特集

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TEXT:桂伸也 PHOTO:ヨコマキミヨ

新たな時代の風雲児となるべく奮闘を続けているロック男子たち。その姿を追う新しい特集「ROCK SAMURAI STORY」。今回は記念すべき第1弾アーティスト快進のICHIGEKIの第二回をお送りする。
 
個々のメンバーに対してのパーソナルインタビューより、快進のICHIGEKIという独自の存在がいかに構成されているかを深く探るSide Bの第二回。今回登場するのは、ベーシストのだ。
 
前回登場したフロントマンのコータとは対照的に、「縁の下の力持ち」というイメージの。プレイでは音の土台を堅実に支えながら、パフォーマンスでは常にステージにエアポケットを作らない、絶妙な位置に存在する。時に見せる、激しいステージングに反して、実にクレバーな印象を持ったプレイヤーだ。「仕事人」というイメージすら感じられるそのストイックな性格、性質は、快進のICHIGEKIにはなくてはならな要素の一つとも見える。その彼がバンドにもたらしたものとは?逆にバンドから彼にもたらされたものとは一体何なのか?その経緯をたどってみた。
 
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1) テクニックなんかよりもたどり着きたいのは「自分にしか出せない音」。

 

—今現在プレイヤーとして活動を続けられている潤さんですが、現在の活動以前のことからまずはお話をうかがえればと思います。抽象的な表現かもしれませんが、例えば潤さん個人のプレイや普段の活動を見ると、アーティスティックな面よりも、とてもアスリート的なひたむきさを強く感じることがあるのですが、過去にスポーツの経歴等で、その部分が磨かれたところもあるのでしょうか?

 
潤:どうでしょうかね?(笑)そういうことで磨かれたかどうかは分かりませんが、スポーツはやっていました、バスケットを。キャプテンをやっていましたね(笑)
 

—キャプテンですか!?すごいですね。そういう意味ではもともと親分肌のところがあるのでしょうかね?

 
潤:いや、自分なりには、それほどではないと思いますけど…
 

—最初に「音楽をやりたい」と思ったきっかけとは何だったのでしょうか?

 
潤:もともと音楽は好きだったんですよ。小さいころから歌うことなんかも。でもギターや楽器の音を認識し始めたのは小学校のころ。やっぱり布袋寅奏の影響が強かったと思います。俺が小学校のころはまだCDを自分で買うようなこともなくて、あまり音楽を知らなかったけど、いとこがちょうどBOOWY世代で、そのCDなんかを全部持っていて、あと布袋モデルのギターがあって(笑)、みたいな典型的なファン、それをちょっと借りたり盗んだりした、という感じで(笑)、聴きまくっていました。
 

—それはなにか「いとこの兄ちゃんに対する憧れ」のような感じだったのでしょうか?

 
潤:いや、そういうものではなかったと思います。憧れてないわけじゃないけど、BOOWYの音を聴きながらギターの音を認識した時に、単に「カッコいいな」って感じただけ。それまではポップスしか聴いていなくて、ちょうど小室哲哉なんかのテクノやデジタルサウンドがバーン!っていう感じのほうが、自分の耳には印象が強かったですね。バンドサウンドみたいなソリッドな感じはそこまで耳に入ってこなかったんです。X JAPANくらいでしたかね、あったとすれば。
 

—ではそのきっかけとはやはり「友達の誰それがやっていたから」「いとこの兄ちゃんが」というよりは、本当に音楽を聴いていた流れでそこに行き着いたということですかね?親の影響とかいうのもなかったのでしょうか?

 
潤:そうですね、親の影響は特になかったと思います。強いていえば、やっぱりそのいとこくらい。あとはもう片っ端から自分で聴きまくったというだけで。
 

—BOOWYの後でちょっとバンドブームも落ち着いたころですかね?

 
潤:その通りですね。普通の子が楽器を始めようと思ったのがそのころは中学生くらいだったけど、俺はちょっと早くて小学校5~6年くらい、11歳ころだったかなと思います。だんだん音楽が好きになって、レンタルCDなんかに毎日通っては片っ端から何かを聴いて、っていうのが始まりでした。そのころ、いとこが持っていた布袋のCDからリフを感じでは「おお!何だこれは!?」ってギターから入っていきつつ、バンドサウンドというものを認識し始めました。
 

—バンドサウンドからの目覚めですか。いきなり核心から入っていきましたね。ベースという楽器を意識し始めたのはどんなタイミングだったのでしょうか?

 
潤:それは布袋のライブ盤を聴いたとき。ライブの中でMCが「オン ドラムス!だれだれ!」「オン キーボード、だれだれ!」って、お決まりの奴が飛んできましたが、その時に気になったのが、「オン ベース!」っていう言葉。「ベース?何だそれ?」って(笑)。ベースって分からないですよね、プレイを聴いていても「どの音だ?」って。
 

—確かにバンドの音を聴いただけでは、イメージしにくい音ですよね。そこからベースに興味を持ち、バンドをやりたいと思ったのはどんなタイミングなのでしょうか?

 
潤:きっかけはLUNA SEAだったんです、LUNA SEAJ。今までMr.Childrenをあれこれと聴いているところにLUNA SEAがオリコンにいきなりバコーン!って一位に入ってきて、相当な衝撃を受けましたね。ちょうど中学校に入って、バンドをやりたいって思っていたころでした。
 

—たとえば布袋の音楽を聴いたときに、ギターに憧れたりはしなかったのですか?

 
潤:いや、それはなかったですね。彼らの音は単純にカッコいいなと思っただけで、自分でやってみたいとか作ってみたいと思ったわけではないです。その前はMr.Childrenなんかを聴いて「曲がいいな」と思っていた。そして布袋の後にLUNA SEAを聴いて「やってみたいな」と初めて思ったという。段階に分けて発展していった感じですね。それからさらにバンドをやりたいと思ったときに、「歌いたくねえな」「ドラムはやらなくてもいいかな」「ギターはちょっと」って、いろいろ敬遠して(笑)。もちろん布袋の音には憧れていたし、家ではギターを弾いていたけど、バンドで自分がギターを弾く必要はないと思ったんです。
 

—不思議な動機ですね。

 
潤:いや、でもベーシストっていうのは、そういう人はわりと多いんじゃないでしょうか(笑)。俺は最初からベースをやりたいと思って、ベース以外に他のことをやりたいと思ったことは、実は一度もないんです。楽器を触るのは好きですけど、バンドってチームだし、ドラムがいてギターがいてヴォーカルがいて、って。その中で俺は、「ギターっていうキャラクターじゃないな」という感じで、根っからのベーシスト(笑)。
 

—プレイ自体の方でもとてもシンプルな印象があります。ベースを始めた経緯からすると根っからのベース好きというイメージが見えるのですが、そうするともっとベースのテクニカルな部分を追求するベースキッズというようにも見えましたが、全く反対の性質ですよね?

 
潤:まあ、別にそれほど難しい理由があるわけではないです。単にあれだけのギターとドラムの音が鳴っている中で、俺が入る隙間はないから、というだけの話。言い方を変えれば彼らの音に対して自分が一番いい位置に立てるとすればここ、ということでシンプルに弾いているだけなんです。逆に彼らがもっとスカスカな感じのプレイをしてくれば俺はもっと弾き込みますね。
 
だから例えば快進のICHIGEKIではなくほかのバンドにしたら、全く違う音になると思うんですよ。もともと俺はピック弾きで、ダウンピッキング、思いっきりパンク寄りな感じが根本にありますし(笑)
 

—ライブだと指弾きでプレイされていますよね。

 
潤:うん、指弾き。ピックは快進のICHIGEKIじゃ必要ないと思うんです。だから軸にあるのはそこ、「快進のICHIGEKIとして必要かどうか」というところで線引きは行っているんです。
 

—やっぱり楽器を始めた導入時の意識の持ち方が面白いですね。楽器を始めるとその楽器にばかりに目が向いて、どうしてもテクニカルな方向に進んでしまう傾向は強いと思いますが。

 
潤:そうですね。でもどうなんでしょう?ギタリストだとそうなのかもしれないけど、ベーシストだとまた違う視点があるのかもしれない。ただ客観的にほかのバンドを見ているときに感じるときがあるのですが、いい具合にバランスをとっているところもあるけど、ベースが目立ちすぎるバンドって、結構バランスが悪いと感じることは多いです。聴いていて、体の中から「何かが湧いて出てくる感じ」が無くて「うるさいな」と(笑)。うるさいかどうかは微妙なラインですけどね。
 
もちろんプレイヤーとしての主張やプレイもあります。例えば俺が快進のICHIGEKIやっていく上で一番重視しているのは、他の三人にないもの。それが自分に出せれば、それこそが俺にはベストなものだと思っています。それでみんなからは一歩引いた位置で物事を見ている、というように見られることもあります。
 
ただ、一歩引いているからといって俺自身の存在感を消すつもりもない。そこは結構裏では意識していますね。あまりにも「だれでもいい」というような感じになってしまっては、それはそれでだめなので。一番昔から意識しているのは、テクニックなんかよりもたどり着きたいところとして「自分にしか出せない音」。
 

—なるほど。それは単に、あくまでも「派手に弾く」ということが答えではないという意味で、ということですね?

 
潤:そう、なかなかベースって難しいんですけど、その中でも自分が鳴らした音を聴いて「これぞ自分の音だ!」というサウンドが聴こえるのが理想。まだまだ全然たどり着けていないですけどね。ギタリストだってそうじゃないですか?誰が聴いても「あの人の音だ!」って。
 
ヴォーカリストってこういった傾向は顕著ですよね。そこまで万人が「誰だ」というのがわかる必要はないけど、プレイヤーとして「自分しか出せない音」っていうのだけをむしろ考えているのかもしれませんね。だからこそ偏屈なのかも(笑)
 

—でもそういう意味では、やっぱり最初にも言ったように「芸術家」的というよりも「アスリート」的な、ストイックな感じが見られますよね。

 
潤:そうかもしれませんね。でもどちらかというとアスリート的な感じは俺だけじゃなくて、快進のICHIGEKIというバンド全体にある気がしますが(笑)
 
 

2) 次の活動を始めるにあたって、やったことないことに手を出そうとも思ったんです。

 

—快進のICHIGEKIに加入したころのことを教えていただけますか?まずは最初に対バンで快進のICHIGEKIと遭遇されたとのことですが、その時の印象としては「こいつらはすごいものがある」というイメージはあったのでしょうか?

 
潤:それはありましたね!というか、「俺、バンドをやめようか」とショックを受けていました(笑)。これはメンバーにも言っていない話なんだけど、快進のICHIGEKIを見てそのとき、「今俺がやっているバンドじゃ、これ以上の活動を続けられない」と思ったんです。すご過ぎて。今のメンバーは俺よりみんな1歳だけ年下で「年下にこんなにすごいバンドがいるのか?」って。だからファーストインプレッションは本当に超強烈。
 

—その後彼らが10代最後の記念としてコンテストに出場、それを潤さんも見に行かれたとのことですが、その時はやっぱり「すげえや!」という印象でしたか?

 
潤:そうですね、正直ビビっていた感じでした(笑)。その時の感覚はというと…まさに敗北感(笑)。
 

—その前に潤さんがやられていたバンドは、潤さんなりには「マジでやろう!」と思われていたのですか?

 
潤:もちろん。だからいきなり出鼻を挫(くじ)かれた感じでした。バンドは高校一年ぐらいから始めて、高校を卒業するくらいにはオリジナル曲を、アルバム2枚分くらい書いていました。俺のバンドは俺が全部をやっていたようなバンドだったんですよ。曲も書いて、スケジューリングもして、運営もし、ということをしていたので、バンドっていうのはどういうことをしなければならない、ということはよく知っていたつもり。高校を卒業してブッキングしてライブに初めて出たのが、府中FLIGHT。ちなみに快進のICHIGEKIと出会ったのは吉祥寺CRESCENDOでした。
 

—最初から本格的ですね。どんな感じの音楽をやられていたのでしょうか?

 
潤:そのころは、チューニングは低くしていたけど結果的にポップロックみたいな感じのものをやっていました。対して快進のICHIGEKIはガリガリのスラッシュメタルでしたね。BPM=200(beast pear minutes:一分当たりに四分音符を打つ回数。スラッシュメタルは200あたりのアップテンポなものが普通。)しかない、オールシャウト、ツインリードで、タッピングでハモるという典型的なやつです(笑)。今ほどの音圧はなかったけれど、プレイのスキルだけでいえば今と変わっていないですね、ドラムもギターも。むしろメタルという面で見れば今よりそのころの方がうまかったかもしれない。久雄なんかはYngwie Malmsteenを全コピーしてた感じで、まさしく「超絶のかたまり」みたいな(笑)
 

—久雄さんは快進のICHIGEKIでのプレイはかなり歌心を出した渋いロックギターのプレイが印象的ですよね、超絶テクニックを織り交ぜながらも、歌心の入ったブルージーさで勝負するような。

 
潤:今はね。でも昔はメタルオンリーでしたね(笑)。俺はそれを見て本当に、正直1%も勝てる隙を感じなかったという(笑)
 

—それが結果的に一緒にやろうということになったのは、どんなきっかけがあったのでしょうか?以前行われていたバンドはどのように活動されていたのでしょうか?

 
潤:バンドを進めていくうちに俺と俺以外のメンバーの間でモチベーションの差ができてしまっていたんです。自主企画をやってそろそろ一回ちゃんとした自主音源を出して、ツアーを回らなければと思ったときに、メンバーがついていけないということを言い出して、解散の方向に向かってしまったんです。俺は続けてこれからさらにというつもりでいたけど、「もう続けられないかな」と思いましたね。
 

—なかなかバンドを続けていくという思いを合致させるのは難しいですよね。

 
潤:それでバンドをやめて次に何やろうと思ったときに、実は2つほどのバンドから引き抜きの誘いを受けていたんです。一つは仲が良かったバンドで、超安パイなバンド。もう一つは先輩に紹介してもらったバンドで全く知らないバンドだったんですけど、俺たちの音源を聴いて「ベースがすごくいい」って言ってくれたバンドでした。それで「やるならやっぱり自分の得意な、自分のやっていきたい音楽をやるべきだ」って思っていた。
 
それでどっちにするかを考えたとき「安パイのバンドに行けばすぐに活動が再開できるぞ」って。でもその時に「ちょっと待てよ」と思いとどまる自分もいて、方向を決めかねていて(笑)。逆にもっといろんなことをやるべきだとも思って、苦手というかやったことないことに手を出そうとも思ったんです。その時たまたまネットサーフィンをしていたら快進のICHIGEKIがベースを募集しているというのを見つけたんです。
 

—「おっ、あいつらか」って感じですかね(笑)

 
潤:そう。そこには加入条件として「頭を振れるやつ」「こんな衣装を着られる奴」とかどうでもいいことが書いてあったんだけど(笑)、読んでいるとなぜか「おお、全部俺にピッタリじゃねえか」って思い始めちゃって、気がついたらすっかりやる気になっていたんです(笑)。でも同時に「あのバンドだよな」と少しビビッていました。あの3人の中で、オレ、できるのかなって(笑)
 
それから共通の知り合いに「あそこに入りたいんだけど」という話をして、その時佑一につないでもらってからはトントンと話が進みました。後で聞いた話では、俺が募集告知を見たときはちょうど募集を出したばっかりだったらしいんです。だから「は俺たちのことをずっとチェックしていたらしいぜ」みたいなことを言っているんだけど(笑)、本当にたまたまだったんです。
 

—なるほど。でもそのスピード感は別として(笑)、そういう意味では快進のICHIGEKI自体が以前から怖くもあり、でも挑戦してみたかったという、気になるバンドではあったということですかね?

 
潤:本当にそうでしたね。それと単純に今までの活動では自分が一人で全部をやりくりした分、変な言い方だけど尊敬できるパートナーとやった経験がなかったことが、快進のICHIGEKIに気が向いた一つの理由だったと思います。
 
自分がすべてをこなしたバンドだと、なかなか客観的に見えないじゃないですか?彼ら3人のことを俺は唯一客観的に見ていた。それで、彼らのすごさを外で体感していたし。そして、いよいよ機会が来て挑戦、という運びになった感じですね。
 

—でも同時に「こいつらは何も知らないな」という印象を持たれていたということですが(笑)

 
潤:そう、バンドの運営的な部分で「えっ!?こんなにうまいのにこんなことも知らないの?」みたいなことがいっぱい(笑)。でももともといいものを持っているバンドだし、それを運営ができなくて埋もれているのがもったいないと思っていたので、みんなと一緒に活動を始めたんです。
 
加入した時にも、実はその時のキャリアは俺のほうが長かったし、セルフプロデュースで無料配布の音源を作ろう!とか、ブッキングはこうして、というようなところをやっていました。だからメンバーではありつつも、マネジメントの部分もいろいろ提案しながら活動を行っているという感じです。
 

—今考えるとこのバンドのメンバーとしてまさしく「なるべくしてなった」という感じなのでしょうかね?

 
潤:いや、どうでしょう?(笑)まあでも続いているからそういえるかもしれませんね。実は最初に俺、ここでずっとやろうとは思っていなくてシャレのつもり、というと失礼かもしれないけど、ある程度時期が来たらやらなくなるだろうと思っていたんですけどね(笑)。本当にそのころは快進のICHIGEKIはメタルだけだったし、俺はもっといろんな音楽を幅広くやろうと思っていたし。
 

3) 40になっても50になってもカッコいいプレイヤーでいたい。

 

—潤さんは快進のICHIGEKIの中では一番後に入ったメンバーということもあり、他のメンバーとはまた違う視点を感じます。例えばステージや舞台裏での様子をうかがっていると、わりと最初に切り込み隊長的にドン!と表には出るけど、プレイで主張するよりは一歩引いてバランスを考えているような印象を感じます。なにか例えばご自身に対してリーダー的な意識をされることはありますか?

 
潤:言われてみればというか、確かに少なからずあると思います。バンドが始まった時からもうこの4人で長くやっているけど、俺は一番後に加入、でも実はその時のキャリアは俺のほうが長かったですし。
 

—先日、目黒ライブステーションでのステージ(「【PHOTOレポ】DESTROSE 1st Full Album『DESTROSE』発売記念2マンLIVE!!」参照)で、久雄さんがスタンディングで満員のフロアを見ながら「以前ここでライブをやった時は、フロアに5~6人くらいの客が座って見ていただけの寂しいステージだった」という話をされていましたが(笑)。そういう時代を経ながらも活動してく中で、前に進む為にどういうことを自分なりに押し進められていたのでしょうか?

 
潤:例えばメンバーを鼓舞するというか、特にコータにはよく言って聞かせていることはあります。会場の空気っていうのをギリギリまで見ていて、「今こういう感じで、前のバンドはこんな感じだったから、こうこうこうすれば確実に今日のお客さんはもりあがるぞ!」みたいな話。他にも「今日の目標は、全員フロアを立たせるぜ!」みたいなこととか。
 

—では、例えば「諦めるな!」というようなメンタル的な反省というよりは、ライブの具体的な指示を常に心掛け、「やることをやれば、必ず道は開ける」という引っ張り方をしていたのでしょうか?

 
潤:そうですね。できるだけ目標を具体化して、おのおのの仕事をきっちりやろうぜ!っていうところに落ち着いていると思います。ただ今はみんな一緒にやっているし、そんなに自分自身だけで「バンドに対して何かをやっている」というような認識もないんですけどね(笑)。本当に4人だけでやってきた以前と比べて、今は客観的に見てくれるスタッフの方もいるので、俺自身はそれほどそういうことに口を出すこともなくなったと思うんです。昔は口うるさかったというか(笑)
 

—客観的に見て一般的にはリーダーに見えるような位置に立っていると見られても、本人としてはそれほど「リーダー」的な意識はない、ということでしょうか?

 
潤:全くその通りだと思います。引っ張っていくといえば、ステージはコータだし、メインコンポーザーと言えば久雄、楽曲を4人で作りながらも引いた位置でしっかり意見を投げかけてくるのは佑一なわけで、それぞれのポイントでそれぞれのメンバーが受け持って引っ張っていると思うんです。ただ、俺がそういう位置の人間に見えるというのは、俺だからできる対外的なアプローチとか、いろんな人たちと面識を持った時に窓口になることが多いからだと思うんですよね。
 

—では、個人的に「俺はやることはやっているんで、リーダー的な存在だからということを意識して別に何か余計なことをやっているという認識はない」ということですかね?

 
潤:ないですね、そういう認識は。昔はどんどん自分から積極的にやっていたんですけど、やっぱりそればかりをやっているとそれぞれのメンバーがアーティストとして、プレイヤーとしておざなりになってしまうと思いますし。
 
ただ、それは自分のプレイに専念するっていうこととは、違うなって思うんですよね。本当は自分でいろんなことをやりたいようにはやりたいじゃないですか?俺なんかは快進のICHIGEKIで最初は自分のやりたいことをやりまくったということも多いので、失敗も含めそこから学んで今はそうしているのかな、とも思いますね(笑)
 

—例えば快進のICHIGEKIの10年の活動を振り返りながら、「10年経った」という経緯を振り返ってみても、「こいつら今成長して今こんな感じになった!」みたいに思うところはありますか?

 
潤:もちろん自分も含めてみんな成長しました。まるで今では別物になったくらい。多分、パーソナルな変化が大きな変化だと思いますが、それは聴いている音楽だけじゃなくて経験上見えるものなんかも変化として表れています。徐々にいろんな変化をしていくと思うので、何度も変化をしていますよ。折れたことも一度や二度じゃない、俺自身も折れたこともありましたし。久雄なんかは分かりやすいですよね(笑)、ギターのスタイルなんかで。考え方なんかも昔とは全然変わりました。
 

—なるほど。では最後の質問として、潤さん自身が今後プレイヤー、アーティストとして、どんな風に成長していきたいと思われますか?

 
潤:とにかくプレイしていきたい、特にライブ。ずっとステージに立っていたいです。40になっても、50になっても…その時々でステージに立っていたいと思う。逆に今「こうありたい」という具体的なものは…正直言えば「武道館に立ちたい」とか、「東京ドームに立ちたい」とか(笑)。でも、それ以前にずっとステージに立ってプレイしていたい。常にね。ずっとツアーを回っていたいくらい(笑)。だから個人的には昔から変わらないけど、続けていくために「どうすればいいのか」ということを常に考えています。
 

—では、現在ツアーを回りまくっている快進のICHIGEKIのメンバーとしては、幸せの絶頂にあるわけですね(笑)

 
潤:いやいや、それはそれということで(笑)。でも芯にはそんな思いがあります。みんな同じじゃないかと思うけど。みんなそこに魅了されてバンドをやっているんじゃないかな?だから俺もいつも表舞台に立っていたいと思うんです。いつまでもカッコいいプレイヤーでいたい、だからカッコ悪くならないよう逆算しながらやっている感じ(笑)。その都度必要なものが出てきたら、それが何かを考えるんです、「3年後の自分が死なないためには、何をやるべきなんだろう」なんて。それが練習なのかもしれない。「俺はこれしか弾けない!」って思ったら、またメチャクチャ練習するかもしれないですし。
 
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快進のICHIGEKIのニューアルバム『其の四』の中にある「斬り込み戦隊ブシデンジャー」というナンバーでは、ベースによるゴリゴリとしたイントロがあるのだが、そのフレーズは特に超絶テクニックをひけらかすわけでもないごくシンプルなフレーズなのだが、異様なまでにの存在を際立たせているようにも見える。
 
その様は、インタビューで語った「一番いい位置に立つこと」という命題を見事に成し遂げたようにも見える。この楽曲を通して聴き、さらにアルバムを通して聴けば、彼のプレイには奇をてらう派手さは無くても、快進のICHIGEKIには絶対に必要な存在だということが分かるだろう。「一番いい位置に立つこと」とは、決して穴を埋めることだけに留まらない。それは「穴を埋め、曲をよりよい方向に向かうよう影響を与えること」。そんな意味を彼のプレイは表しているようだ。
 
自分の信じるものに対しまい進するというイメージがピッタリな。音楽、そしてバンドに対してクールに、ストイックに向き合う姿勢とは対照的な性格とも見られるが、理想を実現する思いの強さ、そこに対して諦めないという姿勢こそが彼の活動の原動力といえよう。「自分のベースはまだまだ」と謙虚な姿勢を見せる彼だが、ベーシストとして、一人のミュージシャンとして彼が新たに作り上げる作品にどう関わっていくか?今後も引き続き彼の動向を注意深く追っていきたい。
 

予告

次回のPart3、Side Bのパーソナルインタビューではドラマーの佑一が登場します。お楽しみに!
 

◆ライヴ情報
 
ザ☆メンテナンス × 快進のICHIGEKI 2MAN SHOW
2013年06月18日(火) 【愛 知】 名古屋ell.SIZE
2013年06月20日(木) 【東 京】 渋谷Star Lounge
2013年06月21日(金) 【宮 城】 仙台HOOK
(※6月21日のスケジュールは、イベント『actsound×Deathperad presents「Subversive-ACTivity」』への出演になります。)

TOKYO GUITAR SHOW2013
2013年06月29日(土)、30日(日) 【東 京】 ベルサール渋谷イベントホール
エマージェンザジャパン2013決勝
2013年07月06日(土) 【東 京】 渋谷O-EAST
水津宏 Birthday EVENT
2013年07月13日(土) 【東 京】 目黒 LIVE STATION
PALOOZA感謝祭~THE42nd.~
2013年07月21日(土) 【千 葉】 柏PALOOZA
水曜日は無料ライブの日
CREA presents [世界で一番熱い夜]

2013年07月24日(水) 【東 京】 渋谷CHELSEA HOTEL
The 7th Music Revolution TOKYO AREA ミュージックランドKEY渋谷店大会 in RUIDO K2
2013年08月06日(火) 【東 京】 渋谷RUIDO K2

◆公式サイト
http://k-ichigeki.com/

 

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ROCK SAMURAI STORY 快進のICHIGEKI(Part1)Side A
http://www.beeast69.com/feature/66858
ROCK SAMURAI STORY 快進のICHIGEKI(Part1)Side B
http://www.beeast69.com/feature/66928
ROCK SAMURAI STORY 快進のICHIGEKI(Part2)Side A
http://www.beeast69.com/feature/71457
【PHOTOレポ】DESTROSE 1st Full Album『DESTROSE』発売記念2マンLIVE!!
http://www.beeast69.com/report/64741
快進のICHIGEKI 江戸単独公演
http://www.beeast69.com/report/50458
EffEXPO ~見て、聞いて、弾いて、学べる、エフェクターの祭典~
http://www.beeast69.com/feature/40881
水津宏☆還暦までのカウントダウン(笑) ファイナル!!
http://www.beeast69.com/report/30513
BEEAST太鼓判シリーズ第5弾アーティスト『快進のICHIGEKI』
http://www.beeast69.com/feature/13479