コラム
少年は音楽と恋に同時に目覚める
嘉門達夫
83年デビュー。「小市民/鼻から牛乳/替え唄メドレー」などヒット連発。第6回 日本ゴールドディスク大賞受賞。大阪城ホール/日本武道館公演やNHK紅白歌合戦にも出場。『時代の観察者/言葉の魔術師』異名をとる。テレビ東京ネットのお子様バラエティ番組「ピラメキーノ」で「アホが見るブタのケツ」シリーズがオンエアとなり、お子様人気沸騰中!!12/14にはシングル「アホが見るブタのケツ~ベスト~/鼻から牛乳~キッズバージョン~」発売。最新CDアルバムは「“青春”のさくら咲く~スクールセレクション~」。2012年1月~ツアースタート。詳しくは http://www.sakurasaku-office.co.jp/まで。

第3回「未経験のラブソング」


中学時代の恋の歌は、すべて想像の範疇。淡い恋心はあるが、具体的に「恋愛」というものを経験していない。でもラブソングを歌いたい。結果「どんなシチュエーションやねん?」という歌が生まれる。

File NO.7「きみのまち となりまち」

きみの大好きな メロンとリンゴを持って

バスに乗り込むよ きみのいる町へ

月に一度しか きみに会えないので

ぼくはイソイソ きみのいる町へ

きのうかったばかりのシャツを着て よそいきの靴をはいて

きみといるときのことが 頭に浮かんでくるよ

きみの住んでる町の 停留所まであと3つ

むかえにきてくれる きみの姿が目に浮かぶよ

きみの大好きな ミッシェル・ポルナレフの

レコードをかかえて きみのいる町へ

月の最後の 日曜日にしか

きみに会えないのが とても寂しいよ

きのうかったばかりのシャツを着て よそいきの靴をはいて

きみといるときのことが 頭に浮かんでくるよ

きみが住んでいる となりのまちまで

きみは笑顔で むかえてくれるかな

考察:誰かが「彼女、入院してんのか?」と聞いた。たしかに何故にメロンとリンゴを持って行く必要があったのか?仮に手みやげを持って行くとしても、メロンかリンゴ、どっちかでよかったんじゃないの?「月の最後の月曜日にしか会えない」というのも、隔離病棟の面会を想像させる。「よそいきの靴」というのも、いかにも親の管理下の置かれている中学生らしい。何を理想として、何を夢見ていたのだろう?思春期男子はワカラン!

File NO.8「そんな朝」

ひかりのなか 草原で小犬とたわむれる

そんな夢からさめた朝 窓には朝の太陽

部屋にはコーヒーのにおい それから君の歌声

僕はベランダに出て深呼吸

はいた白い息を見て もうすぐ長い冬だ

なんて考えながら 小鳥さんおはよう

部屋に入った僕は テーブルに座る

僕の前に君が座る

君は焼きたてのパンにバターをつける

そして君の白い手が それを差し出す

そんな朝を僕はいつか

むかえるのだろうか そんな朝を

僕は待ってるよ まだ会わぬ君と一緒に

考察:こんな朝はイヤやぁ~。どこやねん?この場所は?「君の白い手」が不気味だ。パンにバターをつけて食べる朝は平和の象徴か?イメージが漠然としすぎていて、伝わらない。高校の先輩、作詞家の喜多條忠さんは、伊勢正三さんに「詩はなるべく具体的に!」とアドバイスしいて「なごり雪」と「22才の別れ」が生まれたと聞いた。汽車を待つ君が時計を気にしたり、22本のローソクを立てるのはドラマチックだが、単に「メロン」や「リンゴ」や「バター」を出すだけじゃあ「絵」も浮かばんわなぁ~。

File NO.9「夏の追憶」

窓を開けて真っ暗な 夏の夜にとびだしたい夜です

僕はひとりベッドに座って ギターを弾いてます

夏の空を見ていると 心はあの頃へとんでゆくのです

あの時あの頃もうずいぶん 昔のように思います

あなたも今頃僕と同じ 夏の空を見ているでしょうか

もしあなたが この空を見ていたなら僕は星に伝えます

楽しい想い出を いっぱいありがとうと

昼間の暑さとうってかわって さわやかな風が僕をなでます

こうしてギターを弾いてると いろいろ思い出すのです

あの頃はまだあなたも僕も 子供だったように思えます

幼心に抱いた 可愛い想い出です

あなたも今頃僕と同じ 夏の空を見ているでしょうか

もしあなたが この空を見ていたなら僕は星に伝えます

楽しい想い出を いっぱいありがとうと

考察:何か、過去の恋愛を思い出して、思いを馳せて、せつなくなって、ギターを弾いて(ギター弾かんでもええのに)、感謝してるなぁ。「子供だった」とか「幼心」とか中学の僕が過去を振り返り「星」に伝えたりする。アホやー。まぁ、でも「恋」を具現化すると、こんなレベルか。なんせ中学生やもん。

などと今現在の僕が思春期の僕が書いた詩にダメだしをするこの企画。だんだん乗って来たぞ!え?勝手にやっとけ?おー!まだまだ続くでー!!

つづく。