特集

TEXT & PHOTO:鈴木亮介
札幌の軽音シーンは熱い! 道内屈指の人気高校生バンドに注目

Photo「ロックと生きる」BEEAST編集部員による全力特集「Editor’s Note…PASSION」。第4回目は鈴木がお届けする。今夏、本誌BEEASTではYHMFやJYOJI-ROCKといった若手バンドコンテストに加え、高等学校軽音楽県大会の模様にも注目。全国的に見て軽音がさかんと言われる神奈川県などの県大会決勝の模様をお届けした。また、連載「ロック1年生」や「キャンパスロック図鑑」を通しても、10代の軽音を取り巻くシーンの実情については日々お伝えしているところである。
 
その中で、取材対象エリアが首都圏に限定されていることにもどかしさを感じていた。「けいおんブーム」と言っても、実際に全国的に見た実情はどうなのか。今回、縁あって北海道でライブブッキングや企画、番組制作など幅広く行うXERO KREW ENTERTAINMENTの協力を得て、札幌市内で高校生2マンライブの模様やコンテストグランプリバンドのインタビューを敢行した(インタビューは連載・ロック1年生にて掲載)。
 
実は若手バンドコンテスト「閃光ライオット」の第1回グランプリは北海道・稚内出身のGalileo Galileiだ。彼らに次ぐ「熱いバンド」は生まれているのか。

「(今日の2組は)おそらくハードな音楽やってる高校生バンドとしては、道内で一番実力も人気もありますね」…そう豪語するオーガナイザーに誘(いざな)われて、新千歳空港に着いたその足で札幌へと向かった。心地良い風鈴の音とゴムタイヤの滑る音に懐かしさを覚えつつ、地下鉄を乗り継いで市内屈指の繁華街・狸小路へ。
 
かつては映画館であったというライブハウス「Sound Lab mole」の前には、開演1時間も前だというのに既に制服を着た男女の列。階段を下りると、今宵の2マンを企画したXERO KREW ENTERTAINMENT・三浦代表の姿が。高校生スタッフとともに、チラシを折り込んでいる。そしてこの日は「進学支援とライブのコラボレーション」ということで、MI JAPAN札幌校が会場内に進学相談ブースを設置し、音楽業界を夢見る学生達の相談を受け付けるという。
 
北の大地の軽音事情には疎い副編・スズキ。何はともあれ、まずは今宵の出演者2組に話を聞いてみようではないか。控室で談笑するSAVIORS for SUICIDEVARDENの2組をつかまえた。
 

★SAVIORS for SUICIDE★
syun(Vocal)、yass(Guitar)、しんちゃん(Drums)の3人が同じ中学の吹奏楽部で、部活終わりによくセッションをしていました。その後、去年の8月から本格的にオリジナル曲を作って活動を開始し、masaki(Bass)も加入しこの4人にで活動しています。実は昨日も練習中に指を切ってしまいました。そのくらい、ただひたすら激しく、がモットーのバンドです。今日はいつも以上に激しいライブをします!
 
★VARDEN★
僕らは小学校からの幼馴染で、KENT(Vocal & Bass)、kousuke(Guitar)、Kayo(Drums)の3人とも幼少の頃からは興味を持っていました。バンドを結成したのは中3の10月。受験期真っただ中です。高1の4月に初めてライブに出演して、それ以降は月3~4本のペースでライブ活動を続けています。今日は元映画館のmoleが会場。デカいスクリーンを利用した演出で、普通のライブとはひと味違うライブを楽しんでほしいと思います!

 


この2組は今年1月に対バンを通じて知り合い、「互いに高校生バンドなんですけど、ガンガン世界を目指していこうという志を持っているバンドに初めて出会えた」(SAVIORS for SUICIDEしんちゃん)というほど互いに刺激を受け合う存在なのだという。そんな熱い志を持った2組の対バンとあって、開演前から会場には既に熱気が立ち込めている。奥行きのあるフロアの最前列は閃光眩しいサイリウムライトを楽しそうに振りまわす女子高生が陣取り、後方には保護者?軽音部の顧問?と思しき大人たち、さらには軽音の先輩だろうか、やや年上の若い男女のオーディエンスも多数いる。「ロンドンオリンピックもやってますけど、負けないように盛り上がりましょう!」そんなMCに続いて、いよいよ最初の出演者が登場!
 
 


 


 


先攻はSAVIORS for SUICIDE。メンバーはsyun(Vocal)、yass(Guitar)、masaki(Bass)、しんちゃん(Drums)。衣装も、機材も、その表情も、全てが尖っている。「ステージに立つ以上、ダサいことは絶対やらないぞ」という気概。僕ら大人も、まだまだ丸くなってはいられないなという思いを持たされる。
 
現役の高校生ながらその洗練されたラウド・ロックサウンドは群を抜いた実力!ステージに立ち、音を出した瞬間、前評判が決して大げさでないことが分かる。1曲目「LOST」から、全く隙のないラウド・ロック!冒頭、「SILENT NIGHT!SILENT DAYS!」歌詞とは対照的な4人の絶叫がmoleにこだまする。しかし単に「ラウド」なだけでないのが彼らの楽曲の魅力。絶妙なハモりに、優しく叙情的なギターの旋律は、多様なジャンルを学び、入念に楽曲を作り込んでいるという印象。
 
 


 


 


とは言え、持ち味はやはり「スピーディー、かつテクニカル」に「激しいサウンド」。yassの掻き鳴らすギターリフに、長髪とペンライトを振り乱して応えるオーディエンス。さすがに現役高校生ともあって、MCはたどたどしさが残るものの、それもまた魅力。「人ばっかりですよ!人、人、人!」と、緊張を隠せない様子のメンバー。とは言え、ひとたび演奏に入ると別人。スイッチが入って、暴れまくる!「しっとりめのメタル」と自評する「All sadness is…」や、ほとんど人前でやったことがないという新曲など全9曲を披露。サラッと乾いて過ごしやすいはずの札幌の夏、ここmoleはこの瞬間、熱帯モンスーン気候にワープしている。
 

 

◆セットリスト
M01. LOST
M02. Hateful
M03. DOLL
M04. 輪廻転生
M05. All sadness is…
M06. (新譜)
M07. Don’t hesitate
M08. GATE of SILENCE
M09. 英雄
◆SAVIORS for SUICIDE 公式サイト
http://83.xmbs.jp/saviorforsuicide/
 
◆インフォメーション
・2012年11月13日(火)【札幌】PLACE COLONY
※619主催「閾」に出演


しばしの転換。さすが高校生の多いオーディエンス、まだライブが続いているのかと錯覚するほど賑やかに談笑し、盛り上がっている。そんな賑やかな空間にさらなる爆弾をぶち込むのが、後攻のVARDEN!メンバーはKENT(Vocal & Bass)、kousuke(Guitar)、Kayo(Drums)の3人。小学校からの幼馴染で結成された3ピースで、2011年にYAMAHA主催のMusic Revolutionで北海道ファイナルに進出、Zepp Sapporoのステージも経験している。1組目のSAVIORS for SUICIDEと同様、こちらも現役高校生ながら、北海道のヘヴィ、ラウドシーンを今後牽引(けんいん)していくであろう、実力派だ。
 
 


 


 


冒頭から頭を振りたくなるナンバーを連発してくるVARDEN。17~18歳の有り余る若さ。グイグイ押してくるベース音。まだ足りない、物足りない、もっともっと!熱狂を求めるボーカル、呼応するオーディエンス。とにかく元気だ。
 
3曲が終わったところで、最初のMCでは自分たちを支えてくれている人への感謝を伝えたい、と真剣に前を見据えて語るKENT。一通り名前を挙げて謝辞を述べた後、「このステージは俺たちの力だけじゃなくて、もう一つすげぇバンドがいて、ライブができた。次の曲はそいつらに捧げたい」そう語り、歓声をあげるオーディエンスをなだめるかのごとく、一音一音優しくkousukeが六弦を弾(はじ)き、そこにKENTがかすれて消えそうなウィスパーボイスで、「SILENT NIGHT!SILENT DAYS~」とかぶせる。そう、これは先攻・SAVIORS for SUICIDEの代表曲「LOST」だ。一呼吸置いて、Kayoがシンバルを4拍刻んだら、スイッチ・オン!ギラギラ掻き鳴らすギターに、KENTの絶叫!
 
 


 


 


「俺たちの歌を聞いてくれ!」魂の叫びが具現化し、熱気を生む。配置転換して”リア充”真っただ中のKayoがベースボーカルを執り「はじめてのチュウ」のカバー。そして、ヘヴィな楽曲で後半一気に畳みかける。本当に高校生?と疑わずにはいられない、洗練されたギターリフ。この2組に共通するのは、先人の実に幅広い音楽を学び、それをしっかりと自分たちのものにしているということだ。
 
 


 


 


“チャキチャキ”な女子の「アンコール!」に、野太い男子の「ヘイ!」が織り混ざり、神輿のかけ声のようなオーディエンス。その盛り上がりに押されて、満面の笑みで登場したVARDEN。とりわけ、女子オーディエンスからの甲高い「カヨ~」コールが何連発もし、照れるKayo。その表情は、パワフルなドラム裁きとは対照的で、至って等身大の女子高生だ。スローなテンポで力強く英詞を歌い上げる「Twilight」で一度締め、そしてもう一度、今度は2組で再登場!syunKENT2人の絶叫は2倍3倍に強く強く突き刺さる。VARDENの「Evil Laugh Evil」を披露し、最後は本日3回目、もはやこの日を象徴する1曲となった「LOST」をVARDENSAVIORS for SUICIDEの7人、さらにオーディエンスと全員一体となって「SILENT NIGHT!!!」の大熱唱!通りすぎる夏、17歳、18歳の忘れられない一夜が、幕を閉じた。
 
 


 

 

 

 

◆セットリスト
M01. Evil Laugh Evil
M02. Monkeys of Evolution
M03. Still Alive
M04. LOST(cover)
M05. はじめてのチュウ(cover)
M06. Dancing Babe
M07. cHerry
M08. Cynthia
M09. X.X.X.
M10. KEEP OUT SQUARE
-encore-
e01. Twilight
e02. Evil Laugh Evil
e03. LOST
◆VARDEN 公式サイト
http://www.varden.jp/
 
◆インフォメーション
・2012年08月09日(木)1st Maxi Single「KEEP OUT SQUARE」発売!
※詳細、購入は公式ページへ



今回の2マンライブはVARDENのファーストシングル「KEEP OUT SQUARE」のリリースパーティも兼ねたものであった。「今後、全国でリリースツアーをやりたい」とその豊富を語ってくれたKENT。さらに今後の目標は?と2組に尋ねると、それぞれ「目標とする真矢LUNA SEA)のようなドラマーとして活躍したい」(SAVIORS for SUICIDEしんちゃん)、「目標は世界征服!」(VARDENKayo)と意気込んでいた。「かっこつけるのが恥ずかしい」「ビッグマウスはダサい」という風潮が一昔前あったが、一周して今は堂々と自己を語れるバンドこそが本物だと再び認知されるようになっている。彼らの演奏力はもちろんのこと、動員の数、そしてオーディエンスの歓声の大きさが、その証しだ。
 
札幌出身のロックバンドというと、大御所SABER TIGERを筆頭に、サカナクションNOISEMAKER、さらには気鋭のバンドとしてTHE★米騒動が全国的にその名を轟かせている。VARDENと、SAVIORS for SUICIDE。この2組の名前をしっかりと心に刻んでおこう。札幌の軽音シーン、ロックシーンの次の担い手は、間違いなく彼らだ。
 

★ライブ概要
VARDEN vs SAVIORS for SUICIDE
OPEN 18:30/START 19:00
adv.¥1,000/day.¥1,500
※入場時ペンライト代別途¥100
 
企画・主催:XERO KREW ENTERTAINMENT
特別協賛:MI JAPAN札幌校
後援:FMアップル
 
★取材協力
・XERO KREW ENTERTAINMENT
http://www.xerokrew.com/
・Sound Lab mole
http://www.mole-sapporo.jp/

 
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【特集】Editor’s Note…PASSION Mind1(鈴木亮介) 被災地の音楽店は、今 ~仙台/石巻で聞く~
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