コラム
地獄のコラムニスト・トレーニング
小林信一
90年代にTV/CMソングのギター録音、作曲などのスタジオワークを開始。ESP・SCHECTERの7弦ギターの開発に協力。 04年執筆の「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ」が大ブレイク。現在までに7冊のギター教則本を執筆。10年2月に初のソロ『ネクタイ地獄』を発表。地獄本シリーズの著者による凄腕バンド“地獄カルテット”にて活躍中。

地獄弐


みなさんこんにちは!今回の「地獄のコラムニスト・トレーニング」は、「天國のトレーニングソング」をご紹介します!

「天國のトレーニングソング」(リットーミュージック)の企画は2年ほど前から考えていました。この企画の一番核になるテーマは、「ギターでメロディーを弾く」です。事の発端は、“YouTube”。たくさんのギターキッズがネット上で、自著「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ」シリーズ本(リットーミュージック)の練習曲を動画アップで競い合ってくれた事。とても有り難い事で、自分の記した教則本の練習効果の指標にもなりますが、多数の演奏動画を観ているうちに1つだけ皆に共通して気になることを発見しました。いや発見してしまったのです。

それは、「チョーキングとビブラート事情が明らかにおかしい」と。どの方の演奏も共通して言えるのは、速いフレーズやハイテクには物凄く時間をかけて練習しているのが感じらます。私が観てもビックリするぐらい若いギターキッズでも素晴らしい人がいます。ただそう言った類いのハイテクが完璧であればあるほど「ビブラート」や「チョーキング」が気になるのです。どうしてこんなにハイテクなプレイが上手で、たくさん練習できているギタリストなのにビブラートがダメなんだ?これだけ弾ければセンスあるはずなのに?という疑問が長らく私を悩ませたのでした。Photo

単純にそういうメロディーを弾くようなプレイに興味がないんだろうと勝手ながらに納得していた部分もありました。ところがある音楽学校でのレッスン中、ある生徒に「先生のようにチョーキングやビブラートをカッコ良く決めて、メロ弾きするにはどうすれば良いですか?」と質問されたのです。以前からメロディー弾きに興味がないんだろうと決め込んでいた私は「キミは珍しいな?メロディー弾きに興味あるんだね。」と発言したのです。

すると周りの生徒達からも続々とオレも興味あるんですと。「アレ??おまえ達はピロピロ弾ければいいんじゃないのか?」と言うと、「違いますよ!メロ弾き上手くなりたいけど方法が分からないんです!」だと。何を言うとんじゃい!好きなギタリストのCD聴けばビブラートの揺れぐらい分かるだろうが!・・・という台詞を思いっきり喉の奥に飲み込み、ニコっと笑って「だよね??」って私(笑)。その瞬間、目に飛び込んで来たのが目の前にあった自著「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ」の表紙。

そうかぁ?!!これは自分の問題でもあったのだ。地獄本のテーマは、タイトル通り、「メカニカル」な「トレーニング」をする「フレーズ」本なのだ。だから本書の内容にもビブラートやチョーキングは解説されているが、メインではないので技術が伝わらなかったんだなと。よっしゃ?コイツらのためになる本を書くか?というのが発端でした。

さて、そのメロ弾きを解説するにあたっての題材をどうしようかとあれこれ考えた末、オリジナル曲を練習するより既存の名曲から美しいメロディーを演奏してもらった方が伝わりやすいと思い、カバーソング集に決めました。またせっかくなのでカバー曲は、歌物や他楽器インストという幅広いジャンルから選曲。これはHR/HM(ハードロック/ヘヴィメタル)といったエレキギターで耳慣れたジャンルではなく、他のジャンルに目を向けてもらう意味も込めて選曲したのです。

では収録されている曲を1曲ずつ紹介したいと思います。

1.ロッキーのテーマ
小学生の時にテレビ放映で観て感動した映画です。誰もがテンション上がる曲なので選曲しました。「エイドリア~ン!」って叫びたくなりいますよね(笑)

2.スパイ大作戦のテーマ
アメリカで人気のTVドラマのテーマ曲ですね。5/4拍子のビッグバンドサウンドに魅了されました。その昔、Dream Theaterがライブでアレンジしてたのを観て自分もやりたいなと思って選曲しました。

3.ゴッドファーザー 愛のテーマ
この映画もテーマ曲も説明のいらない有名なもどですね。これを元Guns N’ RosesSlashがステージで弾いているのを観て選曲しました。

4.戦場のメリークリスマス
もしもピアノが弾けたなら絶対に演奏したい曲である自分の尊敬する坂本龍一さんの曲。オリエンタルなイメージが好みなところで流石です。

5.トゥー・ビー・ウィズ・ユー
Mr. Bigの名曲。敢えてアコースティックなナンバーをロックアレンジしました。

6.イエスタデイ・ワンス・モア
Carpentersで一番好きな曲です。明るい曲調なのに涙を誘う名曲です。

7.イマジン
これも説明のいらないJohn Lennonの超有名ソング。Aメロのピアノ伴奏は有名フレーズなのでそこも演奏フレーズにしました。

8.ルパン三世のテーマ’78
TVアニメの有名曲。やっぱり70年代のビッグバンド・アレンジは凄まじくカッコいいですね。あの時代のアーティストは時代を先に行き過ぎなぐらいですよ。自分はファンクっぽくアレンジしました。

9.君をのせて
これも説明のいらないジブリ映画「天空の城ラピュタ」のエンディング・テーマ曲。自分の尊敬する作曲家の1人、久石讓さんの曲です。至ってシンプルなダイアトニック・コード進行なのに名曲。「恐れ入ります」といったプロの技です。

10.G線上のアリア
クラシック・バラードで選曲したら「パッヘルベルのカノン」と1,2位を争うんじゃないかという有名曲ですね。じつはその「カノン」にBachが影響を受けて書いた曲だそうです。

11.ピアノ・ソナタ「月光」第1楽章より
クラシック作曲家で一番好きなBeethovenからピアノ曲を選曲しました。死にそうなぐらいに暗く憂鬱にゆっくりと演奏される曲の重みを感じるかなりヘヴィーな原曲をスピードメタルに料理しました。Beethovenに怒られてるかな(笑)

12.前奏曲~オペラ「カルメン」より~
リズミカルなギタープレイを教えるために選曲しました。原曲がすでに速いです(笑)とても楽しくオルタネイト・ピッキングが練習になるでしょう。

13.フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
3拍子の原曲がボサ・ノヴァのリメイクでこんなに有名になった曲は他にないのでは?というスタンダードな名曲。自分としては初めて?のジャズ・アレンジです。

14.スペイン
これはChick Coreaの名曲ですね。大抵の音楽学校で16分音符の譜面を読む練習で使用されるんではないでしょうか?激しいロックナンバーにアレンジしてあります。

15.荒城の月
小中学校唱歌や童謡といった類いの曲が昔から好きで、ギターで演奏したいと思っていた曲の1つです。23歳でこの世を去る滝廉太郎Randy Rhoadsに匹敵する日本の伝説的ミュージシャンですね。

16.蛍の光
スコットランドの民謡が日本の卒業式やお店の閉店ソングとして利用されている奇妙な経緯の曲。この本の締めくくりとして相応しいと思って選曲しました。パンクロック風にアレンジしております。

ざばぁ?っと書きましたが、曲数も多くアレンジは時間かかるのですが結構作業楽しいんですよ。まだまだ今回の本には選考漏れした曲が無数にあるので、ぜひシリーズ化して今後もたくさんの歴史的名曲をギターアレンジで皆さんに紹介して行きたいですね。ギタリストの方はもちろん、弾かない方もギターインストCDとして聴いて頂けたら嬉しいです。リットーミュージックさんのサイトで試聴が可能ですので下記サイトにアクセスしてみて下さい!それではまた?!!

http://www.rittor-music.co.jp/hp/score/guitar_data/09417107.html

次回は、いよいよ地獄本にメスを入れるか!?

【小林信一 公式サイト】http://www.nanagen.jp