第10回「放浪の旅」
16歳で笑福亭鶴光師匠に入門して、21歳で破門になった僕は、大阪に居場所を失って放浪の旅に出た。落語家修業の間は、歌を作るという発想はなかった。旅の途中で「歌でやって行こう!音楽と笑いで行こう!」と決断するのだ。中学、高校とオリジナル曲作ってたやん!落語家の修業で「笑い」の勉強やったやん!それらを合体させて「歌で爆笑を取る!」というパターンを目指そう!なかなか最初からはうまくいかない。試行錯誤している様子をしばらく振り返ってみよう。
FILENo.26「さすらいの旅娘」
秋から冬への朝のホーム 白い吐息を両手にあて
急行列車は朝もやの中 何処へ行くのか旅娘
ほおづえついて窓の外 行き交う列車はラッシュアワー
朝陽を浴びて髪が光る 何処へ行くのか旅娘
好きな男に振られたのかい 都会の暮らしは辛いかい
ガタゴト揺れるシートに身をゆだね 旅の空へはばたくがいい
きっと笑顔で帰っておくれ 何処へ行くのか旅娘
何処へ行くのか旅娘
遠くの山には初雪が 赤いもみじが風に揺れる
たんぼのあぜ道自転車通学 何処へ行くのか旅娘
きっといい事あるはずだよ 季節変わって行く様に
ひとり旅なら行き先決めず 人の情にふれてみるかい
きっと笑顔で帰っておくれ 何処へ行くのか旅娘
何処へ行くのか旅娘
考察:放浪の旅のスタートは、秋から冬への能登半島だった。落ち込んだ時には日本海の荒波を見に行かなければ!と考えたからだ。大阪駅には高校の同級生、今は放送作家をする増山が見送りに来てくれた。僕は金沢に向かう急行に乗った。湖西線が琵琶湖のほとりを北東に向かう。僕の通路をはさんで斜め前の座席に「旅娘」は居た。我が身を投影して、ちょっと旅のはじまりを歌ってみた。シーンを鮮やかに覚えているので、ま、記録として形にしておいてよかったかなと思う。
FILENo.27「それがどないしてん!」
きのう電車に乗っとったら 俺の前の席イカしたOL
俺の方をチラッと見ては 目が合うたら赤くなってうつむいてる
あ こら絶対俺に惚れとるわ 色男は辛いねとよく見てみたら
俺のズボンのチャックが開いとった
それがどないしてん! それがどないしてん!
それがどないしてん! それがどないしてん!
あー それがどないしてん!
こないだ久し振りに スリーピースをバリバリに決めて
すまして歩いとったら 道行くみんなが振り向きよる
今日の俺ってそんなに決まってんのかと思て ますます得意気に歩いとったら
背広のうしろに クリーニングの紙がついとった
それがどないしてん! それがどないしてん!
それがどないしてん! それがどないしてん!
あー それがどないしてん!
サラッピンのリーガルの靴はいて カッコつけて街を歩いてた
可愛い女の子の2人連れ 足早やに抜かし去ると俺の背後で
女の子の笑い声 何でかいなと思て見てみたら
俺のリーガル 犬のババ踏んどった
それがどないしてん! それがどないしてん!
それがどないしてん! それがどないしてん!
あー それがどないしてん!
週刊誌を読みあさり 今いちばんナウな服買おて
俺もいっぱしのシティーボーイ 決まってるぜシティーボーイ
自己満足にひたって歩いてたら 俺の前からメチャメチャイモくさいやつ
俺と全く同じ服来て歩いとおる
それがどないしてん! それがどないしてん!
それがどないしてん! それがどないしてん!
あー それがどないしてん!
「どないもせーへんちゅうねん!」
考察:これはブルースコードで進行していく。時代を感じる単語がイッパイ出て来る。 ギャグのレベルは、とても笑えるモノではないが、なんとか笑わそうとは思っている。 上田正樹とサウストゥサウスの「俺の借金、全部でナンボや?」みたいなノリを想定して作った歌。内容をレベルアップさせたらいけるかも。無理?
FILENo.28「文通のすすめ」
文通をやろう 文通をすれば 文通するとき 文通やらなきゃ
この世は天国 文通をやろう 文通がいちばんね
男と女のはじまりは 清く正しく美しく
それには文通がいちばんね 文通をやりましょう
もしもあなたの字が汚けりゃ 今すぐペン習字の通信教育習いなさい
文通に顔は問題ないのです 字だけが勝負です
便箋も封筒も小ギレイなやつで 万年筆はコンあたりをオススメします
キレイに封をしてポストに入れて 返事を待つのです
文通 文通なんて素敵な言葉 文通は心のよりどころ
文通を笑うものは文通に泣く 文通は私の生きがい
文通をやろう 文通をすれば 文通するとき 文通やらなきゃ
この世は天国 文通をやろう 文通がいちばんね
返事が来た時のあの一瞬の 気持ちのいいのがヤミつきね
文通は相手の顔も見えないのです 宝クジより夢があるのです
交換日記もいいけどやっぱり文通ね やったものでなければわからない
あなたも一度この僕と 文通してみませんか
文通 文通なんて夢のある言葉 せち辛い世の中の心のオアシス
どんなブサイクな顔してても 文通なら大丈夫ね
文通をやろう 文通をすれば 文通するとき 文通やらなきゃ
この世は天国 文通をやろう 文通がいちばんね
考察:スキー場でバイトしていた時、実際に文通が僕の生きがいだった。当時、雑誌の文通コーナーも隆盛を誇っており、「ペンパル」なんて言う言葉もポピュラーだった。将来「メール」なんていうシロモノが登場するなんて、思ってもみなかったあの時代。スキーツアーで来た女の子達と文通を始め返事が楽しみで、僕は少し離れた所にあるスキー場全体の郵便が集まるポストに郵便物を取りに行く係を率先してやっていた。I am Mr.Post Man.
放浪時代、しばらく
つづく。