コラム
地獄のコラムニスト・トレーニング
小林信一
90年代にTV/CMソングのギター録音、作曲などのスタジオワークを開始。ESP・SCHECTERの7弦ギターの開発に協力。 04年執筆の「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ」が大ブレイク。現在までに7冊のギター教則本を執筆。10年2月に初のソロ『ネクタイ地獄』を発表。地獄本シリーズの著者による凄腕バンド“地獄カルテット”にて活躍中。

地獄肆


ビースト復刊おめでとうございます!!
3.11震災の後、休刊する旨をビーストさんからお聞きしました時は、非常に残念な思いと震災に対する悔しさとが入り交じっていた事を思い出します。
再始動、軌道に乗せるまではお仕事大変な事と思いますが、微力ながらこれからもビーストさんを応援させて頂きます!
と言うことで、こちらの地獄のコラムも続けさせて頂く事になりましたので、読者の皆様、ビースト共々応援宜しくお願いします。

さて、今回は地獄のギター教則本第2弾「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ〜愛と昇天のテクニック強化編〜」の制作秘話などを交えながらご紹介させて頂こうと思います。
この「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ〜愛と昇天のテクニック強化編〜」は第1弾発売1年後の2005年9月28日に発売された本です。

(写真1:左から初版本、現行版)

初回版のみステッカー付きで販売されました。

(写真2:ステッカー写真)

第1弾が発売と同時に大ヒットを記録し、すぐさま第2弾の「大人な」企画が上がる分けですが(この経緯は前回のコラムに細かく書いてあります)、兎にも角にも「なるはやで発売したい」という出版社の大人な要望、そして、そのプレッシャーとの戦いがこの作品の全てなのです(笑)

まず読者の皆さんに申し上げたいのは、第1弾制作中に編集者に言われ続けていた「小林さんのノウハウ全てをこの1冊に出し切ってください!」という台詞なのであります。この励みにもなる台詞に闘魂込めて執筆したんですよね第1弾は。そして間もなく第2弾の制作に入る訳ですが、燃え尽き症候群とでも言うような灰になっている状態からの脱出で一番苦しむのです。ま〜何が一番辛いってアイデアが出ないんですよ(笑)産みの苦しみはアーティストでないと分からないのかも知れませんが、読者の方々でも会社に企画書を提出するような気分と言えば少し近い気分ですかね?
そこで、ありとあらゆる企画を捻出するのですが、まず第1弾と同じ本を作っても仕方ないので、第2弾の本筋企画として「テクニックのターゲットをメタル寄りで厳選し、譜例を多くする」というテーマが掲げられました。第1弾はロック&メタルギターの「テクニック辞書」にするのがテーマでしたので、多種多様のテクニックを網羅した内容で書かれているわけですが、その中から人気があった使用頻度の高いテクニックに絞り込み、第2弾は練習フレーズを多く紹介することにしたのです。より一層メタルのテクニックを磨きあげるというため「愛と昇天のテクニック強化編」と名付けられました。

単純に第1弾と比較すると、ネオクラシカルという様式美フレーズやギターヒーロー・フレーズのコーナーが拡充されて書かれています。
また、第1弾と比べて、少しでも多くの情報を取り入れたいという編集者の思いから欄外に小さい文字で「プチお役立ち解説情報」を採用したのもこの第2弾からです。

(写真3:右ページ下のプチ解説コーナー)

とは言え、第1弾でフレーズのアイデアは底を尽いていましたから、アイデア出しは至難の極みといった具合でした。1ヶ月もの間、1つもフレーズが出来ない状態の筆者を見て、業を煮やした担当が毎日筆者自宅に通い詰めて、一緒にフレーズのアイデア出しを手伝ってくれました。そのお陰もあって少しずつフレーズが生まれはじめ、ゴールに向けて加速できたのです。あの時は背中で編集担当のプレッシャーを感じつつ、「こんなフレーズはどうですかね?」「あ〜いいんじゃないですか〜」みたいな会話を繰り返す毎日でしたが、今思えば楽しい思い出になっています。恐らく担当者も(笑)

そんなこんなで練習フレーズの制作は進み、いよいよ最終練習曲はどのようにしましょうか?と担当とあれこれ考えた結果、ここは開き直って「どストレート」なメタルスピード・ナンバーがいいだろうとなりました。ちょうど制作していた当時2004〜5年あたりではメロスピ(メロディック・スピード・メタル)のシーンが流行っていたので、その雰囲気にしようと。高速ツーバスのドコドコに泣きのメロディーと速弾きが来ればメタルギター好きであれば誰もが唸るだろうと(笑)そして、曲のアイデアを考え、テンポ設定をしたのがBPM170。これが後に「メタルの黄金律」と担当と私が呼ぶテンポ設定になったのです。不思議なもんで170よりちょっと早くても遅くてもカッコ良くないんですよね(笑)またこの曲では7弦ギターが映えるヘヴィーなバッキング・トラックにしたかったので、Bmが炸裂できるキー設定から曲作りを始めたのも特徴的なところです。
そして、この方向性が功を奏したのか、発売後、この最終練習曲「地蔵より愛を込めて」を演奏した読者の映像がyoutubeなどの動画サイトに多数アップされて、話題が膨らんでいったのです。これが第2弾を読者が「地蔵編」と呼ぶゆえんです。今では当たり前に認識されている動画投稿ですが、2005年当時としては、動画を撮影し、サイトにアップするというインフラ整備がされていない時代で、アンダーグラウンドな香りがしていたので、新しい音楽活動の話題作りを先駆けて提供できたのではと思います。

少し脱線しましたが、以上のような色々な制作過程を経まして、当初の予定より大幅に遅れましたが、2005年9月28日に地獄のメカトレ第2弾が発売されたのです。
お陰様でこちらの第2弾も今では日本を含む4カ国で発売されています。

(写真4:左から日本版、韓国版、台湾版、中国版)

そして、この動画ブームと共にDVD編の読者要望が編集部に多数届き、第1弾と第2弾のダイジェスト内容にプラス新フレーズの小曲を収録した「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ〜お宅のテレビで驚速DVD編〜」が第2弾からちょうど1年経った2006年9月28日に発売されました。

(写真5:左から日本版、韓国版)
こちらは韓国版も発売されています。

こういった流れで3種類の本が発売された地獄本も新たな局面を迎えるのであった。つづく。

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【小林信一 公式サイト】http://www.nanagen.jp