特集

TEXT:桂伸也 PHOTO:遠藤真樹

国内のロックシーンの最先端を駆け抜け、輝き続けるフロンティアたちの横顔に迫るインタビュー特集「ROCK ATTENTION」。通算19回目は、メロディック・スピード・メタルの正統派サウンドとファンタジックなセンスを融合させた独自の世界観で、ヘヴィ・メタル界でもコアなファンを集めるDRAGON GUARDIANの登場だ。
 
DRAGON GUARDIANは、唯一のメンバーであり、ヴォーカル以外のすべてのパートを手がける勇者アーサーのプロジェクト。ヘヴィ・メタルとしては最も基本的なスタイルであるメロディック・スピード・メタルのサウンドを基調に、独自の世界観を反映したファンタジックでストーリー性のある展開が作品の特徴。その作風は非常にユニークで、多くのフォロワーを生み出す要因ともなっている。またその中に作りこまれたサウンドの完成度も高く、生粋のメタル・ファンにも強いアピールを放っている。
 
昨年12月にベスト・アルバムとして発表された『THE BEST OF DRAGON GUARDIAN SAGA』は、集大成としての作品位置を持ちながらも、新曲のヴォーカリストとしてHEAD PHONES PRESIDENTAnzaを迎えるなど、また新たな作品作りに向けてのステップという要素もかいま見られる。新作のリリースが待たれる今日、非常に興味深い作品だ。今回は勇者アーサーに、アルバムの話から、DRAGON GUARDIANがこれから目指すものを探っていく。また、合わせて特別に、今回ゲスト・ヴォーカリストとして参加したAnzaとの対談も実施。全く異なる二つのプロジェクトが重なるという今回のハプニングから互いに感じた印象、その相違点とつながりを語ってもらい、ヘヴィ・ロックが目指す未来の姿を探っていきたいと思う。

 

DRAGON GUARDIAN
◆メンバーリスト:
勇者アーサー(Guitar ,Programming &All Music)
 
勇者アーサーが2006年の夏、「アニメソング+メロディック・スピード・メタル」を融合させた音楽を制作するという趣旨の元、結成するもネット上に2曲を公開し活動休止状態に。しかし2007年の夏にコミック・マーケットの存在を知り、その年の冬に開催されるコミック・マーケット(通称”冬コミ”)に参加するため新たに1stアルバムの制作を開始。当初、勇者アーサーのソロ・プロジェクトであったが、ヴォーカリストとしてKickが加入し、ユニットとして活動を再開する。1stアルバム『聖邪のドラゴン』を販売、所謂(いわゆる)メロディック・スピード・メタル・サウンドでありながら、RPGやライトノベルのごとき世界観とジャケット、曲間に語られるセリフ等、アニメ・ゲーム音楽の流れでオタクの聖地である秋葉原を主要店舗に置く同人ショップでも販売し話題を集めた。
 
2008年頭、噂を聞きつけたメタル・ショップでも販売を開始。この1stアルバムは海外の大物アーティストを押さえ、2008年度ディスクユニオン全店舗(HR/HM部門)売り上げ総合枚数1位を記録。2008年夏には2ndアルバムをリリース。メタル・サウンドを追求するべくBassにALHAMBRAHIBIKI、VoにAnother ShrineMythaをゲストに迎え制作。1曲平均8分を超える劇的で壮大な作品に仕上がった。2009年1月にVocalのKickが脱退し、再び勇者アーサーのソロ・プロジェクトに戻るが、SOIL WORK等のリリースもあったSOUND HOLICと契約。5月にLIGHT BRINGERFUKIHIBIKIをゲストに迎えた3rdアルバムをリリースし、Rahpsody Of Fireらと比較されるシンフォニックなメタル・サウンドと、日本人が求める哀愁あるメロディーで、ヘヴィ・メタル専門誌で好評価を獲得、正統派メタル・リスナーの間で話題を呼び4000枚以上も売り上げるなど新人として異例の成功を収めたかのように見えたが、11月に販売元のSOUND HOLICがなくなったため半年で販売中止。
 
ファンの声に答えるため、リマスター/リミックスを施した再発盤のリリースや、作曲活動に明けくれ、2010年夏、FUKIHIBIKIらを再び迎え、前作以上に壮大な幻想物語を綴(つづ)った4thアルバムをメディアファクトリーよりリリース、幅広い層からの支持を獲得することに成功した。そして2011年12月、前作から約1年半の歳月を経て放たれた5thアルバム『聖魔剣ヴァルキュリアス』では、オリコンデイリー26位を記録。再びその名をシーンに刻み込むと、KONAMIのGuitar FreaksとDrum Maniaに「暗黒舞踏会」が起用され話題となり、新たなファン層を獲得。2012年12月、新たなファンによる後押しもあり、キャリア初となるベスト・アルバム『THE BEST OF DRAGON GUARDIAN SAGA』をリリースした。

 
hana
 

1.集大成を作りたいという思いでまとめた作品。(勇者アーサー)

 

—今回リリースされたベスト・アルバムですが、これまでの集大成という意味合いがありながら一方では入門盤という意味合いも合わせてアピールされていますが、作品としてはどちらの意向が強いのでしょうか?

 
勇者アーサー(以下、アーサー):そういう意味では集大成という思いの方が強いですね。過去の作品や演奏で未熟な部分を作り直すことでベスト・アルバムとしてリメイクも込めて取り直したいという思いもあり、時期的にそろそろと思いながら、その上で最近ファンになってくれた方から「どれから聴けばいいでしょうか」ということをイベントのときにうかがっていたので、ベスト・アルバムの中に入門盤の形として作ろうと思ったのがポイントですね。また今までのファンの方にも聴きやすくリメイクして違ったものとして楽しんでいただこうと、今回リリースにおよんだ次第です。
 

—入門盤という部分は、アルバム毎のオイシイ部分を切り取って集めた格好なのでしょうか、それともベスト・アルバムといいつつ結構コンセプチュアルな意味合いを持たせているものなのでしょうか…?

 
アーサー:いや、特にそれ程深いものでは(笑)。ただ、それぞれのアルバムでストーリーになっているので、気になった方には過去のアルバムも聴いてもらいたいという匂いを作り上げています。
 

—なるほど。今回曲を取り上げたそれぞれのアルバムに対して、どのような思いをもたれていますか?

 
アーサー:そうですね…もちろん過去作も愛着はありますが、初期の頃の作品はやっぱりどうしても未熟なところがプレイや音にありますよね。自分が曲作りを始めた頃の作品ばかりなので、愛はあるけど自分で聴いていても恥ずかしくなるようなところもあります。その恥ずかしい部分を作り直したり(笑)、録り直したり、一部変えたりしたところはあります。
 

—録り直しは曲を丸々ですか?

 
アーサー:そうです。ギターやヴォーカルを丸々録り直していますね。
 

—今までリリースされた5枚の作品の中では、自分としてはどの作品に一番の思い入れがありますか?

 
アーサー:5枚ともそれぞれ思いはありますが、思いの強さでいえば最新作の『聖魔剣ヴァルキュリアス』が強いですね。かなり自分を追い込んで一番苦労して作りました。それまでは割と予定通りに制作を進めるような制作過程を踏んでいましたが、このときはたとえばヴォーカルを入れて「ダメだ!」と思い、ヴォーカリストを探し直しては入れ直し、「もう出せないんじゃないか?」くらいのかなりギリギリなところでアルバムができたんです。だから5枚作ったところでだんだん妥協しなくなってきました。「ではファーストは妥協しまくりなの?」といわれるかもしれませんが、別にそういうわけではないですけど(笑)、ただその時々にあった自分の技術の未熟なところで「自分にはここまでしかできない」というようなところまでは頑張って、そこからは「まあこれでいいか」みたいな感じで(笑)
 

—アルバム毎にヴォーカリストが違うというのもすごいですが、ヴォーカリストを選ぶ基準はありますか?

 
アーサー:それはやっぱり声や雰囲気。作品を作って、曲に合いそうな人を選んでいます。作品を作る毎にイメージしている部分と、作っているときにたまたま出会ってインスピレーションを得た部分と、半々というところです。ファーストから持ってきた曲は、ヴォーカリストがもういないので違うヴォーカリストを替えて録っていますね。
 

—それは大分イメージも変わった印象ですかね?

 
アーサー:そうですね。そのヴォーカリストにあわせてキーもスピードも変えていますから。これはこれでまた面白いかな、と思います。
 

—入門編というところに戻りますが、入門者にどのようにお勧めしたいと考えていますか?

 
アーサー:やっぱりそれぞれのアルバムの中で自分なりに一番いい曲と思えるものをチョイスしてリメイクするなりしていいものに仕上げていますので、やはりその中で興味を持っていただいたものを、アルバムを手にしてもらいまた味わってみてもらえればと思います。
 

DRAGON GUARDIANとしてリリースされたこれまでのアルバムの中で、今回のベスト・アルバムに選曲されたナンバーの印象を教えていただけますでしょうか?まずファースト・アルバムの『聖邪のドラゴン』。6曲目「魔法の書」と9曲目「運命の女神」をベスト・アルバムに収録していますね。

 
アーサー:このアルバムを作ったときは、今から考えると未熟ではあったものの、最初から歌のメロディーは一番重視して曲を作っていて、それが顕著に表れている2曲と思っていますね。
 

—続いてセカンド・アルバムの『遙かなる契り』。これは3曲目「神話」ですが、DRAGON GUARDIANの王道というか、かなりメロディーとハーモニーにこだわっているような趣がありますね。

 
アーサー:特にDRAGON GUARDIANの楽曲の中でも人気が高いものです。Myspaceに丸ごと公開していたこともあったのでやはり知名度としても大きいと思います。
 

—3枚目の『Dragonvarius(ドラゴンヴァリウス)』からは、1曲目「序曲」と2曲目「暗黒舞踏会」が収録されています。この2曲は流れとしてほぼ1曲として捉えられるため2曲の選択ということですね。「暗黒舞踏会」というキーワードはDRAGON GUARDIANを語る上でもよく登場しますよね。

 
アーサー:そうですね。今まで5枚出した中でも自分なりには自信作と思っていましたので、今回のアルバムを作る上でも「アルバムの頭に持ってこよう」とずっと思っていました。
 

—4枚目の『真実の石碑』は、8曲目「砂漠の餓狼」を収録されています。曲の印象としては導入部分にフリジアン・モードっぽい中東風の雰囲気があり、ベスト・アルバム中の他の曲とも印象が違って面白いですね。このアルバムから現レーベル所属になったことで作風に変化が出たという意識はありましたか?

 
アーサー:いえ、マイペースなのでそれは特には(笑)。ただジャケットをレーベルの方に頼むなど部分的なところは自分の手を離れているので、その分楽曲にさらに力を入れられるようになったと思います。
 

—5枚目で最新作の『聖魔剣ヴァルキュリアス』。7曲目「炎の魔石」でかなりギターの低い音を強調されているためか、かなり骨太な感じに聴こえますね。11曲目「聖魔剣ヴァルキュリアス」はメロディアスとはまた違う極悪な感じのリフが満載ですが(笑)。これは作品を作っていく上でなにか新境地を見いだしたような意識ってありましたか?

 
アーサー:あったと思います。自分のやりたいと思ったことをこのアルバムはかなり詰め込んだ感じですが、この2曲は特にその意志が反映されたかなと思っています。だからこのベスト・アルバムをステップに、また新しいことをやるぞという思いの現れみたいな。まだ次の作品は作っている段階ですが、常に新しい要素は取り入れたいと思っています。
 

—なるほど。DRAGON GUARDIANのベースとなるイメージには、クサメタルというか、メロディック・スピード・メタルの様式美が感じられますね。そのスタイルを崩さないようにしようとすると新しい要素を追求することは足かせになる危険もあるかなとは思うのですが…それでもなにか新しいものを取り入れていくアイデアはありますか?

 
アーサー:確かに一番大事にしているのは歌メロのキャッチ―さという部分なので…でも、逆にその部分さえうまく守られればいろんな要素を入れても大丈夫かな、と考えています。
 

2.新曲は予想以上の出来。本当に満足しています。(勇者アーサー)

 

—続いて新曲の2曲。ここからはこのアルバムに参加されたAnzaにも登場いただき、あわせてお話をうかがえればと思います。この2曲ですが1曲はAnzaさん、もう1曲は人気アニソンシンガーの鈴木このみさんということで、鈴木さんは楽曲のイメージからするとつながりは何となく見えてくるのですが、Anzaさんの方にはやはりHEAD PHONES PRESIDENTというまったくスタイルの違うバックグラウンドがあり、なかなか接点が見えてこないのですが、これはどのようなアプローチを行われたのでしょうか?

 
アーサー:新曲を作るにあたっていろんなヴォーカリストを探しているときに、Anzaさんは面白いんじゃないかな?っていうところがアイデアとして思い浮かんだんです。もちろん特につながりはなくレーベルが一緒だったというだけのことでしたが、そのつてでこういうのも面白いんじゃないかと思いまして。ただ確かにDRAGON GUARDIANの音楽性に合うかというのは課題ではありましたね。
 

—その話を受けて、Anzaさんはどのように思われましたか?

 
Anza:実はHEAD PHONES PRESIDENTDRAGON GUARDIANも両方好きなファンという方からCDをいただいたことがあって、DRAGON GUARDIANを以前聴いたことはありました。私に対するイメージはDRAGON GUARDIANの世界観とは相容れないと思われるかもしれないけど、たとえばDRAGON GUARDIANの語る世界で描かれる「光と闇」というイメージとか、そういうものはHEAD PHONES PRESIDENTにも重なる部分があって、詞の世界観では言葉は違うけど、よく読んでいくと共感できるところがあったので、お会いして話をすればきっとなにか通じるものがあるのかと思い一度お会いしたいと思っていました。ただ、そうはいってもやっぱり私で大丈夫かな?というところは正直ありましたけど(笑)。でも、曲を聴かせていただいたときに「HEAD PHONES PRESIDENTAnza」ではなく、一女優の大山アンザとしていけばいけるのかな、っていうところは感じていて、どちらかというと今回はHEAD PHONES PRESIDENTよりも女優としての経験を出して歌わせていただいた方が合うかなと思いながら歌わせていただきました。
 

—そういう意味では、場違いのところで話が二転三転したらどうしよう、みたいな心配も意外に少なかったということでしょうか?

 
Anza:そうですね。まあその曲に合わなければそれは曲を殺してしまうことになるけど、曲をいただいてチャレンジはしてみたいと思ったので、声を掛けていただいてよかったなと思っています。デモを聴かせていただいたときに、「うわっ、これをたとえば舞台にしたらいいものになるな」って。HEAD PHONES PRESIDENTとは違う感覚で曲を聴かせていただきましたね。でもレーベルのブースの中に入ったときは緊張しましたね(笑)。初対面だったし、久しぶりにオーディションを受ける感覚っていうのも味わいました。
 

—今回のアルバムの中でも、他の曲が疾走系ばかりなのにこれだけがワルツの3拍子ということで余計に印象が強いですね。こんな牧歌的なイメージの曲はこれまでの作品の中でもありましたか?

 
アーサー:あまりなかったと思いますね。Anzaさんに仮歌を入れてもらった段階で、そのイメージにぴったり合って「ああもうこれは決定」と感じていました。
 

Anzaさんとしてはいかがでしょう?実際に歌ってみると歌いにくいと思われたりしませんでしたか?HEAD PHONES PRESIDENTの楽曲と比較すると、この曲はかなりキーが低いですよね。

 
Anza:いや、もう全然。逆にもともとのデモはもっとキーが高かったのを下げてもらったんです(笑)。HEAD PHONES PRESIDENTではシャウト!っていうイメージが私にはあって、高音が得意というイメージを持たれているかもしれないですけど、実は低音の方が自分の声としては気に入っています。歌わせていただいてさらに気が付いたのですが、「あっ、私こんなに低音が図太く出るんだ!」って(笑)。また、今回印象深かったのは、やっぱり日本語の歌詞をこういう形で歌わせていただいたことですね。昔のHEAD PHONES PRESIDENTの曲でも日本語はありましたけど、こういったメタル要素のある曲は初めてで、「これはAnzaの経験上、とんでもないことになるぞ」と(笑)
 

—確かにAnzaさんが歌われるもので日本語はなかなかイメージとしてないですよね。

 
Anza:英語で自分流に雰囲気を作ることはあるけど、日本語の作品として残さなければならないという意味では、初めてに近い感覚だと思います。あとこのメロディーのラインも初めてな感じで。その上で日本語の意味を伝えるっていうのは本当にチャレンジャーな感じで、本当に「ありがとうございます、引き出しを作っていただいて!」というような感じ(笑)。最近毎日聴いているんです。メロディーはHEAD PHONES PRESIDENTでもあるけど、どちらかというとリフに沿ったもの、という形が多くてDRAGON GUARDIANのように「メロディーを生かす」「メロディーが主役」という形はあまりないかと思います。
 

DRAGON GUARDIANの歌メロはこのライン以外はありえない、というような完成度が感じられますよね、洗練されたようなイメージというか。HEAD PHONES PRESIDENTも複雑なメロディー・ラインはありますが、どちらかというとペンタトニック・スケールで一つのトーナリティの中を動き回るような、自由なラインを描いているようなイメージとはかなり対照的にも見えます。そういう意味では、たとえばAnzaさんとしても歌っていて「動きづらい」みたいなやりにくい感覚はありませんでしたか?

 
Anza:いや、ないですね、意外にも。私の歌った歌に対してアーサーくんはもっと注文を言ってくるかな?って思っていたけど、「自由に歌ってください」っていう感じだったし(笑)。これだけ世界観をきっちり作り上げているので、私の中にそれがすぐ入ってきて、まるで物語の主人公になった感覚で歌えました。細かいところで「そこの語尾はもっと伸ばして」みたいな難しい部分はあったけど、全体的には本当に自由でした。逆に「本当にこれでいいの?」って心配になるくらい(笑)
 

—ではやっぱり最初に会ったときから全然問題なく進んだ感じでしたか。

 
Anza:そうですね。こんなにも自分の中に問題なくアーサーくんの詞の世界観がすっと入ってくるものなのか?と驚きました。この世界観を理解するのはもっと時間がかかるかなと思っていたけど、そんなことは全然なくて。むしろ「うわぁ!この言葉の選び方ちょっとヤバいよね!」みたいな発見もたくさんあって。そういう意味で私にはない詞のセンスがあるのでうらやましいというか、「教えてほしい」っていう感じで(笑)
 

—逆にアーサーさんの方でもともとHEAD PHONES PRESIDENTのイメージがあって、その点を懸念したことってありませんでしたか?

 
アーサー:正直に言えばありました。でも実はHEAD PHONES PRESIDENT以外の音源の方も聴かせててもらっていて、Anzaさんが実はいろんなことができるようなところは事前にうかがっていました。
 

—では出来上がったものを見た印象としては「おっ、こう来たか!?」っていう意外性よりも、「想定通り」という印象が強いのでしょうか?

 
アーサー:ん~それは半々くらいですかね(笑)でも本当に出来には満足しています。
 

—今回の新曲はこのAnzaさん参加の「運命の女神」と、鈴木このみさん参加の「追憶の黒き魔剣士」の2曲、これにベストの選曲をして、出来はいかがと考えますか?

 
アーサー:予想以上の出来です。前回のアルバムも実際に録ってみて自分の思い通りになかなかできなかったこともあったので、そういう意味で本当に満足しています。
 

—次回以降もこういうコラボレーション的な計画はどうでしょう?

 
アーサー:そうですね。是非積極的にやってみたいと思います。
 
Anza:ライブの方を見てみたいんですよ、私個人的に。あの世界観を生で見てみたいなって思います。まだライブを見たことがないし。
 

3.意外に(私たちは)とても似ていて、大きくとれば同じじゃないかと思いましたね。(Anza)

 

—ここからは新作の範囲を超えて、お互いの世界観の違い、共通する部分を探っていきたいと思うのですが…

 
Anza:私の方から一ついいですか?アーサーくんに聞いてみたいことがあるんだけど…。お互い曲を作る者同士として、私たちはバンドとして4人で一つのものを作っているけど、アーサーくんはそれをDRAGON GUARDIANアーサーじゃない?DRAGON GUARDIANの世界観を作るプレッシャーや迷いが現れたときって、どんな対処をしているのかな?私たちは4人でケンカしあいながらもそれはのり越えられるけど、アーサーくんにとっては個人との戦いじゃない?それは相当強い心の持ち主じゃないとキツいとか思うんだけど(笑)
 
アーサー:確かに複数のメンバーでの活動とソロ活動の違いでそれぞれメリットもデメリットもあって、一人でやっている分にはなにかあったときに誰にも相談できないっていう問題は一番大きいところとしてありますね。でも、その分自分の好きなことができるというメリットの恩恵を受けているわけで、逆にメンバーがいるとぶつかるだろうな…という危惧をしています。
 

—それはたとえば同人的な文化の恩恵、影響みたいなところの強さがあるのでしょうか?

 
アーサー:そうですね、同人の世界って一人でやっている人が多いので。
 

—一人で、っていうのはずっと以前から?

 
アーサー:いえ、ファーストアルバムは実はユニットで始めたんです。でもそこでスゴイ衝突があって、セカンドアルバムからは一人になろうと決めましたね。
 

—なるほど。逆に自分で好きなものを突き詰められるというアーサーさんの立場から見ると、バンド活動って大変じゃない?って思うところってあるのでしょうか?

 
アーサー:まあ性格的なものもあると思いますね、僕は一人でいることが好きなので…(笑)大勢でワイワイやるのが好きな人はバンドに向いているんだろうなと思いますが。
 

—ちょっと寂しくなっちゃいますね(笑)。その意見に対してバンド活動をされているAnzaさんとしてはいかがでしょう?

 
Anza:確かにぶつかることが多くて(笑)。でも、なにかあったときに助けてくれるのも仲間だし、ライブをやれるっていうのも一番の恩恵だと思うんです。もしDRAGON GUARDIANとしてバンドができたときに、それはそれで見てみたいと思うところもあります。だから私個人はHEAD PHONES PRESIDENTを抜けてソロでやることはできても、それが面白いことかといえばそうじゃないと思うし、何か一人でやっていることをバンドでやるのもそれはそれでいいなと思います。意外にHEAD PHONES PRESIDENTのメンバーも実は一人でいる方が好きで(笑)、だからHEAD PHONES PRESIDENTの闇の部分が強調されるところも強いんですけどね。DRAGON GUARDIANがライブをやるとなればサポートも必要だし、これだけヴォーカリスト全員を集めるとなると凄く難しいでしょうし。
 

—曲の作り方で、お互いの作り方に共通するものを感じる部分はありますか?たとえばDRAGON GUARDIANには洗練された完成度があるだけに一つのセオリーを感じるし、HEAD PHONES PRESIDENTには逆に次元の違う作り方をしているんじゃないかというイメージがあります。

 
アーサー:そうですね、どちらかというとまったく違うと思います。
 
Anza:多分アーサーくんってメロディーが先だよね?
 
アーサー:そうですね、僕は歌メロから作っています。
 
Anza:私たちは逆に曲作りの中ではメロディーが最後なんです。最後というか歌詞が最後、最初はギターのリフなんです。そこからサウンドができて、その世界からメロディー、そして歌詞なのでまったく逆の作り方ですね。
 

—お互いに、自分たちの中でそんな自分たちにないものを取り入れていく余地を考えることはありますか?たとえば先程アーサーさんのお話の中で「新しいものを取り入れていきたい」と語っていただきましたが、それで「あれ?これは今までのDRAGON GUARDIANにはない全然違った方向だな」とか、HEAD PHONES PRESIDENTの曲でたとえばメロディアスで定まったメロディーが入るということははあまり想像できませんが、そういうものが「いえ、実はすんなり入っちゃうものなんですよ」という感じもあるのでしょうか。

 
Anza:いや、この2バンドって、世界観がしっかり明確になっているから、多分余地はあるかもしれないけど、世界観が崩れるくらいであれば取り入れないというだけだと思います。ただ今回私がDRAGON GUARDIANで歌わせていただいた経験を踏まえ、メロディーを生かせる方法をとってみたいと思っているのは事実。だってメロディー=主役になれるというイメージで、正直主役になれたんですよ(笑)。HEAD PHONES PRESIDENTの場合はそこが難しいところで(笑)。ギターが主役っていうのがヘヴィ・ロックの宿命的なところで、このあいだは「私、こんなにお姫様でいいの?」っていう感じでいい気分でした(笑)。実はHEAD PHONES PRESIDENTのメンバーに「あのさあ、もうちょっと私、目立ちたいんだよね」って言っちゃったし(笑)。でもメロディーを大切にしたいっていうのはどのバンドもそうなので、影響はあります。やっぱり経験させてもらった以上、そういう手法があるんだっていうことは認識しています。DRAGON GUARDIANの中にHEAD PHONES PRESIDENTの手法を入れるというのは正直想像がつかないけど、コラボとしてやってみるのは面白いかな、とは思っています。
 
アーサー:僕は逆に全て歌から入って曲を作っているので、逆にリフからっていうのは挑戦したことはないんですね。本当に正反対だと思います。だから本当にリフからという方法論が使えれば、もっと面白いものもできるかもしれません。現時点ではまだそこに至っていないですけど。
 
Anza:ある意味この人天才!(笑)。私みたいにメロディーを作る人間からすると天才。うらやましいんだよね。
 

—ちなみにBEEASTの企画イベント『ももてつNMカフェ』でおなじみのIRON-CHINOさんは「ギター・ソロから作るんです」っておっしゃっていましたね(笑)

 
アーサー:あ、そうですね(笑)。僕が初めてお会いしたときにもそう言われていたのを覚えています(笑)
 

—なるほど。今まではサウンドのお話でしたが、世界観の部分ではどういうものを自分の中に取り入れられているのでしょうか?また、そこは両バンドとも共通している箇所なのでしょうか?

 
Anza:私がDRAGON GUARDIANの曲を聴かせていただいて、HEAD PHONES PRESIDENTと違う部分っていうのは、DRAGON GUARDIANがどちらかというとフィクションの物語という部分、HEAD PHONES PRESIDENTは人間の泥臭い部分、暖かさや冷たさみたいなところかと思いましたね。まったく世界観が一致するわけではないけど、たとえばそのフィクションの中にある人間味や、「光と闇」という部分はとても似ていて、大きくとれば同じじゃないかと。
 

—逆にアーサーさんもたとえばHEAD PHONES PRESIDENTのサウンドに触れたときに、同じように共通する部分を感じたりしましたか?

 
アーサー:そうですね。DRAGON GUARDIANは基本はファンタジーの世界で、HEAD PHONES PRESIDENTが現しているのはもっと直接的な感情のようなところかと思いますが、たとえば人間が冒険している中で同調する感情のようなものが出てくることも想像できるし、全く異なって見えるようで実は微妙に重なる部分はあるのではないかと。
 

DRAGON GUARDIANの作品ではアルバム毎にストーリーが存在するとのことですが、これはまったくのオリジナルストーリーですか?

 
アーサー:そうですね。まったくのオリジナルです。たとえば代表作『聖魔剣ヴァルキュリアス』ってありますが、そのタイトル自体までもまったくのオリジナル。たとえばネットで検索すればなにかのキーワードにかぶるかもしれないけど(笑)、基本的にその響きでカッコイイなと思っているところですね。
 
Anza:それってきっとアーサー語だよね(笑)。私もAnza語っていう、通常じゃどこの言葉にも属さない言葉を使って作品に残すことがあるんです(笑)。そういう意味でアーサーくんの世界にしかわからない言葉がある。その意味では、同じだと思います。言葉の響きの中には自分にしかわからないところってあるんだよね、理解されないところも実はあって。
 
アーサー:そうですね!(笑)
 

—その理解されない比率って、結構大きいと思います?

 
アーサー:いや、僕の場合はわかりやすいことをテーマとしているので、それ程でもないと思いますが。
 

—ちなみにAnzaさんのAnza語というのは、どんな感じのものなのでしょうか?

 
Anza:たとえばアフリカ語と英語と日本語に赤ちゃん語が混じったような感じですね。人間って思ったことが言葉に出ないというか、属する言葉以上の感情になったときになにを言っていいのかわからなくなって「アー!」とか「ウー!」とかしか言えない、それに近い感覚で出る言葉ですね。
 

—敢えて意味合いを隠そうという意図で新しい語枠を作ったとというものではなく、何らか自然に湧き上がる思いをわかってもらおうという意思の表れのような表現ということでしょうか?

 
Anza:そうかな?まあライブとかで見てもらうときに、なにか「ああ、こういうことが言いたいんだな」ということが何となくわかってもらえればいいくらいに考えてのことで、それ程明確に伝えたいことはあるわけではないです。今までそういう曲の作り方をしてこなかった、その中で感じ取ってもらいたい、というスタンスでHEAD PHONES PRESIDENTが今までやってきた中の一つなんです。だんだんそれは少しずつ変わってきていますがね。でも、アーサーくんの世界は明確…
 
アーサー:そうですね。さっきも言った通り、誰もがわかるものにしていますので。
 
Anza:いや本当にDRAGON GUARDIANの世界観で描かれる言葉の一つ一つは難しいものもあるけど、調べると「あ、なるほど!」という思うところがあるんですよ。そこは本当に私も欲しいところで(笑)。日本語で書いてみたいという気持ちもあるけど、HEAD PHONES PRESIDENTの世界って、ラジオじゃ絶対かけられないだろうなっていう(笑)。そんなふうに同じように使っている言葉を日本語で書いてもカッコよく残す術は本当に欲しいですね。まだ日本語で書く勇気が自分にはないけど…
 

—なるほど。今までDRAGON GUARDIANの中で参加してもらったミュージシャンの中には、LIGHT BRINGERを始めとして割と世界観が近いという印象がありますが、たとえば今回まったく違う分野のAnzaさんに参加してもらったという路線から、次は「この人!」みたいなことを考えられたりしますか?

 
アーサー:そうですね。コラボしたい方はいっぱいいますね。
 

—逆にHEAD PHONES PRESIDENTとしても何らかコラボ的なものはありますかね?昨年末に行われたライブでは、BEAT BOX(人の肉声にて楽器の音的なパフォーマンスを行うジャンル)とのセッションがありましたが、ああいった企画が今後もあるのでしょうか?

 
Anza:そうですね。あれをやったから、なんでもできるんじゃないかって思うし、広がったかなって思っています。で、ぶっちゃけアーサーくんとは、HEAD PHONES PRESIDENTとなにかやりたいという企みが私の中には実はあって(笑)。
 

—それはどんなことになるのでしょうかね?とても興味がありますね。

 
Anza:そうですね。いろいろチャレンジしてみたいです!
 

—対バンでそれぞれのライブをやるっていうだけではなく、なにか絡めるようなことを考えるのはとても興味深くて、特にDRAGON GUARDIANHEAD PHONES PRESIDENTではとても予想がつかなくて期待できちゃいますね。

 
Anza:そうですね。意外に私たちのファンにもそういうことを望んでいる人もいるようなので。実際にやってみてどんなことを思われるのかな、というところも興味があります。だから是非とも頑張って挑戦してみたいですね。
 

—次の展開がとても楽しみですね。では最後に、今回の感想とも含めて今後の意気込みと相手に対するエール的なところを含め、メッセージをいただければと思います。

 
Anza:いい経験をさせていただいたので、一アーティストとしてもさらにチャレンジしていきたいと思います。今回やらせていただいて一つ思ったのは、まったくフィールドが違うからこそ生まれたものというものがあって、HEAD PHONES PRESIDENTのファンもDRAGON GUARDIANのファンもお互いを知ろうというきっかけが作れたということが、今は日本のシーンの中で凄く大事だということです。一つの部分的なところが盛り上がるのではなく、シーンを作るのはお互いの力を出し合って、日本のシーンにないものを作っていければと考えていて、ちょっとしたきっかけをこのコラボで作れたので、目指してきたところがちょっと見えてきたかな、と思っています。だから聴かず嫌いではなく、いろんな細胞をくっつけてきてシーンを作り、みんな音楽をもっと好きになってもらえればいいなって思っています。そしてお互いに暴れていければと。
 
アーサー:今回こういった機会を設けていただき、一歩前に踏み出してよりチャレンジしていきたいなと思いました。今までは本当に割と近いフィールドの人とやっていたのですが、Anzaさんや鈴木このみさんなど今までにない領域に広げられたというか。それをさらに広くしていろんな方とコラボしてみたいと思っています。今、新しいアルバムを作ろうとしていますが、そんな面も出せればと考えています。
 
hana
 
勇者アーサーの外見の印象と語り口は朴訥(ぼくとつ)という表現そのもので、その広大な世界観や卓越したギター・テクニックがその外見から想像できない人も多いのではないだろうか。逆に見れば、それは自己のアーティスティックな活動に対して注がれる意識の強さに対する表れともいえる。
 
また、今回の新たな試みの一つであるAnzaの登場は、また違った音楽の魅力を再認識する良い機会にもなった。まったくそのサウンド様式が違うDRAGON GUARDIANHEAD PHONES PRESIDENTという二つのバンドには、実は表向きのイメージだけでは気付かない共通点があること、そしてお互いに対して強い興味を持っていることも面白く、これ自体こそまさにロックが生き延びていく上で必要な素養といえるだろう。今現在、スタイルが出尽くし飽和状態という現状が嘆かれている音楽シーンの中で、新しいものを作り上げていくことに強い関心を向けるのはアーティストとしても、またファンの目線としても必要なポイントといえる。
 
独自の世界観を持ち確固たる地位を確立したDRAGON GUARDIAN。その軌跡を顧みた現在、勇者アーサーが新たな一歩を踏み出すために得た今回の経験は、きっとまた新鮮な空気をその世界観にもたらし、人々を驚かせてくれる作品を生み出すきっかけとなるに違いない。今回のような試みがさらなるロック創造の拡大となることを、願わずにはいられない。
 

DRAGON GUARDIAN
『THE BEST OF DRAGON GUARDIAN SAGA』

発売中
FAMC-093/2,625円(税込)
収録曲:
M01. 序曲(3rd『Dragonvarius』収録)
M02. 暗黒舞踏会(3rd 『Dragonvarius』収録)
M03. 神話(2nd『遙かなる契り』収録)
M04. 追憶の黒き魔剣士(新曲・MV曲)
M05. 漆黒の将軍レギウス
(4th アルバム『真実の石碑』収録)
M06. 魔法の書(1st『聖邪のドラゴン』収録)
M07. 炎の魔石(5th『聖魔剣ヴァルキュリアス』収録)
M08. 砂漠の餓狼(4th『真実の石碑』収録)
M09. 運命の女神(新曲)
M10. 旅立ちの朝(3rd『Dragonvarius』収録)
M11. 聖魔剣ヴァルキュリアス
(5th『聖魔剣ヴァルキュリアス』収録)
M12. 我らが嘆きのカルミア
(1st『聖邪のドラゴン』収録)
 
【オフィシャルサイト】
http://dragon-guardian.com/

 

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