特集

JYOJI-ROCK U-22 GRAND PRIX 2009

TEXT:鈴木亮介  PHOTO:山口聡/KOJI

Photo「今は大人が勝手な事をしすぎる。大人が真剣に怒り、誉め、真剣に向き合わないと子どもたちの成長はないし、音楽の世界も良くならないよ!」音楽を愛する若者たちをこれほどまでに熱く想い、その成長を手厚く支援していくバンドコンテストが今まであったでしょうか。

22歳以下のメンバーで構成されたバンドによる、賞金総額50万円相当のバンドコンテスト『JYOJI-ROCK U-22 GRAND PRIX 2009(以下:ジョージロック)』の決勝大会が9月23日に吉祥寺のROCK JOINT GBにて開催されました。当日の総入場者数は、なんと430名!!!
アマチュアのライブで、大がかりな宣伝もなく、これほどの動員を記録したバンドコンテスト。その全容に迫ります。

JYOJI-ROCK U-22 GRAND PRIX
2つのレーンから、自分のレーンを選んで応募。

U-22 LANE
メンバー全員22歳以下。
オリジナル曲でグランプリに挑め!

U-18 LANE
メンバー全員18歳以下。
コピー曲OK。力いっぱいに演ろう!

【賞金/賞品】

U-22 LANE
グランプリ :賞金 ¥100,000 + 副賞 レコーディング + 配信デビュー
準グランプリ:賞金 ¥50,000
第3位    :賞金 ¥30,000
審査員特別賞:賞金 ¥30,000

U-18 LANE
グランプリ : studioLEDAリハーサル20時間無料 + レコーディング
準グランプリ: studioLEDAリハーサル10時間無料
第3位    : studioLEDAリハーサル 5時間無料

ベストボーカル賞/ベストプレイヤー賞

『ジョージロック』がスタートしたのは今年春のこと。仕掛け人は、曼荼羅グループ・プロデューサーの藤崎博治さん。自身も音楽活動をしつつ、「曼荼羅」にて長年数多くのミュージシャンを見守ってきた藤崎博治さんは、ある懸念を抱いていました。それは、昨今インターネットや配信技術などの進歩で、誰でも手軽に音楽に触れたられるようになった反面、生身の音楽に触れる機会が減ってしまい、音楽による感動の重みが薄れつつあるのではないか?ということでした。そこで藤崎博治さんは、「生の音楽で人を感動させられる力を若い世代に伝えていきたい」と、『本気のコンテスト』の開催を決意したようです。

『ジョージロック』での最大の選考基準は、「本気であること」。一次選考では300組以上のデモテープを全て藤崎さんが自ら聴き、「本気を感じたバンドのみ」本選審査へ導きました。さらに、本選審査出場者56組すべてと面接を行い、1バンド1バンドじっくりと話し合って、当日のパフォーマンスなどを詰めていきました。
 
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一次選考を終えると、本選審査が8月12日13日14日17日の4日間に渡り開催。本選審査では、下は15歳から上は22歳まで、インストからパンクロックまで様々なバンドが出演。持ち時間がわずか10分という限られた中で、ベストを尽くすのが勝ち残る手段です。他のバンドを応援しに来たお客さんも多い中、会場の空気を一気に自分たち色に染め、お客さんの心をグッとつかんで盛り上げていく必要があります。しかし一次選考を通過しているだけあり、どのバンドもグルーヴ感を強く感じるバンドが多かったのが印象的でした。
 
審査員からは、「熱気を感じた」「ビールを飲みたくなるサウンド」「高い演奏力で、骨太」と絶賛するコメントが飛び交う一方で、「まだまだ荒削り」「ボーカルの歌のパワーが負けている」「エネルギーが出るだけで終わっている。出た後、どういう形になるのか(追究してほしい)」といった厳しいコメントも相次ぎました。本気でぶつかって伸ばしていこうという暖かく熱いメッセージが、コメントから感じ取れるものでした。それは間違いなく本選審査に出場したすべてのバンドに深く刻まれていることでしょう。
 
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審査員の一人である「スターパインズカフェ」のクラブプロデューサータカハシマービンさんは、「こういう若い人の演奏を沢山聴けるのは新鮮。元気。この中からスーパースターが出てくればそれはそれでいいが、そういうことに関係なく、みんな音楽をずっと楽しんでいってほしい」と、審査を振り返っていました。4日間の本選審査、すべての日で熱き魂の競演が見られました。
 
本選審査の結果発表後は、決勝に駒を進めたバンドだけでなく、本選審査出場バンドすべてが、皆こぞって審査員に話しかけ、さらなるアドバイスをもらっていました。そそくさと帰宅するバンドは一組もなく、まさに『本気のコンテスト』という仕掛人の藤崎博治さんの思いが形にあらわれていました。
 
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藤崎博治プロデューサーよりコメント

Photo今回、ジョージロックの開催にあたって近隣の高校や大学およそ300校に手紙を書きました。学校の先生が関心を持ってくれて、御礼の手紙をもらったり電話をもらったりしました。『音楽を愛する子どもたちを本気で育てていきたい』という僕たちのメッセージに共感し、喜んでもらうことができました。大人が僕たちの考え方に関心を持ってくれたのはすごく嬉しいですね。
 
大人がきちんとしていないと子どもは絶対に良くなりません。子どもの失敗を子どものせいにするのではなく、大人が真剣に向き合わないと。真剣に向き合って、本気で怒る。ほめるべきはほめ、叱る時は叱る。ちゃんと見てあげなければだめだと考えます。
 
ジョージロックでは、テクニックがあっても熱い思いが伝わってこないバンドは評価しません。「売れているから」というのではダメです。そこが商業主義のメジャーレーベルやレコ−ド屋とは違うところですね。面接の時、最初はケンカごしのバンドもありました。しかし、僕ら大人が本気で向かい合うことで、僕たちの言葉をきちんと拾ってくれました。認められる、居場所があると思ってくれると、子どもたちは素直になってくれます。

 
9月23日、いよいよ『ジョージロック』の決勝戦です。本選審査を勝ち抜いたU-18レーンから3組、U-22レーンから12組の合計15組が頂点を目指して競い合います。16時半に開場した後、本選のダイジェスト映像がスクリーンに映し出されると、会場からは拍手が。そして16時55分頃、いよいよ決勝スタート!
 
司会を務めるのはMr.チャールズ。「今日の合言葉はイェ~イで行きましょう!」の掛け声から、まずはU-18レーン。トップバッターはクレイマンクレイマン。1番目というプレッシャーに動じず、ボーカルの通る声がグッと引きつけます。
 
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2番目の登場はまからんぴぃ。スタンバイ中はメンバーの顔がこわばっていましたが、いざ演奏が始まると全身で自分たちの世界観を表現していました。
 
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U-18レーン、ラストはBabel。自身初となるオリジナル曲を披露。本選審査の後、この日のために急きょ作ったそうです。
 
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続いてU-22レーン。徐々に会場にも観客が増えてきました。1番目は昭和元年。ドラムにパワーがあり、また心地よい低音を会場に響かせていました。
 
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2番目はmochi mochi。1曲目と2曲目でメインボーカルを変えてきました。審査員からは「楽しそう。予選よりキャラクターが出てきた」とのコメント。
 
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3番目はメルシーおじさん。ボーカルの圧倒的なパワーで、終始ハイテンション。身を乗り出してのパフォーマンスは圧巻でした。

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4番目はSmoolull。ガラリと雰囲気が変わって、ボーカルの透明感のある声が印象的でした。審査員からは「楽曲がしっかりしていて正統派だね」とのコメント。
 
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5番目は女性ボーカルのガタガタゴー’S。ワイルドでパンクな激しいパフォーマンスにより、観客と一体化して盛り上がっていました。

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6番目はBLANK DISK BOOTLEG。ライブはまだなんと2回目ということですが、しっかりと構えて、まとまりのある演奏はとてもクールでした。
 
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7番目はSERENITY IN MURDER。髪を振って、重厚感のあるへヴィメタルを披露。審査員からは高校生であるドラマーを称賛する声も上がっていました。
 
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8番目はSEYLESS。そのインパクトは外見にとどまらず、ボーカルの女性は華奢ながら迫力あるパフォーマンス。
 
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9番目はソロボーカリストの砂子慧伍。アコースティックギターの音色とともに、穏やかなボーカルが会場を癒します。
 
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10番目はTHE楽団マーキュリー。ポップな曲調で、安定感ある演奏を披露。審査員からは「短時間なのに楽しめた」とのコメント。
 
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11番目はSoleil。ノリの良いパフォーマンス。ライブにはこなれている印象で、審査員からは「ステージングが色々考えられていた」とのコメント。
 
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そしてトリを務めたのは、独特の風貌で「ベストドレッサー賞」の呼び声高いTHE イギーポップ狂チャコペンシルズ。メンバー個々の演奏が際立っていて、容姿を含めて個性的です。
 
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そして、いよいよ審査タイムへ。ゲストバンドであるスキマノザラシによる熱いステージが披露され、会場のボルテージは最高潮に。気づけば、身動きがとれないほど。びっしりと観客が集結していて、その数はなんと430名。アマチュア主体で、大がかりな宣伝もなく、これほどの動員を記録したバンドコンテストがあったでしょうか。
 
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決勝の審査は難航に難航を極め、予定時間を10分以上もオーバーしてようやく発表。勝ち抜いた入賞バンドはコチラ!
 

◆U-18レーン グランプリ
まからんぴぃ
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◆U-22レーン グランプリ
THE楽団マーキュリー
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◇U-22レーン 第2位
THEイギーポップ狂チャコペンシルズ
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◇U-22レーン 第3位 
SEYLESS
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■審査員特別賞
SERENITY IN MURDER

■music3賞
BLANK DISK BOOTLEG

■ベスト・ボーカリスト賞
砂子慧伍

■ベスト・プレイヤー賞 
妹尾綾mochi mochi /Dr.)

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【各レーンでグランプリを受賞した2組のバンドに、喜びの声をインタビュー】
 

U-18レーン グランプリ まからんぴぃ
http://35.xmbs.jp/analy/

—今日のステージはいかがでしたか?

へぃた(Bass):次への課題が見つかりました。練習不足です。

すずお(Keyboard):予選と比べるとお客さんがいっぱいいて緊張しました。

—今日の演奏を振り返って、点数をつけると?

へぃた(Bass):68点!良かった点は、お客さんが楽しんでくれたのは良かった。でも今日の9割は課題。見せ方とかパフォーマンスとか、今後追究していきたいです。また、ジャンルの幅もどんどん広げていきたいと思います。

U-22レーン グランプリ THE楽団マーキュリー
http://sound.jp/thegakudanmercury818/

—今日のステージはいかがでしたか?

天田翔平(Vocal&Guitar):ありがとうございました。歌っている時はとても楽しいです。

—2曲目の「それでいいのだ!」という曲がとても前向きで、印象的でした。

小畑哲平(Guitar):自分の作る曲に絶対の自信がなく、好きになれない時期もありました。でも、自分のやっている音楽は間違っていないと思い、それでいいのだ!それでいいのだ!と繰り返し唄うことで強いメッセージを伝えることができ、自分の音楽を愛せるようになりました。

『ジョージロック』終了後、プロデューサーとして藤崎博治さんはどのような印象を持ち、また今後の課題は見えたのか、インタビューしてみました。
 

—『ジョージロック』の決勝が終わり、すべてを振り返って、いかがですか?

藤崎博治:決勝戦の朝、オリエンテーションを行ったのですが、彼らの目は本気でした。最後のオリエンテーションで、僕と彼らで1対52だけど、まっすぐ彼らが見てくれた。そこに言葉はいらないですね。若いパワーで、精一杯背伸びしてこのステージに臨んでいたと思うが、ここはまだスタートライン。ここからどう変われるかが問題。慣れあい、予定調和でやってしまわず、もっともっと続けていくことで音楽に対する考え方、舞台に上がるということの考え方が成熟していくでしょう。

—初回としては、納得いくものでしたか?

藤崎博治:いえ、まったく。まだまだ入口だから目指しているところはもっと上です。辛口に言うと、「こんなもんでしょ」と。しかし今日のパフォーマンスを見て、来春に第2回をやろう!と決意しました。実は、今日つまらなかったらやめようと思っていたのです。

—何が心を動かし、決意させたのでしょう?

藤崎博治:途中空回りしているバンドもありましたが、彼ら、彼女らの気持ちが見えてきたのです。空回りしているのもかわいい。気持ちがあったから空回りしたのだろう、と。「情熱」や「想い」が感じられなかったらやる意味がないので。

—確かに、会場はものすごい熱気でした。

藤崎博治:今日の430名という集客も、出場バンドの「気持ち」がなかったら達成できなかったでしょう。しかも、お客さんのほとんどは途中で帰らずに、最後まで楽しんでいました。第2回はわれわれ大人がしっかりとした器を作って、間延びしないように努めたいです。

—第2回大会にはどんなことを期待しますか?

藤崎博治:例え500円でも1000円でも、お金をとって見せるということへの考え方をしっかり持ってほしい。それを踏まえた上で、表現するだけの技術力を身につけてほしい。…そうした考えを10代、20代のうちにしっかりと身につけてほしいと思います。今の子の多くは、自分たちの仲間だけで、カラオケボックスの自己満足の中で音楽を完結させてしまっています。そこに大人が関わることによって、何か伝えることができればと考えています。

藤崎博治さんは「面倒を見るのは大人の責任、義務」と強調します。大人が勝手なことをしすぎて、大人の論理で子どもを振り回すために、子どもが「このぐらいやっていれば大人は満足するだろう」と腐ってしまうのです。最近の音楽がつまらない原因もそこにあると主張しています。

ノルマを達成したらOK、もしくはバンドをお客だと思っている一部のライブハウスには無いマインド、本物の何かに出会うことができました。『ジョージロック』は、「人間教育」を掲げて今後も熱いバンドフェスを展開していくとのことです。

第1回大会のグランプリに輝いたTHE楽団マーキュリー小畑哲平(Guitar)さんは、今回『ジョージロック』をプロデュースした藤崎博治さんとの出会いについて、コメントしてくれました。このコメントに、ジョージロックの存在価値が集約されているのではないでしょうか。
 

小畑哲平よりコメント

Photo藤崎さんがいなかったら、僕たちはグランプリを取れていなかったと思います。実は、僕たちが出演した8月17日の本選審査の日は、全体の集客が少なく、恥ずかしながら僕たちは4人しか呼べませんでした。なんとか勝ち上がったのですが、『お客さん呼ばずにステージに立って恥ずかしくないのか。別の日程の予選ではたくさんお客さんを呼んだのに落ちたバンドもいるんだぞ!』と藤崎さんに一喝されました。伝えたいことがあって、それを聴いてくれる人がいるからバンドは成り立つのに、僕らはそれを怠ってしまった。恥ずかしいことをしたと凄く反省しました。だから決勝はとにかく集客を頑張って、最高のステージングをして見返してやろうと決意しました。

決勝当日の光景は凄まじかったです。僕たちは30人以上集客したのですが、どのバンドさんも頑張っていたために400人近くの人が集まっていて、僕らが呼んだお客さんがどこにいるかわからないくらいでした。U-22の若造バンドでも本気になればこれだけやれるのだ!って興奮したのを覚えています。同時に、藤崎さんが言いたかったのはこういうことだったのだ!と思いました。なんのためにバンドをやっているのか再確認できました。

集客のこともそうですが、高いステージから人に物申すということのなんたるかを教えてくれた藤崎さんには、とても感謝しています。

 

次回は2010年春!!!
◆JYOJI-ROCK U-22 GRAND PRIX 公式サイト
http://www.rock-gb.com/jyoji-rock/

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