特集

BEEAST密着取材_HEADPHONEPRESIDENT

TEXT&PHOTO:桂伸也

【密着レポート第7弾:Head Phones President】
パンク・ロック、ヘヴィ・メタル等で産声を上げたラウドなロック・サウンドは、様々な展開を見せ続け、近年はもうカテゴライズ等不可能なまでにその多様性を見せている。その多様性という面ではこのHead Phones Presidentは、日本のラウド・サウンド・シーンの中でも、筆頭角に挙げられるバンドだ。自身の進化の中でも様々なスタイルを見せ、限りなく広がる世界観の広さと、彼らならではの独自性の強さという、一見矛盾と見えながらも、実際に程よく合致させ、自らの強い個性とした存在は、日を経る毎に反響を増やし続け、今ではワールドワイドで支持を集めるという大きな存在になりつつある。そんな彼らのイメージを形作る秘密を、彼らの新たな展開を見せる試金石となるステージでの密着取材にて探った。


Head Phones President is:
Anza(Vocals)、Hiro(Guitar)、Narumi(Bass)、Batch(Drums)
 
hana
 

 

 

1.ライブ前(14:00~)

サウンドチェック
 
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取材に入った際は、サウンドチェックの真っ最中だった。ドラムにエスニックなパーカッション、更にギターには様々な音色に、加えてアコースティック・ギターと非常に豊富な音色を使い分ける彼らだけあって、それぞれに手間の掛かるチェック。しかし、それだけに、これこそがHead Phones Presidentのステージを司るカギとであり、この作業での妥協は許されない。そのことを十分に理解しているメンバー達は、淡々とチェックに集中していた。

15:00~ リハーサル
 
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サウンド・チェックも完了し、いよいよリハーサルとなった。要所で入念な準備運動を繰り返すAnzaと、対照的にステージさながらの音に意識を集中していたメンバー達。セットリスト14曲目の「My name is」からリハーサルは開始された。本番さながらの、雰囲気たっぷりのサウンドがステージから流れる。その出来栄えに思わずAnzaは「まったく問題ないと思うんだけど...」その言葉が示すとおり、ほんの些細なモニタ音の注文はあれど、ほぼ問題なくリハーサルは進んでいった。
 
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15:55~ リハーサル2
 
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ステージで一つのターニング・ポイントになる、アコースティック・ギターとパーカッションをフューチャーしたクリーンなサウンドのセクションに移った。だが、ここで調整が入る。他曲とのダイナミクス性の違いもあるのか、アコースティック・ギターのサウンドに納得できないHiro。そのPAとのやり取りだけで20分くらいは過ぎただろうか。それでも、妥協を許さない彼らは、根気よく調整を続けていった。
 
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16:30~ 幕開け準備
 
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ようやく調整も終わり、リハーサルは完了。オープニングの準備に移った。この日のステージでオープニングを飾る本邦初公開のPVのショットを確認。映像のチェックをしながら「ちょっと見えにくいかなー」と、神経を配るAnza。その投影や、オープニングのSEタイミング、スクリーンに映る画角等、マネージャーや会場係に、かなり細かく指示を出していく彼女、舞台経験出身ならではという1面だ。かと思えば、フロアに散らばった荷物を移動させながら、ベースのNarumiに、「もーちょっとー!荷物動かさなきゃー!しょうがないわねぇー」と、姉さん気質のサバサバした雰囲気で周りをリラックスさせたりする。
 
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音とパフォーマンスで妥協することのないこのHead Phones Presidentの中で、Anzaはあらゆる意味でその中心にあることをうかがわせる。そのステージ上の姿自体が、バンドを象徴するアイコンであり、そのヴォイスはサウンドのキャラクターを決定付ける重要な要素である。またあるときは、こうして裏舞台では皆を守り立てるムードメーカーでもある。Head Phones Presidentを語る上で外せない存在、それこそが彼女だ。
PVを眺める彼ら。ふっと一つのジョークがAnzaの口から飛んだ。それは、この日のアンコールでも飛び出し、歓声を賑わせたネタだ。「このPVさぁ、『このPV、何処で撮ったと思う?グランドキャニオン!ウッソ~!銚子!!』とか言ったらウケるかな?(笑)」

17:30~ オープニング準備
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ようやくステージ準備も完了、会場オープンに向けての最終準備に移った。メンバーは無理に気張った様子もなく、かつ特別静かにしているわけでもない。平常心、その中で描くサウンドとパフォーマンスこそ、彼らの作り出すHead Phones Presidentのイメージであることを、暗に示していたのかもしれない。皆が黙々と準備に入っている中、Batchは、一人ステージ袖の楽屋で、ウォーミング・アップを続けていた。
 
hana
 

2.ライブ (20:00~ )

フロアいっぱいに集まったオーディエンス。コアなファンを多く抱えるHead Phones Presidentだけに、この日集まったファンにも、「ステージを楽しみに来た!」と真っ直ぐな思いをもったロックファン、といった気風のオーディエンスがフロアを埋めた。突然、場内の照明は落とされ、ステージ前方のスクリーンにPV映像が流れる。そして、リハーサルの際支持されたタイミングと寸分違わないタイミングで、SEである水滴の音、童謡を歌うような無邪気な子供達の声が響く。かくして、幕は開けられた。
 
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フリー・ジャズの様にアバンギャルドなサウンドが、幕開けからオーディエンスの目をステージにグッと集中させた。Batchのドラムは、リズムを刻んでいなかったが、逆に音階のないドラムと言う楽器で、まるでそこにメロディやハーモニーが見えるようなプレイを見せ、そこにHiroNarumiが追従する。
その中心で躍動するAnza。コーラスエフェクトの掛かった彼女の声が、Hiroの掻き鳴らすギターのヘヴィなリフに絡んでいく。その様子は、時にコミカルに、時にミステリアスに変貌し、Head Phones Presidentの持つファンタジックかつアバンギャルドな世界を力強く印象付けた。ファン達はその様子に、夢遊病者の如く取り付かれ、ゆっくりと頭を振リ始める。冷静にリズムをキープするBatchに、時に道化を演じながらも、クレヴァーにリズムとグルーヴを作り上げるNarumi。メインストリームのヘヴィ・メタルサウンドではなかなか感じられることの出来ないグルーヴ感であり、そのストーリー性に囚われすぎて、ロックの躍動感を失う危惧を、このコンビが織り成すリズムが支えることで回避している。そんな絶妙さも、彼らHead Phones Presidentが高いレベルを誇る証となっている。
 
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一心不乱に掻き鳴らし続けられたHiroのギター。ある時は地響きのように激しく響きながら、驚異的な展開を見せつけていく。まるで空を舞う蝶のように優雅で流麗なフレーズが、まるで当然のように決まり続ける、その聴こえてくるサウンドとは裏腹に、正確無比の超絶テクニックによる裏づけが必要なプレイであることは誰の目からも明らかだ。そして、その指板を舞う左手指のモーションに同調するように、バレリーナのように華麗に舞う姿を見せるAnza。彼女が身に付けたスカート、その裾を振り払う仕草は、彼女の像を示す一つのAnzaのアイコンともいえるのではないだろうか。一つ一つの姿がとても印象的な彼女の物語は、実際に彼女に当てられた照明より、更に印象的な一層輝きを増しながら、時に一転してグロウルを上げ、狂気の世界に変化を加えていく。バラードの静けさの中に込められた狂気の世界観。この独特な雰囲気は、彼らのステージでしか味わえない大きな魅力だ。
 
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ステージは中盤に差し掛かり、Hiroによるギター・ソロのセクションとなった。静まり返った会場の中で、ギターの音だけが鳴り響く。スパニッシュ系の哀愁味を帯びたサウンド。そこにリハーサルで見せたような迷いは一辺も見られず、その1音1音の心地良さだけが会場に立ち込めていた。そして、ステージ両側に持ち込まれた椅子の上で、先程とは違うゆったりとした雰囲気でのプレイを始めるHiroNarumi、そしてフロアに直に座り、そのメロディと詞をしっかりと聴かせるAnza。たった2曲ながら、何かはっきりとした世界観が見える。バラードという一言では済まない彼ら独自の風味を、じっと聴き入っていたオーディエンス達。
 
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静かな空間にピリオドを打つように立ち上がり、バレリーナのようにくるりと回るAnza。ステージも後半、激しく波打つようなサウンドの中で、その麗しきレディは、そのステージの真ん中で時に道化になり、また次の瞬間には獣のような荒々しさを見せた。一方ではオーディエンスのある一人のファンと目を合わせ、指差し、そして「こっちに来いよ!」とばかりに手招きをする。そのアピールには、どんなファンも、有無を言わせずに従わずを得られなくなる。そんなパフォーマンスが、音楽的に、テクニック的に難解なフックが連続する中でも、一時の迷いもなくさらりと繰り広げられたのは驚異的としかいいようがない。
 
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ステージはエスニックなパーカッション音から、動への展開を作る「Where are you」、そして透明感と広がる空間を作り上げる「Reality」を期に、いよいいクライマックスを迎えた。秒毎に激しさを増していったファン達のヘッド・バンギング。曲から曲への繋ぎに間を与えず、ジャズ的なインプロヴィゼーションで、ストーリー性さえ見せてくるその展開は、単に勢いだけで押しまくっていくようなロックとは違う趣がある。1曲1曲で単発的な印象を作り上げてしまうような近年の傾向とは一線を画した、彼らならではの物語をそこに作り出す。そしてエンディング。最高潮の盛り上がりを見せた「Sixoneight」と、Anzaの「ありがとう!」という言葉で、彼らはそのステージに、盛大なフィニッシュを決めた。
 
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それでも彼らをまた求めるアンコール。大きく彼らを呼び込むような声は上がらなかったが、その淡々と彼らを呼び込む手拍子は、かえって彼らを求める深い思いを感じさせた。そして再びステージに姿を現す彼ら。一転して親しみを覚えるような語りを見せたAnzaは、この日のステージの礼を告げる。そして、いよいよ終焉。アンコール・ナンバーは「Chain」。盛大な歓声が、その思いと共にフロアからステージに投げかけられた。それに応えるように、Anzaの声が響く。「I love you all my friend! ありがとう!!」こうして、その壮絶な舞台は幕を閉じた。
 
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3.ライブ後

残念ながら会場の都合等もあり、ライブ後にゆっくりとファン達との親交を深める間もなく撤収に向けて黙々と片づけを始めた、NarumiBatch。楽屋ではAnzaHiroが、スタッフにほっと安堵の表情を見せていた。この後、USでのツアーを控えていた彼らには、安息などあるはずもなかったが、それでも一つの大きなパスを通過したことは、次のステップに向けての、一つの自信になったことも確かだ。それに甘んじることなく、淡々と時を過ごしていく彼らの姿勢には、自分達の音楽に対するストイックなポリシーすらうかがえた。
 
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◆公式サイト
http://headphonespresident.com/

◆ライブ情報
HIRO Solo Show: “SHRED HAZARD”
2012/05/15 東京 荻窪Rooster NorthSide
FIVE-DIMENSIONAL
2012/05/26 東京 新宿MARZ
Act: HEAD PHONES PRESIDENT / SURVIVE / kalma / ANGERS / +. and DJ Tara-man

◆リリース情報
2012/06/06 3rd Full Album「Stand In The World
◆セットリスト:
M01.PURGE
M02.Dive
M03.Nowhere
M04.Desecrate
M05.Labyrinth
M06.Life is not fair
M07.What’s
M08.too scared
M09.ill-treat
M10.Corroded
~Hiro solo~
M11.Inside(Acoustic)
M12.Crumbled(Acoustic)
M13.Stand in the world
M14.My name is
M15.Where are you
M16.Reality
M17.Light to Die
M18.I will stay
M19.Sixoneight
[Encore]
E1.Chain

 
hana
 
メタリックなサウンドが世に現れた80年代当初は、まだ様式美的なサウンド傾向を踏襲せざるを得なく、長らくメタル・サウンドはマイノリティとしてそのポジションを他の音楽と分けられていたようにも見えた。だがその後、ミクスチャー、オルタナと新たな要素を吸収し続け、現在メタル・サウンドは混沌ともいえるほどに広いサウンドカラーを、ポジションとして獲得することに成功した。Head Phones Presidentはその中でも様々なスタイルを吸収した、マルチな要素をバンドイメージとして備える新世代を切り開いた、日本のバンドの代表格といえよう。ゴシカルなAnzaのパフォーマンス、センスと世界観、オルタナチックなリズムとベース、そしてテクニカルながら緻密に構築されたギターフレーズ。それらの集積は、1歩間違えれば不協和というギリギリの線で、彼ら独自のサウンドを作り出すこと成功している。そのサウンドの秘密は、それを実現する緻密な音楽、パフォーマンス・センスによるところだが、それを作り出す要素として、決して妥協しない強い精神力、集中力によるものではないだろうか?帰国後はメジャー・レーベルからのアルバム発表を第1歩として、いよいよ新たな歩みを始める彼ら。自身のサウンドの中で新たな世界を展開する彼らの、その真価が問われる日が来る。が、彼らの信念は、一瞬の揺らぎすら見えない。
 

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