特集

oomori16

TEXT:kai PHOTO:タカシ ミッシェル

001アニメ「ONE PIECE」の初代主題歌「ウィーアー!」など歌い、ソロ活動のみならずスーパーアニソンユニット「JAM Project(以下:JAM)」のメンバーとしても活躍中のアニソンシンガー「きただにひろし」。
 
ダニー」の愛称で多くのファンに愛されている彼のデビュー20周年を祝うソロライブ「HIROSHI KITADANI 20th Anniversary Live “SCORE” ~Sing my soul~」が、大阪、東京で行われた。
 
彼のこれまでの足跡を再確認するような選曲で綴られた入魂のライブ。2014年11月2日(日)に行われた大阪MUSEでの公演の様子をBEEAST関西班の総力を結集してお伝えよう。
 
最新アルバム収録曲「What a score!~上出来な人生のススメ」をオーケストラアレンジにしたSEが青白い照明の場内に幻想的な空気を漂わせながら流れ、やがてそれは堂々としたマーチのリズムに変化していった。
 
そしてステージ上にゆっくりとバンドメンバーが現れると、拍手と歓声が沸き起こった。ステージから射す光がすぅーっと小さくなり暗くなると、いよいよ始まるという期待と緊張感が場内を逆に一瞬だけシン…とさせた。強烈な白いライトがステージから放たれると同時に軽快なバンドの演奏が始まる。

HIROSHI KITADANI 20th Anniversary Live “SCORE” ~Sing my soul~

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まずは「What a score!~上出来な人生のススメ」。先ほどのSEで使用されたアレンジとは一変、本来はミディアムテンポの軽快なナンバーだ。イントロ3小節待たずして、右手を高くあげながら笑顔いっぱいで登場したきただにひろしを音楽に合わせた歓声とこぶしが迎える。
 
「大き過ぎる夢を小さな鞄詰めて電車に乗った あの日見てた空はどこまでも青く広く無限に感じた」
 
まるで彼自身のロードムービーのようなこの歌は、20年という月日の土台を支えたすべてに対する感謝の気持ちと、夢と未来へのメッセージがいっぱい詰まった人生賛歌だ。
 
「20th Anniversary Live “SCORE” ~Sing my soulへようこそ!!」
 
軽く挨拶をして続く曲は、「Revolution」。早速登場した人気のヒーローもの主題歌に、一緒に歌い拳を振り上げフロアもぐんぐん熱気を増してゆく。これぞアニソンライブの醍醐味といった空気感をいっぱいに満たした後、大歓声の中ご挨拶。
 
「あらためまして…きただにひろし with Dany’s~!なんでしょうか?この人数は?まるできただにひろしのライブじゃないみたいだ。嬉しいですねぇ。(笑)」
 
自虐的なトークを交えながら感謝の言葉をやや照れぎみに述べたあと、「果てなき希望」。真っ赤な照明で照らし出され、戦う仮面ライダーの心情が乗り移ったかのように勇気を奮い立たせる歌声。間髪入れずに「覚醒~Brave mind~」そして「魔弾戦記リュウケンドー」へと流れ込む。

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「GO! (GO!) GO! (GO!)」や「GA! GA! GA! GA!」、歌詞に合わせて拳を挙げながらのコールや、お決まりのアクションがいっぱいの曲だ。楽しげな笑顔がフロアいっぱい溢れている。曲終わりには高音域へぐんぐん駆け上がる圧巻シャウトで、アニソンシンガーとしての卓越した技量を見せつけた。
 
「というわけで…大阪、何年ぶり?えっ!5年?オレ、人気なかったなぁ~」
「今日はとにかく20周年です。最後までBEST OF BESTでやります。よろしくお願いします」
 
挨拶の後は続けて3曲。TVアニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』から「Endless Dream」、低音ボイスが魅力の「Justice of darkness~妖怪人間ベムのテーマ~」、最新のソロシングル曲「爆アツ!ガイストクラッシャー」。「フレイム・フェンリル ガ~イストオ~ン!」迫力満点の投げ込みに大興奮の会場。
 
JAM加入当時、しなやかなで美しいハイトーンボイスゆえ戦闘的で激しい歌詞より、優しさや哀愁めいた歌詞を担当することが多かった。それが今は力強いシャウトと圧倒的に強化された声量で、歌詞の中の喜怒哀楽を巧みに表現できるシンガーに進化した。
 
歌い終わるや場内からか「かっこいい!」の掛け声。暗転のステージで「なんも出ないよ」と答える照れ笑いを再びライトが照らす。そんなラフなトークをしているうちに、ステージ上からはバンドメンバーがいなくなり、中央にはエレピがセッティングされる。

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「ピアノが出てきたということで、弾き語りをやります。一曲目にやるのは、Shi-ru-shiと言う曲です。これはONE PIECEのアラバスタ編を思いつつ書いた曲です。仲間のしるしと言うことで……聴いてください」
 
いい雰囲気でバラードへ続くと思いきや、その後起きた会場に居た人のみ知るハプニング「ダニースパイラル」。それを乗り越えて歌い終え、安堵の表情で次の曲に込めた思いを語る。
 
「僕って、なんていうかな……一応、えぇ…夢を叶えられた人……じゃないですか」
 
自分で自分のことをこんなふうに話すのは、とても苦手だという表情でゆっくり話し出した。
 
「デビューしたいっていう夢を持って、あんなクソ田舎から出てきて頑張ったらなれた…っていうかね、まぁラッキーの積み重ねですけど、人生の中でこういうふうに20年も歌えているという事実。なので、今度はみんなが持ってる夢とか勇気のもとになって応援していきたいんです。そういう意味も含めてこの応援歌を聴いていただきたいと思います。」曲は、2012年発表の2ndアルバムより「Yell」。
 
「そうさ ゴールなんてないんだろう その手で限界を決めるなよ」
「走り続ける君に贈ろう 追い風巻き起こるような声援を…」
 
声に乗って届けられるありったけの想いが、その場に居る一人一人の胸に染み入るように響く。さっきまで拳の渦だったフロアが水を打ったように静まり返り、夢の体現者か放つ確信に満ちたそのメッセージに耳を傾けていた。

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歌い終わった後、昨年の夏に自分の故郷を襲った水害の復興元年を祝って大きな花火を打ち上げようと全国から寄付を募った「クラウドファンディング」の成功のお礼を述べた後、和やかな空気の中、バンドメンバー、高慶”CO-K”卓史(Guitar)、君和田 典(Bass)、宗本 康兵(Keyboard)、青山 英樹(Drums)、大串 友紀(Manipulator)らを紹介。
 
そして20周年の思いを込めて作られた壮大なバラード曲「Sing my soul」をバンドで初披露。ピアノの弾き語りから、ワンコーラース終えたところでハンドマイクに持ち替えて歌う。
 
仲間と巡り合いながら辿ってきたその道程のように声とバンドの音が重なってゆく。サビに向かってどんどん輝きを増す歌声に合わせて、時折ドラムの青山 英樹が一緒に口ずさむ様子が微笑ましかった。
 
バラードを3曲歌い終えたところで、JAM加入2年後の2004年ごろに突発性難聴を患っていたことを告白。ずっとひた隠しにしてきたが、昨今ミュージシャンたちが同じ病を告白するのを見て、完全にタイミングを失ったと思った、と笑わせてみせた。
 
「実はそういうことも乗り越えて、人間は傷つき強くなるんだという精神で…これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします……ということで曲を。元気にいきましょう。」
 
照れくさそうに頭を下げライブも後半戦に突入。ここから、セイント・ビーストシリーズ三連打。

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ランティスからの初レコーディング作品となった「聖なるけものたち」。テンポをあげて「IN FATE」。物語の世界にどんどん引き込まれてゆくフロア。その熱を冷ますまいと、しなやかさを封印し情熱的な熱唱シャウトで始まった「Diving love」へまだまだ加熱を続ける。
 
短い曲紹介だけして新曲「エクスドリーマー」。キーボードの康兵もド派手なプレイで観客を煽る煽る。大歓声のうちに曲が終わり今度は、アコーステックギターをスタンバイ。あっという間の20年だったと振り返り、デビュー当時の話へ。
 
「今日はその20年前のデビュー曲のB面を……。ツインボーカルでデビューしたんですけどA面は8小節くらいしか歌っていないんです。今日はそのスタッガーの曲でSince1994を聴いて下さい」
 
デビュー曲はクリスマスシーズンのCM曲でスマッシュヒットするもリードボーカルではなかったため、数秒のテレビCMではその歌声は流れなかった。鼻っ柱折られるような経験や悔しい思いを何度もしたろう。それでもただ我武者羅に走り出した日々。
 
あの時はまだ夢でしかなかった大きなステージを経験した今でもなお変わらぬ、真っ直ぐで純朴な思いが伝わる歌声に胸がグッと熱くなった。「サンキュー」小さくつぶやき、「Smile」。
 
「優しくなろう君の為に、優しくなろう僕の為に、優しくなろうみんなの為に……」
 
こういう歌詞が本当によく似合う人だ。最後はみんなで「ラララ…」の大合唱が起きた。それは優しさの種が撒かれてゆくのを見るような素敵な光景だった。いよいよライブも終盤戦。

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「後半行くぜ~!準備はいいか!思い切って声出せ!あたま振れ~!行くぞ!行くぞ!行くぞ~!」
 
フロアの左右、真ん中を順に指さしながら観客を煽りまくる。ウォー!っと勇ましい雄叫びをあげ拳を振り上げ、フロアも突撃モード。しかし一転、空気感の違いすぎる可愛らしいイントロが流れ曲はなんと「レスキュー体操」という不意打ち。あの体操の弘道お兄さんと子供たちが防火の心得を歌い踊る子供向けの楽曲だ。
 
意表を突いた選曲に一瞬、笑いが起きる中、してやったり顔で「Go!Go!レスキュー!Fightだ レスキュー!」歌いながら「はい!声出して!」突然のお遊戯モードに戸惑うフロアの一人一人と目を合わせるように茶目っ気たっぷりに歌い出す。後ろで、パーカッションの大串 友紀も満面の笑みで、歌詞に合わせてジャンプしたり敬礼したりしておどけてみせた。続いて2ndソロアルバム「Real」からタイトル曲を。そして、いよいよ出た「ウィーゴー!」に一番の大合唱が起きる。
 
フロアいっぱい隙間なく突き上げられた無数の拳が同じリズムを刻む光景は最後方から見ていて実に痛快。間奏で「ハイ!ハイ!」の掛け声に「跳べ!跳べ!!」とジャンプを促して、まだまだハイテンションへのスイッチを入れまくった。怒涛のラストは、魂が奮い立つようなロックサウンド「武士」で本編の幕を下ろした。

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早速アンコールの大きな掛け声が上がる。ライトの消えていたステージが徐々に明るくなり、ツアーTシャツに着替えサンバ隊になったメンバーと一緒にノリノリで登場し「レスキューサンバ」でお祭りモード。歌い終わるや「思ったよりしんどい……」と息つく姿で笑わせて見せた。そして残すは誰もが期待してやまないあの一曲を残し、最後のトークタイムで自身のこれまでをゆっくりと振り返った。
 
JAMに入った頃って、なかなか……。自分の中で、俺いるのか?機能してんのか?と思った事もあったんです……」
「もう15年……。今ではJAMで曲も使っていただいたり、ネタが無いのに若手芸人のような扱いで……。でも、自分の居場所がようやく見つかり今、本当に充実しております」
 
スーパーアニソンユニットJAMに華々しく加入し活躍するも、内なる苦悩の日々があったことを告白。ホッと一瞬安堵の表情を浮かべ、「これから来年の21周年に向けて頑張りたいと思います。それじゃぁ、皆さんと思い切りこの曲を歌いたいと思います。いけますか~!?サンキュー!ウィアー!!」
 
きただにひろし、ここにあり!」と言わんばかりの自身に満ち溢れた歌声には、苦悩の影もない。ステージを見上げるたくさんの笑顔が、その声の力は本物だと証明していた。演奏後、フロアのあちこちからステージに向かって「ありがとう!」という声が上がり、暖かな空気とたくさんの笑顔に包まれこの日のライブは終了した。

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「What a score!(何たる幸運!)」と歌いながらもその幸運がくじに当たるような偶然ではなく、この手で繰り寄せた必然であるということを20年の歩みの中で証明して見せた「きただにひろし」。
 
いつまでたってもいじられキャラで不器用にも見えるけれど、誠実で一生懸命であることの大切さを誰よりも知っているアニソン界きっての愛されキャラ。勇気や愛、アニメソングに込められたメッセージの伝え人として、これからもきっとずっとその使命を果たし続けてくれるであろう。見上げる都会の空がどんなに狭くなろうとも、歩み続ける月日の中で見る朝焼けが、あの頃と同じ希望の色でありますように。
 
まさにきただに流「上出来な人生のススメ」とでも言える思いの詰まった、心に残る素晴らしい記念ライブであった。
◆セットリスト
M01. What a score!~上出来な人生のススメ~
M02. Revolution
M03. 果てなき希望
M04. 覚醒 ~Brave mind~
M05. 魔弾戦記リュウケンドー
M06. Endless Dream
M07. Justice of darkness ~妖怪人間ベムのテーマ~
M08. 爆アツ!ガイストクラッシャー
M09. shi・ru・shi
M10. Yell
M11. Sing my soul
M12. 聖なるけものたち
M13. IN FATE
M14. Divine love
M15. Since 1994~すべては今の為だけに~
M16. エクスドリーマー
M17. Smile
M18. レスキュー体操
M19. Real
M20. ウィーゴー!
M21.武士
-encore-
E01. レスキューサンバ
E02. ウィーアー!
 
◆ライブインフォメーション
・2014年12月30日(火)
【山 口】シーモール下関
・2014年12月31日(水)
【山 口】下関海響館イルカプール
・2015年01月16日(金)
【米 国】Las Vegas The Joint~Hard Rock Hotel and Casino
・2015年01月17日(土)
【米 国】Las Vegas The Joint~Hard Rock Hotel and Casino
・2015年02月08日(土)
【中 国】Hong Kong Convention and Exhibition Centre
・2015年02月09日(日)
【中 国】Hong Kong Convention and Exhibition Centre
・2015年03月28日(土)
【新嘉坡】Singapore The Star Theater
◆きただにひろし Official Website
http://www.kitadani-hiroshi.com/
 
◆きただにひろし Official Twitter
https://twitter.com/gokigensandany
 
◆リリース情報
きただにひろし 20th Anniversary Best Album『SCORE』 2014年8月27日~発売中