特集

TEXT:N-yukano PHOTO:N-yukano、鈴木亮介

国内のロックシーンの最先端を駆け抜け、輝き続けるフロンティアたちの横顔に迫るインタビュー特集「ROCK ATTENTION」。通算17回目は国内の楽器教則本史上最高の売り上げとなるトータル35万部以上のヒットを記録している「地獄シリーズ」の著者による超絶テクニカルメタルバンド、地獄カルテットの登場だ。

8月1日に2年ぶり3枚目となるニューアルバム『天空の地獄絵巻』をリリースした彼らに、直撃インタビュー!新譜について、またライブでのことなどたっぷりと語ってくれた。これを読めば、『天空の地獄絵巻』がもっと楽しめるはず!?
 

地獄カルテット
メンバーはGO(Drums /SUNSOWLSads)、MASAKI(Bass/CANTADAIDA LAIDA)、小林信一(Guitar)、NOV(Vocal/AIONVOLCANO)。
日本の楽器教則本史上最高の売り上げとなるトータル35万部以上のヒットを記録している「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ」各著者で2007年春に結成。
元々は小林信一MASAKIGOの3人で「地獄トリオ」という名前で活動していたが、NOVが地獄シリーズの教則本を出版することが決まった時点で正式参加。バンド名を3人を意味する「トリオ」から4人を意味する「カルテット」に変え、MASAKIを中心にオリジナルナンバーを制作。2007年12月に「生誕祭」という名で初ライブを行った。毎年コンスタントに日本国内をツアーで周りながら、教則本著者としてのバンドセミナーも精力的に開催している。そして、教則本が海外でも出版された関係もあり、2009年、2010年には韓国でのライブ&セミナー、2012年5月には中国へ飛び、イベントライブに日本のバンドとしてゲスト出演した。


—今回リリースした『天空の地獄絵巻』はとてもインパクトのあるジャケットですね!どういうコンセプトでイラストのジャケットになったのでしょうか?

 
MASAKI:今回はバンドの中で各担当を決めていて、デザイン担当はGOさんですね。
 
GO:今回は「今までと違うアプローチで」というコンセプトの元、お世話になってるデザイナーさんに依頼しました。前回のジャケットがアー写だったので、今回はアニメチックなので行ってみようと。僕がアメコミが好きだというのも理由の一つですね。ブックレットを開けると、キャ ラクター化したメンバーの得意技や弱点が色々書いてあって、 楽しい感じに仕上がってますよ。
 
MASAKI:小林信一はネクタイとか、僕は(ライブパフォーマンス時の恒例アイテムである)ヤカンとか、メンバーそれぞれのキャラクターが出ています。
 

—アルバムのタイトルの由来を教えてください。

 
NOV:タイトルは僕が案を出しつつ、最終的にMASAKIリーダーにまとめてもらいました。アルバム三枚はそれぞれ歌詞の世界の中にコンセプトを持っています。ファーストは海、セカンドは陸、そして今回は空をテーマに歌詞を書いているので、空をイメージしたアルバムタイトルにしたいと伝えて、天空という言葉をつけました。そしてジャケットもアニメーションと。「天空」のイメージに合ってますよね?
 

—楽曲の制作過程から「こういうアルバムを作ろう」というコンセプトがあったのですか?

 
MASAKI:今回一つのテーマとして、一人一曲は絶対入れましょうと最初に話しました。小林ソングはもちろんなんですけど、GO曲もあるし、しょうがないから、NOV曲も入れようと…
 
NOV:しょうがないって、おい(笑)まぁでも危なかったですよ。締切ぎりぎりセーフで作りました。
 
MASAKI:ということで、4人それぞれの作った曲が入っています。メンバーそれぞれの個性が出ているんじゃないでしょうか。
 

—レコーディングの期間はどれくらいでしたか?

 
MASAKI:去年の5月頃から始めて、少しずつ録っていきました。ほぼ一年かかりましたね。
 
NOV:今回、皆が多忙でスケジュールを合わせるのが難しく、レコーディング作業をしない期間も途中にあったんです。今までは録って、録って、録り続けて…っていう感じでしたが、今回は録って、時間置いて、録って…というのがあったから、(スケジュールが空いている間)色々と曲について考えられたかなと思います。
 
MASAKI:要はデモをきっちり作るバンドなので、メンバーが揃わなくてもRECできちゃうという。デモをスタジオに持っていって順番に生に差し替えて行く作業なので、一人でスタジオで録ってる日も結構ありましたね。
 

—皆さん作曲はどういう風にされていますか?

 
GO:リフ先行でサビをこうしたいとか、大きなコンセプトを持って作りますね。こう見えてもギターで作っていくんですよ。
 
MASAKI:我々は完全に家でPCを使って構築していくので、まずはわかりやすく曲にちゃんとして、各々のパートを差し替えて。デモではドラムは最後まで打ち込みですが。そしてベースまで仕上がったら最後にボーカルを入れて…というように、限りなくライブ本番に近い感じで作っています。
 
小林信一:地獄カルテットで楽曲を作り始めた最初の頃は手探りで、どういうのがこのメンバーが生きる曲になるんだろうという漠然とした疑問がありましたが、今回だいぶ理解できましたね。まず楽器隊の絡み具合は当然ながらですが、今回僕の作った曲は「NOVさんをこうやって歌わせたい」という願望をうまく絡めた楽曲にしようと心がけました。
 
NOV:GO君の曲は16ビートで得意分野を発揮している。MASAKI君の作る曲はダイナミックに展開していく。小林君の曲は聴いた感じはとてもシンプルなんです。でも、いざ演奏してみると難しいという、”隠れた難解さ”を持っています。
 

—「地獄絵巻Mix Ultra ver」と書かれた曲がありますが…これは、ミニアルバムに入っていた楽曲と比べてどこが変化したのでしょうか?

 
MASAKI:そうですね。今回のアルバムの中には何曲か、ミニアルバムや配信という形で既に出してるものもありますが、今回のアルバムとはエンジニアさんが違うので、完成している音が完全に違います。NOVさん、今回のミックスでどの辺が変わったと思いますか?
 
NOV:太くなった感じがしたね。特にギターが。前のミニアルバムの音も気に入ってはいたんだけど、今回はダイナミックに一つ一つが太くなって、特にギターは極太なイメージがあって、素晴らしいと思います。
 
MASAKI:結局、レコーディングってエンジニアさんの腕一つで音のキャラクターがとても変わると思います。どんなに自分らで頑張って録っても、その人が音作っちゃう訳だから。今回はGO君がSUNS OWLでも付き合いのある原さんという方に入ってもらったんです。ドラムの音はバンドの芯に関わることなので、GO君が信頼を置いている人に来てもらったことによってのパワーアップ感というか、音圧がとても出たと思います。音がゴージャスな感じになったね。
 

—続いて歌詞についても伺いたいと思います。資料に「そしてファーストからのこだわりとして、曲タイトルに必ず『の』を入れる事により曲を聴く人間に幸せをもたらす」…とあったのですが、これはどういう意味ですか?

 
NOV:これは有名な話なんだけど、ジブリの宮崎駿監督の作品って、タイトルに必ず「の」が入っていますよね。あれは「の」を入れるとヒットするという法則があるらしく。われわれもそれにあやかって、ヒットしたいという祈りを込めて、「の」を入れ続けてます(笑)
 

—よく考えたら全部「の」が入っていてすごいですね!

 
GO:でも途中で挫折しそうになってましたよね。「今回からやめる」って。「もう思い浮かばん!」と。
 
NOV:もう「の」の呪縛から解き放たれたいと思ったんですけど、結局また入れちゃいました。
 

地獄カルテットの4人が選ぶ!「弾いていて一番好きな曲は?」
 
MASAKI: 「恍惚の息吹」
…とってもメロディックなベースソロをやってます!
 
NOV: 「雲上の城」、「空の下で」
…アルバムの中でのリリックの大元のコンセプトになっていることと、旋律が好きです!
 
小林: 「号泣疾走の荒野」
…16のリフ主体で、埋め尽くすのって今まででないと思います!
 
GO: 「羽根の舞」
…シンコペーションのとても気持ちいい曲です!

 

—本作の見どころ、聴きどころを教えてください。

 
MASAKI:世の中にテクニカルなこと(の向上)を目指しているベーシストはたくさんいますが、そういう人が弾くベースソロと僕との違いは、ソロの中に起承転結があることだと思っています。ちゃんと耳に残るメロディーで人が出来ないテクニックをちりばめるというのが僕の最大の才能だと思います。どの曲にもベースソロがあるという前代未聞のバンドではあるんですけれど、今回僕のベースソロという観点で個人的には「恍惚の息吹」に注目してほしいですね。このベースソロはライトハンドから入るのですが…いやすごいね。いいソロやってるので聴いてみてください。
 
NOV:あと今回面白いチャレンジが、ハーモニーを皆がやってるということです。「恍惚の息吹」はサビで小林君が一緒に歌ってますし、それも注目してほしいと思います!
 

—忙しい合間をぬってレコーディングをしているという話もありました。皆さん多忙な中、どのように体調管理をしていますか?

 
NOV:僕は普段通りに生活することが一番の体調管理かなと思っています。ライブで「風邪を引いて調子悪いから今日は上手く歌えませんでした」っていう言い訳は100%通用しないし、お客さんに対しても失礼なので、ボーカリストとして喉を大切にすることはしっかりと心がけています。普段ライブがないときに遊んで、呑んで、体調崩して(笑)そうすると必ずライブの頃には体調回復していて、武器のハイトーンがよく出るんですよ。一年間風邪を引かないっていうのはまずありえないから、風邪引いていい時に引いておこう、みたいな感じです。
 
小林:僕の場合は鍛えたり、食べ物ですかね。栄養バランスを気にしたり、食べ物は選んでいます。そして最近ハマっているのは炭酸水!その前にはレッドブルにハマっていたのですが、一ヶ月以上飲んでたら体重がすごい増えて(笑)。糖分がすごいから元気にはなるんですけど、糖分を摂りすぎてはいけないので、炭酸水で体内をスッキリさせるようにしています。
 
GO:僕はドラマーで身体を酷使するので、最近は柔軟をしてます。ストレッチや、ヨガ。実は去年7月の名古屋でのライブの際に、肩を酷使しすぎて痛めてしまって…。アスリートの場合も、何事も20年くらいやると身体の交換時期が訪れるそうです。それで僕の場合一番先に来たのが肩だったので、そういうことが今後もあったら怖いので、夜中に一生懸命汗だくだくになりながらヨガをやっています。もうこれは仕事だと自分に言い聞かせて毎日やるようにしてます。あとはよく食べて良く寝る事ですかね、いつも通り変わらず。
 

—最後にメンバーの皆さんから今回のアルバムについての総括、そしてBEEAST読者へのメッセージをお願いします。

 
NOV:僕は3枚目を作るという段階の中で、「3」っていうちょっとした節目だなと思っています。二度ある事は三度あるっていう言葉あるじゃないですか。逆に三度目の正直っていう言葉も。これを両方上手くミックスさせたようなアルバムになったんじゃないかなと。なので、その両方の意味合いを込めて自分も聴けるし、買ってくれた方にもそうやって聴いてもらえるとなんか色んな世界が見えてくるんじゃないかと思います。
 
GO:「天空の地獄絵巻」について一言で言うと、遊びっていう感じがありますね。 アルバムを作るというバンドにとって当たり前の行為が、今回はメンバー皆が、ただアルバムをつくるっていうイメージではなくて、色々な仕事分担みたいなのもあって、そういう個々の気持ちもこの中に入っています。ジャケットもそう、曲もそう。色々な所に”遊び”がちりばめられている感じがします。 ザーって聴いてもいいけど、一曲一曲これはこういう風に作ったっていうのがバンドの中にもあるので、お客さんもちょっと突っ込んだ所まで入り込んで聴いてもらえると、一曲一曲がさらに楽しいんじゃないかなと思います。俺の中のキーワードとしては、遊んでる感じがとてもするアルバムになっていると思います。
 
小林:今回のアルバムにはファーストアルバムから流れてきたそれぞれの集大成が入っていて、これまで色々チャレンジしてきたものが進化していると思います。ファーストから地獄カルテットはものすごいのですが、それに加えて、テクニカルな所がさらにテクニカルになってヘビーなこのサウンドが出来上がって、そこにメロウな歌が出来たなと僕は思っています。そういう所を聴いていただきたいと思ってます。アルバム1曲目から最後の曲まで通して、かなり濃いな、と。すごく楽しめると思います。
 
MASAKI:ファーストライヴから5年間、いっぱい活動をやってきて、単なるテクニカルバンドではない所へと地獄カルテットはどんどん進みだしたわけです。エンターテイメントとしての楽しいステージ、ライヴでの面白やりとりであるとかね。なんかこう真面目にやっているだけだとちょっとつまんないなという思いも我々にはあってですね…。 それを踏まえて、今回ジャケットにも遊び心がすごいあります。今回、アメコミですよ。ジャケットの中のイラストも、GO君が面白いものを作ってくれました。テクニックという時点で誰にも負けない物を出してるし、聴いてもらえばわかる通りの音楽性でやっているんですけれども、でもそこに楽しくやってるという我々の余裕を感じてほしい。 “俺たちこんだけ真剣にメタル頑張ってるんだ!!”とかやっていると、息が詰まってくるじゃないですか?それは見ている人も詰まってくると思うので。でも我々はここで楽しくやろうよって感じでやってこれだけ良い物が創れてしまうという…。ともかく、楽しいメタルアルバムになってます。三枚目にして”地獄カルテット節”というものも完全に出来上がった感じもあるので、その辺を楽しんで聴いてもらえたら良いかなと思います。

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約一時間のインタビューだったのだが、彼らの普段のライブと同様に、終始笑いが絶えない現場であり、メンバー全員がとても楽しんで音楽をやっているのだなと改めて感じた。制作の裏側を聴き、改めて本作の魅力を知るとともに、生音を体感せずにはいられなくなる。現在、地獄カルテットはツアー「地獄カルテット~天空の地獄絵巻ツアー2012~」真っ最中。是非会場に足を運んでみてほしい。テクニカルなプレイに、攻撃的かつメロディアスで叙情的なサウンド、そして楽しいステージングに、虜になること間違いない!

◆アルバム情報
地獄カルテット 3rd NEW ALBUM
『天空の地獄絵巻』
2012年08月01日(水)発売
ZQ4-002 ¥3000(税込)
 
<収録曲>
M01. 道なき道の果てに 作曲:MASAKI
M02. 雲上の城 作詞:NOV 作曲:MASAKI
M03. 羽根の舞 作詞:NOV 作曲:MASAKI
M04. 何時もの場所で(地獄絵巻Mix Ultra ver)
作詞:NOV 作曲:小林信一
M05. 沙汰の亡骸(地獄絵巻Mix Ultra ver)
作詞:NOV 作曲:MASAKI
M06. 花たちの未知
作詞:地獄四人衆 作曲:小林信一
M07. 至福の大円会 作曲:小林信一
M08. 小夜時雨の狂詩曲
作詞:NOV 作曲:NOV&MASAKI
M09. 恍惚の息吹 作詞:NOV 作曲:小林信一
M10. 幽玄の調べ 作詞:NOV 作曲:MASAKI
M11. 号泣疾走の荒野(地獄絵巻Mix Ultra ver)
作詞:NOV 作曲:GO
M12. 空の下で 作詞:NOV 作曲:小林信一
M13. 四つ巴の安息日 作曲:小林信一


 

◆地獄カルテット 公式サイト
http://zigoku4.com/

 
◆インフォメーション
~天空の地獄絵巻ツアー2012~
・2012年09月16日(日)【大 阪】Club ALIVE!
・2012年09月17日(祝)【名古屋】HOLIDAY NAGOYA
・2012年09月22日(土)【新 宿】Wild Side Tokyo
・2012年09月23日(日)【新 宿】Wild Side Tokyo

★読者プレゼント★
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