快進のICHIGEKI、本誌読者にはお馴染みのバンドと言っても良いだろう。数々の特集やレポートを通じて、バンドの魅力を紹介してきた。現在のメンバーで、活動歴が10年を超えた彼らのステージは、観る者を虜にする力を持っている。バンドメンバーの一体感は言わずもがな、ステージの進め方が抜群に上手いのが特徴だ。ライブバンドである彼らのステージは、10年以上の間をメンバー同士で考え抜き、現場で鍛え上げた本物のロックを堪能できる。
 
そして通常のライブバンドは、ライブ活動が忙しく、なかなか創作活動の時間を作れない。しかし彼らはコンスタントに作品を作り、定期的に新作を発表しているのも特徴だ。ロックの音源が出来るまでは、創作活動からレコーディングなどを経て、長期的な作業を必要とする。いったい彼らは、いつその作業をしているのか、不思議でならない。今回は、2014年11月にリリースした5thフルアルバム『ESTILO JAPONÉS』のレコ発ツアーファイナルの様子をお届けしよう。
 
2015年1月29日、『快進のICHIGEKI presents 〜Estilo Japonés TOUR FINAL〜[SUPER 大江戸大決戦-Leyendas japonesas-]』と題し、会場は東京の渋谷クアトロ。1月の寒さなどどこへやら、渋谷クアトロはこの日、日本で一番熱いライブ会場かもしれない。快進のICHIGEKIのツアーファイナルだが、彼らが敬愛する山本恭司をゲストに、多彩なバンドを迎えての構成となっている。

イベントのトップバッターをつとめたのはマイナス人生オーケストラ。とあるアニメの主題歌が流れたかと思えば、キャラクターから公演に関する注意事項がアナウンス。まるでどこかのテーマパークに来たかのようなワクワク感。登場の時点から、オーディエンスの注目を集める。楽しそうにステージを展開するマイナス人生オーケストラ。栗山“HaL”ヰヱスは、ヘッドバンギングをあおったかと思えば、ロボットダンスを披露。四股（しこ）を踏んだり、バットを振ったりとやりたい放題！
 
安定感のある楽器隊の演奏や艶のある歌声と、そのギャップが何とも魅力的。MCでは笑いを取る場面が多数あり、さすが大阪から“たこ焼きに乗って転がってきた”というバンドだ！ライブの中には溢れるほどに笑いのエンターテインメントが盛り込まれている。とにかく楽しさを全面に出すマイナス人生オーケストラ。会場では、きらびやかなリングが舞い、会場の温度が高まっている。トップバッターの役目を完全にこなして、次のアーティストへ繋ぐ。

続いて2番手は、快進のICHIGEKIと2マンツアーも以前行っていたザ☆メンテナンスが登場。「銭形平次のテーマ」をSEに、１曲目から全開のステージ！オーディエンスに熱狂の嵐を巻き起こす！リズムに合わせて、ステージと会場が一斉に動くアクションがすごい。おやかたとあんちゃんが向かい合ってギターを弾く場面では、“今日はどう楽しんでやろうか……”というような表情すらうかがえる。MCでは、自分たちの事を「おっさん」と言うが、ステージを端から端まで飛び回ったり、全員が声を張り上げあおったり、アクティブなステージを展開。
 
厚みのあるそのサウンドを、オーディエンスに浴びせるザ☆メンテナンス。会場のボルテージも上がり、外の寒さを忘れてしまうほど！大きく身体や頭を揺らし、ステージに向けて拳をあげるオーディエンス。あっという間にラストナンバー。ギターをかき鳴らすあんちゃんが、「最高！」と一言放つ。快進のICHIGEKIのツアーファイナルに華を添えて、次のアーティストへ繋ぐ。

会場が息を飲んで登場を待つ、3番手は日本のロックを切り開いた外道だ。40年以上に渡り、ロックし続けている大御所。百戦錬磨の老舗バンドは、時に激しく、時にメロウに、ステージを進める。「若い子たちの前で外道やれるのをすごく楽しみにしてきました」と言うMC。そう、外道は若手ミュージシャンとの交流を盛んに行っているのだ。快進のICHIGEKIとは親子ほどの年齢差があるが、外道が繰り広げるロックワールドは、年齢のことなど一切浮かばない。
 
上げた両手を左右に振る“外道ダンス”も飛び出して、会場が一つにまとまっていく。一音一音が、心を揺さぶるような外道のステージ。大御所の風格はそのままに、時に少年のような笑顔を見せる外道。この瞬間が楽しくて仕方ない！という表情が、オーディエンスに伝わり、ステージに目が釘づけだ。外道は、快進のICHIGEKIとのジョイントは初めて。今夜、初めて外道を観る人も多いかもしれないが、強い印象を残すと思う。

そしていよいよ主役、快進のICHIGEKIの登場だ。ツアーファイナルとして、持てるパワーをオーディエンスにぶつけてくることは間違いない！登場を待つ間も、会場の熱気で汗が出そうだ。真っ赤なライト一色に照らされ、メンバーが登場。コータが吠える！ステージ前方のオーディエンスが、芋洗い状態でサークルモッシュ！熱狂的な光景が繰り広げられる。快進のICHIGEKIが生み出す、見えないライブモンスターに、オーディエンスはノックアウト寸前！
 
熱い魂の叫びだけでなく、人間本来の姿を表現したような『ESTILO JAPONÉS』の11曲目「よいではないか」で、心が洗われる。快進のICHIGEKIから伝わってくる反骨精神、ロック魂に溢れた力強い言葉は、けして押しつけなどではなく、オーディエンスの思いを解放してくれるかのようだ。頭を振り、飛び跳ね、拳を突き上げる会場は、人間くさい魂のぶつかり合いなのかもしれない。
 
そしてアンコールの拍手の中、再び登場した快進のICHIGEKI。ここでスペシャルゲストの、山本恭司を呼び込む。快進のICHIGEKIからすると、外道と並んで大先輩のミュージシャン。輝かしいキャリアを持つ山本恭司も、若手ミュージシャンとの交流が活発だ。その姿は、次の世代のミュージシャンへ、何かを継承させるような優しさを感じる。快進のICHIGEKIは、ロック少年だった頃のパッションも注ぎ込み、フィナーレへと向かう！

ニューアルバム『ESTILO JAPONÉS』のレコ発ツアーファイナルにふさわしい、熱きライブが繰り広げられ、会場を後にするオーディエンスの顔には、充実感がただよっていた。しかし驚くことに、快進のICHIGEKIは次のフルアルバム『The Period』を完成させて（2015年02月25日発売）、そのレコ発ツアーが発表！髪入れずに新作を出してツアーに出る彼らは、やはり只者ではない。誰も真似ができないレベルまで、バンドが到達している。
 
ライブの余韻にひたりながら、次作への期待を胸に、帰路に着く。MCで「また違った世界観のとんでもないアルバム」とコータが語っていたが、留まることを知らない快進のICHIGEKI。次のツアーファイナルは、2015年05月25日に渋谷のTSUTAYA O-EASTが会場となるようだ。会場の規模としては、彼らの活動で一番大きな場所。大型の会場で、いったい彼らはどのようなステージを魅せてくれるのだろうか。今年は、快進のICHIGEKIの快進撃の年となるだろう。彼らから目を離せない！

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