コラム
地獄のコラムニスト・トレーニング
小林信一
90年代にTV/CMソングのギター録音、作曲などのスタジオワークを開始。ESP・SCHECTERの7弦ギターの開発に協力。 04年執筆の「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ」が大ブレイク。現在までに7冊のギター教則本を執筆。10年2月に初のソロ『ネクタイ地獄』を発表。地獄本シリーズの著者による凄腕バンド“地獄カルテット”にて活躍中。

地獄参


1ヶ月コラムをお休みしてしまいまして皆様、担当者様ご迷惑おかけしました!さて、いよいよ地獄本を紐解きますか!

地獄本・・・すなわち「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ」(リットーミュージック社)が発売されたのは2004年7月30日。

本書の制作にあたってお声がかかったのが2003年の秋口でした。リットーミュージックさんと仕事をしている知人のデザイナーさんを通して、後に地獄本の立役者となる出版部担当の鈴木タケヤ氏から直接電話がありました。

「小林さんにギターの教則本を書いて欲しい。」

この言葉が神からの思し召しなのか地獄の予言なのか分かりませんでしたが、すでに22~3歳の頃から自分が教則本を書いたら絶対凄いのが作れると周りに言っているぐらいでしたから

「時が来た。」と思った訳です。

その後、タケヤ氏と直接お会いし、打ち合わせが始まりました。そこでまた運命の出来事がありました。タケヤ氏の口から発せられた言葉は、

「『地獄のメカニカル・トレーニング』という本を作りたいんです。」

じつは今から遡ること約17年ほど前に「地獄のメカニカル・トレーニング」というCD付きの譜面がリットーミュージックから販売されていまして、自分はそのファンだったんです。それは、えびすよしかずさんの絵がジャケットに書いてあるDVDサイズのようなCD教材で、そこには4小節の超絶練習フレーズが松竹梅の3段階でたくさん紹介されていました。これを元に21世紀の現代版『地獄のメカトレ』を作るという使命が下された分けです。

まず2人で取りかかったのは、誰もが憧れるギターの速弾きやハイテク・プレイをどのように紙面で伝えて練習させるかというページの構成でした。

そこで自分が20年前から考えていたトレーニング構想をタケヤ氏に伝えました。それは、「トレーニングはシステマティックである「公文式」のようなスタイルが理想だということ。」です。ここで皆さんは「公文」を知っているだろうか?当然ながら通っていた方はお分かりでしょうが、算数&数学の計算に特化した教材で、簡単な足し算引き算から始まり、進めていくと小学校高学年生でも理数系大学受験に必要な微分積分まで計算できるようになってしまうという驚異的な学問テキストだ。

自分は小学校5年生の時に1年間通うのだが、算数が得意だったこともあり、1年間で中学の1次方程式まで進めてしまったのだ。その時のスピーディーに教材を進ましていく感覚が非常に心地良かったので、「なんて素晴らしいテキストなんだろう。」と小学校5年生なりに感動したのでした。

ではここで、このシステムのからくりを解説しよう。
メインの覚える計算公式がある。それを覚えるために物凄く簡単な計算から始めさせる。そして2問目にちょっと変化した計算を応用させる。このちょっとした変化を10回ほど繰り返すと自然にメインの教わりたかった計算が勝手に身に付いているのである。これが松竹梅ステップアップ方式のメカトレのヒントなのです。

そしてこの構想を初めて地獄本で試そうと思ったのではなく、自分が大学生の時にやっていた塾の講師や家庭教師ですでに学生たちに試していたのでした。これは算数や数学の問題ではななく、どんな学問でも1つ1つ簡単なことから変化球で応用を教えていけば、たとえ偏差値30の子でも50以上にはなったのです。以上から塾講師ときに試した応用と経験が物を教える術での確信に変わっていったのです。年にして22歳の時でした。

そういった事でその後、街中にある音楽教室から自宅ギター教室を経てMIジャパンでのギター講師業を通して、教則本のお声がかかった時には、「時が来た。」と思った分けです。

話が少し反れましたが、こういった経緯でリットーミュージックの担当タケヤ氏とレイアウトを練り、「メイン+松竹梅ステップアップフレーズ」合計4フレーズが決定したのです。

次に問題にしたのは、1つのテーマを見開き2ページで簡潔させることでした。そもそもメタル系のギターが好きなキッズがページをめくるはずがない(笑)何ページにも渡って譜面や解説が書いてあったら恐らく5ページほどプレイしてブックオフに行くでしょうね。(ここで難しいからブックオフに行ったという意見は聞かない。)そこで左ページは譜面、右ページを解説図版に全てのページを統一させました。

以上が基本路線の雛形なのですが、これでも何かパンチが足りないな~と。そこで、もう少しゲーム攻略の感覚がプラスされたらいいなと思いまして、ラスボス的な「最終練習曲」を追加したのです。目標のないテキストがどれだけ人間の興味を失わせるか大学時代に嫌というほど思い知らされていましたからね(笑)

といった様々な自分の経験と感覚をタケヤ氏という出版のプロフェッショナルにコーディネイトして頂き、ご存じの通りデザインも一流にこだわり地獄本が完成しました。とにかく文句1つ言わせない手抜きなしの本に仕上げたかったのですよ。ここにギター教則本のブームを巻き起こすリットーミュージック「地獄制作チーム」が出来上がったのです。

さてここまでお読み頂き、ほんの少しですが地獄本のカラクリが見えて来たでしょうか?様々な仕掛けがこの本の中に散りばめられているのが分かってもらえたと思います。そしてこの本の仕掛けの面白さはアジア人には理解してもらえるようで、現在では日本語を含めて4カ国語に翻訳されています。(写真:左から発刊された順で、日本語、韓国語、台湾語、中国語)

ただ、最後に1つだけ皆さんに伝えておきたい事があります。それは、地獄本の良さは以上のような仕組みや方法論の良さだけではなく、私を含めた制作チームのメタル・スタイルのギタープレイを普及させたいという「メタル愛」が存分に散りばめられているから素敵なのです。

『メタル』って奴は、人生を熱くさせてくれますよ本当に。。。「男は黙ってヘビメタる!」

★地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ購入はコチラ★

【小林信一 公式サイト】http://www.nanagen.jp