コラム
少年は音楽と恋に同時に目覚める
嘉門達夫
83年デビュー。「小市民/鼻から牛乳/替え唄メドレー」などヒット連発。第6回 日本ゴールドディスク大賞受賞。大阪城ホール/日本武道館公演やNHK紅白歌合戦にも出場。『時代の観察者/言葉の魔術師』異名をとる。テレビ東京ネットのお子様バラエティ番組「ピラメキーノ」で「アホが見るブタのケツ」シリーズがオンエアとなり、お子様人気沸騰中!!12/14にはシングル「アホが見るブタのケツ~ベスト~/鼻から牛乳~キッズバージョン~」発売。最新CDアルバムは「“青春”のさくら咲く~スクールセレクション~」。2012年1月~ツアースタート。詳しくは http://www.sakurasaku-office.co.jp/まで。

第2回「プロテストソングに憧れて」


まだまだ中学時代の作品が続く。

File NO.4「ロボット化する愚かな人間の詩」

歩けといえば歩く 座れといえば座る

寝ろといえば寝る 走れといえば走る

勉強しろといえば ためらいながらもやはりする

仕事をしろといえば いやだけれどするだろう

今の人間 ロボットと同じ ご主人様の 言いなりになって

命令に 率直に 服従して

ロボット化する奴ほど 愚かな奴で

愚かな奴ほど ロボットとかわりないんだ

人間は ロボットじゃない 人間は ロボットじゃない

盗めといえば盗む 殺せといえば殺す

壊せといえば壊す 殴れといえば殴る

先公殺せといえば ためらいながらも殺す

親を殺せといえば 喜んでするだろう

今の人間 ロボットと同じ ご主人様の 言いなりになって

命令に 率直に 服従して

ロボット化する奴ほど 愚かな奴で

愚かな奴ほど ロボットとかわりないんだ

人間は ロボットじゃない 人間は ロボットじゃない

考察:泉谷しげるさんの影響をモロに受けた作品。月世界旅行と同様、70年の大阪万博でもその最先端テクノロジーを披露した「ロボット」もタイムリーな存在だった。2番の歌詞になるとハードなメッセージも出てくる。「勉強しろ」とか「先公」とかは学生ならではやな。よく凶悪犯罪を犯した犯人の昔の作文が出て来て、訳知り顔のコメンテーターが「当時から犯行を思わせる部分がありますねえ」などと言っているが、今僕が凶悪犯となったら、こういう詩を引っ張り出されるに違いない。

僕自身にそういった「思想」があったか?と言えばない(なんせまだ14歳)。「体制に反発する事」自体がかっこ良かったあの時代。こんな事を言いたい年頃だった。そんな作品をもう少し。

File NO.5「軽薄のススメ」

誰かが君を ほめたたえても

それはうわべだけのそれで 深い意味はない

誰かが君に 親しげにしても

それはうわべだけのそれで 深い意味はない

だから人とは軽薄に軽薄に付き合おう

本気に本気になるとあとで 泣きを見るだけ

だから人とは軽薄に軽薄に付き合おう

誰も君のことなんか かまっちゃいないよ

誰かが君に 優しい言葉を

かけたとしてもそれは 心から言ってるんじゃない

ともだちのようななれなれしい

そぶりで話かけてきても 明日は忘れてしまっている

だから人とは軽薄に軽薄に付き合おう

本気に本気になるとあとで 泣きを見るだけ

だから人とは軽薄に軽薄に付き合おう

誰も君のことなんか かまっちゃいないよ

考察:タイトルは寺山修司「家出のススメ」やな。これは中3の時の作品。なんかこう、こういう事を言うと大人になったような気がしたな。こういう事を歌っているオレにあこがれる女性が現れる!とか思っていたのかもな。新作が出来ると「ニューアルバム出来たでー!」とか言いながら学校に持って行く。この時の、僕の思う僕に対する友達の正しいリアクションは「えーーーっ!新作ー?聞きたかってーん!聞かせて聞かせて!」「何言うてんねん!オレの方が先じゃ!」「イヤー!私が先に聞きたーい!」クラス騒然、パニック寸前!なのだが、クラス全員不正解の体たらく!みんなたいして聞きたそうにもないので、百歩譲った僕が歩み寄り「・・・これ、聞いといて・・・」と遠慮がちに信頼のおける友人に手渡す。友は「ええよー」と「忙しいけど聞いてやる」的な雰囲気をまといカセットを持って帰る。

さあ翌日。僕の心の中は「アイツ、きっと感動したに違いない!全身から喜び発散させながら『よかったよ!』と僕の手を握りしめ褒め讃えるに違いない!」だったが、ここでも彼の出した答えは不正解だった。「カセット、聞いてくれた?」「え?あ、、まだ、、」・・・ま、まだ?「ほんなら明日までには聞いといてなー」「おう」

で、翌日。「聞いたー?」「聞いた」「でやった」「まあまあやった」・・・・まあまあってなんやねん!ホンマに感受性乏しいやっちゃ!もっとこう、「あの歌のあのフレーズがよかった!」とか具体的な感想を言えや!そんな事にもメゲず、せっせと「猜疑心」あふれるハードなヤツを作る僕だった。もういっちょ行ってみよう!

File NO.6「一時(いっとき)の英雄」

一時の英雄になりたいが為に おどけてみせ

一時の英雄になりたくて 人の目をひこうとする

一時の英雄になりたいが為に 猫をかぶり

一時の英雄になりたくて 自分をさらけ出せない

一時の英雄 かりそめのヒーロー

つかのまの英雄 瞬間のヒーロー

俺の目から見たら まるでピエロだよ

一時の安らぎを探し求める ピエロだよ

一時の英雄になりたいが為に いばってみせ

一時の英雄になりたくて かっこをつける

一時の英雄になりたいが為に ウソをつき

一時の英雄になりたくて いい子になってみせる

一時の英雄 かりそめのヒーロー

つかのまの英雄 瞬間のヒーロー

俺の目から見たら まるでピエロだよ

一時の安らぎを探し求める ピエロだよ

考察:「ピエロ」という言葉が流行っていた。道化モノの哀しさにペーソスを感じていた。同級生にカセットを聞かせても、思ったようなリアクションはなかった。僕自身が義務教育機関最年長のピエロだった。同胞の中澤君のみが、最高の観客であり、彼にとっての心の支えも、目の前の僕だったに違いない。しかし少年よ!高校に入ると春がやってくるぞ!精進して待て!

つづく。