進行が変わっていくだけで「泣き」に聴こえるんです。だからフレーズどうのこうのより、コード進行だと思うんですよね、哀愁を感じるのは。ブルースなんかもそんな感じだと思うんですが。
 

—なるほど。

 
IRON:屍忌蛇さんのプレイはやたらと速弾きで詰め込む感じではないけど、ときどき速弾きもされますよね?そんな中で「速弾きの中にもメロディがある」というお話を屍忌蛇さんのインタビューで読んで、僕もそれを意識しながら弾いています。
 
屍忌蛇:ただあんまり速過ぎると、何か分からなくなっちゃうよね。そうなっているプレイを聴くと惜しいな、と思う。たとえばそのIRONくんの速弾きフレーズを分解したり、10~12小節くらいに引き伸ばしたりしたほうが哀愁感じは出てくるんじゃないか、と。
 
IRON:あ~そうかもしれませんね。
 
屍忌蛇:どうなん?IRONくんも結構速弾きはいけるけど、Al Di Meolaくらい弾けるんちゃう?(笑)
 
IRON:いやいや(笑)
 

 

—今の「泣き」に対する屍忌蛇さんの解釈も独自ですが、IRONさんは習い始めて、そういう意外性を常に感じられていましたか?

 
IRON:そうですね。驚きが毎回ありました。僕の場合は基礎ができていなかったので、基礎から教えてもらっていたのですがそれでも驚いたし、作曲方法でも驚きましたね。変わったところだと、ギターソロが終わったときに「コトッ」と雑音が出ちゃうことってあるんですけど、(身振りを入れながら)「ここはこうやって…こんな感じでさり気なくボリュームを絞ればいい」とか(笑)、そういうライブのテクニックなんかも合わせて教えてもらったこともあります。
 

—微妙なところですね(笑)

 
屍忌蛇:そういうのは色々あるよね。たとえば最後の曲が終わっても、「ジャーン!タカタン!・・・シーン・・・」じゃなくて、あえて「ピーッ」と鳴らしっぱなしのほうが、白けない感じがあるんですよ。それをローディーに渡しても、ちゃんと分かってくれて、音をゆっくり切ってくれるし。演奏中はダウン、ダウン、アップとかとういう順番にこだわったことなんてないんですよ。そんなことやっている余裕は当然ないし。基本的なピッキングみたいなものは分かるけど、演奏中にピックを落とせば指だけで弾くこともある。あえてピックを自分から投げて指で弾いちゃったこともありますね(笑)
 

—演出としてですか?

 
屍忌蛇:そう、演出。
 
IRON:屍忌蛇さんはこうおっしゃって、いつも適当に弾いているみたいなことを言われますが、実際にはとても理にかなった弾き方をされているんです。たとえば普通にギターを構えているときはオルタネイトピッキングですけど、こうやって弾かれる(Jimi Hendrixのようにギターを首の後ろに回して)ときには、エコノミーピッキング(※2)なんです。
 
屍忌蛇:えっ、そうなの?(笑)
 
IRON:そうなんですよ、僕はそこまで見てますから(笑)
 

—それは弟子という観点から気づいたポイントですかね?

 
IRON:いや、これは実はファンだったころから知っていたんですよ。「あのときはエコノミーだ!」みたいに。この体勢だとおのずとエコノミーピッキングになる。
 
屍忌蛇:僕、初めて知ったよそれは(笑)
 
※1,2
オルタネイトピッキングはギターのピッキングの基本的なテクニックで、フレーズ上の続く音符を規則的にアップピッキング、ダウンピッキングと交互に弾くテクニックをいう。これに対しエコノミーピッキングは、フレーズ上でどうしても弦を移動しなければならない際などで交互の規則性を崩し、アップ→アップやダウン→ダウンなどのピッキングパターンを入れるピッキングテクニック。
 

2.「学校のギターの先生みたいになりたくて」ギターを弾いている子って少ないと思うんです。(屍忌蛇)

 

 

—よく見られていますね、本当に。屍忌蛇さんの教える内容も、プレイされる内容も実践的な面で気になるところが多いということでしょうか?

 
IRON:そうですね。やっぱり少しでも学び取りたいと思いましたので。よく言われることがありますが、こういう話は今ある音楽の専門学校では習わないことなんですよね。ここでしか教えてもらえない。
 
屍忌蛇:こんなことを言うとまた叩かれるかもしれませんが(笑)、たとえば「学校のギターの先生みたいになりたくて」ギターを弾いている子って少ないと思うんです。やっぱりステージでアクシデントもありつつ、キュイーンとやりながらピック投げている(笑)、そんな姿に憧れるはず。そういう方向に進みたいと思っても、そのために必要な内容は、実は学校ではあまり教えてもらえない。
 
たとえばよく「あそこのハコは音が悪いよね」「音が回る」とかよく言う子がいるんだけど、一概にハコの音が悪いだけじゃないんですよ。8割は、自分たちの音を上げ過ぎているんです。だから音がグチャグチャになって、モニターの音が聴こえないとか。だから極力家で弾いている感じというか、目の前アンプを置いて弾いている感じにすれば、PAさんも音を作りやすいし。すごく音がでかすぎでやりにくいときってない?たとえば自分の音がでかすぎでスネアの裏表のリズムが分からなくなるときってあるでしょ?
 
IRON:ありますね。
 
屍忌蛇:それも極力小さくしておくとやりやすいんですよ。僕がステージで聴こえている音というのは、実際には自分の音とドラム3点の音だけ。サポートギターの音ってまったく聴こえないし、ベースの音はうっすら聴こえる感じ。それで、前音(フロアで聴こえる音)はちゃんと鳴るようにしてもらう。
 
IRON:それでちゃんとリズムがズレないようにできるというのがすごいですね。
 
屍忌蛇:いや、そのほうがズレないんだよ。
 
IRON:そうなんですか?ベースが聴こえないとズレそうですね、僕は。
 
屍忌蛇:でもみんなの音を聴いていたら、誰かが間違えるとつられちゃうでしょ?だから敢えて聴こえないように。
 
IRON:あ~なるほど!
 

 

—必要最低限の音のみにする、ということですね。

 
屍忌蛇:そう。昔、大阪のバハマというライブハウスにGargoyleが出ていた時代で、そこは実はPAがなくて素の音でやっていたんです。だからその場でバランス感覚を勉強しましたね。要するにそこで作った音を渋谷公会堂でもどこでも持っていければ、もうPAさん側としてはCDを掛けるのと一緒だから。
 

—すごく実践的な話ですね。

 
屍忌蛇:それと昔は人のライブもよく見に行っては「あんなアクションはかっこ悪い、あんなのはやめよう」とか(笑)、自分のライブビデオを見て、「うわぁ、ダサっ!こういうパフォーマンスはやめとこう」と研究を続け(笑)、結局たどり着いたところは、「あまり動かない」コトなんです(笑)。余裕をかます感じ。
 

—極めておられますね。

 
屍忌蛇:いや、どうかな?でもたとえばYngwie Malmsteenを見て、それほどカッコいいと思わないんですよね。アレはアレでいいと思うけど。Michael Shenkerなんかは逆に動かないですよね。それでもオーラがあるというか。まさに「さわらぬ神にタタリなし」というか(笑)。何もしなければ何も起きないし(笑)
 

—派手な部分は、フロントマンに任せて、ということでしょうか?

 
屍忌蛇:まあ、そうですね。動いたとしてもときどきちょっと動くくらいで。動くと疲れますし(笑)。1曲目、2曲目からヘッドバンギングなんかやると、疲れるでしょ?(笑)だから「もう体力を使い切ってもいいだろう?」っていうころから、わりと激しく動いたりしますね。
 
IRON:そうですね(笑)。あと屍忌蛇さんのプレイを見てて「これは真似しよう!」と思ったパフォーマンスがいくつかあるんですよ。一つはアンコールなんかでガーッと盛り上がっているときに、ギターを弾かないで歌っていたときがあって(笑)。あれが印象的で、僕もやったことがあります。
 
屍忌蛇:アレはアレでいいでしょ?(笑)
 

—たまにやっているのですか?

 
IRON:やっていますね。別に盛り上がったタイミングを見計らってやったわけではなく、単に真似してやっているだけなんですけど(笑)
 

—そういうのを真似される印象はいかがでしょう?

 
屍忌蛇:当然光栄ですけど…でも、そういうことしてたん?(笑)
 
IRON:やっていますね。あと、結構昔は両膝(ひざ)をついて正座の状態でガーっと弾かれたりしていたのを見て、アレがカッコよくてやっぱり真似しようと思ったんですけど、あれをやろうとすると膝に両膝にサポーターを巻いてやらないと(笑)
 
屍忌蛇:アクションといえば、両腕に力を入れないでアクションをするのって難しいんですよ。その典型的なキングが、AC/DCAngus Young。昨日、あるバーででっかいスクリーンでAC/DCのライブを見ていたんですけど、もう、全然力が入ってないのに入っているように見える。あとSLAYERKerry Kingなんかも。見ていて思ったんだけど、殺陣(たて)なんかに近い感覚がありますね。
 
IRON:あっ、なるほど。
 
屍忌蛇:それほど力を入れてやってないのに、ガツンと打っているように見えるような感じ。
 
IRON:Jake E. Leeなんかもそうですよね。右手では力を入れてガーンと弾いている振りをして、実は左手のフィンガリング(※3)だけで音を出しているという。
 
屍忌蛇:Zakk Wyldeは絶対力が入っているでしょ?
 
IRON:絶対入っていますね(笑)
 

—IRONさんのライブはときどき見られていますか?

 
屍忌蛇:そうですね。それほどたびたびではないけど何回か一緒にプレイしたこともあるし、見たこともあります。
 

—その際に弟子として受け入れたことに対して感じたことはありますか?たとえばギタリストのライバルという立場で、抜かれたりしたらどうしよう、という危機感とか(笑)

 
屍忌蛇:いや、それはないですね。やっぱり嬉しいですよね。海外でプレイするほど成長しているし、それは師匠として嬉しいです。
 

—教える上で「こんな風になったら」みたいなことを特別意識したわけではなく、自然になるべくしてこうなってもらえたという感じでしょうか?

 
屍忌蛇:そうですね。自分としては、自分の持っている「あっ、これも教えとこう」みたいな感じで教えて、さっきみたいに覚えておいてもらえていて、そういうのが役に立てばいいなと思ったくらいで。僕もそうなんですけど、何か「本で見た」というような内容よりも、何気なしにイベントなんかに出ているときに、リハーサルなんかでお互い指を慣らすじゃないですか?そのときに「えっ?何今のそれ?教えて!?」って。そういうものを一番覚えているんですよね。そういう感じでできれば。
 

 
IRON:屍忌蛇さんが他に教えられていた方はいましたか?
 
屍忌蛇:いっぱいいるけど、本格的にバンドをやっている子はそれほどいないですね。主婦なんかで、「子供が大きくなったのでギターをまた弾きたいんです」という方や、「ギターを始めようと思うんです」という初心者の方とか。
 

—教えた今の段階で、IRONさんが弾かれるギターに感じる印象などはありますか?

 
屍忌蛇:フルピッキングでとにかく弾きまくる、というイメージがありますね(笑)
 
IRON:そう、タッピング(※4)ができないので(笑)
 
屍忌蛇:楽曲はもうジャーマニック(ジャーマンメタル風)そのものという印象ですね。詞は日本語なの?
 
IRON:そうです日本語、海外向けに。昔と違って、今は海外向けに英語で書いたものを日本語に直しているんです。時代は変わったなぁと思いますけど(笑)。僕らは日本人だし、日本語しか自由に操ることができないからそんな方向になりました。
 
屍忌蛇:サザンオールスターズ桑田佳祐は、黒人をコピーしているらしい。歌の歌いまわしとか、黒人音楽を意識して。
 
IRON:完全に日本語を英語の発音で歌っていますよね。
 
屍忌蛇:よく日本のバンドで、英語で歌うバンドってあるじゃないですか?VOLCANOもそうなんですけど、一時あるアルバムはディレクターが外国人だったんです。そのとき「英語はあっているけど、歌いまわしを考えるとそこで切っちゃおかしいよ!」っていうのをよく言われましたね。たとえば「こんにちは」っていうのを「コンニー、チワー!」みたいな(笑)。「そこは詰め込まなきゃダメだ!」って。でもファーストアルバムの『VIOLENT』は、ヨーロッパと日本だけのリリースだったから、「まあ適当でいいかな」って(笑)
 
※3
運指の意味だが、ここではピッキングした音に対し、左手の運指のみで音数を出していくテクニックを示す。
※4
フィンガリングテクニックに、右手を加えて音数や音域を拡大するテクニック。
 

3.基本的に僕はずっと追っかけをしていきたいくらい好きなんです。(IRON-CHINO)

 

 

—もともと、EIZO JAPANにIRONさんが参加されるきっかけになったのは、昨年インタビューでうかがった、さかもとえいぞうさんへの「屍忌蛇のようなギターを弾く人間がいる」という推薦だったそうですが、それは屍忌蛇さんからの直接の推薦だったのですか?

 
IRON:いや、それは今の仲間内からの口コミ。さかもとえいそうざんの頭の中には、やっぱりこの屍忌蛇さんのスタイルがずっとイメージとしてあるんだと思いますね。一緒にお好み焼きを食べに行ったことがありましたが、「IRONくんには悪いけど、俺の(理想の)ギタリストは屍忌蛇なんだ!」ってずっと言ってましたね(笑)。それを聞いて、「あっ、そ、そうですね」って…(笑)
 

—逆にIRONさんから見たさかもとえいぞうさん、屍忌蛇さんから見たさかもとえいぞうさんというビジョンに一致する部分があるのでしょうか?

 
IRON:いや、恐らくまったく違うと思いますね。僕のほうから見たえいぞうさんは、どちらかというとJAMプロジェクトなどを経たいわゆる「社交的な」えいぞうさん。
 
屍忌蛇:たしかにそういうのは、見たことがないね。
 
IRON:もう、屍忌蛇さんといるときのテンションの違いが、あまりにも違っていて驚きました。「あっ、えいぞうさんが(ANIMETALをやっていた)30代に戻っている!?」って(笑)
 
屍忌蛇:僕はこの前多分、OZZFEST JAPAN 2013で初めてえいぞうさんがANTHEMで歌っているところを見たんだよ。
 

—やっぱり全然違うと思いました?

 
屍忌蛇:そうですね、全然違うと思いました。哀旋士はもう完全にアドリブでしゃべっているけど、ANTHEMはわりとそこも決めてMCをやっていたし。
 
IRON:あくまでファンの目線なんですけど、ANIMETALをやられていたあのころに、精神状態が戻っていますよね?(笑)
 
屍忌蛇:そうやね、水を得た魚のような…あ、こんなん僕が言うたらいかんな(笑)
 
IRON:いや、でも実際その表現が合っていますね。ステージを降りたテンションが違いますし。他のバンドだったら打ち上げも出ずに「じゃあ!」って帰っちゃいますしね。それが…
 
屍忌蛇:朝まで飲んでいる?(笑)
 
IRON:ええ、そう。それがすごいですよね。よっぽど哀旋士が楽しいんだろうなと思いました。
 

—昔憧れたANIMETALから哀旋士に移った屍忌蛇さんに対して、何か印象に残っているものはありますでしょうか?

 
IRON:やはり昔と違うのは、速弾きが少なくなって、速弾き自体もその後のメロディアスなプレイの前兆とするような、より「泣き」のフレーズが強調されているような気がします。
 
屍忌蛇:ソロで弾く32小節が、それだけで楽曲になるようなプレイを心がけているんですよ。「この辺で盛り上げてみて…」みたいな、映画音楽的な感じでね。
 

—行き当たりばったりではなくて。

 
屍忌蛇:うん、それはしないですね。楽器に詳しくない人に「ラララララ~」って口ずさんでもらえたらいいな、と思うんですよね。特にメロデスが受けているのは、そこじゃないかと思うんですよ。歌にメロディがないじゃないですか、だから口ずさむとすれば何か?リフかなと思うんです。また、多分日本人はマイナーメロディに弱いと思うんですよね。
 

—哀旋士の楽曲は、バンド名からしてもうマイナーですね。

 
IRON:楽曲のセレクトは屍忌蛇さんですか?
 
屍忌蛇:そう、殆ど俺。
 
IRON:すごいですよね、もう泣きが満載というか。「グランプリの鷹」とか。
 
屍忌蛇:二枚目は一曲目に「ワイルド7」を持ってくるって決めてんねん(笑)
 

—何らか次にはどんなものを、というのは考えられているのでしょうか?

 
屍忌蛇:次ですか?そりゃあもう二枚目のほうがいいのができますよ(笑)。一枚目は手探りで作ったというのもありますし。まあでも結局ANIMETAL時代とそれほど変わっていないかな(笑)
 
IRON:僕はファンとして、「タイガーセブン」をやってもらいたいですね(笑)
 
屍忌蛇:特撮系に行くわけ?
 
IRON:そう。何でこれかって言うとですね・・・
 
屍忌蛇:俺が歌うから?
 
IRON:そう(笑)。えいぞうさんの「しびれる低音ボイス、屍忌蛇!」っていう紹介から(笑)
 
屍忌蛇:あまりにムード歌謡っぽいので、えいぞうさんが1オクターブ上でユニゾンしてね(笑)特撮やアニメの醍醐味って、オープニング。たとえば仮面ライダーV3のオープニングソングなんか「ダダダダッダァーッ!」って音が入ってくるところとかね、これだけでグッとくるじゃん?あとタイガーマスクとか。
 
IRON:ロックでいうリフの部分ですよね?
 
屍忌蛇:うん。また、そのオリジナルの中にもエレキギターの音はあるんやけど、それがまたエフェクターが進歩していない時代だから、ショボイ音なんですよ。ファズ的なところというか。逆にそれが僕にはグッとくるから、そういうのを再現してみようかと思ってる。まあ、実際のところ僕もそれほどアニメも詳しいわけじゃない。だから最近のアニメはさっぱり分からなくて。日本サンライズ系(アニメーションのプロダクション。代表作は「機動戦士ガンダム」)からもう僕は分からなくて。その前のマジンガーZとか、そのあたりだとストーリーを知っているじゃないですか?だから魂が込められるというか。
 
IRON:それと楽曲が70年代から80、90、2000年代と楽曲がライトになっていったというのもあります。70年代が一番強烈ですよね。
 
屍忌蛇:軍歌的なね、勇ましい。
 
IRON:80年代はニューミュージックっていう影響があって、そこからEIZO JAPANは90、2000年代が主体なんですけど。一番グッとくるのは70、80年代ですね。僕は直球が80年代なので。LIGHTNINGには、毎回アニソンのカバーを入れているんですが、それがだいたい80年代からのセレクトなんで、若い子は知らない。だから知らない子は新曲として聴けるし、知っている人は懐かしく聴いてくれるでしょうし。やっぱり泣きがあるのは80年代ですよ、屍忌蛇さんなり、僕なりの真価が発揮できるのは。余談ですが、8/7に発売されるLIGHTNINGのニューアルバムにも、屍忌蛇さんのスペシャルサンクスを入れておきますので(笑)
 
屍忌蛇:ありがとう!(笑)
 

 

—現在行われているIRON ATTACK!のワールドツアーですが、まずは6月に台湾公演で、これからドイツのほうに向かわれるということで…

 
屍忌蛇:ドイツではどんなところに止まるの?
 
IRON:向こうが用意してくれるホテルがあって、そこに泊まります。
 
屍忌蛇:何日ぐらい泊まる予定?
 
IRON:1週間くらいですかね。2デイズなんですけど、1週間くらい。日程に余裕があるから、今から『るるぶ』(旅行雑誌)を買おうと思っていまして(笑)
 
屍忌蛇:路上でも演奏をやったら?(笑)
 

—哀旋士で将来的には海外、という意向はいかがでしょう?先日、さかもとえいぞうさんのインタビューでも、「北欧を目指したい」という話をうかがいましたが。

 
屍忌蛇:言われていましたね。実は哀旋士のリリースも、もともとヨーロッパでも一緒に出そうという話があったのですが、時間の都合が合わなくて実現できなかったんです。だからこのツアーが終わったら本格的に。それプラス南米へ、という感じ。ただ、今は海外だとなかなかCDが売れないみたいなんですよね。単価が安いし。だから配信だけになるかもしれないけど。
 
IRON:でも、北欧はいいらしいですよ、平均所得がいいから(笑)。ライブをやると家族全員で見に来てくれて、ライブが終わったら物販もたくさん買ってくれるという(笑)
 
屍忌蛇:まあ、まだ日本でやり始めて、地に足が着いていない状態ですからね。海外って言ってる場合ではありません。その前に高知県と岡山県がありますから(笑)
 

—でも、その壁があるにしても、たとえば今回のIRON ATTACK!の「初の同人によるワールドツアー」というように、「では、次は俺が」というような考えも哀旋士のほうであるのでしょうか?

 
屍忌蛇:まあ、昔から思っていましたけどね。そもそもVOLCANOのファーストでヨーロッパなんかも行っていますし。あとDIR EN GREYによく言われるんやけど、理想は向こうのLOUD PARK的なフェスで、ステージの後ろから写真を撮ってもらえるようになりたいです。(パフォーマンスが映えるように)風が強い日とかにね(笑)
 

—なるほど。それでは最後に、お互いにエールを込めたようなメッセージを頂ければと思います。

 
IRON:哀旋士も基本的に僕はずっと追っかけをしていきたいくらい好きなんです。8月も見に行くので頑張ってください!
 
屍忌蛇:今度ドイツだっけ?今度俺たちが行く前に、基礎を作っていってください(笑)
 
IRON:ビールのおいしい店を探しておくとか?(笑)
 
屍忌蛇:野茂のような存在に(笑)僕らは松井稼頭央で(笑)。日本のカルチャーを存分に紹介してきていただきたいということで。逆に僕は思うんですが、海外のこういうジャンルの方、僕らがやっているアニメのカバーとか、これを日本でフェスをやるといいですよね。たとえば哀旋士がリーダーになって、LOUD PARKのような祭典を日本で。「あれに出られなければ意味がない」と、海外の人に言ってもらえるような。そういうのもやってもらいたい。いろんなところを巻き込んでやってみたい。
 
hana
 
インタビュー中の、リスペクトの念を込めたようなIRON-CHINOのまなざしが印象的だった。その前で屍忌蛇は気負った様子もなく自然体で会話に興じていたが、そこで語られていたものは、部分的に冗談が混じられていたものの、ミュージシャンが心を止めておかなければならない必要なことばかり。屍忌蛇が残してきた数々の功績の影響もあるが、それ以上にIRON-CHINOが屍忌蛇に引かれる理由が、こういった内面の深さにあるようにも感じられた。
 
師匠の言葉だけでなく、その一挙一動に注目し多くのものを学び取ろうとするIRON-CHINOの姿勢にも非常に強い印象が感じられた。対談の間にもIRON-CHINOには何かを学び取ろうとする彼の姿勢には、常に屍忌蛇に対する尊敬の念も表されているように見えた。師を尊敬することは、自らの目指す方向を尊重することにつながるため、教えを乞うためには、教える側に対してのリスペクトは必要不可欠であり、彼が見せたその様子は、自らの目指すものを極めようとする思いから現われた当然の結果といえよう。
 
近年ギタリストとしてのテクニックや自己の世界観の実現化で急速にその実績を伸ばしているIRON-CHINO。その活動の源は、屍忌蛇の活躍があってのことともみられる。一方で新たな世界を積極的に切り開こうとするIRON-CHINOの活躍は、師匠に迫る勢いすら感じられる。そんな彼ら個々の活躍とともにこの関係の今後の行方を、引き続き追ってみたい。
 

【ライブ情報】
IRON ATTACK!
IRON ATTACK! WORLD TOUR
『東方Project同人音楽祭 』
2013年8月25日(日) 【香 港】香港九龍湾国際展貿中心地下Music Zone@E-Max
http://www.e-maxmusiczone.com.hk/tc/transport.php
『アルティメイト・ スパーク ~IRON ATTACK! “PLASTIC MIND” TOUR~』
2013年9月01日(日) 【神奈川】club Lizard -YOKOHAMA-
2013年9月07日(土) 【大 阪】難波Rockets
2013年9月16日(月) 【東 京】渋谷CYCLONE
LIGHTNING
『真国の夜明け』
2013年9月22日(日) 【東 京】渋谷CYCLONE
ローソンチケット [Lコード:77390]
2013年10月19日(土) 【大 阪】心斎橋Club ALIVE!
 
哀旋士
『哀旋士 ”Heartstrings Tour 2013”~哀旋士西へ 』
2013年8月03日(土) 【岡 山】倉敷REDBOX
2013年8月04日(日) 【高 知】高知CARAVAN SARY
2013年8月18日(日) 【東 京】表参道GROUND
2013年8月24日(土) 【愛 知】名古屋 Heart Land STUDIO
2013年8月25日(日) 【大 阪】心斎橋 CLUB ALIVE!
 
【オフィシャルサイト】
IRON ATTACK!
http://sound.jp/ironchino/attack.html
IRON ATTACK!とらのあなれコーズ サイト
http://www.toranoana.jp/toranoanarecords/ironattack/index.html
LIGHTNING
http://www.ironchino.jp/
哀旋士
http://www.aisenshi.jp/
屍忌蛇
http://4148.jp/

IRON ATTACK!『Link』
発売日:2013年8月7日
TRNA-10001/1,050円(税込)
収録曲:
M01. Link
M02. Save your lust
M03. ハーレムゲイン
M04. Link(OFF Vo ver)
M05. Save your lust(OFF Vo ver)
M06. ハーレムゲイン(OFF Vo ver)



 
LIGHTNING『RAISE THE SUN』
発売日:2013年8月7日
MICP-11107/2,700円(税込)
収録曲:
M01. WORLD CRISIS
M02. RAISE THE SUN
M03. PRINCE OF THE DAMNED
M04. JOURNEY OF PROPHECY
M05. SOMEWHERE IN THE NIGHT
M06. STAND FOR THE FIGHT
M07. KILL THE IMITATOR
M08. TIME WILL TELL
M09. SAIL AWAY
M10. RISE AGAIN
M11. 永遠のイクサー1*Bonus Track



 
哀旋士『HEARTSTRINGS』
発売中
DSMB-121121/2,000円(税込)
収録曲:
M01. Nadia
M02. ゲッターロボ號
M03. グランプリの鷹
M04. UFO戦士ダイアポロン
M05. いにしえ
M06. 空手バカ一代
M07. アイアンリーガー~限りなき使命
M08. エルガイム-Time for L-GAIM-
M09. 誰がために
M10. Zのテーマ


 

★読者プレゼント★
屍忌蛇、IRON-CHINOのプレゼントセットを、抽選で2名様にプレゼント!
 
プレゼントセット1:
・IRON ATTACK!ポスター(屍忌蛇、IRON-CHINOサイン入り)
・チェキ(屍忌蛇、IRON-CHINOサイン入り)
・IRON ATTACK! ピック(サインなし)
 
プレゼントセット2:
・IRON ATTACK!ポスター(屍忌蛇、IRON-CHINOサイン入り)
・チェキ(屍忌蛇、IRON-CHINOサイン入り)
・哀旋士 ピック(サインなし)
 
ご応募方法は“BEEASTファンクラブ”の方にお届けする「週刊ビースト瓦版(無料メルマガ)」にて記載いたします。
 
BEEASTファンクラブ”はコチラの『BEEASTファンクラブ』ページより簡単登録(完全無料)可能!
 
※『ファンクラブ』ページにある登録内容を送信してください。携帯からアクセスされている方はコチラに空メールを送信していただくか、ページ上のQRコードを読み込みの上メールしてください。仮登録の登録画面のメールが届きます。
【重要】携帯電話のドメイン指定受信を設定されている方は、prius-pro.jpのメールを事前に受信できるよう設定してください。

◆関連記事
ROCK ATTENTION 20 ~さかもとえいぞう~
http://www.beeast69.com/feature/58061
IRON ATTACK!『STAR DUST MEMORY 2012 最終戦』 2012/09/01
http://www.beeast69.com/report/36801
Watch the Outside! CASE 1 IRON-CHINO~同人メタルの雄
http://www.beeast69.com/feature/24560
BEEAST太鼓判シリーズ第4弾アーティスト『LIGHTNING』
http://www.beeast69.com/feature/11928
【連載】ももてつNMカフェ
http://www.beeast69.com/category/serial/momotetsu

 


 
 
  コラムニスト
YAASUU
2019年4月21日更新
COMING SOON!!!
EARTHSHAKER
EARTHSHAKER
2019年4月12日更新
第21弾「呉CAROUSELAMBRA」
The HIGH
さかもとえいぞう
2018年11月14日更新
人生の宿題その3
The HIGH
2019年4月17日更新
第15回「LAST ONE OK?」
mondo
中村 “MR.MONDO” 匠
2018年8月27日更新
第十一回「スペインツアー2018」
PINK SAPPHIRE
PINK SAPPHIRE
2019年4月3日更新
第20回「AYA」
永川敏郎
永川敏郎(Toshio Egawa)
2018年12月7日更新
Progressive Man 第41話